兄弟姉妹が遺産相続する場合とは?│トラブルとなる事例も解説!

法定相続人

更新日 2024.10.18

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺産相続の際、最も頭を悩ませるのが相続財産の分配です。特に、「兄弟姉妹」の遺産相続は、さまざまな問題や誤解が生まれる場面も少なくありません。
兄弟姉妹は必ず相続人となるわけではありません。具体的には、被相続人に子がおらず、両親などがすでに他界している状況でのみ、兄弟姉妹が相続人となるのです。

本記事では、兄弟姉妹がどのような状況で相続人となるのか、そしてどのような割合で遺産を受け取るのかを、図を用いて詳しく説明します。
さらに、遺産相続の過程で兄弟姉妹間で生じる可能性のあるトラブルやその回避方法についても詳しく触れていきます。

遺産相続は感情的な要素が強く絡むため、知識を身につけ、事前の準備や理解を深めることが重要です。将来のトラブルを防ぐ手助けになれば幸いです。

目次

兄弟姉妹で遺産相続をする場合とは?

遺産相続は、家族間でのトラブルの原因となることが多々あります。特に兄弟姉妹間での相続は、関係性や状況により、さらに複雑になることがあります。ここでは、相続における「兄弟姉妹」の定義と、それに関連する2つのパターンについて解説します。

パターン①親の死亡とその子である兄弟姉妹による遺産相続

このケースでは、親が死亡した際に、親の子供である兄弟姉妹が遺産を相続します。例えば、親が遺言を残していない場合、遺産は親の子供たち、すなわち兄弟姉妹間で平等に相続されることが多いです。

パターン②兄弟姉妹の死亡と残りの兄弟姉妹による遺産相続

一方で、ある兄弟が死亡した場合、その兄弟の遺産は残りの兄弟姉妹が相続することがあります。ただし、最も優先される相続人は、亡くなった兄弟の直接の家族、すなわち配偶者や子供となります。被相続人に子供と両親がいない場合、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

この場合、配偶者の相続分は4分の3となり、残りの4分の1を兄弟姉妹の数で均等に割った割合が、兄弟姉妹の相続分となります(民法第900条3号)。わかりやすく図でイメージしますと、こうなります。

 

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

 

 

 

 

被相続人に配偶者がいない場合は兄弟姉妹だけで相続

 

このケースでは、配偶者や子供がいない場合、あるいは遺言で他の相続人が指定されていない場合のみ、遺産は残る兄弟姉妹間で相続されることとなります。

民法において規定されている「兄弟姉妹」は②の場合を指します。
実際、被相続人の兄弟姉妹が遺産相続する場面が多く、どのような権利があるのか、起こりうるトラブルの事例や争いを避けるための対応策などを理解することは非常に重要です。
この記事では、被相続人の兄弟姉妹が遺産相続する場合についてを主に解説していきたいと思います。

相続権があるのは子や親がいない場合のみ

次に、被相続人の兄弟姉妹に相続権があるのかについて解説いたします。

相続人の範囲と順位│兄弟姉妹は第三順位

被相続人の遺産を取得する権利があるのは、法定相続人に該当する人です。

法定相続人は民法で規定されており、被相続人との続柄に応じて次のように相続順位が定められています。

常に相続人

配偶者

第一順位

子や孫など直系卑属

第二順位

親や祖父母など直系尊属

第三順位

兄弟姉妹

被相続人の配偶者は、他の家族や親族がいても、常に法定相続人となります。
相続の際、配偶者とみなされるのは、法的な婚姻状態にある人だけです。事実婚の配偶者や前の配偶者(離婚後)は法定相続人にはなれません。
そして、配偶者を除く親族が法定相続人として認められる際の順番は、被相続人の子供、そして親、兄弟姉妹の順になります。
もし高い順位の相続人が存在する場合、順位が低い相続人は基本的に法定相続人として認められません。

この理由から、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる状況は、相続時に被相続人の子や父母が存在しない場合に限られるのです。
また、もし法定相続人が相続前に死亡していても、その法定相続人に子供が存在する場合、その子供が相続人としての地位を継承することが認められます。
つまり、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人であるが、その兄弟姉妹が相続前に死亡していた場合、その兄弟姉妹の子供(被相続人の甥や姪)が法定相続人の地位を引き継ぎます。

 

 

 

兄弟姉妹が遺産相続する場合の注意点

死亡した場合の代襲相続は一代のみ

代襲相続」という仕組みが存在します。これは、相続人である兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その兄弟姉妹の子供、つまり甥や姪が、その亡くなった兄弟姉妹の代わりに財産を相続するというものです。しかし、もしもその甥や姪も既に亡くなっていた場合、次の世代、つまり甥や姪の子供まで再代襲されることはありません。

相続税が2割加算される

相続税とは、財産を受け継ぐ際にかかる税金のことを指します。この税金には特定の条件下で増額される場合があり、その一つが「相続税額の2割加算」という制度です。この制度により、相続人が配偶者や子供、親ではない場合、つまりそれらの親族以外の人が相続人になる場合、相続税の金額が通常よりも2割増加します。
兄弟姉妹が相続人として財産を受け継ぐ場合、このルールが適用されます。具体的には、兄弟は配偶者・子供・親以外の関係に当たるため、相続税の金額が通常の金額に比べて2割多くなるのです。

 

 

兄弟姉妹の遺産相続で起こるトラブル│もめる要因と対処方法

兄弟が遺産相続手続きを進めるときには、相続争いのトラブルが起こりがちです。嫌がらせのような不利な条件を押しつけられて、「このまま条件を受け入れるしかないのか」とお悩みの方もいるでしょう。
相続が起きた時、どのようなケースがトラブルになるのかを知っておくことで、相続争いを防ぐことができます。以下に主なトラブルの例を挙げました。

勝手に遺産を相続(処分)していた

遺産相続において、兄弟姉妹の中の一人が独断で遺産の処分や手続きを進めてしまうと、これは深刻なトラブルの要因となります。
特に、不動産の処分については、価値が高い上に形のある財産のため、その取り扱いには特に注意が必要です。一人の相続人が合意なしに不動産を売却したり、他者に譲渡した場合、他の相続人はその取引を無効とするための法的手続きをとることができます。このような行動は信頼関係の破綻を引き起こし、相続人間の対立をさらに激化させるリスクがあります。

さらに、預貯金に関しても、一人が独断で引き出す行為は、他の相続人との間でのトラブルの原因となります。特に、引き出されたお金の使途や分配が不透明な場合、他の相続人は取り分を侵害されていると感じ、不当利得返還請求権を主張するなど、その相続人と争うことになります。

話し合いに応じてくれない、または絶縁状態

相続に関する手続きや遺産の分割は、法定相続人の間での合意が非常に重要です。特に、被相続人が遺言を残していない場合、法定相続人すべてが協力して遺産分割協議を進める必要があります。この遺産分割協議は、相続人全員で遺産をどう分けるかについての話し合いを行い、すべての相続人が合意した上で、遺産の分割方法を決定するものです。

しかし、兄弟姉妹間での関係が良好でない、あるいは絶縁状態である場合、この遺産分割協議が難航することが多いです。話し合いに応じない兄弟や、自らの相続分を強く主張する兄弟がいると、遺産分割協議は成立しづらくなり、相続手続き全体が停滞するリスクが高まります。特に、被相続人が特定の相続人(例えば配偶者)に遺産を渡したい意向があったとしても、その意向を反映させるためには遺言が必要であり、遺言がなければその意向を実現するのは困難となります。

一人が相続放棄をしていた

相続において、兄弟姉妹のうち一人が相続放棄をする場合、これがトラブルの要因となることが考えられます。相続放棄は、個人の権利として任意で選択することが可能であり、その手続きは単独で進行できます。さらに、他の相続人から許可を得る義務もありません。しかし、この独自の判断が、後で他の相続人の反発を招く原因となることがあるのです。

相続放棄の結果、その放棄した遺産の相続が他の相続人に集中することになり、これが不満やトラブルの元となります。特に、放棄した結果、相続権が亡くなった人の甥や姪などの代襲相続人に移る場合、この代襲相続人が「なぜ突然、相続の対象となったのか」と困惑する可能性が高まります。彼らは、それまでその土地や資産に縁もゆかりもなかったのに、突如としてその責任や義務を負うことになるため、不満を感じることが考えられます。

遺産のほとんどが土地などの不動産

遺産相続において、相続財産の大部分が不動産で占められる場合、これが兄弟姉妹間のトラブルの要因となることがしばしばあります。
遺産としての現金や証券などの資産は、その特性上、兄弟姉妹間で分割が容易です。そのため、これらの資産に関する相続に際しては、紛争が起こりにくい傾向にあります。しかしながら、自宅や土地などの不動産は、その性質上、現物のまま等分にすることが難しいのです。

特に、財産の大部分が自宅のような不動産で構成され、さらに預貯金などの資産が少ない場合、遺産の価値を平等に分けるためには、その不動産を売却する必要が出てきます。しかし、売却を希望する相続人と、そのまま保有したいと考える相続人との間で意見が分かれることが珍しくありません。家や土地には、感情的な価値や家族の歴史が詰まっているため、単なる金銭的価値以上のものを持っていることも少なくありません。

このような背景から、不動産が遺産の主体となる場合、兄弟姉妹間での意見対立が生じやすく、これが相続におけるトラブルの原因となるのです。

遺産相続の争いを回避するための方法

事前に話し合いをしておく

相続に関しては、事前に家族や兄弟姉妹との話し合いを積極的に行うことがトラブルを防ぐ第一歩となります。兄弟姉妹間でよく話し合っておくことで、それぞれの希望、懸念事項を共有し、相続時の摩擦を未然に防ぐことができます。

特に不動産や大きな財産の相続については、多くの場合、意見や考え方が異なることが想定されます。こうした財産をどのように分割・管理するか、売却するかどうかなど、具体的な取り決めを事前に行うことで、相続時に突然のトラブルや対立が発生するリスクを減らすことができます。
話し合いの中で生じる意見の対立は、中立的な第三者や専門家の意見を取り入れることで、平穏に解決する場合もあります。

遺言書で遺産分割の方法を指定しておく

遺言書は、相続に関する意向を文書として明記する手段です。具体的に誰にどの財産をどのくらい渡すのかを指定することで、相続時の争いや不明確な部分を解消し、トラブルを防ぐことができます。特に不動産の相続では、遺産分割の方法を遺言書で指定することが推奨されます。

配偶者と兄弟が相続人となる場面で、相続争いが予測される場合、遺言書で「全財産を配偶者に相続させる」との指定も一つの方法として考えられます。兄弟姉妹には遺留分の請求する権利が存在しないため、遺留分の制度を気にせず、スムーズに相続問題に対処することが可能です。遺言書の作成には専門家のアドバイスを受けることを推奨いたします。

 

兄弟姉妹の遺産相続に関するQ&A

Q1: 親が亡くなった後、兄弟姉妹間で遺産の分け方についての合意ができない場合、どうしたらいいですか?

A1: まず、遺言書が残されているかどうかを確認してください。遺言書があれば、その内容に従って分割します。遺言書がない場合や内容が不明確な場合、中立的な第三者(例:弁護士や調停員)の介入を求めて、話し合いの場を設けるのが良いでしょう。必要に応じて家庭裁判所の調停を申し立てることも考えられます。

Q2: 相続を放棄するとはどういうことですか?兄弟姉妹の中で一部の人が放棄する場合、相続の進行にどのような影響がありますか?

A2: 相続放棄とは、相続権を行使しないことを選択する手続きのことを指します。兄弟姉妹の中で一部の人が相続を放棄する場合、放棄した兄弟姉妹の相続分は他の相続人に按分されることとなります。

Q3: 養子として迎えた子供は、実の兄弟姉妹と同じく遺産相続の対象となりますか?

A3: はい、養子は法律上、実の子と同じように相続の対象となります。養子縁組後、養子としての地位にある者は、養親との間で同じ相続の権利と義務を有します。

Q4: 遺留分とは何ですか?兄弟姉妹にも遺留分の権利がありますか?

A4: 遺留分とは、法律で保障されている相続人が受け取るべき最低限の財産の割合を指すものです。しかし、兄弟姉妹には遺留分を請求する権利は存在しません。遺留分の権利は配偶者や子にのみ認められています。

まとめ

兄弟姉妹間での遺産の配分や相続割合の取り決めは、長年の家族の絆や亀裂、それぞれの生活状況や感情が絡み合い、トラブルの原因となる要素が数多く存在します。
この記事を通して、法定相続人としての兄弟姉妹の役割や相続割合、そして遺産相続でのトラブルや相続争いを防ぐためのポイントをお伝えしました。

実際に相続の手続きを進める際は、明確な遺言の存在や、予め兄弟姉妹間での話し合いが大切です。そして、もしも疑問点や不明点が生じた場合、適切な法的アドバイスを求めることが重要となります。
誤解や不明確な部分があると、家族間の争いの原因となることもあるため、しっかりとした知識と理解を持ち、適切な対応をすることが求められます。

もしご自身での解決が難しい場合、または相続に関する詳しいアドバイスやサポートが必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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