相続順位を徹底解説!子供や兄弟など相続人の順位を弁護士が図解

法定相続人

更新日 2024.11.11

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

ほとんどの人が、人生において一度は相続を経験するのではないでしょうか。

ですが、実際に相続の手続きはどのように行われ、どういったルールがあるかなど、相続の当事者が知っておくべき事に関しては、あまり一般的に知られていません。

「相続順位」も、そうした相続の当事者が知っておくべき事の一つです。

相続順位とは、遺産を相続する際に誰がどの順番で相続権を持つかを定めたルールです。遺産を残した人(被相続人)が遺言を残していない場合や、遺言はあるものの不備があって無効である場合などに、法律に決められたルールに基づいて、相続人が決まります。

遺産相続においては、相続人の間でも明確な優先順位が存在し、それに従って遺産が公平に分割されることになるのです。

そこでこの記事では、相続順位とは何か、というテーマで弁護士が詳しく解説させていただきます。相続順位のルールがあることによって、相続人がどのように決まるのか、そしてそれが遺産相続にどう影響するのかについて、具体的に見ていきましょう。

目次

相続順位とは?遺産相続には優先順位がある

それではさっそく、相続順位とは何かについて、見ていきましょう。

相続順位とは法定相続人になる順番のこと

ある人が亡くなった際に、その人の財産を次の世代や遺族が引き継ぐことを相続といいます。

この相続において、財産を引き継がれる側である亡くなった人のことを「被相続人」といい、対して被相続人の遺産を引き継ぐ人のことを「相続人」といいます。

さて、本記事のテーマの「相続順位」とは、被相続人の財産を相続する権利を持つ相続人は誰か。ということについて、民法に定められた優先順位のことを指します。この優先順位によって遺産を相続する権利を持つことになる人を、「法定相続人」と呼びます。

民法によって相続順位が定められている法定相続人は、以下の2つのグループに分けられます。

  1. 配偶者:被相続人の配偶者は、常に法定相続人としての権利を持ちます。
  2. 血族相続人:血の繋がりに基づいて相続の順位が決まります。

血族相続人というと分かりにくいかもしれませんが、もう少し詳しくいいますと、次の通りとなります。

  • 第1順位の血族相続人:子供や、子供が既に亡くなっている場合は孫やひ孫
  • 第2順位の血族相続人:両親や、両親が既に亡くなっている場合は祖父母
  • 第3順位の血族相続人:兄弟姉妹や、兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は姪や甥

もし第1順位の相続人がいない場合、次の順位の相続人が遺産を受け継ぐ資格を持つこととなります。また、自分より順位の高い人がいる場合は、法定相続人になれません。

法定相続人を確定させなければ、相続割合も確定できず、その後の遺産分割の手続きを進めていけません。そのため、相続順位について正しく理解しておくことが、相続においては非常に重要なのです。

相続順位にあてはまらない人は絶対に相続できないの?

相続順位によって法定相続人が確定し、相続手続きが進められるわけですが、「内縁の妻にも遺産を遺してやりたい。」「生前よく世話になった親友に思い入れのある財産を分けたい。」など、法定相続人にあてはまらない人に遺産を遺したい場合もあるかと思います。

「相続人について法律で決まっているなら、血族でもない友人に遺産分割なんて無理じゃないか。」と思う人もいるかもしれません。ですが、被相続人が遺言を作成している場合は、民法の相続順位に含まれない人に対しても遺産を相続させることができます。

もし、法定相続人以外の人に遺産を相続させたい場合、遺言書を作成して、その意思をはっきりと示す必要があります。これを「遺贈」といいます。遺贈は、法律上の問題がなければ、遺言という被相続人の意思に基づく遺産分割ですので、被相続人の意思が反映されない法定相続よりも優先されることになります。

法定相続人については、下記記事により詳しい解説を掲載しておりますので、ぜひご一読いただければと思います。

相続人の順位はどのように決まっている?

さて、相続人の相続順位に関してですが、民法第887条以下に、次の通り定められています。

(子及びその代襲者等の相続権)
民法第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

(配偶者の相続権)
民法第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

民法第887条と第889条に定められた内容が、前述した「血族相続人」の相続順位についてのルールです。そして、民法第890条に定められている内容が、「配偶者は常に相続人となる」というルールになります。

したがって、具体的な相続順位としては、まず亡くなった人の配偶者が最も優先され、常に法定相続人となります。配偶者を除けば、子供や孫などの直系卑属が最優先順位者となり、その後は親や祖父母などの直系尊属が、そして最後に兄弟姉妹が法定相続人となります。この民法に定められた相続順位に従って、法定相続人と、その法定相続人が相続できる遺産の割合が確定されることになるのです。

それでは、この相続順位の内容を、もう少し詳しく見ていきましょう。

配偶者は常に法定相続人になる

被相続人の配偶者は、民法第890条によって、他の法定相続人の有無に関係なく、常に法定相続人になることが認められています。これは、他の相続人の存在や順位に関わらず一貫して適用されるもので、血族相続人とは異なり、相続順位による制約を受けません。このため、配偶者は相続において非常に優位な立場に置かれると言えます。

配偶者とは「法律上の婚姻関係にある人」だけ!

しかし、この優位性が認められるための前提として、被相続人との間に法律上の婚姻関係が存在する必要があります。具体的には、被相続人が死亡して相続開始時に、戸籍に夫婦として正式に記載されている状態でなければなりません。

そのため、事実婚や内縁関係の場合、その関係は法的には配偶者として認められませんから、法定相続人としての権利はないのです。

このような事実婚や内縁関係のパートナーに財産を残したいと考える場合は、遺言書を作成し、明確にその意志を示すことが必要です。遺言書を通じて、法定相続人でない人にも財産を遺すことができるため、意向が正確に反映されるよう手続きをとることが大切です。

配偶者ひとりだけが相続人の場合は全てを相続することになります

配偶者ひとりだけが相続人の場合、民法によりその配偶者は被相続人の遺産全てを相続する権利を持ちます。つまり、他の法定相続人がいない状況で、配偶者だけが相続権を持つ場合、その配偶者は亡くなった方の持っていた財産や権利を全て引き継ぐことができます。

では、配偶者の他の「血族相続人」は、配偶者のように独立して常に法定相続人になれるわけではありません。血族相続人の相続順位について、まずは第一順位者の直系卑属から見ていきましょう。

子供の相続順位は第一順位

被相続人の子供は、最も高い第一順位の相続順位者です(民法887条)。

とはいえ、被相続人との子供が必ず法定相続人として認められる子供にあたるわけではありません。子供が第一順位の法定相続人として認められるためには、被相続人との法的な親子関係が求められます。具体的には、以下の通りです。

法定相続人として認められる子供

  • 法律上の夫婦の子供(夫婦が後に離婚した場合も、法的親子関係は維持されます)。
  • 生物学的親が法的に子供との関係を認めた場合(認知されている子供)。
  • 正式な養子縁組の手続きを経て養子となった子供。

法定相続人として認められない子供

  • 法律上の結婚をしていない夫婦の子供で、かつ認知されていない子供。
  • 再婚した相手の連れてきた子供で、養子縁組をしていない場合。
法定相続人となるには、子供と被相続人との間に法的な親子の関係が明確に存在している必要があります。

子供同士の間に相続順位はあるの?

第一順位の子供が複数いた場合、その子供同士の間で優先順位はあるのでしょうか。

この点に関し、子供同士の間での相続順位は定められていません。したがって、子供が複数いる場合は、被相続人の遺産を平等に分け合うこととなります。

例えば、子供2人と配偶者の計3人が法定相続人の場合、まず配偶者は遺産の2分の1を受け取ります(民法第900条1号)。子供は、残りの2分の1の遺産を2人で平等に分け合うことになるため、それぞれが4分の1ずつ遺産を受け取ります。

このように、同じ相続順位者の間には、年齢や性別、出生の順番などによる相続順位の優劣はありません。そのため、子供全員が平等に相続することができるのです。

 

 

ただし、被相続人が生前に遺言書を作成していた場合は、その遺言書に従って遺産の分配が行われます。遺言書は被相続人の意思を明示的に表現した文書で、その内容が法的な制約に反しない限り、遺言書に従った遺産の分割が優先されます。このため、遺言書を利用して子供たちの間での相続の比率を変えることも可能です。

子供が死亡している場合は孫が相続人になる

被相続人が死亡した際、被相続人の子供が生きていれば子供が第一順位の法定相続人ですが、子供がすでに亡くなっている場合もあります。そうしたときには、被相続人の孫が被相続人の子供(孫にとっての親)の相続権を引き継ぎ、第一順位の法定相続人になることになります。この仕組みを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼びます。

代襲相続とは、本来相続人となるべき者が相続の開始時にすでに死亡している場合などに、その者の子供が代わりに相続する制度を指します。これにより、相続権を持つべき者が亡くなっている場合でも、その血統に基づいた相続が可能となり、次世代の相続人に権利が引き継がれることになるのです。

子供や孫などの、相続順位第一順位の直系卑属の場合、孫が亡くなっていれば、さらにその子供(被相続人にとってのひ孫)が代わりに法定相続人になることができます。

親の相続順位は第二順位

相続順位で、最も優先され第一順位となるのは直系卑属、つまり子供や孫です。ですが、常に被相続人に子供や孫がいるとは限りません。被相続人より先に子供が亡くなった場合や、被相続人が未婚のまま亡くなる場合もあるでしょう。

そのような、第一順位の法定相続人が存在しない場合、第二順位者として法定相続人になるのは、被相続人の親や祖父母といった直系尊属です(民法第889条)。

そして、同じ相続順位者の間に相続順位の優劣はありませんから、被相続人の父親と母親の2人が存命の場合は、父親と母親が平等に遺産を分け合うことになります。ちなみに、この場合、配偶者が生きていれば配偶者が遺産の3分の2を相続し、父親と母親が残った3分の1を2人で分け合うため、父母それぞれの相続分は6分の1となります(民法第900条2号)。

なお、被相続人の両親がすでに亡くなっている場合は、両親にとっての親である、被相続人の祖父母が法定相続人となります。もし祖父母も亡くなっている場合は、さらに上の世代、すなわち曾祖父母が法定相続人となります。

兄弟姉妹の相続順位は第三順位

相続開始時に被相続人の子供や親が存在しない場合、第一順位者と第二順位者の法定相続人がいないことになるため、第三順位者である兄弟姉妹が法定相続人となることになります。この際、兄弟姉妹の中で既に亡くなっている人がいれば、その兄弟姉妹の子供である甥や姪が、代襲相続によって法定相続人としての立場を継ぎます。

ただし、兄弟姉妹の代襲相続は、被相続人の子供(直系卑属)の代襲相続の場合と異なります。直系卑属の場合は、孫が亡くなればひ孫が代襲相続によって法定相続人となりますが、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までしか認められません。したがって、甥や姪もいなければ、第三順位者の法定相続人はいない、ということになります。これは、第一順位者である直系卑属と被相続人の親密性と比べ、甥や姪を超える遠い親族は、法定相続人になるほど被相続人と近しくはない、と考えられるためです。

兄弟姉妹間にも優劣はないため、被相続人の配偶者の相続分4分の3の残りである4分の1を、兄弟姉妹の人数で均等に分け合うことになります(民法第900条3号)。例えば3人兄弟の場合、4分の1を3等分するため、兄弟姉妹それぞれの相続分は12分の1ずつとなります。

 

相続順位に関するQ&A

Q:相続順位とは何ですか?

A:相続順位とは、遺産を相続する際に、誰が優先的に相続権を持つかを定めた法的なルールです。配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人としては、子供(第一順位)、両親や祖父母などの直系尊属(第二順位)、兄弟姉妹(第三順位)がいます。上位の相続人が存在する場合、下位の相続人には相続権が発生しません。

Q:養子には実子と同じ相続順位が適用されるのでしょうか?

A:はい、養子は実子と同様に、第一順位の法定相続人として取り扱われます。ただし、養子縁組の詳細や状況によっては異なる場合もあるため、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

Q:相続放棄をすると、相続順位はどう変わるのでしょうか?

A:相続放棄をすると、その放棄した相続人は初めからいなかったものとされます。従って、次の順位の相続人が相続の対象となります。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われるため、代襲相続は発生しません。つまり、相続放棄をした子供に子供(被相続人にとっての孫)がいたとしても、孫が代襲相続をして法定相続人になることはできません。

まとめ

相続順位は、遺産相続において誰が優先的に相続権を持つかを決定する重要な要素です。法律で定められた相続順位に従い、被相続人の直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹が順次、法定相続人となります。

また、代襲相続の制度により、相続開始前に亡くなった法定相続人の子供が権利を引き継ぐこともあります。

この記事では、そうした相続の重要な前提となる相続順位について、弁護士がわかりやすく解説をさせていただきました。

スムーズに遺産相続を進めていくためには、この記事でご説明した相続順位についての正しい知識を持っておき、各相続人の権利や立場をしっかりと確認することが重要です。疑問や不安があるときには、ひとりで悩まず、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

相続は非常にデリケートで、法的手続きに加えて感情的な問題も絡むことが多いため、適切に進めるには冷静かつ正確な判断が必要です。専門的な知識を持たないまま進行させてしまうと、法的な手続きの不備や相続人同士のトラブルに発展しかねません。

弁護士に依頼することで、相続順位に基づいた遺産分割の手続きを法的に適切に行うだけでなく、相続人同士の円滑なコミュニケーションを図ることも期待できます。

相続問題を早期に解決し、スムーズに相続を完了させるためにも、ぜひ一度専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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