内縁の妻や夫に相続権はありません!遺産を受け取る方法と注意点

法定相続人

更新日 2024.01.25

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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内縁の妻とは、正式な婚姻手続きを経ていなくても、実質的に夫婦として生活を営む人を指します。
内縁の妻は、配偶者と認められるための公的な手続きを経ていないため、相続の際には法律上の配偶者と同等の扱いを受けることができません。内縁の夫が亡くなった場合、残された内縁の妻は、自動的に遺産を引き継ぐ権利がないのです。

しかし、このような内縁の妻に対し遺産を遺したいと望む人も少なくありません。そこで重要となるのが、生前の対策です。内縁の妻に遺産を残すためには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

本記事では、内縁の妻の相続権のあり方と、内縁の妻が遺産を相続するための方法を解説します。法的な結婚をしていないからといって、遺産を相続できないわけではありません。この記事を通じて、内縁関係にある方々が直面している問題や心配を解消し、大切な内縁の妻に遺産を相続するにはどうすればよいのか一緒に考えましょう。

目次

内縁の妻には相続権はない│関係が何年続いていても関係ない

内縁の妻とは│事実婚の状態にある女性

内縁の妻とは、法律上の結婚はしていないものの、実質的に夫婦としての生活を送る女性のことを指し、このような関係を事実婚とも呼びます。
この関係では、法的に結婚を証明できる書類はないものの、両者がお互いを夫婦と認識し、生活を共にしている実態がある場合に、事実上の婚姻として認められることがあります。
この内縁関係にあると認められるためには、以下の二つの基本条件が必要です。

  1. お互いに婚姻の意思を持っていること。
  2. 実際に共同生活を営んでいること。

お互いが婚姻の意思を持っているかどうかは、外部から見ても明確な夫婦関係が存在するかどうかで判断されます。例えば、結婚式を挙げている、親族や知人から夫婦として認識されている、住民票に「妻(未届)」との記載がある、社会保険の扶養として登録されている、2人の間に子どもを持ち父親がその子を認知しているといった状況が該当します。

また、共同生活を送っているかどうかも内縁関係を立証する上で重要です。これには、同じ家庭で日常を共にし、経済的な支え合いがあることなどが含まれます。賃貸契約や住民票が共通の住所で夫婦として記載されている場合には、共同生活しているとみなされることが多いです。一般的には、3年以上の共同生活が内縁関係と認められる目安とされています。

これらの条件を総合的に評価し、内縁関係があると判断されると、相続などの法的な場面でその関係が認められる可能性が高まります。

内縁の妻に相続権はない

内縁の妻は、日本の民法において法定相続人とは認められず、相続権はありません。そのため、当然遺産相続において法定相続分や遺留分の権利を持たないことになります。
民法によると、法定相続人には、まず亡くなった人の法律上の配偶者が含まれます。その上で、子どもが第1順位、直系尊属(父母や祖父母など)が第2順位、兄弟姉妹が第3順位と定められており、内縁の妻(夫)はこれらの順位には含まれていません。

内縁の妻に相続権はないため、長年に渡って共同生活を続けてきて一緒に財産を築上げてきたとしても、相続の際には法律上の権利を主張することはできません。

さらに、特別寄与分に関しても、これは亡くなった人の介護などの生活上の貢献を考慮して遺産の一部を請求できる制度ですが、こちらも法律上の親族に限定されています。内縁のパートナーはこの制度を利用することができず、貢献に見合う遺産を請求することも法律上認められていません。

内縁の妻が財産を引き継ぐためには、遺言書を作成するなどの具体的な手続きを生前に行うことが重要です。遺言書を作成しておくと、法律上の配偶者ではない内縁の妻が内縁の夫の遺志に従って遺産を受け取ることが可能になります。

内縁の妻の子に相続権はある?│認知しているかどうかによる

内縁の関係にある女性との間に生まれた子どもは、認知されていれば法定相続人となり、相続権を持ちます。
つまり、非嫡出子(婚姻関係にない両親から生まれた子ども)であっても、父親から正式に認知された場合、嫡出子(法的な結婚を結んだ両親のもとに生まれた子ども)と同等の相続権を持ちます。

以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分でした。しかし、平成25年に民法が改正されたことにより、現在は認知された非嫡出子も嫡出子と全く同じ相続分を持つこととなっており、遺留分(相続人が最低限受け取るべき遺産の取得分)も保障されています。

また、父親が生前に認知しなかった場合でも、死後に子どもが認知を求める訴えを起こすことができ、「死後認知」として認められることもあります。この場合、父親の死後3年以内に手続きを行う必要があります。

なお、遺産分割協議が完了した後でも認知が認められれば、その子は他の相続人に対して法定相続分に相当する金銭を請求することが可能です。

内縁の妻に遺産を相続させる方法

 

内縁の妻に遺産を相続させる方法

 

生前贈与しておく

内縁の妻に財産を遺しておく方法の一つとして「生前贈与」があります。
具体的には、内縁の夫が生きているうちに内縁の妻に財産の一部または全部を無償で譲渡します。これにより、内縁の妻は相続が発生する前に財産を受け取ることが可能となります。
贈与には税金の面でも注意が必要です。

この贈与には両者の合意が必要で、受け取った財産に対しては贈与税が課されることが原則です。しかし、毎年110万円までの贈与には基礎控除が適用され、贈与税は発生しません。したがって、例えば毎年110万円の範囲内で生前贈与を繰り返すことにより、10年間で合計1,100万円を税金を支払うことなく贈与することができます。

ただし、もし内縁の夫が内縁の妻に対して、将来にわたって一定額以上の贈与をすることを約束した場合は、将来受ける贈与の全額について最初に一括で贈与税が課される可能性があるので注意してください。例えば、「今後10年間で毎年110万円ずつ贈与する」と約束すると、その総額1,100万円について、約束をした時点で贈与税が一括でかかることがあります。

これを避けるためには、実際に毎年の贈与ごとに独立した合意を形成し、毎年ごとに贈与契約を結ぶなどの対策をとっておくのが良いでしょう。このように毎年の贈与を独立したものとして扱うことで、毎年の110万円の基礎控除を活用し、贈与税を節約することができるのです。

また、内縁の夫に他の法定相続人がいる場合、贈与の総額がその相続人の遺留分を侵害しないよう配慮する必要があります。遺留分は、法定相続人が法律によって保証された最低限の相続分のことを言い、これを超える贈与が行われた場合、相続発生時に相続人から遺留分侵害額請求の対象となる恐れがあるため、その点にも注意が必要です。

遺言書で遺贈する

内縁の関係にある夫婦は法的な婚姻関係にないため、法定相続人とは認められませんが、遺言書によって遺贈(遺言による贈与)を行うことで、内縁の妻に財産を渡すことが可能になります。なぜなら、遺言書は亡くなった方の意思として強い効力を持ち、遺言書により指定された内容は法定相続より優先するからです。

具体的に言うと、内縁の夫が遺言で明確に「内縁の妻に〇〇(例えば、特定の建物や預金などの財産)を遺贈する」と記載しておけば、法律上の婚姻関係がなくても内縁の妻はその財産を受け取ることができます。

しかし、遺言によって内縁の妻に財産を遺す場合でも、その財産が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、内縁の妻は相続人ではないにも関わらず相続税の申告が必要になります。内縁の妻は法的な配偶者ではないため、配偶者の相続税軽減制度の対象外です。さらに、相続税の額に2割が加算される可能性があります。

また、内縁の夫が遺言書にて内縁の妻に全財産を遺す意志を示していたとしても、内縁の夫に法定相続人がいる場合には特別な注意が必要です。法定相続人には、遺留分と呼ばれる最低限受け取るべき相続の割合が法律によって保証されています。もし遺言による財産の遺贈が法定相続人の遺留分を侵害する場合、法定相続人は遺留分侵害額請求を行い、自分たちの遺留分に相当する金額の支払いを求めることができます。

つまり、内縁の妻が全財産を相続すると記された遺言があっても、法定相続人が遺留分の権利を行使すれば、内縁の妻は遺留分に相当する金銭を法定相続人に支払う義務が生じることがあるのです。そのため、遺言を作成する際には、法定相続人の遺留分を尊重する必要があります。

特別縁故者として財産分与請求をする

法定相続人が一人もいない場合、亡くなった方と特別な関係にあった者に相続財産が渡される可能性があります。これは「特別縁故者」と呼ばれる人々で、具体的には亡くなった方と生計を共にしていた人や亡くなった方の療養看護に努めた人などが該当します。(民法958条3項)
これにより、事実婚の関係にあった内縁の妻も、法定相続人がいない場合に内縁の夫の財産の全部または一部を受け取ることができるかもしれません。

内縁の妻が特別縁故者として財産を受け継ぐためには以下の手順を踏む必要があります。
相続人の有無が不明な場合、関係者の申し立てにより、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
選任された相続財産管理人は、被相続人の債権者に対して債務の支払いを行い、財産の清算作業を行います。

清算後、管理人は公告を行い、相続権を主張する者がいないことを確認します。
公告期間終了後3ヶ月以内に、被相続人と特別の縁故があった者は、遺産分割の審判を求めて家庭裁判所に申し立てを行います。

しかし、特別縁故者への財産分与が認められるかどうかは、家庭裁判所の判断によります。内縁の配偶者であるからといいて確実に認められるわけではなく、特別の縁故の実態を示す証拠や理由を明確にしなければなりません。

生命保険の受取人にする

生命保険の受取人を指定することは、内縁の妻に財産を渡す有効な手段の一つです。
原則として、生命保険の受取人は、法律上の配偶者や二親等内の親族(例えば子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母など)と定められています。これは、生命保険を悪用した犯罪や不正行為を防ぐための措置です。

しかし、保険会社によっては、内縁の妻(夫)を受取人として認めている場合もあります。この際、保険会社の定める条件を満たす必要があります。たとえば、法的な配偶者がいないこと、内縁の妻と一定期間以上同居して共に生計を立てていることなどが条件になることが多いです。これらの条件を証明するためには、住民票の登録や、共同での生計を示す書類などが求められることがあります。

そのため、内縁の妻に保険金を受け取らせたい場合は、住民票の手続きを含め、事前に必要な準備を整えておくと良いでしょう。保険会社による条件や要求される書類は異なるため、加入を検討している保険会社に具体的な条件を確認し、必要な手続きを行うことが大切です。

内縁の妻にも遺産を受け継ぐ権利がある│貸借権と遺族年金

上で解説したように、内縁の妻は、特別縁故者として財産を受け継ぐことが認められています。
その他にも、内縁の配偶者が一定の条件下で財産の承継が認められることがあります。

借地権・借家権

借地権や借家権は、それぞれ建物の所有や賃借を目的とする権利であり、財産権として相続の対象になります。
内縁の妻は、もし内縁の夫が相続人なしで亡くなった場合、内縁の妻は夫が賃借していた建物について居住を継続できる可能性があります。これは借地借家法に基づいており、内縁の妻(夫)が同居していた住居の借家権や借地権を承継できると規定されているためです。ただし、内縁の夫が相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に、賃貸人に対して借家権を承継しない旨の意思表示をした場合は、借家権は承継されません。

賃借人に相続人がいる場合には、法律上の明文の規定はありませんが、判例(最判昭42.2.21)によれば、内縁の妻は賃貸人との間で相続人の賃借権を援用し、居住の権利を得ることが認められています。これにより、内縁の妻は、賃借権を主張し、居住を続けることが可能になります。

遺族補償や遺族年金を受給する権利

まず、労働災害が原因で労働者が亡くなった場合の遺族補償については、労働基準法第79条および労働者災害補償保険法(労災法)第16条の2に基づき、内縁の配偶者も遺族補償給付の対象になることが認められています。これは労働者が事故や病気で亡くなった際に、遺された家族に対して経済的な補償を提供するものです。

次に、国民年金における遺族基礎年金の受給については、国民年金法第5条の7項および第37条に基づいて、内縁の配偶者にも法律上の配偶者と同等の受給資格があるとされています。この遺族基礎年金は、保険料を支払っていた者が亡くなった際に、その配偶者や子供に対して支給されるものです。

また、厚生年金保険の遺族厚生年金に関しても、厚生年金保険法第3条の2項および第59条により、内縁の配偶者が法律上の配偶者と同様に受給資格を有しています。遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が死亡した際に、遺族に対して支払われる年金です。
これらの給付については、内縁の配偶者があたかも法律上の配偶者であるかのように扱われるため、内縁関係にあることを証明する必要があります。

相続法改正による影響は?│配偶者居住権は認められるのか

2020年4月の相続法改正により、配偶者居住権や配偶者短期居住権が新たに施行されました。これにより、配偶者は夫の死後も一定期間その住宅に住み続ける権利が法律によって保障されるようになりました。具体的には、終身にわたって住宅に居住することが可能な終身の配偶者居住権、または遺産分割が完了するまで最低6か月間、無償で住宅に居住できる配偶者短期居住権が認められています。

しかしながら、これらの権利は法律上の配偶者に限定されており、内縁の妻は対象外となっています。内縁の妻は、配偶者居住権や配偶者短期居住権を得ることはできません。つまり、内縁の夫が亡くなった際に、その遺産を相続する法定相続人が住宅の立ち退きを要求する場合、内縁の妻は法的な根拠をもってこれに対抗することが難しいということです。

それでも、裁判所の判例などを見ると実際は、内縁の妻に対してある程度の配慮がなされています。権利濫用の理論を用いた判例では、内縁の妻が内縁の夫の死亡と同時に住居を追い出されることは、権利の濫用とみなされることがあり、一定の条件下で立ち退き請求が否定されることがあります。また、内縁の夫が生前に内縁の妻に対して、死後も住宅を使用できるとの黙示的な合意があった場合、その合意が認定されれば相続人による立ち退き請求が棄却される判例も見受けられます。

このように、相続法改正によって法律上の配偶者には新たな保護が与えられた一方で、内縁の妻は法的な保護を直接的には受けられませんが、判例を通じて間接的な保護が与えられることがあります。
住居を安心して引き継ぐためには、このような不確定な権利に頼ることなく、遺言書の作成や生前対策などさまざまな法的手段を検討することが重要です。

内縁の妻に財産を受け継ぐときの注意点

相続税法においては、法律上の配偶者に対してはいくつかの税額軽減の特例が設けられています。これによって配偶者は相続税の負担を大きく減らすことが可能です。

しかし、内縁の妻は、これらの優遇措置を受けることができません。
内縁の妻が財産を受け取る場合は、納税資金についても十分に計画を立てる必要があります。以下で、どのような注意点があるのか詳しく解説してまいります。

相続税の税額軽減の特例を受けられない

内縁関係の妻が相続財産を受け取る場合、その財産が相続税の基礎控除額を超えたときは、相続税の申告及び納税の義務が発生します。相続税の基礎控除額とは、3,000万円に法定相続人の数に応じて600万円を加算した額です。

具体的には、法律上の配偶者の場合、相続財産が1億6,000万円または相続財産の1/2までであれば相続税が免除される可能性があります。これは「配偶者の税額軽減」と呼ばれる制度で、配偶者が大きな経済的負担なしに被相続人の財産を受け継ぐことを可能にするためのものです。しかし、内縁の妻は法律上の配偶者ではないため、この軽減措置の対象外となり、相続税の免除は受けられません。
また、配偶者税の税額軽減以外にも以下のような控除制度を利用することができません。

小規模宅地等の特例

被相続人が使用していた住宅や事業用宅地について、相続によってこれらの宅地を継承する場合、一定の条件を満たせば土地の評価額を最大80%減額することが可能です。この特例は相続人だけでなく、遺贈を通じて財産を取得した親族にも適用される場合があります。ただし、適用を受けるためには取得者が親族であることが必要であり、親族には含まれない内縁の妻は、この特例の適用を受けることができません。

障害者控除

この制度は、相続人が85歳未満の障害者である場合、85歳に到達するまで毎年10万円(特別障害者の場合は20万円)を相続税額から差し引くことができるというものです。しかし、この控除の対象となるのは法定相続人に限られており、内縁の妻は法定相続人ではないため、障害者控除を受ける資格はありません。

相続税が2割加算される

内縁の妻は、法律上の配偶者とはみなされないため、相続税の税率は高くなります。具体的には、内縁の妻が相続した財産に対する相続税額に、その相続税額の2割に相当する金額が加算されます。これを「2割加算」と呼びます。

2割加算は、内縁の妻だけでなく、配偶者と一親等以内の血族以外の人にも適用されます。つまり、孫や兄弟姉妹なども2割加算の対象になります。
2割加算は、内縁の妻にとって大きな負担となります。内縁の妻に遺産を相続させたい場合は、相続税の節税対策を検討することが重要です。相続税の節税対策については、弁護士に相談することをおすすめします。

贈与税の配偶者控除の特例が利用できない

内縁の妻は、贈与税の配偶者控除の特例を利用することはできません。この特例は、戸籍上の夫婦間で婚姻期間が20年以上ある場合、居住用不動産やその購入資金の贈与に対して、基本的な110万円の基礎控除に加えて、最大2,000万円までの控除が可能という制度です。

しかし、内縁の関係ではこの制度を利用できず、内縁の夫から内縁の妻への贈与には、基礎控除110万円のみが適用されます。その結果、贈与される財産が110万円を超える場合には、超えた部分について贈与税が課税されます。贈与税は累進課税であり、贈与額が多くなるほど税率も高くなります。特に不動産など評価額が大きい財産を贈与された場合には、その税額が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

内縁の妻への贈与に際しては、贈与税の計算や税額の予測を念入りに行い、必要な税金を確実に納税できるように計画を立てることが重要です。

生命保険の非課税枠を利用できない

生命保険の非課税枠は、相続時に生命保険金や損害保険金を受け取る相続人に対して、一定の金額まで相続税が免除される制度です。これは、被保険者の死亡に伴う家族の経済的負担を軽減するために設けられており、保険料の負担者と被保険者が同一人物である場合、相続人が受け取る保険金について「500万円×法定相続人の数」を限度に非課税枠が適用されます。

ただし、この非課税枠を利用できるのは、受取人が法定相続人である場合だけです。内縁の妻は法律上の配偶者とは認められておらず、法定相続人に該当しないため、非課税枠は適用されません。つまり、内縁の妻が保険金を受け取ると、その保険金は全額が相続税の課税対象となります。

そのため、内縁の妻に保険金を相続させる際には、相続税の負担が重くなる可能性があります。弁護士は、相続税の計算方法、節税できる可能性のある手段や必要な手続きなど、具体的なアドバイスをいたします。一度ご相談されることをおすすめいたします。

内縁の妻の相続に関するQ&A

Q1: 内縁の妻に遺産を確実に残す方法はどのようなものがありますか?

A1: 内縁の妻に遺産を残す確実な方法としては、遺言書を作成することが挙げられます。遺言書によって、内縁の夫が死亡した後に内縁の妻へ財産を遺贈する旨を明記することで、法的な手続きを通じて財産を継承させることができます。また、生前贈与や生命保険の受取人指定も有効な手段です。ただし、これらの手段には税金の問題が伴うため、専門家との相談が推奨されます。

Q2: 内縁の妻は相続税法において配偶者の税額軽減を受けられますか?

A2: 内縁の妻は、相続税法における配偶者の税額軽減の特例の対象にはなりません。これは、法律上の配偶者にのみ適用される制度です。内縁の妻が受け取る相続財産や生命保険金には、一般的な相続税が課税され、その全額が課税対象となるため、税負担が大きくなることが予想されます。納税費用を確保しておく

Q3: 内縁の妻が相続を放棄することはできますか?

A3: 内縁の妻が法的に相続する権利を持っている場合、例えば遺言による遺贈を受けている場合には、相続放棄をすることができます。相続放棄は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことで可能です。しかし、内縁の妻は元々法定相続人ではないため、法定の相続放棄という形は通常ありません。

Q4: 内縁の夫と共に住んでいたマンションの契約が夫名義の場合、夫の死亡に伴い内縁の妻が追い出されることはありますか?

A4: 内縁の夫名義の賃貸マンション契約の場合、夫の死亡により契約は終了する可能性があります。その結果、貸主は契約を更新せず、内縁の妻に退去を求めることができます。ただし、貸主との間で新たな契約を結ぶことにより、住み続けることが可能になる場合もあります。また、判例によっては、内縁の妻の居住権が一定期間保護される場合もありますので、具体的な事情に応じて弁護士にアドバイスをもらうことをお勧めします。

まとめ

内縁の妻は法的に相続権が認められていないため、自動的に夫の財産を相続することはできません。しかし、遺言を通じた遺贈や生前に行う贈与、特別縁故者としての権利申請など、適切な手続きを行うことで、内縁の夫の財産を受け継ぐ方法は存在します。これらの手続きは複雑で時間がかかることも多いので、早めの準備が必要です。

内縁の夫が健在なうちに、相続に関する事前の準備を整えておくことが望ましいでしょう。また、相続に関する知識が不足していると、手続きの過程で予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクもあります。そのため、相続の計画や手続きを進める際には、相続の専門家である弁護士への相談を強くお勧めいたします。弁護士は、遺言の作成から相続税上のアドバイスまで、幅広く支援させていただきます。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。