• 離婚準備

子なしの離婚|子なし夫婦の離婚の仕方は?離婚率は?その後についても解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

結婚生活を続ける中で、価値観の違いやすれ違いから離婚を考える夫婦は少なくありません。そんな中でも、子どもがいない夫婦の場合は、離婚に伴う親権や養育費の問題が発生しないため、比較的スムーズに離婚手続きが進むケースが多いとされています。

しかし、たとえ子どもがいない夫婦の離婚でも、婚姻期間が長い場合の財産分与や、相手方に不貞行為などがあった場合の慰謝料請求など、重要な検討事項や争点は少なくありません。

そこでこの記事では、子なし夫婦が離婚する際の、具体的な進め方や注意点について、弁護士が詳しく解説させていただきます。また、日本における子なし夫婦の離婚率の実態や、離婚後の生活への影響についても触れていきます。

離婚は人生における大きな決断ですので、後悔しない離婚をするためには、離婚の全体の流れや適切な準備について把握しておくことが重要です。本記事が、子なし夫婦で離婚を検討しているケースで、少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

子なしの離婚

それでは、日本における子なし夫婦の離婚の実態について、簡単に見ていきましょう。

子なし夫婦の離婚率

子なし夫婦の離婚と子どものいる夫婦の離婚と聞くと、「子どもがいない夫婦の方が、自分ひとりの都合で別居や離婚ができる」といったイメージが一般的ではないでしょうか。そのため、「子どものいる夫婦の離婚率よりも、子なし夫婦の離婚率の方が高そう」という意見を聞くこともあります。

この点に関して、厚生労働省の「人口動態統計」に具体的な数字が載っておりますので、見てみましょう。

以下の表は、厚生労働省の「2022年(令和4年)人口動態統計 確定数」より、夫妻が親権を行う子の数・妻が親権を行う子の数別の離婚件数のデータを簡略化したものになります。

夫妻が親権を行う子の数

離婚件数

割合(%)

子どもなし

84,534

47.2

子どもあり

94,565

52.8

総数

179,099

100

参考:2022年人口動態統計 確定数 離婚(e-Stat)

上記データによると、離婚件数の総数が179,099件となっており、そのうちの約47%に該当する84,534件が、子どものいない夫婦による離婚の件数という結果となっています。

離婚件数全体で見れば、離婚率は子どもの有無によって大幅には変わらない、ということが分かります。

さて、離婚すること自体、個別のケースによってさまざまなメリットやデメリットがありますが、以下では子どもがいない夫婦にとってのメリットとデメリットについてご紹介いたします。

 

離婚方法のメリット・デメリット

 

子なし離婚のメリット

子なし夫婦の離婚のメリットは、なんといっても離婚の前後の「身軽さ・手軽さ」というシンプルさにあるといえるでしょう。

①離婚後に再婚しやすい

子どもがいる夫婦の場合、再婚を考える際には、子どもの気持ちや親権、養育環境、さらには新しい配偶者との関係構築といった多くの要素を考慮しなければなりません。特に、子どもが前の配偶者と定期的に面会交流している場合、再婚相手と子どもの関係の構築が難しくなることがあります。

一方で、子なし夫婦の場合、こうした要素を考える必要がないため、再婚のハードルが大幅に低くなります。新しいパートナーとの関係を築く上で、子どもの意向を考慮する必要がなく、より自由に再婚相手を選びやすいといえます。また、法律上の手続きや金銭的な負担も軽減されるため、離婚後に再婚しやすいのがメリットの一つです。

②離婚条件の検討事項が少ない

子どもがいる夫婦の離婚では、親権の問題や養育費、面会交流の取り決めが不可欠です。親権をどちらが持つか、養育費をいくら支払うか、面会の頻度や条件をどうするかといった多くの交渉が必要となり、話し合いが長期化することも少なくありません。また、場合によっては家庭裁判所の調停を利用しなければならないケースもあります。

これに対し、子なし夫婦の離婚ではそうした交渉が不要であり、主に財産分与や慰謝料といった夫婦間の問題だけに集中できます。そのため、比較的短期間で離婚手続きを進めやすく、協議離婚で円滑に解決できる可能性が高いです。

③養育費の支払いや面会交流がない

子どもがいる場合、離婚後も養育費の支払い義務が発生し、一般的には子どもが成人するまで、定期的な養育費の支払いが継続されます。また、親権を持たなかった親は、子どもと面会交流を行うことになります。そのため、養育費の支払いが滞った場合に催促したり、面会交流の日程調整をしたりするために、元配偶者と離婚後も連絡を取らなければならないケースがあります。元配偶者とは連絡を取りたくない、関わりたくない、と思う人にとっては、離婚後も関係が継続することがストレスになることでしょう。

しかし、子なし夫婦の場合、基本的には金銭的な清算は離婚時にまとめて行われるため、離婚後に連絡を取る必要は基本的にはありません。そのため、二度と関わりたくない場合に元配偶者との関係を断ち切りやすく、精神的な整理をつけやすい、という側面があります。

子なし離婚のデメリット

子なし夫婦の離婚にはメリットだけでなく、当然ながらデメリットも存在します。ここでは、子なし夫婦の離婚における主なデメリットについてご紹介いたします。

①精神的な支えを失いやすい

結婚生活を送る中で、パートナーは生活の支えであり、精神的な拠り所となることが多いものです。子どもがいない夫婦の場合、離婚後に「家族」と呼べる存在が一気にいなくなり、孤独を感じやすくなることがあります。特に長年連れ添った夫婦の場合、日常生活のあらゆる場面で孤独感が増し、精神的なダメージが大きくなる可能性があります。

②経済的な負担が大きくなる

婚姻中は、家賃や生活費を夫婦で分担することで、経済的な負担が軽減されることが一般的ですが、離婚後は一人で生活費を賄う必要があります。そのため、特に専業主婦(主夫)や収入の少ない側にとっては、大きな負担となる可能性があります。

また、離婚に伴う財産分与や慰謝料の問題も発生するため、場合によっては貯蓄が少なくなってしまい、婚姻中と比べて生活水準が低下することも考えられるでしょう。

以上が、子なし夫婦の離婚におけるメリットとデメリットになります。とはいえ、こうしたメリットやデメリットが生じるかどうかは個別のケースによって異なりますし、子なしでも再婚が難しい場合や、離婚したことでかえって経済的な負担が軽減する場合もあるでしょう。

子どもがいない状態で離婚を考えたときには、離婚後の生活も考慮して、どういったメリットやデメリットが生じる可能性があるかを十分に確認しておくことが大切です。

離婚の仕方【子供なしの場合】

次に、子どもがいない夫婦の離婚の仕方について、簡単に見ていきましょう。

(1)子なし夫婦の離婚の流れ

子どもがいない夫婦の離婚は、前述した通り、親権や養育費に関する問題が発生しないため、比較的スムーズに進めることができるケースが多いです。以下が、子なし夫婦の離婚の一般的な流れとなります。

まず、離婚を決断する前に、本当に離婚が最善の選択かどうかを冷静に考えましょう。夫婦間の問題が話し合いで解決できるかどうか、離婚以外の選択肢も検討することが大切です。一方で、関係が修復不可能であり、離婚を強く望む場合は、具体的に離婚協議を進めることとなります。

次に、離婚協議を行います。離婚協議で話し合うのは、主に次の項目についてです。

  • 財産分与(婚姻中に築いた財産をどのように分けるか。)
  • 慰謝料(どちらかに離婚原因となる行為がある場合、慰謝料の支払いや金額について。)
  • 年金分割(年金分割をするかどうか、その割合について。)
  • 婚姻費用(離婚前に別居する場合は、その間の生活費の負担や金額について。)

全て話し合いで合意できれば、離婚届を提出して離婚成立となります。ですが、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。

離婚調停では、調停委員が夫婦双方の意見を聞き、中立的な立場で解決策を提案してもらえます。調停は通常、数ヶ月~半年程度かかりますが、当事者で話し合いを進めるより、冷静に話し合いを進めることができるため、比較的スムーズに離婚することが期待できるでしょう。

調停でも離婚の合意が得られない場合は、離婚裁判によって離婚請求することになります。ただし、裁判離婚は時間と費用がかかるため、可能な限り協議や調停で解決するのが望ましいです。

(2)子なし離婚で慰謝料は請求できる?

離婚時に慰謝料を請求できるかどうかは、離婚原因や責任の有無によるため、子どもの有無は関係ありません。重要なのは、相手にDVや不貞行為などの、離婚原因を生じさせた責任があるかどうかです。

一般的に、慰謝料が認められるのは、配偶者に不貞行為(浮気・不倫)、DV、悪意の遺棄(生活費を渡さない、一方的に家を出るなどの行為)、精神的虐待(モラハラ)などがあるケースです。これらの行為によって婚姻関係が破綻した場合、精神的苦痛を受けた側は、配偶者に慰謝料を請求することができます。

ただし、「価値観の違い」や「性格の不一致」など、どちらにも明確な責任がない場合は、慰謝料請求が難しいのが実情です。たとえば、夫婦の間で自然に気持ちが冷めていき、双方合意のもとで円満に離婚する場合には、慰謝料は発生しません。

子なし夫婦の離婚であっても、相手に非がある場合は慰謝料を請求できます。ただし、全ての離婚で慰謝料が認められるわけではないため、自分のケースで請求できるかどうかをよく確認し、場合に応じて弁護士などに相談することをおすすめいたします。

(3)子なし離婚の離婚準備のポイント

離婚をスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。特に、共働き夫婦の場合、妻が専業主婦である場合、夫婦に持ち家がある場合は、以下のポイントに注意して離婚準備を進めましょう。

 

子なし離婚の準備ポイント

 

共働き夫婦の場合

共働き夫婦の離婚では、それぞれが経済的自立をしやすい一方で、共有財産の整理が複雑になりがちです。婚姻中に築いた財産は、離婚時に夫婦で折半するのが基本となるため、預貯金や不動産、株式などの資産がどのように分けられるかを確認し、整理しておく必要があります。

また、婚姻期間中に積み立てられた分の年金は分割できる可能性があるため、それぞれの年金の状況を確認し、年金分割の必要性を検討しましょう。

そして、離婚に伴い姓が変わる側は、職場や公的機関での手続きが発生します。旧姓に戻るのが原則ですが、婚姻中に名乗っていた姓を離婚後も名乗り続けることができますので(婚氏続称)、仕事の都合で離婚後も姓を変えたくない場合などには、手続きを確認しておきましょう。

専業主婦の場合

専業主婦の離婚では、経済的な自立が大きな課題となります。そこで、離婚後の収入・仕事の確保を考えることが重要です。同時に、財産分与や慰謝料の有無を整理し、離婚時に受け取れる財産がどれだけあるかを確認しておきましょう。

専業主婦であった場合、すぐに安定した収入を得ることが難しいこともあるため、就職や資格取得の準備は早めに進めることが望ましいです。また、健康保険や年金の手続きも忘れずに行い、扶養から外れた後の生活基盤を整えることが大切です。

住居の確保も重要ですから、実家を頼れるか、公的支援制度を申請できるか、といった点についても検討しましょう。

持ち家がある場合

婚姻中に購入した持ち家がある場合、離婚後の住居やローンの取り扱いについて慎重に検討する必要があります。住宅ローンが夫婦共同の名義になっている場合は、どちらがローンを引き継ぐのか、または売却して精算するのかを決めなければなりません。家をどちらかが所有する場合は、もう一方に相応の金銭を支払う必要があるでしょう。どちらも家を引き継がない場合は、不動産を売却して現金化することで、現金で財産分与を行えます。

いずれにせよ、不動産会社への相談や売却手続きは、自分一人で進められないため、持ち家の分配・処分をどのようにするのかを、早めに相手と話し合っておかなければなりません。持ち家には固定資産税などの支払い義務もあるため、離婚後にどちらが引き受けるのか、きちんと明確にしておきましょう。

離婚してよかった?子なし離婚のその後

離婚後の生活は人それぞれです。子どもがいない場合、離婚後の負担が少なく新たな生活をスタートさせやすい一方で、離婚しなければよかった、と後悔するケースもあるようです。

離婚してよかったケース

結婚生活の中で価値観の違いに悩む場面や、相手に気を遣う場面が多かった場合は、自分のペースで生活できるようになり、自由度が増すという利点があります。自分の意思でライフスタイルを決められますので、結婚によって諦めたキャリアやライフプランを実現させさせることができた人もいるようです。

たとえば、配偶者の仕事の都合に合わせて専業主婦になった妻が、「自分の人生をこのまま終わらせていいのだろうか」と疑問を抱き、離婚後に長年の目標であった海外留学と復職を果たした、というケースがあります。

また、結婚していた頃は配偶者との関係を優先し、交友関係を制限していた人が、気兼ねなく交友範囲を広げ、プライベートな時間を充実させているケースもあります。

離婚を後悔しているケース

離婚して後悔するケースでは、孤独感や経済的な面で後悔するケースが多いようです。

結婚生活が長かった場合、配偶者と過ごす時間が当たり前になっており、突然の一人暮らしに寂しさを覚えることも少なくないのでしょう。

経済的な面では、特に専業主婦やパート労働などで収入の少なかった女性が、離婚後の生活で苦労するケースを見受けます。

離婚によって財産分与や慰謝料請求をすることができるとはいっても、それだけで離婚後の生計を立てるのは難しいのです。

子なしの離婚に関するQ&A

Q1.子なし夫婦の離婚率を教えてください。

厚生労働省の「人口動態統計(2022年)」によると、総数179,099件の離婚件数のうち、約47%に該当する84,534件が、子なし夫婦の離婚件数でした。この割合を見ると、子どものいる夫婦と子なしの夫婦とで、離婚の割合にそこまでの差がないことが分かります。

Q2.子なし離婚のメリットはありますか?

A:子どもがいない夫婦の場合、親権や養育費などの問題が発生しないため、比較的スムーズに離婚手続きを進められる可能性があります。また、離婚後の生活設計を立てやすくなる点もメリットといえます。特に、子どもに関わる将来の学費や進路などを考慮する必要がないため、単身で新たなキャリアやライフスタイルを選択しやすくなります。

Q3.子なし離婚のデメリットはありますか?

子どもがいない夫婦の場合、離婚後に「家族」と呼べる存在が一気にいなくなり、孤独を感じやすくなるという点や、家賃や生活費などを一人で負担しなければならず、財産分与や慰謝料の問題も含めて経済的な負担が増大し、婚姻中と比べて生活水準が下がる可能性があるという点がデメリットとなります。

まとめ

本記事では、子なしの夫婦の離婚について解説させていただきました。

子どもがいない離婚だからこそのメリットやデメリットがありますので、離婚を考えたら十分に確認しておきましょう。

そして、離婚の流れは基本的に、子どもがいる場合の離婚と変わりませんが、子なし離婚の場合の方が、検討事項が少ないのが一般的です。とはいえ、財産分与ひとつ取っても、婚姻期間の長短や財産・資産の態様などによってはかなり複雑なケースもあります。子なしだから気軽に離婚できるだろう、と思い込みで離婚手続きを進めるのではなく、事前にしっかり離婚手続きの進め方を把握しておくことが重要です。

離婚の進め方や離婚条件の交渉などでお悩みがあるときには、なるべく早めに法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。当法律事務所でも、弁護士による法律相談を初回は無料で行っておりますので、ぜひお気軽にご活用ください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

関連記事