不倫慰謝料を払えない!慰謝料を払わないとどうなる?慰謝料を払えないと言われたら

不倫が原因で慰謝料を請求されたものの、さまざまな事情から「慰謝料を払えない」という人は少なくないでしょう。
貯金がない、収入が少ない・収入自体が無い、他の債務の支払いがある・・・など、経済的に不倫慰謝料の支払いが難しいというケースもあれば、「支払いができる程度の収入はあるけど絶対に払いたくない」など、感情的な理由で不倫慰謝料を払いたくないというケースも見受けます。
ですが、そのまま支払いを拒否してしまうと、裁判を起こされたり、判決が確定すれば財産や給与を差し押さえられたりする恐れがあります。相手が本気で回収を求めてきた場合、「払いたくない」「今は払えない」と拒否するだけでは、当然通用しません。
もっとも、個々の事情と対応によっては、分割払いや減額に応じてもらえる可能性もあるでしょう。
そこでこの記事では、不倫慰謝料を払えない場合に、払わないとどうなるのかについて、弁護士が具体的に解説させていただきます。
また、慰謝料を請求する側にとっても、「相手から払えないと言われたとき、どう対応すべきか」は重要な問題ですので、慰謝料を請求する側の視点でも解説いたします。
本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
不倫慰謝料を払えない
不倫慰謝料を請求されたものの、「払えない」「払いたくない」と悩む人は少なくありません。慰謝料の支払いに応じられない事情は人それぞれですが、よく見られるのは次のようなケースです。
経済的に余裕がない、という事情は特に多く見受けます。貯金がほとんどなく、日常生活に必要なお金すら確保できていない場合や、収入自体が少ない、あるいは無職で収入がまったくないといった場合、慰謝料の支払いは現実的に困難です。
特に、慰謝料は一括払いが一般的なので、まとまったお金がなければ難しいでしょう。
また、収入や貯金自体はあるという場合でも、住宅ローンや奨学金、クレジットカードの支払いなど、すでに他の債務を抱えていて、これ以上は捻出できない、という場合もあります。
こうした経済的な事情以外にも、精神的・感情的な理由から慰謝料の支払いを拒む人も少なくありません。
たとえば、「不倫したことは事実だが、自分だけが一方的に責められるのは納得できない」「相手にも原因があったのに、なぜ自分だけが慰謝料を払うのか」といった不公平感や、請求された金額が高額すぎるという不満、話し合いをする気になれない、などの心理的要因が考えられます。
中には、「なあなあにしているうちに諦めるのではないか」、「時間が経てばあちらが先に折れるのではないか」と考える人もいるようです。
慰謝料を払わないとどうなる?
さて、以上の通り、さまざまな原因で「慰謝料を払えない」という人がいます。ところで、慰謝料を払えない・払いたくないからといって、実際に払わないでいると、どうなるのでしょうか。
慰謝料を払えない場合
① 相手が強硬な態度になってしまう
不倫の慰謝料を請求されたにもかかわらず、これを無視したり、「払えない」「払いたくない」と一方的に突っぱねたりしてしまうと、相手の態度が次第に強硬になってしまいかねません。
慰謝料を請求する側といっても、全員が「話し合いもできないくらいに憤りに満ちている」というわけではありません。中には、「きちんと謝罪をして支払う気持ちを見せてくれれば、多少金額をまけてもいい」と譲歩する気持ちのある請求者もいるでしょう。
それにもかかわらず、最初の請求の段階で何の返答もせず、一方的に無視してしまうと、「払う意思がまったくないどころか、謝罪する気持ちも誠意も見られない」と受け取られてしまいます。請求者も人間ですから、相手が頑なに拒否するような態度を取れば、「もう話し合いでの解決は無理だ」と感じ、当初は考えていなかったような法的手段に踏み切ろうとすることも考えられます。
本来であれば、誠実に対応する姿勢を見せていれば、金額の調整や分割払いの相談ができたかもしれません。
一方的に無視したり、真剣に取り合わなかったりすると、相手の怒りを買ってしまい、かえって自分にとって不利な状況を招いてしまうのです。
「どうせ払えないのだから何も言わずに放置しておこう」といった考え方は、かえって事態を悪化させてしまいます。たとえ全額をすぐに支払うことが難しい場合でも、きちんと謝罪の意思や誠意を示し、今後の支払い方法について冷静に話し合う姿勢を見せることが、非常に重要なのです。
② 裁判に発展する可能性がある
不倫慰謝料の請求を受けたにもかかわらず、これに誠実に対応しないままでいると、最終的に裁判に発展してしまう可能性があります。
請求されたにもかかわらず何の返答もしなかったり、支払いを拒否し続けたり、謝罪や話し合いに一切応じないような態度を取り続けていると、相手から「話し合いでは解決できない」と判断され、法的手段を取られてしまうことがあるのです。
実際に訴訟を提起されると、裁判所から訴状が届き、答弁書の提出や証拠資料の準備、裁判期日への出廷などが必要になります。
相手が弁護士を立てている場合には、こちらも弁護士に依頼しなければ対等に対応するのが難しくなりますから、裁判費用に加えて弁護士費用といった追加の費用負担も生じかねません。
そして、裁判という手続き自体も精神的なストレスになりますし、期日は平日に行われるため、会社勤めであれば欠勤しなければならないこともあるでしょう。争いが長引けば長引くほど、判決が出るまでの期間も長くなってしまいます。
本来であれば、裁判は最終手段であり、話し合いによる解決が望ましいものです。だからこそ、たとえすぐに全額を支払えない事情がある場合でも、誠実な対応を心がけることが大切です。初期対応を誤ると、かえって自分にとって不利な結果を招くことになってしまいますので、注意しましょう。
③ 強制執行・差押えされる可能性がある
不倫慰謝料の支払いについて裁判を起こされ、判決で支払いが命じられたにもかかわらず、それでも支払わなかった場合には、最終的に「強制執行」という手続きによって、財産や給与などが差し押さえられる可能性があります。
強制執行とは、公正証書や裁判所の判決、和解調書などに基づいて、金銭の支払い義務を果たさない債務者(支払う側)に対して、裁判所の権限により財産や収入を差し押さえて回収する手続きのことをいいます。
たとえば、強制執行によって預金口座が差し押さえられれば、一定割合の金額を残して、差し押さえ可能な分を回収されてしまうのです。
財産を強制的に取り上げられるわけですから、実生活にも影響が及んでしまいかねません。
また、差押えは裁判所を通じて行われる正式な手続きであるため、給与の差し押さえなどが行われると、職場にも事情が知られてしまう可能性があり、精神的な負担や信用面での不安も生じる恐れがあります。
このように、慰謝料の支払いを怠ったことで差押えを受けると、金銭面だけでなく日常生活や社会的信用にも影響が広がってしまいかねません。
支払いが難しい事情があるのであれば、早い段階で話し合いを持ちかけ、分割払いや減額を求めるなど、誠実に対応することが重要です。
慰謝料払えないと言われたら
不倫慰謝料を請求したにもかかわらず、相手から「お金がない」「払えない」と言われてしまうことは少なくありません。ですが、そうした主張が本当なのか、単なる言い訳なのかは、慎重に見極める必要があります。ここでは、慰謝料を請求する側として、どのように対応すべきかについて、ご説明いたします。
不倫慰謝料の分割払いを提案する
不倫慰謝料に関しては、通常一括払いが一般的です。
しかし、相手に全額を一括で支払うだけの余裕がないのであれば、分割払いを提案することが現実的な選択肢となるでしょう。
慰謝料についての交渉の中で、あるいは相手側から分割払いにしてもらえないか、と言われることもあるかもしれません。応じることは義務ではありませんが、「頑なに分割払いを拒否したところで、実際に全額を回収できるわけではない」のであれば、相手の態度や反省の様子、支払う意思などを総合的に判断し、「時間がかかっても少しでも多く回収したい」と思うのであれば、分割払いを受け入れることが推奨されます。
その場合には、支払いの条件や、支払いが滞った場合の対応などについて、きちんと示談書や公正証書などの書面に残しておくことが大切です。
相手に支払い能力がない場合
相手が無職で収入がまったくない、生活保護を受給している、高額な借金を抱えているなど、事実上支払い能力がないと考えられる場合には、たとえ裁判で勝ったとしても、現実には慰謝料を回収できない可能性が高いです。
こうした場合、無理に法的手段に進めば、時間や費用ばかりがかかってしまい、かえって損をすることにもなりかねません。
状況次第ですが、接触禁止の誓約書を取り交わすなど、慰謝料以外の形で区切りをつけることも選択肢の一つです。
以上の通り、現実的な慰謝料の回収が難しい場合の対処法をお伝えしましたが、相手に譲歩するかどうかは、あくまでも請求者自身の判断に委ねられます。「お金がない」と言われたからといって、それを鵜呑みにして「支払わなくてもいい」と言ってしまうのは早計です。
対応を誤らないためにも、一度弁護士に相談し、法的な見通しを立てた上で冷静に判断していただければと思います。
不倫慰謝料を払いたくないときは
不倫慰謝料を請求され、支払いたくないと思っても、一方的に拒否して相手からの連絡を無視してはいけません。
まずは、相手からの請求内容が事実に基づいているのかをしっかり確認しましょう。不倫の時期や関係性の有無、証拠の内容、請求されている金額の根拠など、相手の主張と自分の認識にずれがないかを丁寧に精査するようにしてください。
そして、請求に応じるべきかどうかを判断するには、法律の専門知識が必要になることも多いため、一人で抱え込まずに弁護士へ相談することをおすすめします。
たとえば、不倫の事実自体に争いがある場合や、金額が相場とかけ離れていると感じる場合には、法律の専門家が間に入ることで、減額交渉をスムーズに進めていくことが期待できます。
無視したり拒絶したりするだけでは、相手の態度を硬化させ、訴訟や差押えといった事態に発展してしまうこともあります。納得のいかない請求に対してこそ、事実関係を丁寧に整理し、適切な対応を取ることが、結果的に自分を守ることに繋がるのです。
Q&A
Q1.本当にお金がない場合でも支払い義務はありますか?
A:慰謝料の支払い義務自体は、不倫という事実が認められれば原則として発生します。ただし、経済状況によっては減額や分割払いといった対応が期待できることもありますので、まずは相手と冷静に話し合い、必要であれば弁護士に相談しましょう。
Q2.慰謝料を払わないと前科がつくことはありますか?
A:慰謝料請求は民事上の問題であり、支払わないことで前科がつくことはありません。ただし、裁判で敗訴してもなお支払わなければ、差押えなどの民事執行手続がとられることがあります。
Q3.生活保護を受けていても慰謝料を請求されますか?
A:生活保護受給中であっても請求されること自体はありますが、支払い能力がないと判断されれば、現実に回収は困難とされる場合もあります。その場合でも、誠実な説明や対応が求められます。
まとめ
本記事では、不倫慰謝料を払えない場合の対応について、弁護士が詳しく解説させていただきました。
経済的に余裕がない、他の債務がある、無職で収入がないなど、さまざまな事情により慰謝料の支払いが難しいと感じている方も少なくありません。しかし、請求を無視したり、一方的に拒否したりすることは、相手の態度を硬化させることに繋がり、結果として裁判に発展したり、財産や給与を差し押さえられたりするリスクを高めてしまいます。
大切なのは、支払えないと思っても請求を無視せずに、まず請求の内容が事実に基づいているかを冷静に確認し、その上で支払い方法や金額について話し合える余地があるかを検討することです。
不倫慰謝料に関する問題は、放置すればするほど状況が悪化します。だからこそ、早めに対応し、誠実な姿勢を示すことが、結果的に自分を守ることにもつながります。
当法律事務所では弁護士による法律相談を、初回無料で行っておりますので、ぜひご相談いただければと思います。
この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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