直系尊属【完全解説】直系尊属とは?傍系・直系卑属・直系血族や親族との違いも解説!

法定相続人

更新日 2025.07.18

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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「直系尊属」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

遺産相続の手続きを進める中で目にすることの多い言葉ですが、実際に「直系尊属」という言葉の意味や、具体的な範囲について正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。

相続では、直系尊属のほかにも、「直系卑属」や「傍系血族」といった似たような言葉が数多く出てくるため、そうした言葉との違いについても正しく把握しておくことが大切です。

そこでこの記事では、直系尊属の概念と、直系尊属の遺産相続について、弁護士が詳しく解説させていただきます。

また、直系尊属と密接に関連する直系卑属、傍系、血族、姻族といった言葉についても掘り下げて解説いたします。

ぜひこの機会に、親族関係に関する理解を深めていただければと思います。

目次

直系尊属

直系尊属、という言葉を目にすると、なんとなく難しい印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、直系尊属がどの範囲の親族を指すのかを正しく理解すると、遺産相続や贈与、各種手続きの際に迷うことがなくなり、スムーズに進められます。

まずは、直系尊属とはどういった意味なのか確認していきましょう。

直系尊属とは

直系尊属(ちょっけいそんぞく)とは自分より前の世代にあたる直接の血縁関係にある直系の親族、すなわち父母や祖父母などを指します。
直系尊属には血縁だけでなく、法律上の親として認められる養父母も含まれます。

 

直系尊属・傍系卑属の家系図

概要は以上の通りとなりますが、以下では単語を分解して、それぞれについてより詳しく見ておきましょう。

(1)直系とは

そもそも「直系」とはどういう意味なのでしょうか。

直系とは、文字通り、血筋が一直線上につながる親族のことを指します。つまり、直接的な親子関係が存在する親族です。自分から見て父母や祖父母、子供や孫が直系の親族に該当します。

ここでひとつ注意が必要なのは、血のつながりがない場合でも、法的に親子関係が認められる養子と養親は、「直系」に含まれるということです。養子縁組によって法的に親子関係が成立するため、実際には血縁がなくても直系の親族として扱われます。

直系親族の範囲
自分より上の世代:父母、養父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など
自分より下の世代:子供、養子、孫、ひ孫、玄孫など

(2)傍系とは

さて、直系と対照的な系統が「傍系(ぼうけい)」になります。

傍系とは、共通の祖先から分かれた系統の親族を指します。傍系には、兄弟姉妹や甥姪、いとこなど、父母や祖父母を共通の祖先として横に枝分かれした親族が含まれます。

つまり、「共通の祖先から枝分かれした系統」を傍系といい、直系以外の親族は傍系となるわけです。

最も身近な傍系親族の例は、自分の兄弟姉妹です。自分の子孫ではないものの、両親という共通の祖先を持っています。また、自分の祖先の兄弟姉妹(例えば祖父母の兄弟姉妹)も、傍系親族に含まれます。同様に、祖先の兄弟姉妹の子孫も傍系です。

このように、共通の祖先を持ちながらも直接の子孫ではない親族は、すべて傍系となります。

傍系:兄弟姉妹、叔父叔母、従兄弟従姉妹、甥姪など

(3)尊属とは

直系尊属の「尊属」は、直系や傍系といった言葉よりも馴染みがないかもしれません。

「尊属」とは、親族関係において自分よりも上の世代に属する血族を指します。具体的には、自分の父母や祖父母、さらに遡ると、曾祖父母などが尊属に該当します。

尊属の「尊」という文字には「敬う」「尊ぶ」という意味があります。
余談ですが、かつては日本の法律において、尊属に対する犯罪行為(尊属殺人罪など)を特別に重く処罰する規定が設けられていたこともありました(現在は廃止されています)。

(4)直系尊属とは

上で解説した「直系」と「尊属」を合わせて、「直系尊属」といいます。

つまり、「直系尊属」とは、自分と直接の血縁関係にある親族であり、かつ上の世代の親族のことを指します。家系図で見ると、直系尊属にあたる親族は縦のライン上で、自分より上に位置する親族になります。

配偶者の父母や祖父母(義父母、義祖父母)は、直系尊属には含まれません。これらの親族は、配偶者との婚姻によって生じた「姻族」という関係になり、血縁関係の直系尊属とは異なります。姻族については以下で解説しておりますので、このまま読み進めていただければと思います。

卑属・血族・姻族・親族とは

(1)直系卑属とは:自分の下の世代の血族

「尊属」に対して、「卑属(ひぞく)」という言葉もあります。卑属は尊属の逆で、自分よりも下の世代に属する血族を指します。これには自分の子供や孫、甥姪、さらにその子供である曾孫などが含まれます。

つまり、「直系卑属」とは、自分と直接の血縁関係にある親族であり、かつ下の世代の親族を指します。家系図でみると、直系卑属にあたる親族は縦のライン上で、自分より下に位置する親族です。

尊属と卑属の範囲
尊属:父母、叔父・叔母、祖父母、大叔父・大叔母、曽祖父母など
卑属:子、孫、甥姪、ひ孫、大甥・大姪など

(2)直系血族とは:直系尊属と直系卑属

血族とは、血縁関係にある全ての人を指します。

血族には「自然血族」と「法定血族」の二つがあります。自然血族とは、生物学的な血のつながりを持つ人を指し、法定血族は、本来は血縁がないものの、法律上血縁がある認められた人々、例えば養子縁組を結んだ場合の親子関係を意味します。

そして、血族の中でも、直系尊属と直系卑属を合わせた血族のことを「直系血族」といいます。自分より上の世代と下の世代の両方を含む血族、という意味です。

(3)直系姻族とは:配偶者の父母など

「姻族」とは、婚姻(結婚)によって親族関係になった人のことを指します。

そして、直系姻族とは、自分の直系血族と婚姻関係にある人や、自分の配偶者の直系血族の配偶者のことをいいます。

具体的には、「自分の直系血族と婚姻関係にある人」は「自分の息子の妻」や「自分の親娘の夫」などのことで、「自分の配偶者の直系血族の配偶者」とは「配偶者の父母や祖父母」などのことです。

姻族関係は婚姻によって成立するため、配偶者との離婚や死別が生じた場合、解消の意思表示によりこの関係は終了することがあります。

なお、自分の配偶者自体は、直系や傍系といった区分はなく、単に「配偶者」として扱われます。

(4)親族とは

親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことです。親族に関しては、民法第725条に定められています。

民法第725条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族

親等は、自分から見て何世代離れているかで数えます。親子は1親等、兄弟姉妹は2親等、おじ・おばは3親等にあたります。民法第725条によると、6親等内の血族も親族になりますので、例えば再従兄弟姉妹(はとこ)や従兄弟の孫までが民法上の親族と定義されることになります。

また、3親等内の姻族も親族に含まれます。これには曾孫の配偶者、甥や姪の配偶者、義兄弟姉妹の子供(義甥・義姪)などが該当します。

なお、親族と似た言葉に「親戚」があります。日常的には親戚という表現を使うことの方が一般的ではないでしょうか。
親族と同じ意味に思えますが、親戚とは「血縁や婚姻によって結びつきのある人」と定義されています。全ての血族や姻族を意味する言葉なので、「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」と範囲が限定されている親族とは明確な違いがあるのです。

 

さて、以上を簡単に表にまとめますと、この通りになります。

親族関係を表す用語

 

直系尊属の遺産相続

遺産相続において重要なのは、亡くなった人の財産を誰が相続するかということです。

遺言書が存在する場合は、原則としてその内容に従って財産が分配されます。遺言がない場合には、民法で定められた法定相続人が財産を相続します。この法定相続人には、被相続人の配偶者、子供などの直系卑属、そして親などの直系尊属がなることができます。

ただし、すべての法定相続人が相続できるわけではありません。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、配偶者以外の相続人については、以下の相続順位がめぐってきたときに、法定相続人となるのです。

  1. 第1順位:直系卑属(子、子がいない場合は孫、ひ孫など)
  2. 第2順位:直系尊属(父母、父母がない場合は祖父母など)
  3. 第3順位:傍系血族(兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は甥姪)

(1)直系尊属が相続人になるケース

直系尊属の相続順位は上記の通り、第2順位となっています。つまり、第1順位の直系卑属がいない場合にのみ、第2順位である直系尊属が相続人となるのです。具体的には、被相続人に子供や孫がいない場合に、その父母や祖父母が相続人となる可能性があります。

なお、被相続人が遺言を残している場合は、遺言の内容が優先されます。例えば、遺言で両親に財産を相続させることが指定されていれば、子供や配偶者といった他の法定相続人がいても、直系尊属への相続が可能になります。ただし、遺留分をめぐってトラブルが発生する可能性があるため、注意が必要です。

それでは、直系尊属が相続人になる具体的なケースについて簡単に確認しておきましょう。

①配偶者なし・子あり

この場合、第1順位の子や孫がいないため、第2順位の直系尊属が法定相続人となります。具体的には、被相続人の父母が相続人となります。また、配偶者もいないため、全ての相続財産は直系尊属である父母が2分の1ずつ相続することになります。

②配偶者あり・子なし

配偶者は常に相続人となるため、配偶者と共に直系尊属が相続人となります。第1順位の子や孫がいない場合、直系尊属である父母が第2順位の相続人として相続権を持ちます。したがって、遺産は配偶者と父母で分け合うことになります。

法定の相続割合は、配偶者が3分の2、親は3分の1なので、父母それぞれの相続分は6分の1ずつとなります。
なお、父母がすでに死亡している場合は、さらに上の世代の直系尊属である祖父母が相続人になります。

法定の相続割合については、下記記事で詳しく解説しております。参照してください。

(2)直系尊属に代襲相続はない

代襲相続とは、本来の相続人が死亡または相続放棄した場合に、その相続人の位置を引き継ぐことですが、これは直系尊属には適用されません。法律上、代襲相続が認められているのは、子供や兄弟姉妹に限られています。

例えば、父母が相続人となる状況で、もし父または母のどちらかが既に亡くなっている場合でも、残された親が単独で相続人となります。この際、代襲相続によって亡くなった人の両親(祖父母)がその位置を引き継ぐことはありません。つまり、もし一方の親が亡くなっていたとしても、生きている親だけが相続人となります。

祖父母が相続人となるのは、被相続人の父母が両方とも既に亡くなっている場合のみです。しかし、この移行は代襲相続によるものではなく、相続順位に従った通常の相続手続きです。

直系尊属に関するQ&A

Q1.直系尊属にはどのような親族が含まれますか?

A:直系尊属は、法律上、自分より上の世代で直接の血縁関係にある親族を指します。具体的には、自分の父母や祖父母、曾祖父母などがこれに該当します。

Q2.養父母も直系尊属に含まれるのですか?

A: はい、養父母も直系尊属に含まれます。法律上、養子縁組を通じて成立した親子関係は、血縁関係にある親子と同等に扱われます。つまり、養子縁組によって法的な親となった養父母は、血縁の親と同様に直系尊属として扱われることになります。

Q3.直系尊属が相続する際の遺留分について教えてください。

A: 遺留分とは、法律で最低限保障される相続の割合のことです。直系尊属が相続人である場合、民法第1042条によって、一定の遺留分が保障されています。遺言の内容が遺留分を侵害する内容であった場合、直系尊属の相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

まとめ

この記事では、「直系尊属」という相続における重要な概念を中心に、直系卑属、傍系、姻族、さらに一般的な親族の意味について詳しく解説いたしました。

なんとなく知っているつもりだった人も多いかもしれませんが、遺産相続のような法律が関係してくる手続きにおいては、こうした簡単そうな言葉の意味ひとつにしても正確に理解しておくことが重要です。

相続権が誰にあるかを確認したり、相続割合について検討したりする中で、直系尊属や直系卑属といった言葉は何度も出てきます。また、直系尊属からの贈与がある場合、特定の条件の下では非課税の特例を受けることができるなど、相続税対策においても、直系尊属について理解しておくことは非常に大切なのです。

相続手続きに疑問や不安がありましたら、法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。当法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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