配偶者なしの相続はどうなる?法定相続人になる人と相続割合を解説

法定相続人

更新日 2024.03.20

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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配偶者なしでの相続は、思いのほか複雑なものです。配偶者なし・子ありの状況では子どもたちに遺産が移るのですが、配偶者なしで親も既にいなく、兄弟のみがいる場合などでは、手続きの過程は一層複雑になります。現代は少子高齢化が進む中で、配偶者なし・子なしのケースが増加しており、相続人が遠い親族になったり、時には国が財産を継承することもあります。

この記事は、配偶者なしで相続を行う際に相続人になる人やその割合を、親族構成ごとに詳細に解説していきます。配偶者なしの状況でも、生前に適切な相続対策が不可欠であり、あらゆる家族構成において相続をスムーズに進めるための準備をしておく必要があります。

目次

配偶者なしの場合は誰が法定相続人となるのか│親族構成により異なる

「配偶者なし」の場合の法定相続人の確定方法│順位によって決まる

遺言書があれば、その指示に従って遺産を分けます。遺言書がない時には、民法に基づいて誰が遺産を受け継ぐか、いわゆる法定相続人が決まります。
民法で相続人として認められているのは特定の親族だけで、配偶者は常に相続人として相続する権利を持ちます。他の親族については、法律で決められた順位によって相続権の有無が決まり、上位の親族がいる場合、下位の親族は相続権を持ちません。
相続の順位は次のようになります。

第一順位

子や孫など直系卑属

第二順位

親や祖父母など直系尊属

第三順位

兄弟姉妹

配偶者なしで相続が発生した場合、誰が法定相続人となるのかは、亡くなった方の家族構成によって異なります。

つまり、被相続人に子供がいる場合、その子供が法定相続人として優先的に遺産を受け継ぎます。このとき、たとえ被相続人に親や兄弟姉妹がいたとしても、彼らには相続の権利はありません。また、被相続人に子供がいない場合には、その親(直系尊属)が次に相続人となります。兄弟姉妹が相続人となるのは、亡くなった人に子供も親もいない特定の状況下だけです。

「配偶者なし」の場合の法定相続人と法定相続分

下記の表は、配偶者なしで相続を行う際の親族構成ごとの法定相続人と相続割合を示しています。
子どもがいる場合は、子どもたちが相続人となり財産は均等に分割されます。子どもがおらず両親がいる場合や、兄弟姉妹がいる場合にも、同様に財産は均等に分けられます。特別縁故者がいるケースでは家庭裁判所の認定が必要となり、特別縁故者がいない場合は財産は国庫に帰属します。

親族の構成

相続人

備考

子あり

子ども

複数人の場合は均等に分ける

子なし・親あり

両親

複数人の場合は均等に分ける

子なし・親なし・兄弟あり

兄弟姉妹

複数人の場合は均等に分ける

子なし・親なし・兄弟なし・特別縁故者あり

特別縁故者

家庭裁判所の認定が必要

子なし・親なし・兄弟なし・特別縁故者なし

なし

財産は国庫に帰属する

表のとおり、「配偶者なし」の場合、法定相続人になる人には5つのケースがあります。それぞれのケースについて、具体的な事例を使って説明していきます。

「配偶者なし」の場合の相続を具体的に解説

 

「配偶者なし」の場合の相続を具体的に解説

 

子ありのケース

被相続人の妻が先に亡くなっていて、2人の間に子供がいる場合、妻が相続することはもちろんありません。夫の遺産はすべて子供たちが相続します。たとえ被相続人に両親や兄弟姉妹がいたとしても、子供たちに優先的に相続する権利があります。
子供が複数いる場合には、均等に遺産を分け合います。
例えば、子供2人の場合は、それぞれ1/2ずつ遺産を相続することになります。

子あり(子の1人が既に死亡)のケース

上のケースで、子供1人が既に亡くなっている場合は、子供の子(被相続人の孫)が遺産を相続します。
例えば、2人の息子のうち次男も既に亡くなっている状況を考えます。この場合、次男に子供がいなければ、生きている長男が遺産を全て相続します。しかし、次男に子供(被相続人の孫)がいれば、その孫が亡くなった次男の分を相続します。これを代襲相続といいます。
このように孫がいる場合、遺産は長男と孫で1/2ずつに分けられます。次男の配偶者は相続する権利はありません。

子なし・親あり・兄弟姉妹ありのケース

被相続人の妻が先に亡くなっていて、2人の間に子どもや孫がいない場合、第2順位の直系尊属、つまり最も血縁が近い親が相続する権利を持ちます。第2順位の親がいる以上は、第3順位である兄弟姉妹は相続人になれません。
例えば、両親と祖父母がご存命の場合は、祖父母よりも血縁関係が近い父母のみが相続人になり、父と母がそれぞれ遺産の1/2を受け取ることになります。

子なし・親なし・兄弟姉妹ありのケース

被相続人の妻が先に亡くなっており、また子供や孫などの直系卑属、両親や祖父母といった直系尊属も一切いない場合、兄弟姉妹が相続する権利を持ちます。
例えば、兄と妹がいる場合は、遺産はこの二人で均等に分け合うことになります。つまり、各々が遺産の1/2を受け継ぎます。ただし、被相続人に直系卑属や直系尊属がいた場合、このように兄弟姉妹が相続することはありません。

子なし・親なし・兄弟姉妹あり(兄弟の1人が既に死亡)のケース

上のケースで、兄弟のうち1人が既に亡くなっている場合は、兄弟の子(被相続人の甥や姪)が遺産を相続します。
例えば、2人の兄弟のうち兄が既に亡くなっている状況を考えます。この場合、兄に子供がいなければ、生きている姉が遺産を全て相続します。しかし、兄に子供(被相続人の甥姪)がいれば、その甥姪が亡くなった兄の分を相続します。
このように甥姪がいる場合、遺産は姉が1/2、甥姪が1/4ずつに分けられます。

子なし・親なし・兄弟姉妹なしのケース

配偶者も子も親も兄弟姉妹もいない場合、相続においては「特別縁故者」と呼ばれる人が相続人となる可能性があります。
ただし、特別縁故者が相続人として認められるには、家庭裁判所による認定が必要です。
特別縁故者がいない、または特別縁故者として認められる人物が見つからない場合、被相続人の遺産は、最終的に国庫に帰属します。

特別縁故者ありのケース

特別縁故者とは、法定の相続人が一人も存在しない際に、例外として遺産を受け取ることができる人のことを指します。
特別縁故者として財産を受け取るためには、まず相続人がいないことが確定した後、3か月以内に家庭裁判所へ遺産分配の請求を行う必要があります。
さらに、特別縁故者として認められるには次のような条件があります。

  • 被相続人と生計を同じくしていた人(内縁関係の夫婦)
  • 被相続人の療養看護に努めた人
  • 被相続人との特別な縁故(師弟関係や親子同然など)があった人

申立てに基づき、家庭裁判所は被相続人と特別縁故者との関係の深さ、特別縁故者の財産状況、生活状況などを総合的に考慮して、財産分与を認めるかどうか、そして認める場合の具体的な分与内容や範囲を決定します。

国庫に帰属するケース

法定相続人も特別縁故者もいない場合や、特別縁故者に財産を分与した後でもまだ財産が残っている場合は、その遺産は最終的に国庫に帰属します

誰が相続人になるのかを確定しておく

自分の相続人が誰になるのかを事前に確認することは、相続の準備において非常に重要です。
法定相続人となる可能性のある親族の状況を把握し、相続人を特定しておくことで、相続の準備や対策を計画的に進めることができます。
相続人を特定するには、出生から現在までの戸籍謄本を集めることから始めます。本籍地の役所に足を運ぶか、遠方であれば郵送での取り寄せが必要です。この作業は手間がかかるため、弁護士に依頼することも可能です。

そして、戸籍謄本をもとに、被相続人と相続人との関係性を示した相続関係説明図を作成します。この図は家系図に似ており、相続人が誰か、そしてそれぞれがどのような血縁関係にあるかを明らかにするものです。相続関係説明図を使って、上で説明した相続順位に従って法定相続人を確定します。
調査によって、意外な相続人が発見されることもあります。例えば、親の離婚や再婚により異母兄弟がいることが明らかになるなどです。遺産分割を適正に行うためにも、このような相続人調査は不可欠です。

配偶者なし・子なしの相続では法定相続人以外に財産を渡すことを検討するケースも

配偶者なし・子なしの場合などは、親や兄弟姉妹以外の特定の人に財産を残したいと考えることも少なくありません。
親族以外の人へ財産を渡す方法には、以下のような3つの方法があります。これらによって、意思に沿った形で遺産を分配することが可能です。

  • 生前贈与する
  • 死因贈与する
  • 遺言書を作成する

遺留分に注意が必要│配偶者なしでも子・親は遺留分が認められる

財産を法定相続人以外の人に渡すことは可能ですが、それには制限があります。なぜなら、一定の相続人は、法律によって保証された最少限の遺産を取得する権利、すなわち遺留分を持っているからです。この遺留分は、兄弟姉妹を除く相続人、つまり配偶者、子ども、両親といった相続人に保障されています。

配偶者なし・子なしの相続では、法定相続人は両親や祖父母などの直系尊属か兄弟姉妹になります。兄弟姉妹に遺留分はありませんが、両親や祖父母には遺留分が認められています。
遺留分の割合は、法定相続分の半分(両親や祖父母のみが相続人の場合は法定相続分変×1/3)とされています。例えば、両親が相続人の場合、両親の法定相続分はそれぞれ1/2ですので、遺留分はそれぞれ1/6となります。

遺留分を侵害された相続人は、遺贈・死因贈与・生前贈与などで財産を譲り受けた人に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができますので、注意が必要です。

生前贈与する

生前に法定相続人ではない人に財産を贈与しておく方法があります。生前贈与のメリットは、確実に特定の人に財産を引き継ぐことができる点にあります。また、財産を生前に段階的に移転させることで、相続の際に一度に大きな額の相続税が発生するのを避けることができます。

しかし、贈与税の基礎控除額は年間110万円までと定められており、これを超える贈与には贈与税が課されます。年間に贈与する金額が110万円以下であれば、贈与税の基礎控除の範囲内となり税金が発生しませんので、上手に活用することで、税負担を抑えながら贈与を行うことが可能です。

死因贈与する

死因贈与は、生前に特定の人に将来的に財産を渡すことを約束する契約のことをいいます。この契約によって、その人が亡くなったときに初めて、指定した人に財産が渡ります。
この契約は、遺言書に記載されていなくても成立する可能性がありますが、口約束だけでは後々の紛争の原因になりかねません。

したがって、死因贈与を予定している場合は、その内容を遺言書に書き残しておくことが重要です。遺言書に記載することで、贈与者の意志が明確になり、相続時のトラブルを防ぐことができます。
死因贈与を遺言書に記載する際には、贈与される財産の詳細、贈与を受ける人の氏名、そして財産を渡す条件やタイミングなどを具体的に定める必要があります。

遺言書を作成する

遺言書を作成しておくことで、法定相続人でない人物にも財産を渡すことができます。これを「遺贈」といいます。

遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の二つの形式があります。自筆証書遺言は、全文を遺言者が自分で書きますが、形式に誤りがあると無効となるリスクがあります。一方で公正証書遺言は、公証人が立ち会い、適切な手続きに従って作成されるため、無効となる心配がありません。そのため、公正証書遺言を作成しておくことをおすすめいたします。

配偶者なしの相続に関するQ&A

Q1:配偶者なしの場合、相続手続きはどのようになりますか?

A1: 配偶者がいない場合、被相続人の子供が最優先の相続人となります。子供がいなければ、被相続人の両親や兄弟姉妹が相続人となります。相続人を明確にするためには、被相続人の戸籍謄本を取得し、相続関係説明図を作成することが必要です。これにより、法定相続人を正確に特定し、全員で遺産分割協議を行うことが求められます。この協議は全相続人の参加が必要で、一人でも欠けると無効になる可能性があるため、慎重な準備が必要です。

Q2: 配偶者がいない状況で、特別縁故者が相続人になる条件は何ですか?

A2: 配偶者がおらず法定の相続人もいない場合、被相続人と特別な関係にあった「特別縁故者」が相続人になることがあります。これには、共同生活をしていた人、療養・看護をしていた人、または師弟関係のような特別な関係があった人が含まれます。特別縁故者として認められるには、家庭裁判所に申し立てを行い、関係性を証明する必要があります。

Q3: 配偶者なし・子ありの場合、相続割合はどのように決まりますか?

A3: 配偶者がいない状況で子どもが相続人となる場合、子どもたちは故人の遺産を均等に分割して相続します。例えば、子どもが2人いる場合、遺産はそれぞれに2分の1ずつ分けられます。また、子どもの一人が既に亡くなっていて孫がいる場合は、その孫が亡くなった親の分を代襲相続します。この場合も、全相続人が遺産を均等に分割することになります。

Q4: 配偶者なし・子なしの場合、相続割合はどのように決まりますか?

A4: 配偶者と子どもがいない場合、相続人は直系尊属(例えば両親)や兄弟姉妹になります。両親が生存している場合は、両親が遺産を均等に分け合い、例えば両親が2人いればそれぞれが遺産の2分の1を相続します。もし両親がすでに亡くなっていて、兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が遺産を均等に分割して相続します。特別縁故者がいない場合、最終的には遺産は国庫に帰属することになります。

まとめ

配偶者がいない場合の相続は、親族構成によって法定相続人とその相続割合が大きく異なります。
そのため、相続人に配偶者がいない場合、あなたが望む人に財産が確実に相続されるよう、事前に誰が相続人になるのかをしっかり確認しておくことが重要です。また、どのように財産を分割するかを慎重に考え、遺産が意図した相手に確実に渡るように、遺言書を作成しておくことをおすすめします。

相続に関して疑問や不明点がある場合は、状況が複雑になる前に、専門家である弁護士にご相談することをおすすめいたします。弁護士は、相続に関する専門的な知識と経験をもとに、あなたの望んだ形の相続が実現できるようご支援いたします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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