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離婚調停で勝つには?有利に進めるための方法やテクニックを弁護士が解説します!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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日本ではほとんどの場合、協議離婚によって離婚が成立しますが、話し合いで解決が難しい場合には離婚調停が必要になります。離婚調停は、裁判所が夫婦間の話し合いを仲介し、財産分与や親権、養育費など離婚後の生活に影響を与える重要な条件を決める場です。しかし、感情的な対立や意見の食い違いが生じることが多く、調停をスムーズに進めるためには適切な準備と対応が欠かせません。

本記事では、離婚調停を有利に進めるために重要なポイントを解説します。例えば、調停委員との接し方や効果的な主張の方法、証拠の準備といった具体的なテクニックをご紹介します。
離婚調停を控えているという方や、離婚調停を申し立てるか悩んでいる方にとって、ご参考となりましたら幸いです。

目次

離婚調停で勝つには

夫婦が話し合いで離婚問題を解決できない場合は、離婚調停を申し立てることになります。離婚調停を申し立てるからには、離婚調停に勝って要求を認めてもらいたいところです。
ところで、実際には離婚調停で勝つことは簡単なのでしょうか?

離婚調停が成立する確率

そもそも離婚調停を申し立てて、調停成立で終わる確率はどれくらいなのでしょう。
この点、裁判所が公開している司法統計に、正確なデータが掲載されています。

申立人 総数
調停成立 4,864 10,363 15,227
調停不成立 3,885 5,795 9,680
調停をしない 106 163 269
調停に代わる審判 1,456 2,944 4,400
取り下げ 1,701 3,367 5,068
当然終了 26 53 79
申立て総数 12,038 22,685 34,723

上記の表は、「令和5年 司法統計年報(家事編)」の「婚姻関係事件数(終局区分別)」より、離婚事件についてのデータをまとめたものになります。
これによると、離婚調停の申し立て件数は34,723件で、15,227件が調停成立に終わっています。つまり、離婚調停の内約4割が調停成立で終わっているということになります。

参考:司法統計(裁判所)

もちろん、さまざまな事情からいろいろな終わり方をしますので、「離婚調停成立の件数」自体がそのまま「離婚調停に勝った件数」とは言えません。調停による終結を待たずとも、話し合いで離婚できる目途が立ったり、調停を申し立てた側が夫婦関係を修復する気になったりして、離婚調停を取り下げる場合もあるでしょう。

ですが、離婚調停成立の割合を見ると、そこまで高いとは言えない、というのが現状です。

離婚調停に男が勝つのは難しいのか

さて、離婚のお悩みで時々目にするのは、「離婚で男は不利」といった言葉です。特に、子供の親権に関しては母親が親権を得るケースが多いため、離婚調停についても「男が勝つのは難しい」といったイメージが先行しているのではないでしょうか。

ですが、そもそも離婚調停は、夫婦間での話し合いを調停委員が仲介し、離婚に関する条件(財産分与、養育費、親権など)について合意を目指す手続きであり、勝敗を争うというよりは、夫婦が妥協点を見つける場です。そのため、一方が「勝つ」というよりは、双方が受け入れ可能な条件で合意することが目的とされています。

また、上記の司法統計のデータを見ても分かる通り、夫が離婚調停を申し立てた12,038件の内、4,864件が調停成立で終わっています。これは割合にすると約4割なので、男だからといって離婚調停に勝つのが難しい、といった事実はないのです。
とはいえ、たしかに子供の親権では母性優先の原則があるなどと、男性が不利、と感じる場面もあるかと思います。

離婚調停を少しでも有利に進めるためには、離婚調停の進め方を正しく理解し、コツをおさえておくことが重要です。

離婚調停のテクニック5選

①調停委員を味方につける

離婚調停では、調停委員が夫婦の間に入り、話し合いを進める役割を果たします。調停委員を味方につけることは、調停を円滑に進め、納得のいく合意に至るために非常に重要なポイントです。

調停委員を味方につけるためには、冷静で誠実な態度を保つことが求められます。調停の場では感情的になりやすいものですが、相手を非難するような言葉や攻撃的な態度を見せると、調停委員に不信感を与えかねません。自分の主張を冷静かつ具体的に伝え、話し合いに前向きである姿勢を示すことが大切です。

また、調停委員に対して分かりやすく説明することも重要です。例えば、自分の希望や主張の理由について、客観的な事実を基に簡潔に伝えることで、調停委員が状況を理解しやすくなります。これにより、調停委員が適切な助言や仲介を行いやすくなり、結果的に自分に有利な話し合いが進む可能性が高まります。

さらに、調停委員の中立性を尊重することも忘れてはいけません。調停委員は双方の意見を公平に聞き取り、妥当な解決を目指しています。そのため、一方的な主張を繰り返すだけではなく、相手の意見に耳を傾け、譲歩できる部分は譲歩する姿勢を見せることで、調停委員から信頼を得ることができます。

調停委員を味方につけることで、話し合いがスムーズに進み、双方が納得できる解決策に近づく可能性が高まります。調停の場では、自分の態度や言動が調停委員に与える影響を意識し、信頼を築くことを心がけましょう。

②事実に沿った主張をする

離婚調停では、調停委員に自分の主張を理解してもらい、相手方との合意を目指すために、事実に基づいた正確な主張を行うことが重要です。感情的な意見や憶測を含めた主張では、調停委員や相手方の信頼を得られず、話し合いが進展しない可能性があります。

まず、自分の主張を事実に基づいて整理することが必要です。例えば、離婚の原因やこれまでの経緯について話す際には、日時や具体的な出来事を明確にし、主張が一貫していることを示すことが大切です。矛盾や曖昧さがあると、信憑性が低くなり、調停委員に正確な判断をしてもらうことが難しくなります。

さらに、自分の主張が感情に偏りすぎないよう注意しましょう。調停委員は中立的な立場で状況を判断します。そのため、自分の感情や相手への非難を優先するよりも、具体的な事実や現実的な希望を説明することで、調停委員が納得しやすい形で意見を伝えることができます。

例えば、親権や養育費の話し合いでは、相手への批判よりも、子供の利益を最優先に考えている姿勢を示すことが重要です。具体的な例として、自分が子供のためにどのような環境を整えるつもりか、どのような養育プランを考えているかを説明することで、調停委員の理解を得やすくなります。

調停の場で信頼を得るためには、事実を冷静に整理し、感情的な主張を控えつつ、具体的かつ一貫した意見を述べることが重要です。これにより、調停を円滑に進める可能性が高まります。

③適切な証拠を準備する

離婚調停では、主張の信憑性を高め、調停委員に状況を正確に理解してもらうために、適切な証拠を準備することが重要です。証拠がないまま感情的な意見や一方的な主張を繰り返すだけでは、調停委員や相手方の納得を得るのは難しくなります。

まず、証拠として有効なものを整理する必要があります。例えば、離婚の原因として不貞行為を主張する場合には、相手と不倫相手との写真やメッセージのやり取りの記録などが有力な証拠になります。また、家庭内での暴力を理由に離婚を求める場合は、診断書や警察への相談記録などが役立ちます。

証拠は可能な限り客観的で具体的なものを準備することが重要です。証拠が具体的であるほど、調停委員が状況を正確に把握しやすくなり、主張の説得力が増します。一方で、証拠が曖昧であったり不完全であったりすると、相手から反論される隙が生まれるため注意が必要です。

さらに、証拠の整理も重要です。調停の場で提示する際に混乱が生じないよう、証拠は時系列や種類ごとに分けて準備しておきましょう。また、調停委員に分かりやすく説明できるように簡潔なメモを作成しておくことも有効です。

適切な証拠を準備することで、調停委員が事実を正確に把握でき、調停をスムーズに進められる可能性が高まります。証拠の準備は時間と手間がかかるものの、調停の結果に大きな影響を与えるため、事前にしっかりと準備を整えることが大切です。

④譲歩できる部分は譲歩する

離婚調停では、双方の合意を目指して話し合いを進めるため、譲歩できる部分を見極め、柔軟に対応する姿勢が求められます。一方的に自分の主張を押し通そうとする姿勢では、調停が行き詰まり、解決までに時間がかかる可能性があります。

まず、事前に自分の希望を整理し、何が絶対に譲れない条件で、どこが譲歩可能な部分であるかを明確にしておくことが大切です。例えば、親権や養育費については強い希望があっても、財産分与や離婚時期についてはある程度柔軟に対応できる場合もあります。このように優先順位をつけることで、調停中の話し合いをスムーズに進めやすくなります。

次に、譲歩する際には、ただ一方的に妥協するのではなく、相手方にも一定の譲歩を求める形で交渉を進めることが有効です。例えば、財産分与で自分が譲歩する代わりに、親権や面会交流に関する条件を自分に有利な形で調整するよう提案することで、双方が納得しやすい解決策を見つけることができます。

さらに、譲歩の姿勢を見せることは、調停委員の心証にも良い影響を与えます。話し合いに前向きで柔軟な姿勢を示すことで、調停委員が公平な解決を目指して調整しやすくなるため、結果的に自分にとっても有利な方向に話が進む可能性が高まります。

離婚調停での譲歩は、相手の要求を全て受け入れることを意味するのではなく、互いに妥協点を見つけ、現実的な解決を目指すための一つの手段です。冷静に譲歩の範囲を見極め、調停の場で効果的に活用することで、円満な合意に至る可能性が高まります。

⑤不利な発言に気を付ける

離婚調停では、自分の発言が調停委員や相手方にどのように受け取られるかを慎重に考えながら話すことが重要です。不適切な発言や感情に任せた発言は、自分の立場を不利にするだけでなく、調停全体の進行に悪影響を与える可能性があります。

まず、相手を攻撃したり非難したりする発言は避けるべきです。感情的な発言により、相手方の反感を買うだけでなく、調停委員にも「冷静さを欠いている」と判断されることがあります。冷静かつ理性的な態度を保つことで、調停委員に自分の主張をより受け入れてもらいやすくなります。

また、曖昧な発言や矛盾した主張も不利な結果を招く可能性があります。例えば、「もう話し合うつもりはない」と言いながら「条件次第では検討する」と述べるような矛盾した発言をすると、調停委員から信頼を失いかねません。一貫性を持った発言を心掛け、自分の考えや希望を明確に伝えることが重要です。

さらに、相手の提案に対して感情的に即答するのは避けるべきです。一旦冷静に受け止めてから、必要であれば「少し考えさせてください」と伝えることで、慎重に対応する姿勢を示すことができます。このようにして、感情的な衝動による発言を防ぐことができます。

不利な発言を避けるためには、自分の主張や意見を整理し、調停の場でどのように伝えるべきかを事前に考えておくことが大切です。弁護士に相談し、具体的なアドバイスを受けておくことで、より効果的に対応できるようになるでしょう。冷静で慎重な発言を心掛けることで、調停を有利に進めることが可能です。

離婚調停で勝つためのポイント

離婚調停を有利に進めるためには、冷静で理性的な対応と事前の十分な準備が不可欠です。調停の場は、感情的な対立を解消し、現実的な解決策を模索する場です。そのため、ただ自分の意見を主張するだけではなく、調停委員や相手方と建設的な話し合いを進めるための工夫が求められます。

まず重要なのは、自分のゴールを明確にすることです。離婚調停では、親権、養育費、財産分与など複数の問題が議題となることが多いため、何を最優先とし、どの点で妥協できるかを明確にしておくことが必要です。これにより、話し合いの方向性を見失うことなく、調停を効果的に進めることができます。

次に、調停では相手の主張や立場を理解し、それに基づいて現実的な提案を行うことも重要です。一方的な主張ではなく、相手が受け入れやすい解決策を提示することで、合意に至る可能性が高まります。この姿勢は調停委員にも好印象を与え、話し合いをスムーズに進める助けとなるでしょう。

さらに、弁護士に相談しておくことも大きなポイントです。調停の場では法的な知識が欠かせませんが、個人だけでは判断が難しい場面も多くあります。事前に専門家からアドバイスを受けておくことで、法的な観点から最適な解決策を見つけやすくなります。

最後に、精神的な準備も忘れてはなりません。離婚調停は長時間に及ぶことがあり、時には感情的に辛い状況に直面することもあります。落ち着いて話し合いに臨むためには、心身の健康を保つことが大切です。

離婚調停を成功させるためには、感情的にならず、冷静で前向きな姿勢を持つことが重要です。適切な準備と対応を行うことで、より良い解決策に近づくことができるでしょう。

 

離婚調停で勝つためのポイント

Q&A

Q1.離婚調停で勝つにはどんな準備が必要ですか?

離婚調停で勝つためには、事前に主張を整理し、事実を裏付ける証拠を準備することが重要です。また、自分の希望や優先順位を明確にしておくことで、調停を有利に進める基盤を整えることができます。

Q2.離婚調停で勝つためには調停委員とどう接するべきですか?

離婚調停で勝つには、調停委員に誠実で冷静な態度を示し、自分の主張を分かりやすく伝えることが大切です。攻撃的な発言を控え、事実に基づいた説明を行うことで、調停委員からの信頼を得られる可能性が高まります。

Q3.離婚調停で勝つには弁護士を依頼するべきですか?

離婚調停で勝つためには、弁護士を依頼して法的な知識や助言を得ることが大きな助けになります。特に複雑な問題や証拠の提示が必要な場合、弁護士を早い段階で依頼することで、調停を有利に進めることが期待できます。

まとめ

本記事では、離婚調停で勝つには何に気を付けたら良いのか、調停を有利に進めるコツについて解説させていただきました。離婚調停を成功させるためには、冷静さを保ちながら事前に十分な準備を行い、調停委員との信頼関係を築くことが重要です。また、事実に基づいた主張や適切な証拠の提示、譲歩できる部分を柔軟に対応する姿勢も、合意に向けた大きなポイントとなります。

調停は感情的な場面に陥りやすいものですが、自分の希望や優先順位を整理し、冷静に対応することで、より良い結果を引き寄せることができます。離婚調停について不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることで、安心して離婚調停に臨みましょう。

また、当法律事務所でも、離婚調停に関するご相談をお受けしております。弁護士による法律相談は、初回無料となっておりますので、ぜひお気軽にご活用いただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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