一方的な離婚|妻や夫から一方的に離婚したいと言われたら慰謝料や解決金はどうなる?

妻や夫から突然「離婚したい」と切り出されると、驚きや戸惑いを感じる人は少なくないかと思います。特に、お互い不倫やDVもなく、ごく一般的な夫婦としての生活をしていた場合、突然一方的に離婚を切り出されたら、どのように対応すべきか慌ててしまうこともあるでしょう。
この記事では、一方的に離婚を言い出された場合に、離婚を拒否しても認められてしまうのか、相手の主張する離婚原因によって違いはあるのか、といった点について弁護士が具体的に解説させていただきます。
また、一方的な離婚を言い出したことに対して慰謝料を請求できるのか、といった問題や、一方的に離婚したいと言われた場合の対応についても詳しくご説明いたします。
一方的に離婚を切り出されてお悩みの方や、離婚を言い出そうかと検討している方にとって、少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
一方的な離婚
それでは、一方的な離婚について、まずは基本的な事項から見ていきましょう。
一方的な離婚は原則不可
結論から言いますと、日本では一方的に離婚することは原則としてできません。これは、民法に次の通り定められているように、夫婦双方が離婚することに合意することによって、離婚することができると決められているからです。
(協議上の離婚)
民法第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
したがって、たとえ一方が「離婚したい」と強く望んでも、相手の同意がない限り、ただちに離婚が認められるわけではないのです。
なお、日本では離婚した夫婦の約9割が、話し合いによる協議離婚によって合意し、離婚しています。話し合いで合意できない場合は、離婚調停や離婚裁判などの手続きへ移行することになります。ただし、裁判にまで進んだとしても、法律で定められている離婚原因(法定離婚事由)が認められない限り、裁判によっても離婚することはできません(民法第770条)。
そのため、一方だけの意思で強制的に離婚を成立させることはできない、というのが一般的な原則です。
性格の不一致で一方的な離婚は難しい
一方的な離婚は原則としてできない、とご説明しましたが、特にその離婚原因が「性格の不一致」である場合は、離婚裁判まで発展したとしても、離婚が認められることは難しいでしょう。
離婚裁判で離婚が認められるためには、以下のいずれかの法定離婚事由に該当しなければなりません。
(裁判上の離婚)
民法第770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
性格の不一致は上記の民法第770条1項1号~4号までの離婚原因に該当しないため、同1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかで離婚の可否が決まることになります。ですが、この「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかは、長期間に渡り一切連絡を取らずに別居生活を続けているなどの、夫婦関係が完全に修復困難だと判断できるだけの事情が必要です。単に「話が合わない」「価値観が違う」という程度の性格の不一致では、裁判所が婚姻関係の破綻を理由に離婚を認めることはないでしょう。
以上の通り、離婚裁判で性格の不一致による離婚が認められるハードルは高いため、どれだけ一方が離婚したがっていても、性格の不一致で一方的に離婚をするのは難しいのです。
一方的に離婚できる場合
反対に、民法第770条1項各号の法定離婚事由に該当する場合は、相手が離婚に反対していても離婚裁判で離婚することができる可能性があります。
たとえば、相手が離婚を拒否していても、一方的に離婚が認められる場合として代表的なのが「不倫(民法第770条1項1号)」のケースです。民法第770条1項1号には「配偶者に不貞な行為があったとき。」と明記されていますが、この「不貞行為」が俗にいう「不倫」に当たります。
配偶者が長期間にわたって別の異性と深い関係を続けている場合や、その事実が発覚しても関係を断とうとしない場合などが典型的です。裁判所は、夫婦関係が修復不可能なまでに破綻しているかどうかを総合的に判断しますので、不倫相手とのやり取りがわかるSNSやメールのやり取り、写真や領収書など、不倫を裏付ける証拠が重要な鍵となります。
なお、一方的に離婚を求めてきた側が不倫をしていたような場合は、「有責配偶者からの離婚請求」ということになり、離婚裁判によっても離婚が認められる可能性は低いです。これは、婚姻関係を壊した当事者が一方的に離婚を望むことは、信義誠実の原則に反すると見なされているからです。被害を受けた方の配偶者としては、夫婦関係を壊されただけでなく、離婚も押しつけられる形になり、公平性を欠くという考え方が根底にあるためです。
一方的な離婚での慰謝料の相場は?
一方的な離婚でも、相手の立場や離婚原因によって離婚が認められるかは異なることが分かりました。
次に、一方的な離婚の場合に慰謝料を請求できるのか、請求できる場合の相場の金額はいくらかについて、見てみましょう。
一方的に離婚を求められたとき、相手に慰謝料を請求できるかどうかは、離婚に至った原因が不法行為に当たるかどうかによっても変わってきます。
たとえば、不倫やDVといった法定離婚事由があれば、慰謝料を請求できる根拠となります。この場合の慰謝料の金額は行為の内容や期間の程度などにもよりますが、一般的な相場は次の通りです。
原因 | 慰謝料の相場 |
不貞行為(浮気・不倫) | 100万円~500万円 |
悪意の遺棄 | 50万円~300万円 |
DV(家庭内暴力) | 50万円~500万円 |
性行為の拒否 | 0円~100万円 |
突然一方的に離婚を言い渡される | 0円~100万円 |
配偶者が不貞行為(浮気や不倫)をした場合の慰謝料は、その行為の悪質さや継続期間、不貞相手の関与の度合いなどに応じて決まり、相場は100万円から500万円とされています。生活費を渡さないなど、家族を見捨てる行為(悪意の遺棄)が原因で離婚に至った場合の慰謝料の相場は50万円から300万円程度です。DVが離婚の原因となった場合は、その暴力の内容や頻度、被害者が受けた精神的・身体的苦痛の程度を総合的に考慮し、50万円から500万円が目安とされており、とりわけ深刻な被害が認められれば高額の慰謝料が認められることもあります。
特に理由の説明もなく一方的に離婚を宣告された場合、通常は夫婦のどちらにも有責性がないため、慰謝料は認められないのが原則です。ただし、一方的に離婚を宣告されたことによる精神的苦痛に対して、慰謝料が認められることがあります。この場合の相場は、0円から100万円程度です。
慰謝料の代わりに「解決金」
一方的な離婚を切り出されたとき、相手の行為に不倫やDVなどの不法行為が認められない場合には、慰謝料を請求することが難しいとされることがあります。ですが、法律上の不法行為として慰謝料を認められない場合でも、当事者同士で話し合いを重ねるなかで「解決金」という形で金銭の支払いが行われることがあります。
解決金とは、法律で定められた不法行為に基づく慰謝料ではないものの、離婚の成立を円滑に進めるため、あるいは今後の争いを避けるためなどの理由で、双方が合意して支払われるお金のことです。たとえば、「離婚に合意する代わりに解決金として100万円を支払う。」などといった取り決めが行われます。
法的な責任を認めるものではありませんが、実質的には「一方的に離婚を宣告されたことに対する慰謝料」という性質を持つのが解決金です。
なお、解決金に相場の金額というものはないため、金額や支払い方法などの条件は夫婦間の協議次第となります。
一方的な離婚と養育費
一方的に離婚を切り出された場合にも、子どもがいる夫婦であれば「養育費」の支払いが問題となります。そして、一方的に離婚を求めた場合でも、相手が子どもを引き取って養育するのであれば養育費を支払う必要がありますし、一方的に離婚を求められた側も、養育費を請求されたら支払わなければなりません。
なぜかというと、子どもの養育費は、離婚原因や「どちらが離婚すると言い出したか」に関係のない、子どもの権利だからです。
こうした養育費は、子どもが成長して自立するまでに必要な学費や生活費を補う重要な役割を果たします。そのため、どちらが「離婚を言い出した側」かという点や、離婚に至る事情(不倫や性格の不一致など)にかかわらず、夫婦が共に子どもを育てる責任を負っている以上、支払いを免れられるわけではありません。実際に支払われる金額は、両親の収入や子どもの年齢、生活状況などを踏まえて決定されるのが一般的です。家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を目安に話し合われることが多いため、まずはお互いの家計状況をきちんと整理し、冷静に協議を進める必要があります。
ただし、当事者間の話し合いだけでは意見がまとまらないことも少なくありません。そうした場合には、家庭裁判所での調停手続きを利用するのがおすすめです。調停では、裁判所の調停委員が中立的な立場から双方の主張を聞き、合意点を探る手伝いをしてくれます。もし調停でも合意に至らなければ、審判という手続きに移行し、裁判官が子どもの利益を第一に考えて、養育費の金額や支払い方法を決定することになります。
一方的な離婚と財産分与
一方的に離婚を求められた場合でも、離婚時の財産分与は「離婚原因やどちらが離婚を言い出したか」に左右されません。そのため、基本的には夫と妻とで2分の1ずつの割合で、預貯金や不動産などの共有財産を分配することになります。
したがって、「自分に非がないから財産を多くもらえる。」といったことはありませんし、「相手が勝手に離婚を言い出したのだから、相手の取り分は少なくなる。」といった主張は認められません。
離婚を求めた側かどうかにかかわらず、「夫婦の共有財産を公平に分ける」という考え方が財産分与の大原則なのです。
一方的に離婚したいと言われたら
さて、自分は離婚する気もないのに、相手から一方的に離婚したいと言われた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。ポイントは、次の9つです。
- すぐに返事をせず、冷静に状況を整理する。
- 自分の希望や方針を明確にしておく。
- 離婚理由や具体的な条件を相手に確認する。
- 不倫やDVなどを疑う場合は証拠を収集する。
- 子どもがいる場合は親権や養育費について検討する。
- 相手とのやり取りや話し合いの内容を記録する。
- 財産や今後の生活設計を見直す。
- 必要に応じて調停や裁判の準備を進める。
- 弁護士などの専門家に相談する。
自分はまったく離婚を考えていないのに、相手から一方的に離婚を切り出されると、大きな戸惑いや不安を覚える人は少なくないでしょう。しかし、こうした場面であわてて即答したり、感情的に反発したりしてしまうと、後々の話し合いがスムーズに進まなくなる恐れがあります。まずは冷静さを保ちながら、今置かれている状況を整理することを意識してみてください。その上で、離婚を迫られた場合に自分がどうしたいのか、離婚を拒否する理由や、夫婦関係を修復したいのかどうかなど、自分自身の希望や方針をはっきりとさせることが大切です。
もし相手が不倫やDVなど、法的に問題となる行為をしているのではないかと疑われる場合には、証拠を集めておくことで、後々の話し合いを有利に進めていくことが期待できます。
加えて、子どもがいる夫婦の場合は、離婚が子どもに与える影響を考慮しながら、親権をどちらが持つのか、養育費をどのように負担するのか、といった具体的な検討が必要になります。相手とどのように協力していくのかという点を話し合うためにも、事前に自分の考えを整理しておくと良いでしょう。
また、相手とのやり取りや話し合いの内容はできるだけ詳しく記録しておくことをおすすめします。後で何をどのように話したかを確認できれば、双方の認識違いやトラブルを防ぎやすくなるからです。あわせて、もし離婚を拒否し続ける場合や、逆に離婚に応じる可能性を検討する場合でも、財産分与や今後の生活設計についてしっかりと考えておくことが大切です。実際に離婚の話し合いが進展しなくても、どのように生活していくかを整理しておけば、気持ちの面でも安心感が増すでしょう。
もし話し合いだけでは解決が難しいと感じたら、家庭裁判所での調停や裁判を視野に入れておくことも選択肢の一つです。調停では第三者である調停委員が仲介してくれるため、感情的な対立を抑えながら、お互いの主張を整理して解決策を模索しやすくなります。
そして、こうした検討や手続きを一人で進めるのが難しい場合は、法律の専門家である弁護士などに、早めにご相談いただくことがおすすめです。
一方的な離婚に関するQ&A
Q1.一方的に離婚したいと言われた。離婚が認められてしまいますか?
A:離婚は原則として夫婦双方の合意が必要で、一方の意思だけでただちに成立するわけではありません。しかし、相手が裁判所に離婚を求め、法定離婚事由(不倫やDVなど)があると認められれば、たとえ自分が反対していても離婚が成立する可能性はあります。
とはいえ、性格の不一致など法定離婚事由に該当しない理由であれば、裁判所も安易に離婚を認めません。まずは、離婚を切り出された理由や状況を冷静に確認し、話し合いで解決できるかどうかを探ってみることが大切です。
Q2.一方的に離婚を宣告されて傷ついたので慰謝料を請求できますか?
A:一方的に離婚を求められたこと自体を理由として、直ちに慰謝料が認められるわけではありません。慰謝料はあくまでも「不倫やDVなどの不法行為」によって精神的苦痛を受けた場合などに支払われるものです。たとえば、不倫の事実があった、あるいはDVを受けたなど、相手に法的に責任を問える行為があれば慰謝料を請求できる可能性は高まります。
しかし、「ただ傷ついた」という理由だけでは慰謝料の対象にはなりにくいため、離婚を求められた経緯や相手の行為をよく整理し、必要があれば弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
Q3.不倫やDVなど特別な事情がなくても、一方の意思だけで離婚が成立することはあるのでしょうか?
A:不倫やDVなどの法定離婚事由がない限り、相手が強く離婚を望んでいても、裁判所が一方の意思だけで離婚を認めるのは容易ではありません。性格の不一致や価値観の違いなどの理由だけで、いきなり離婚が成立することは少なく、夫婦関係が事実上修復不可能なほど破綻していると裁判所が判断するような事情(たとえば長期間の別居など)が必要になります。
したがって、一方的に「離婚したい」と言われても、自分が納得できないなら話し合いを進めたり、調停を利用したりして関係を見直す機会を持つことができます。ただし、最終的に夫婦関係の破綻が認められるほど深刻な状況であると判断されれば、相手の離婚請求が通る可能性もゼロではありませんので、離婚を拒否する場合でも早めに状況を把握し、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
本記事では、一方的に離婚を言われた場合に離婚が認められるのか、といった法的問題について解説させていただきました。
日本では夫婦が離婚するためには夫婦双方の合意が必要なので、たとえ離婚裁判になった場合でも、不貞行為やDVなどの法定離婚事由が認められない限り、一方の意思だけで簡単に離婚が認められるわけではありません。
ただし、長期間の別居や夫婦関係の深刻な破綻が認められるなど、個別の事情によっては離婚請求が通る場合もあります。
ですので、配偶者から一方的に離婚を言い出された場合には、すぐには返答せずに、まずは落ち着いて状況を整理することが大切です。そして、相手の離婚理由をしっかりと確認した上で、夫婦関係の修復が可能かどうかを見極めるようにしましょう。
相手の意思だけで離婚が簡単に成立するわけではありませんが、早めに専門家に相談しておくと安心です。離婚を切り出された際の疑問や悩みは、当法律事務所の弁護士にご相談ください。初回の法律相談は相談料無料となっておりますので、Web予約フォームやお電話にて、お気軽にお問合せください。
この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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