離婚調停申立書【記入例付き】申し立て書類の書き方を弁護士が解説

離婚調停は、夫婦間の話し合いでは解決が難しい離婚条件や子供の養育費、財産分与などの問題を調整するために、家庭裁判所で行われる法的な手続きです。
この調停を始めるには、家庭裁判所に「離婚調停申立書」を提出する必要があります。
しかし、初めて手続きを行う方にとっては、記入方法や内容に迷うことも多いでしょう。
そこで本記事では、離婚調停申立書の書き方や、記入する際に気を付けるポイントなどついて、記入例をもとに分かりやすく解説いたします。離婚調停をスムーズに申し立てるために、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
離婚調停申立書
まずは、離婚調停申立書とはそもそもどういった書類なのかについて、簡単にご説明いたします。
離婚調停申立書とは
離婚調停申立書とは、家庭裁判所で離婚調停を申し立てる際に提出する書類で、調停を進める上での基礎資料となります。この書類には、離婚を希望する理由や解決したい具体的な条件、子供がいる場合はその養育に関する事項、さらには夫婦間での現在の状況などを記載します。申立書の内容は調停委員が調停の進行を判断するための重要な情報となるため、正確かつ具体的に記載することが求められます。
なお、離婚調停申立書ですが、必要事項が適切に記載されてさえいれば、書式自体は自由です。そのため、全て手書きで作成したとしても、内容に不備がなければ家庭裁判所で受理してもらえます。
ですが、家庭裁判所で全国共通の離婚調停申立書の書式を入手することができるので、一般的には裁判所の定型書式を使うことがほとんどです。
本記事でも、家庭裁判所の定型書式を後ほどご紹介いたします。
申立書は相手も閲覧できます
離婚調停申立書の写しは、家庭裁判所から相手方に送付されるので、調停の相手も申立書の内容を閲覧することができます。そのため、記載する内容には十分な注意が必要です。
離婚調停申立書には、申立人や未成年の子供の住所を記載する欄が含まれています。そのため、自分や子供の住所を相手方に知られたくない場合には気を付けましょう。相手に自分や子供の住所を隠しておきたい場合には、家庭裁判所に非開示の申出を行うことで、住所の開示を避ける手続きが可能です。安全を確保するためにも、早めに必要な措置を講じましょう。
また、内容が相手方の感情を必要以上に刺激しないよう、冷静かつ現実的に記載することが重要です。例えば、虚偽の事実や相場を大きく上回る養育費、慰謝料を記載すると、相手方の反発を招き、調停が円滑に進まなくなることがあります。特に譲れない条件や重要な希望はきちんと記載しつつ、請求内容は相場を考慮した現実的な範囲に収めることが望ましいでしょう。
なお、調停が不成立となって裁判に進んだ場合、離婚調停申立書は証拠として取り扱われることがあります。その際、虚偽の記載があると不利に働く可能性があるため、事実に基づいた内容を記載することが大切です。
以上の点を踏まえ、離婚調停申立書の写しが相手方に送付されることを意識し、正確かつ冷静に作成しましょう。
離婚調停申立書の書き方
●離婚調停申立書の書き方【記入例付き】
それでは、離婚調停申立書の書き方について、裁判所の記入例を参考にしながら見ていきたいと思います。
なお、離婚調停申立書の書式は2枚あり、1枚目が申立人の住所氏名などの基本事項を記入するページで、2枚目が調停申立ての趣旨など、より具体的な事項を記入するページとなっております。
どちらのページも、必ず黒または青のボールペンを使用し、修正液や修正テープは使用しないようにしましょう。誤字や書き間違いがある場合は、二重線と訂正印で訂正し、訂正が多くて読みづらくなるようなら新しい用紙を使いましょう。
それでは、まずは申立書の1枚目の書き方から見ていきましょう。
離婚調停申立書の1枚目には、裁判所への申立てに必要な基本情報を記載します。
左上の受付印・収入印紙・予納郵便切手の欄は裁判所が使用するため、何も記入しないでください。
事件名
用紙右上の事件名の欄には、( )内に「離婚」と記入します。
提出先・申立年月日
次に、提出先の裁判所名を正確に記載します。例えば、静岡家庭裁判所の本庁へ提出する場合は、「家庭裁判所」の左側に「静岡」と書きます。本庁ではなく、支部に提出する場合は、「家庭裁判所」の左側に「静岡」と書いた上で、同じ枠内の「御中」の左側に「富士支部」など支部名を書きます。
提出先のすぐ下に申立年月日を記入する欄があるので、家庭裁判所の窓口に持参して提出する場合はその提出日を記入し、郵送の場合は発送日を記入します。
申立人の記名押印
申立人の記名押印欄にはフルネームで氏名を書いた上で、印鑑を押します。印鑑は朱肉を使うものを用い、シャチハタは避けてください。印鑑を押すのは、その他の記載項目を全て記入してからがおすすめです。
添付書類
戸籍謄本など、離婚調停申立書に添付する書類にチェックを入れます。書式には戸籍謄本と年金分割のための情報通知書があらかじめ印字されていますが、これ以外に添付する書類がある場合は、3つ目の□の右側に添付する書類を書き、その□にチェックを入れてください。
申立人
申立人の本籍、住所、氏名、生年月日と年齢を記載します。戸籍謄本や住民票などを確認して、「〇丁目×番△△号」などと正式に記入しましょう。
申立書に書く住所とは「生活の本拠」のことを指しますが、配偶者からDVを受けていた場合などは、相手方に現在の生活の本拠が知られないようにしたいかと思います。そのような場合は、別居開始前の夫婦が同居していた時の住所や、実家の住所などを記載することも可能です。
なお、現在の生活の本拠である住所を書かざるを得ない場合でも、申立書とは別に「非開示希望」の手続きや「当事者間秘匿」の申し立て手続きをすることで、相手に住所を知られないようにできます。どの書類においてどの住所が非開示になるのかなど、手続きの詳細は裁判所で事前に確認するか、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
参考:申立書や答弁書の「住所」の記載について(長野家庭裁判所)
相手方
相手方の本籍、住所、氏名、生年月日と年齢を記載します。相手方が外国人の場合は、本籍欄には国籍のみ記載します。
対象となる子
対象となる子の欄は、以前は「未成年の子」という欄でした。こちらの欄は、離婚調停に付随して子供の親権者、面会交流または養育費についても申し立てる場合に記入します。親権者を指定する必要のある未成年の子全員と、成年であっても養育費の必要な子供について、生まれた順に記入します。申立人と同居していれば「申立人と同居」にチェックを入れ、相手方と同居していれば「相手方と同居」にチェックを入れます。両親のどちらとも一緒に暮らしていない場合には、「その他」にチェックを入れ、( )内に住んでいる場所を記載しましょう。
次に、申立書の2枚目の書き方を見ていきたいと思います。
申立ての趣旨
離婚調停の申し立てなので、右側の関係解消の欄を記入していきます。
まず、戸籍上も夫婦である場合の離婚では「1 申立人と相手方は離婚する。」を〇で囲みます。法律婚ではなく内縁関係の場合は、「2 申立人と相手方は内縁関係を解消する。」を選びます。
次に、付随申立てです。単に離婚を求めるだけでなく、子供の親権や財産分与、慰謝料といった離婚条件についても申し立てる場合は、申し立てる事項について番号を〇で囲み、必要事項を記入していきます。
例えば上記の画像では子供に関して、長男・二男の親権者を母と定め、相手方である父親と二男の面会交流についての取り決めを求めることと、相手方に対し長男・二男の養育費を求める内容になっています。
また、財産分与や慰謝料について、請求する金額がはっきりしている場合は「金200万円」などと具体的な金額を記入し、はっきりしていない場合は「相当額」の□にチェックを入れます。
年金分割については、按分割合の上限は2分の1となっているため、上限で定めたい場合は「0.5」の□にチェックを入れます。0.5未満の場合には、( )に具体的な割合を入れましょう。
最後の(7)は空欄になっていますので、必要に応じて取り決めたいことを記入します。例えば、申立人は財産分与や慰謝料を請求する気はないし、請求されても応じる気はない場合、「互いに財産分与・慰謝料の請求をしない。」と記入しましょう。もし離婚調停でこの点を明確にしないまま、離婚することだけが争われることになると、離婚成立後に「財産分与と慰謝料についてまだ取り決めていない」からと相手方から請求される可能性もあるのです。ですので、「取り決めしないから記入しない」のではなく、「取り決めしないことを確かなものにしておく」ようにしましょう。
申立ての理由
下部は申立ての理由欄となります。
同居を始めた日については、婚姻前に最初に同居を始めた日を書きます。
別居をした日についてですが、直近の別居した日を記入します。同居と別居を繰り返している場合も、「最初に同居した日」と「直近の別居した日」を書くようにしてください。
そして、申立ての動機について、あてはまる番号を〇で囲みます。例えば、配偶者からのモラハラと身体的暴力と経済的暴力が理由の場合は、3・8・12をそれぞれ〇で囲みます。その上で、中でも特にモラハラが離婚を決意する理由として大きかった時には8を◎で囲みます。
以上の通り、離婚調停申立書はしっかりとした書式があるため、落ち着いて記入すれば難しい項目はありません。記入例を参考にしつつ、分からない事があれば、裁判所に確認するか、弁護士に相談しましょう。
記入例・書式のダウンロード
離婚調停申立書の書き方は以上の通りです。
なお、離婚調停申立書の書式や上に掲載しました記入例ですが、裁判所のホームページに、Word形式の申立書の書式とPDF形式の記載例が掲載されていますので、以下のページからダウンロードして入手することができます。
離婚調停申立書の添付書類
離婚調停申立書には、自身のケースに応じて、下記の書類を添付して提出します。
- 事情説明書
- 子についての事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 送達場所等届出書
- 非開示の希望に対する申出書
事情説明書は、申立人の仕事や収入、同居している家族の有無、住所や財産の状況、夫婦が不和となった経緯や申立ての理由を記載する書類です。
子についての事情説明書は、未成年の子供がいる場合に提出が必要となります。現在の子供の監護状況や、申立人・相手方との同居・別居の状況、面会交流の有無などを記載します。
進行に関する照会回答書は、裁判所が調停を進めるために使用する書類です。相手方との話し合いの状況や、調停期日の希望日などについて記載します。
送達場所等届出書は、裁判所から送付(送達)される書類について、受取先の住所や受取人の氏名などを記載する書類です。
非開示の希望に関する申出書は、DV被害を受けている場合など、相手方に住所や電話番号といった個人情報を非開示にしたい際に作成します。
これらが一般的な添付書類ですが、ケースに応じて収入を証明する資料などの提出も求められることがあります。
離婚調停申立書に関するQ&A
Q1.離婚調停申立書はどこで入手できますか
離婚調停申立書は、申立先となる家庭裁判所の窓口で入手できるほか、裁判所の公式ホームページからダウンロードすることも可能です。
Q2.離婚調停申立書に記載する「申立ての理由」は詳しく書かなければいけませんか
申立ての理由は簡潔に記載すれば問題ありません。調停の場で調停委員に具体的な事情を伝えることになりますので、概要をまとめて書く程度で構いません。より詳しい内容は、添付書類である「事情説明書」や「子についての事情説明書」などに記載しましょう。
Q3.離婚調停申立書を提出した後、相手方にはどのように通知されますか
提出後、裁判所から相手方へ離婚調停申立書の写しが送付されます。これにより、相手方は調停の申立てがあったことを知ることになります。
まとめ
本記事では、離婚調停を申し立てる際に必要な「離婚調停申立書」について、その書き方や注意点、添付書類について解説しました。離婚調停申立書は、家庭裁判所に提出する重要な書類であり、記載内容は相手方にも送付されるため、適切に作成することが重要です。
また、住所を相手方に知られたくない場合や未成年の子供がいる場合には、適切な添付書類や手続きを併せて行うことが大切です。
離婚調停は、夫婦間の話し合いが難しい状況でも、第三者を介して解決の糸口を見つけるための手続きです。申立書の作成や必要書類の準備に不安がある場合は、専門知識を持つ弁護士に相談することで、手続きをスムーズに進めることができます。調停申立書や添付書類の準備にお困りの方は、お気軽に弁護士にご相談ください。
この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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