浮気相手が弁護士をつけてきた!慰謝料請求したら不倫相手が弁護士を立てた場合どうする?

配偶者の浮気相手に慰謝料の請求をしたところ、素直に請求に応じてもらえないどころか、弁護士を立てて対抗してきた、というようなケース、実は珍しくありません。弁護士といえば法律の専門家ですから、自分が弁護士をつけていない場合、相手の都合の良いように説得されてしまうのではないか、といった不安や焦りを感じるでしょう。
しかし、相手側が弁護士を立てること自体はよくあることですから、必要以上に怖がる必要はありません。ただし、相手に法律の専門家がついている以上、一人で対応しようとすると、気づかないうちに不利な状況に追い込まれることも考えられます。
そこでこの記事では、配偶者の浮気相手に対して慰謝料請求した場合に、浮気相手が弁護士を立ててきたケースで想定される相手側の対応や主張、こちらも弁護士を依頼すべきかどうかの判断基準、弁護士を立てずに対応した際のリスク、自分自身が弁護士に依頼するメリットなどについて、詳しく解説させていただきます。
浮気相手が弁護士を立ててきた時にも慌てずに、冷静に適切な対応をするため、本記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。
目次
浮気相手が弁護士をつけてきた
浮気相手に慰謝料請求した場合に、必ず浮気相手が弁護士をつけてくるわけではありませんが、次のようなケースでは弁護士をつけてくる可能性があります。
浮気相手が弁護士をつけてくるケース
①慰謝料の請求金額が高額な場合
請求される慰謝料の金額が高いと、浮気相手にとって経済的な負担が大きくなります。そのため、自分の経済的なダメージを少しでも減らそうとして弁護士を立て、慰謝料の減額交渉をしてきます。
②浮気相手が社会的地位や評判を気にする立場の場合
経営者や会社役員、公務員など、社会的な信用や評判が重要な立場の人は、慰謝料請求によるトラブルが周囲に知られると、勤め先や周囲の人間関係において大きなダメージを受ける可能性があります。そのため、速やかに問題を解決して公になることを防ぐため、弁護士に依頼することが少なくありません。
③浮気相手自身が既婚者の場合
浮気相手が既婚者の場合、自分の家庭や職場に浮気が知られることを嫌がり、周囲に露呈しないうちに解決しようと、弁護士に依頼することがあります。
④交際は認めるが、不貞行為は否定する場合
一緒に食事に行く、親密なメールのやり取りをする、といった程度の交際があったこと自体は認めても、不貞行為(性的関係)は否定して、慰謝料請求を拒否する場合があります。こうしたケースでは、肉体関係の有無や交際期間といった慰謝料請求の根拠となる有責性がないことを明確にするため、相手方が弁護士を立ててくることが多いです。
⑤慰謝料請求の法的根拠が弱い、不十分だと判断した場合
浮気相手が慰謝料請求に対して、法的な根拠がはっきりしない、または十分な証拠がないと感じた場合、弁護士を立てて対応してくることがあります。
⑥浮気相手に法律の知識があり、強く争う姿勢を見せている場合
浮気相手自身が法的な知識を持っている、または以前に似たようなトラブルに対応した経験があって、今回はうまく回避しよう、などと思っているような場合は、法的に自分を守ることに積極的になる傾向があるため、弁護士を立てて徹底的に慰謝料請求に反論してくる可能性があります。
浮気相手が弁護士をつけてきた場合に想定される反論
浮気相手が弁護士をつけてきた場合、一般的に以下の点について反論してくることが想定されます。そして、弁護士は法的知識を持っていますから、単なる感情的な反論ではなく、証拠や論理に基づいた理路整然とした反論がなされることになります。
以下に、よく見られる反論のパターンと、それに対して取るべき対応・考え方をご説明いたします。
【事実関係に関する反論】
まず典型的なのは、「不貞行為そのものが存在しなかった」と主張してくるケースです。つまり、相手は関係の深さや親密なやりとりがあったことを否定せずとも、「肉体関係は一切なかった」と述べることで、法的に言うところの「不貞」には該当しないと反論してきます。民法が定める、慰謝料請求の根拠となる「不貞行為」とは、配偶者以外の異性との継続した肉体関係を意味するからです。
このような主張に対抗するには、実際に肉体関係があったことを示す具体的な証拠を用意する必要があります。メールやメッセージのやり取り、ラブホテルや宿泊施設の利用履歴、二人きりでの旅行の記録、さらには親密な様子を示す写真や動画などが有効な証拠になり得ます。
あるいは、「相手が既婚者であることを知らなかった」「既婚者であることを知っていたと主張されているが、そのような事実はない」といった反論が出てくることもあります。
法律上、民法第709条の不法行為に基づく慰謝料を支払う責任が認められるためには、相手が既婚者であることを知っていた(故意)、あるいは通常の注意を払えば知ることができたか(過失)、という点が重要になるからです。
(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
したがって、こちらとしては、相手方は交際相手が既婚であると知っていた、もしくは知り得る状況にあったということを証明する必要があります。
たとえば、家庭の話題が交際中に何度か出ていた、交際相手が家族と過ごしている週末や夜間には会えなかった、結婚指輪をしていた、共通の知人や会社の人間が既婚者であることを知り、そのように接していた、などといった具体的なやり取りや状況がその裏付けになり得るでしょう。
【慰謝料額についての反論】
「請求されている金額が高すぎる」という反論もよく見られます。
この場合、相手方の弁護士は、過去の判例や一般的な相場を根拠にして、慰謝料の減額を求めてくることがあります。不貞に関する慰謝料の金額には明確な基準があるわけではありませんが、過去の裁判例では概ね数十万円から300万円程度の範囲で認定されていることが多いです。
請求側としては、自分たちの請求額がその範囲内にあること、または相場の金額を超えていたとしても、それだけの金額を請求する理由があるということを示していく必要があります。
たとえば、浮気が長期間に及んでいた、回数が非常に多かった、不倫が家庭や子どもへ与えた影響が深刻だった、相手が反省の態度を見せていない、などの事情は、高額な慰謝料が認められる根拠となる可能性があります。
また、相手側が「夫婦関係はすでに破綻していた」と主張してくることもあるでしょう。
これは、「もともと関係が終わっていたのだから、自分の行為が夫婦関係に与えた影響はない」として、慰謝料の支払い自体を否定しようとする考え方です。このような主張に対しては、「破綻」していたとまでは言えない状況だったと反論する必要があります。
たとえば、配偶者との同居が続いていたこと、家庭内で会話や交流もあり、家事や育児でも協力していたこと、夫婦で将来の話をしていたこと、旅行や家族のイベント、子どもの学校行事に一緒に参加していたことなどが、夫婦関係が破綻していないことを証明するための材料となります。
仮に、当時子どもの教育方針で揉めていたなど、夫婦間で問題を抱えていたとしても、法律上「婚姻関係が実質的に破綻していた」と認められるには相応の要件が必要とされるため、相手の主張が一方的である場合には、しっかり反論していくことが重要です。
【法的手続上の反論】
「すでに時効が成立しているため、慰謝料請求は認められない」と主張されるケースもあります。
不法行為による損害賠償請求権(慰謝料請求権)の時効は、不貞行為と不貞の相手方を知った時から3年、もしくは不貞行為の時から20年と定められています(民法第724条)。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
このような場合には、時効期間が経過していないことを明確に示す証拠を用意するか、あるいは時効が中断・停止していたという法的な根拠を提示する必要があります。具体的には、相手方に慰謝料を請求する内容証明を時効成立前に送付していたことや、相手方が慰謝料の支払い義務を認めるような言動をしていたこと、などを主張しましょう。
また、相手方がこちらに対して「名誉毀損や脅迫にあたる」と主張し、逆に損害賠償を請求してくる場合もあります。たとえば、内容証明で極端に攻撃的な文言を使ったり、相手の勤務先や家族に対して通知を行ったりすると、「社会的な信用を傷つけられた」として逆に訴えられるリスクが生じる可能性があるのです。
このような事態を防ぐには、常に法的に適正な方法で請求を行うことが基本です。感情に任せて強硬な手段を取ることが、かえってこちらの立場を危うくしてしまいかねません。こちらの行為が法に則ったものであることを示し、冷静かつ丁寧に対応することが重要です。
慰謝料請求したら不倫相手が弁護士を立てた場合どうする?
配偶者の不倫相手に慰謝料請求して不倫相手が弁護士を立てた場合、相手が法律のプロということもあって、自分も弁護士をつけた方が良いのでは?と迷うかもしれません。
自身も弁護士をつけるべきかどうか、一般的な判断基準を確認しておきましょう。
自分も弁護士をつけるべきか?判断基準
自身も弁護士を立てるべきかどうかを判断するにあたっては、弁護士をつけるメリットと弁護士をつけないデメリットについて、よく理解しておくことが重要です。
弁護士をつけるメリット
①手続きの負担軽減
弁護士をつけると、複雑な法的手続きや書類作成などをすべて任せることができます。慰謝料請求の交渉や裁判準備にかかる労力や時間を大幅に軽減することができ、日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。
②相手弁護士と直接対峙せずに済む
相手方が弁護士をつけている場合、自分一人で対応することは、精神的に非常に負担になります。弁護士を代理人にすることで、直接相手側弁護士と対峙する必要がなくなるため、ストレスやプレッシャーを大幅に軽減できます。
③適切で効果的な証拠の収集
慰謝料請求を成功させるには、適切で効果的な証拠収集が欠かせません。弁護士はどのような証拠が有効か・どういった証拠収集であれば法的に問題ないかをよく理解しているため、的確なアドバイスを受けながら証拠を集めることができ、慰謝料請求の成功率が高まります。
④説得力ある主張立証ができる
弁護士は法律の専門家であるため、法的に説得力のある主張や立証を行うことが可能です。裁判所に対しても適切な根拠を示して主張できるため、自分で行うよりも慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。
弁護士をつけないデメリット
①法的知識不足による不利益の可能性
法律に詳しくない場合、知らずに不適切な対応をしてしまいかねません。慰謝料請求に必要な手続きや適切な証拠の取り扱い方が分からず、不利な結果に繋がってしまうこともあります。
②相手側弁護士と直接交渉する精神的負担
相手が弁護士をつけている場合、法的な専門知識を持つ相手との直接の交渉は、精神的に非常に大きな負担となります。プレッシャーやストレスから冷静な判断が難しくなり、結果的に自分の立場を悪化させてしまう恐れがあります。
③証拠収集や主張立証が難しい
証拠収集やその活用方法に慣れていないと、有効な証拠を集めるのが困難になります。また、法的な主張を十分に行えず、相手の反論に対して適切に対応できない可能性があります。
④感情的になりやすく冷静な判断が難しい
慰謝料請求で直接やり取りをすると、どうしても感情的になりがちです。弁護士なしで対応すると、相手に対する怒りに任せてしまい、冷静な交渉や適切な判断ができず、不利な結果を招いてしまうことがあります。
Q&A
Q1.配偶者の不倫相手に慰謝料請求したら、不倫相手が弁護士を立ててくることはありますか?
A:はい、不倫相手が弁護士を立ててくることは珍しくありません。慰謝料請求がなされた場合、不倫相手も自分の立場や権利を守るために、法律の専門家である弁護士を通じて対応してくることが多くあります。特に、請求された慰謝料の金額が高額であったり、社会的地位や名誉を守りたいと考えたりしている場合には、弁護士をつけてくる可能性が高いでしょう。
Q2.浮気相手が弁護士を立てた場合、どういった主張をしてくるでしょうか?
A:不倫相手が弁護士を立てた場合、主に次のような主張をすることが考えられます。
不貞行為の事実自体を否定する、既婚者であることを知らなかったと主張する、夫婦関係はすでに破綻していたため慰謝料の支払い義務はないと反論する、慰謝料の請求額が高すぎるとして減額を求める、証拠が不十分だと指摘する、時効が成立しているため慰謝料を支払う必要がないと主張する、などの反論が考えられます。
Q3.浮気相手が弁護士を立てた場合、こちらも弁護士をつけるべきですか?
A:相手が弁護士を立ててきた場合、こちらも弁護士をつけることが推奨されます。弁護士をつけることで、相手側弁護士との交渉を、同じく法律の専門家である弁護士に一任できるため、自分自身の負担や精神的ストレスを軽減できます。また、適切な証拠収集や法的主張も弁護士に任せることで効果的に行えるため、自分だけで対応して不利になるよりも、有利な結果を得られる可能性が高まります。
まとめ
この記事では、配偶者の浮気相手に慰謝料請求した時に、浮気相手が弁護士をつけて反論してきた場合、どういった反論が予想され、その反論にどのように対応すればいいのか、弁護士が解説させていただきました。
浮気の慰謝料請求は、3年という時効がある中で、法的に有効な証拠を集め、適切な方法で主張していかなければなりません。一人で請求するのもかなりの負担となる上、相手方が弁護士を立ててくれば、より精神的ストレスが増えてしまいかねません。
配偶者の浮気相手が弁護士を立てて反論してきた場合には、なるべく早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
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この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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