相続順位はどう決まる?遺産相続の優先順位をわかりやすく解説!
相続が発生したとき、亡くなった人の遺産はどのように分けられるのでしょうか。誰が、どれだけの割合で遺産を相続するのかを決める際には、「相続順位」という法律で定められた基準が参考とされます。
この相続順位は、特に、亡くなった人が遺言を残していない場合に大きな意味を持ちます。遺産相続には明確な優先順位が存在し、それに従って遺産は家族や親族の間で公平に分けられます。
この記事では、相続順位とは何か、どのように決まるのか、そしてそれが遺産相続にどう影響するのかを詳しく解説していきます。
目次
相続順位とは?遺産相続には優先順位がある
相続とは?
相続とは、わかりやすく言うと、ある人が亡くなった際に、その人の財産を次の世代や遺族が引き継ぐことを指します。具体的には、財産としての現金や不動産、車、有価証券などの価値があるものだけでなく、借金や負債も含めた全ての権利義務が対象になります。ただし、年金受給権や生活保護受給権のように、特定の人にしか帰属しない権利は、相続の対象からは外れます。
この文脈で「被相続人」とは、亡くなった方のことを指します。一方、「相続人」とは、財産を受け継ぐ配偶者や子供などの遺族のことを意味します。
また、法律上の死亡とは、通常の死亡のほか、失踪宣告を受けた場合など、「法律上で死亡した」とみなされるケースも含まれます。
相続順位とは│法定相続人になる順番
相続順位とは、法律に基づき誰が亡くなった人の財産を相続する権利を持つかを示す順位のことを指します。この権利を持つ人を「法定相続人」と呼び、民法で具体的に誰がこれに該当するかが定められています。
具体的な相続順位は、まず亡くなった人の配偶者が最も優先され、次に直系卑属(子供など)、その後は直系尊属(親など)、そして兄弟姉妹の順となります。この順位に従って、相続人とその相続できる遺産の割合が確定されます。
相続手続きを進める際は、まず相続人を確定することが必要です。誤って手続きを進めると、手続きをやり直さなければならない場合もあります。これを避けるため、相続に関する適切な知識と理解が求められます。
なお、離婚していた元配偶者や、法的な婚姻関係を結んでいない内縁関係の者は、法定相続人としての順位が存在しないため注意が必要です。
法定相続人について詳しくは、下記記事で解説しております。あわせて参照してください。
「法定相続人とは?わかりやすく解説します!│範囲と順位を図解!」
法定相続人以外への相続には遺言が必要
もし、法定相続人以外の人に遺産を相続させたい場合、遺言書を作成してその意思をはっきりと示す必要があります。これを「遺贈」といいます。この遺贈は、法律上の問題がなければ、通常の法定相続よりも優先されるものとして扱われます。
遺言書がないと、遺産の受取は法律で定められた法定相続人だけに限られます。そのため、法定相続人以外にも遺産を渡したい場合、まず法定相続人が遺産を受け取り、その後、彼らが意志をもってその財産を第三者に贈るという流れになります。
相続人の順位はどのように決まっている?
遺産の分割は、故人の意志や法律に従って行われます。遺言書が存在する場合、その内容を最優先に遺産が分配されます。しかし、遺言書がない場合や内容が不明確な場合には、民法が設定する基準に基づいて遺産が分けられます。
この民法の基準の中心にあるのが「法定相続人」という概念です。法定相続人とは、亡くなった人の遺産を受け継ぐ資格を持つ者を指します。特に以下の2つのグループに分けられます。
- 配偶者:被相続人の配偶者は、常に法定相続人としての権利を持ちます。
- 血族相続人:血の繋がりに基づいて相続の順位が決まります。
具体的には、
- 第1順位:子供や、子供が既に亡くなっている場合は孫やひ孫
- 第2順位:両親や、両親が既に亡くなっている場合は祖父母第3順位:兄弟姉妹や、兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は姪や甥
もし第1順位の相続人がいない場合、次の順位の相続人が遺産を受け継ぐ資格を持つこととなります。自分より順位の高い人がいる場合は相続人になれません。
配偶者は常に相続人│法定相続人になれる配偶者とは?
被相続人の配偶者は、民法890条に基づき、どのような状況であっても法定相続人として認められています。これは、他の相続人の存在や順位に関わらず一貫して適用されるもので、血族相続人とは異なり、相続順位の制約を受けません。このため、配偶者は相続において非常に優位な立場に置かれると言えます。
配偶者とは│婚姻関係にある人のみ
しかし、この優位性が認められるための前提として、被相続人との間に法律上の婚姻関係が存在する必要があります。具体的には、婚姻届を提出し、戸籍に夫婦として正式に記載されている状態であることが求められます。
そのため、事実婚や内縁の関係だけの場合、その関係は法的には配偶者として認められず、法定相続人としての権利もありません。
相続人が配偶者のみの場合は全てを相続
相続人が配偶者のみの場合、民法によりその配偶者は被相続人の遺産全てを相続する権利を持ちます。つまり、他の法定相続人がいない状況で、配偶者だけが相続権を持つ場合、その配偶者は亡くなった方の持っていた財産や権利を全て引き継ぐことができます。
では、配偶者の他に相続人がいた場合は、どのように遺産が分けられるのでしょうか。以下で具体的に解説していきます。
子供の相続順位は第一順位│子が死亡している場合は孫が相続人
亡くなった人の子供は、その相続順位が最も高い第一順位の法定相続人として認められています(民法887条参照)。
子供が法定相続人として認められる場合と認められない場合を具体的に挙げると以下のとおりです。
法定相続人として認められる子供
- 法律上の結婚をした夫婦の子供(胎児も含む)。夫婦が後に離婚した場合も維持される。
- 認知されている子供:生物学的親が法的に子供との関係を認めた場合。
- 養子縁組を経た子供:正式な手続きを経て養子となった子供。
法定相続人として認められない子供
- 法律上の結婚をしていない夫婦の子供で、かつ認知されていない子供。
- 再婚した相手が持っている子供で、養子縁組をしていない場合。
これらの基準に従い、子供が法定相続人として認められるかどうかが決定されます。
子供の間に相続順位はある?
子供たちの間での相続順位は定められていません。つまり、相続が発生した際、配偶者が存在しない場合には、子供たちは被相続人の遺産を平等に分けることとなります。
もし2人の子供が法定相続人であり、配偶者も相続権を持つ場合、配偶者は遺産の2分の1を、子供たちは残りの2分の1を平等に2分することとなり、それぞれが4分の1の相続分を受け取ります。
このように、子供たちの間には、年齢や性別、出生の順番などによる相続順位の違いは存在せず、兄弟姉妹全員が平等に相続することができます。
子供が死亡している場合は孫が相続人になる
被相続人が死亡した際、もし彼らの子供がすでに亡くなっているが孫が生存している場合、孫が法的に相続人としての立場を継ぐことができます。この仕組みを「代襲相続」と呼びます。
代襲相続とは、本来相続権を持つ者(この場合、子供)が被相続人の死亡時点で既に死亡しているか、またはその他の理由で相続人となれない場合に、その次の世代(この場合、孫)が代わりに相続人となる制度を指します。
孫も亡くなっている場合は孫の子供(ひ孫)が代わりに法定相続人になります。
親の相続順位は第二順位│子供がいない場合相続人となる
相続における順位で、最も優先されるのは直系卑属、つまり子供たちです。しかし、被相続人の子供がいない、すなわち第1順位の法定相続人が存在しない場合、親が次の法定相続人として遺産を相続することとなります(民法889条に基づく)。
もし被相続人の両親が共に生存していれば、遺産は二人の親に分かれます。一方、片方の親だけが生きている場合は、その親が全ての遺産を受け取ります。また、親が以前離婚していたとしても、相続に関してはそれが影響することはありません。
親が死亡している場合は祖父母
さらに、被相続人の両親が共に亡くなっている場合、次の順位である祖父母が相続人となります。もし祖父母も亡くなっている場合は、さらに上の世代、すなわち曾祖父母が相続権を相続人として遺産を相続することになります。
兄弟姉妹の相続順位は第三順位│兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪
被相続人の子供や親が存在しない場合、遺産の相続は第3順位の法定相続人である兄弟姉妹に移ることとなります。この際、兄弟姉妹の中で既に亡くなっている人がいれば、その兄弟姉妹の子供である甥や姪が相続人としての立場を継ぎます。
相続順位別の相続割合│事例でわかりやすく解説
法定相続人が誰であるかを特定した後、次にそれぞれの相続人がどれくらいの割合で遺産を受け取ることができるかを把握する必要があります。
この遺産を受け取る割合は「法定相続分」として民法(特に民法第900・901条)で明示されています。法定相続分は相続人の種別やその関係によって変わります。
配偶者がいる場合の相続順位と相続割合について下の表にまとめました。
表内の数字は、同一順位の法定相続人全員の合計割合を示しています。もし同一順位の相続人が複数人存在する場合、遺産の分割はその人数に応じて等分されます。
相続順位 |
相続人の状況 |
各相続人の法定相続分 |
第一順位 |
配偶者と子供 |
配偶者:2分の1 子:2分の1(複数人いれば均等に分ける) |
第二順位 |
配偶者と親 |
配偶者:3分の2 親:3分の1(複数人いれば均等に分ける) |
第三順位 |
配偶者と兄弟姉妹 |
配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1(複数人いれば均等に分ける) |
相続順位別の法定相続分を事例で解説
- 配偶者が死亡している場合
- 子供がいないが親が生きている場合
- 子供がいないが兄弟姉妹がいる場合
- 子の一人が既に死亡している場合
①配偶者が死亡している場合
配偶者がいない場合の相続割合は、相続人の人数に応じて等分されます。すなわち、同順位の相続人全員が同じ割合で遺産を受け取ることになります。
例えば、被相続人(父)が亡くなった場合、3人の子供(長男、次男、三男)が相続人となります。この場合、長男、次男、三男はそれぞれ遺産の1/3を相続することになります。
②子供がいないが親が生きている場合
夫婦に子供がおらず、親が生きている場合、配偶者が遺産の2/3を相続し、残りの部分は夫の親に等分されます。
被相続人(夫)が亡くなった場合、生存している配偶者(妻)と夫の親(夫の父、夫の母)が相続人となります。
この場合の法定相続分は以下のようになります。
- 妻(配偶者):2/3
- 夫の父:1/3×1/2=1/8
- 夫の母:1/3×1/2=1/8
③子供がいないが兄弟姉妹がいる場合
子供がおらず、兄弟姉妹が生きている場合、配偶者が遺産の3/4を相続し、残りの部分は被相続人の兄弟姉妹に等分されます。
例えば、被相続人(妻)が亡くなった場合、生存している配偶者(夫)と妻の兄弟姉妹(妻の兄、妻の姉)が相続人となります。
この場合の法定相続分は以下のようになります。
- 夫(配偶者):3/4
- 妻の兄:1/4×1/2=1/8妻の姉:1/4×1/2=1/8
④子の一人が既に死亡している場合
被相続人(父)が亡くなった場合、配偶者、2人の子供(例:長男、次男)、死亡した子供(例:三男)の孫2人(例:三男の息子、三男の娘)が相続人となります。
この場合の法定相続分は以下のようになります。
- 父(配偶者):1/2
- 長男:1/2×1/3=1/6
- 次男:1/2×1/3=1/6
- 三男の息子(孫):1/6×1/2=1/12
- 三男の娘(孫):1/6×1/2=1/12
この例では、三男はすでに死亡しているため、その相続分は三男の子供たち(孫2人)に等分され、それぞれが1/12を受け継ぎます。
法定相続分については、下記記事でも詳しく解説しております。あわせて参照ください。
「法定相続分とは?│法定の相続割合と計算方法を事例で解説します!」
相続順位に関するQ&A
Q:離婚した配偶者は相続順位に含まれるのでしょうか?
A:離婚した場合、その配偶者は法定相続人から除外されます。従って、離婚している配偶者には相続権がありません。
Q:養子には実子と同じ相続順位が適用されるのでしょうか?
A:はい、養子は実子と同様に第1順位の相続人として取り扱われます。ただし、養子縁組の詳細や状況によっては異なる場合もあるため、具体的なケースをもとに専門家への相談がおすすめです。
Q:遺言書によって相続順位を変更することはできますか?
A:遺言書によって、特定の人物への遺産の分配割合を指定することは可能です。ただし、遺留分を尊重する必要があるため、遺言によって遺留分を下回る割合での相続が定められていた場合でも、相続人はその遺留分を請求することができます。遺留分とは、特定の相続人が法律で保障される最低限の相続分のことを指します。
Q:相続放棄をすると、相続順位はどう変わるのでしょうか?
A:相続放棄をすると、その放棄した相続人は初めからいなかったものとされます。従って、次の順位の相続人が相続の対象となります。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われるため、代襲相続は発生しません。つまり、相続放棄をした子供に子供(孫)がいたとしても、孫が代わりに法定相続人になることができません。
まとめ
相続とは、亡くなった方の財産を誰にどうやって引き継ぐかを決めることです。遺言書がない場合は、法律で定められた「相続順位」や「法定相続分」に従って遺産を分けます。
遺言書がある場合は、その内容が優先されます。遺言書では、法定の相続順位や分割とは異なる配分をすることもできます。ただし、遺言書には法律上の要件がありますので、注意が必要です。
遺産を円滑に相続するためには、相続順位や法定相続分、そして遺言の有無や内容を正しく理解し、適切な手続きを進めることが不可欠です。
相続は複雑な問題です。適切に相続するためには、まず遺産の内容や価値を把握し、相続人や遺言書の有無の確認などをする必要があります。
相続順位や法定相続分、遺言書などを正しく理解しておくことで、後で家族や親族間でのトラブルを避けることができます。
相続に関する疑問や不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめいたします。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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