本気の不倫|不倫相手への本気度を見極めるには?弁護士が解説

一度や二度の不倫であれば「一時的な出来心」として片づけられる場合もあります。ですが、同じ不倫相手との関係が何ヶ月、あるいは何年と続いているとなれば、話は別です。「もしかして本気なのでは?」「いずれ離婚して相手と再婚するつもりでは?」と疑いたくなるかもしれません。
実際に、遊びのつもりで不倫を始めたのに、徐々に本気になってしまうというケースを見受けることは少なくありません。
それでは、遊びの不倫が本気の不倫になった場合、当事者や周囲にどういった影響が生じるのでしょうか。
本記事では、どういった不倫が「本気」なのか、不倫相手に本気になる既婚者の代表的な特徴を踏まえつつ、弁護士が解説させていただきます。
不倫で本気になると、不倫した側にどういったリスクが生じるのか、不倫相手に本気かどうかをどのように見極めたらいいのか、詳しくご説明いたします。
離婚や慰謝料請求を検討する際に、少しでもご参考となりましたら幸いです。
本気の不倫
不倫で本気になるとどうなる?
遊びの不倫から本気の不倫へと発展した場合、配偶者と離婚して不倫相手との再婚を考える人は少なくないかと思います。
不倫している側としては、「不倫相手に本気になってしまい、今の配偶者に気持ちはないから、やり直すのは難しい。選択肢は離婚しかない。」と思っているかもしれません。
ですが当然、一方の感情だけで、簡単に離婚や再婚に踏み切れるわけではありません。
不倫をきっかけに本気で離婚・再婚を考える場合に、不倫した側に生じる5つの重大なリスクについて見ていきましょう。
① 不倫した側からは離婚できない
日本では、不倫をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、原則として認められていません。たとえ不倫相手と再婚したいという意思があっても、配偶者が離婚に同意しない限り、裁判を起こしても離婚が認められないことが一般的です。
なぜかというと、家庭を壊した側が自ら有利に離婚できるとすれば、公平性に反すると考えられているからです。実際の裁判例でも、不倫した側からの離婚請求は原則として認められない、とした上で、以下の3つの事情を総合的に考慮して離婚するのが相当と判断される場合には、不倫した側からの離婚請求が認められるとされています。
- 夫婦の別居期間が非常に長いこと
- 未成年の子どもがいないこと
- 相手方(配偶者)が離婚によって過酷な状況に置かれないか
そのため、不倫相手との将来を考えて離婚を望んでも、法律上は自分の希望だけでは離婚が叶わないのです。
② 慰謝料を請求される
不倫が、民法上の「不貞行為(民法第770条1項1号)」に該当する場合、不倫された側は配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求することが可能です。
たとえ夫婦が離婚に至らなかった場合でも、精神的苦痛を受けた配偶者から慰謝料を請求される可能性がありますし、もし離婚した場合には、その金額がさらに高額になることもあります。
そして一般的に、不倫の慰謝料は以下のような事情によって増減します。
- 不倫の期間や頻度
- 不倫の発覚によって家庭が崩壊したかどうか
- 子どもがいるか、子どもの年齢は幼いか
- 配偶者の生活に与えた影響の大きさ
- 不倫相手との関係性(職場関係・友人関係など)
具体的な金額はケースによりますが、数十万円から300万円程度が一般的な相場です。
また、不倫相手も慰謝料請求の対象となるため、双方が法的責任を問われることになります。
慰謝料請求や離婚請求が調停や裁判にまで発展すれば、さらに金銭的負担や精神的負担が増えることでしょう。
③ 子どもとの関係の悪化
不倫をきっかけに離婚へと発展した場合、もっとも深刻な影響を受けるのは子どもでしょう。
離婚に至らなかったとしても、子どもが不倫の事実を知ってしまえば、それまでに築いた親子の信頼関係が崩れてしまいかねません。
夫婦が再構築を選んだとしても、両親の空気がぎこちないと、子どもは敏感に察してしまいます。そうした環境は子どもにとってもストレスとなるのです。
そして、離婚して離れて暮らすことになった後、面会交流がうまくいかなかったり、将来的に子どもからの連絡が途絶えたりしてしまう可能性もあります。
④ 社会的信用の低下
不倫が職場や近所、友人関係などに知られてしまえば、周囲からの評価や信頼を失いかねません。
特に職場においては、企業の倫理規程や服務規律に抵触する場合もあり、昇進・昇格に影響することもあれば、最悪の場合には処分や異動を受けるケースも考えられます。
いくらプライベートの事とはいえ、仕事や人間関係といった生活基盤全体に影響を及ぼす可能性は少なくないのです。
⑤ 再婚してもうまくいくとは限らない
仮に離婚が成立し、不倫相手と再婚できたとしても、その後の結婚生活がうまくいくとは限りません。
「不倫から始まった関係」であるために、お互いに「新しい不倫相手がいるのでは?」などと疑念や不安を抱えてしまい、「また裏切られるのではないか」といった気持ちを拭いきれないことも多いのです。
また、前の配偶者との間に子どもがいる場合、養育費の支払いや面会交流の対応など、離婚後も元の家庭との関わりが続きます。そうした現実が、新しい夫婦関係に影を落とすことも少なくありません。
そして、不倫という非日常的な刺激のある関係が終わり、夫婦としての生活が始まると、「この結婚が本当に自分の望んでいたものなのか」と感じることもあるでしょう。
以上の通り、不倫相手に本気になったとしても、不倫には想像以上に多くのリスクが伴うのです。
不倫相手に本気になる既婚者の特徴
さて、前述したようなリスクは、ほとんどの人は一般常識として知っているかと思います。それでも、薄々は意識しながらも、無視して不倫を続けている人が少なくないのでしょう。
では、リスクを承知の上で不倫相手と本気で交際してしまう既婚者とは、どういう心理状態なのでしょうか。不倫相手に対して本気になる人・本気になりやすい人に見られる主な特徴を確認していきましょう。
不倫相手に本気になる人・なりやすい人の特徴
① 家庭内で孤独を感じている人
夫婦仲が良好でなかったり、仕事が忙しく家族とのコミュニケーションが少なかったりと、家庭内で孤独を感じることがあるかもしれません。
そんなときに、異性から共感されたり寄り添ってもらえたりすると、家庭内での孤独感をその人で癒そうとして、不倫関係になってしまうのです。
家族は共感・理解してくれないが、不倫相手だけは自分を理解してくれる・・・と感じるようになり、気付けば不倫相手に対して本気になっていた、というケースは少なくありません。
② 承認欲求が強く、好意に弱い人
自分を認めてもらいたい、評価してほしいという気持ちが強い人は、不倫相手からのちょっとした言葉や態度に心を動かされやすい傾向があります。
「あなたが一番大事」「あなたは必要とされている」というメッセージを受けると、その承認欲求が満たされるとともに、承認欲求を満たしてくれる不倫相手のことを、家庭よりも優先するようになってしまうのです。
③ 現実逃避をしやすい傾向がある人
仕事のストレスや家庭での不満から、現実を忘れたい気持ちが強い人は、不倫関係を一種の「逃げ場」として選びやすくなります。不倫相手と過ごす時間が現実のつらさを忘れさせてくれるため、そこに依存してしまうのです。現実から目をそらしたい気持ちが強ければ強いほど、相手にのめり込んでしまうため、「本気の不倫」に発展してしまう危険性があります。
④ 結婚生活に強い不満やあきらめを抱えている人
配偶者との関係に長年不満を抱え、「この結婚生活に希望は持てない」といったあきらめの気持ちが強くなっていると、配偶者以外の異性と「本気」の関係になれないかと、不倫相手に依存するようになってしまうケースもあります。
結婚生活に対して前向きな努力をする余地を見失っていると、気持ちが一気に外へ向かってしまう傾向が見られます。
⑤ 意思が弱く周囲に流されやすい人
自分の気持ちや立場をはっきりと主張できず、相手に言われるがまま関係が進んでしまう人は、不倫相手からの強いアプローチに抗えず、ずるずると関係を続けてしまうことがあります。
たとえ最初は消極的だったとしても、不倫相手との関係を続けるうちに情が移り、気付けば自分でも制御できないほど相手に気持ちが傾いてしまうこともあるのです。
⑥ 恋愛感情を優先する価値観を持っている人
「たとえ既婚者だったとしても、気持ちがない以上、好きになった人と一緒にいるべき」といった恋愛至上主義的な価値観を持っている人は、たとえ結婚していても感情を優先して行動しやすくなります。
「不倫はしてはいけないこと」という社会的なルールや倫理観よりも、自分の気持ちを大切にする傾向が強く、「この人と一緒にいたい」という想いが最優先されてしまうのです。
その結果、冷静な判断を欠いたまま、不倫相手との関係を本気の恋愛だと信じ込み、家庭や将来よりも目の前の恋にのめり込んでしまうことがあります。
以上の通り、リスクを知っていても不倫相手に本気になってしまう人には、自己肯定感の低さや孤独感、現実への不満など、さまざまな要因が積み重なっていることがあるのです。
不倫相手への本気度の見極め方
配偶者が不倫しているかもしれない、不倫相手に本気かもしれない、と疑ったとき、本気度がどれくらいかはどのように見極められるでしょうか。
以下に、一般的な兆候をご紹介いたします。
① 家庭への関心が明らかに薄れている
配偶者が家にいても会話がほとんどなくなったり、目を合わせようとしなかったり、以前は関心を持っていた子どもや家庭のことに無関心になる場合には、気持ちが家庭ではなく外に向いている可能性があります。
特に、生活リズムや家族に対する態度が大きく変わったときは、不倫相手に本気で気持ちが傾いているサインかもしれません。
② 不倫を責めても反省の色が見えない
不倫が発覚しても謝罪がなく、「自分にも言い分がある」「もう気持ちは戻らない」といった発言が見られる場合には、不倫相手との関係を終わらせる意思がないか、すでに完全に気持ちが相手に向いてしまっている可能性があります。
本気度が高い場合、隠そうとしたり言い訳したりするよりも、不倫を正当化する傾向が強くなることが多いのです。
③ 離婚を切り出してくる
不倫をしている側から離婚の話を持ち出してきたら、単なる浮気ではなく、不倫相手との将来を現実的に考えている可能性が高いです。
「好きな人がいる」「このままの結婚生活は続けられない」といった言葉が出てきたときは、すでに気持ちが完全に家庭から離れていると見た方が良いかもしれません。
④ 携帯電話の扱いが変わった
携帯電話を常に持ち歩くようになった、通知をすべて非表示にした、電話の相手を聞くと誤魔化すようになった・・・など、携帯電話の扱い方が変わるのも一つの兆候です。
⑤ 金銭の使い方に変化がある
以前はなかった高額な出費が見られるようになったり、現金を持ち出す頻度が増えたり、カード明細に不自然な利用があったりする場合、不倫相手に金銭が使われている可能性があります。
金額の大きさだけでなく、「隠れて使っている」「用途を尋ねると誤魔化される」かどうか、といった点に注目することが重要です。
以上の通り、配偶者が不倫相手に本気になっているかどうかは、言葉よりも行動や態度に表れることが多いです。日常の中での変化を総合的に見ることで、不倫相手に対する本気度がどれくらいかをある程度見極めることが可能です。
ですが、必ずしも不倫相手に本気であるとは限りません。感情的に反応せずに、冷静に対応することが大切です。
本気の不倫に関するQ&A
Q1.本気の不倫はどのくらい続くものですか?
A:一概には言えませんが、半年以上継続し、日常的な連絡や誕生日・記念日を一緒に過ごすような関係にまで発展している場合、単なる遊びではなく本気の可能性が高いです。
Q2.本気の不倫に発展すると、離婚や再婚につながることが多いのでしょうか?
A: 離婚に発展するケースもありますが、有責配偶者からの離婚請求は法律上制限があるため、思い通りに進まないことも多いです。また、再婚後にうまくいかず後悔するケースも見られます。
Q3.不倫相手に本気になる人には、どんな特徴がありますか?
A: 家庭で孤独を感じていたり、承認欲求が強かったり、現実逃避しやすい人は、本気になりやすい傾向があります。価値観として恋愛感情を最優先にしている人も注意が必要です。
まとめ
本記事では、本気の不倫について、弁護士が詳しく解説させていただきました。
配偶者が不倫相手に本気になっている場合、その背景には感情的・心理的な要因や家庭環境の問題が複雑に絡み合っていることがあります。
もし夫婦関係の再構築を目指すのであれば、感情的に配偶者を責めるのではなく、いったん立ち止まって、これまでの関係性や家族との向き合い方に改善の余地がなかったかどうかを、冷静に振り返ってみることも大切です。
一方で、離婚や慰謝料請求をするのであれば、証拠の確保などを慎重に進めていく必要があります。
不安を感じたときには、一人で抱え込まず、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。弁護士法人あおい法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。電話相談もお受けしておりますので、当ホームページのWeb予約フォームやお電話にて、ぜひお気軽にお問合せください。
この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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