相続放棄を自分でやってみたらどうなる?手続きの方法や注意点を解説
「相続放棄を自分でやってみたらどうなるの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。実は、専門家に依頼せずとも、自分自身でこの手続きを行うことは可能です。しかも費用を大幅に節約できるかもしれません。
しかし、手続きの過程で書類の記入ミスがあれば、相続放棄が無効となってしまうリスクも伴います。そこで、この記事では相続放棄を自分でやってみた人々の経験談を紹介し、手続きの正しい方法と注意すべきポイントを詳しく解説します。
目次
相続放棄を自分でやってみたら?体験談やブログでの感想をご紹介
実際に相続放棄を自分でやってみた人の感想をご紹介します。
(全て引用元は「X」)
亡くなった身内が共有名義の土地を持っていたりするとほんと面倒くさいよ!」
しかも絶縁しちゃってるから自分で全部やらなきゃならないし。」
家裁からの通知書もないのでそれから返送して受理されるかどうかですね…」
相続放棄を自分で行う際、多くの人が直面する課題には、複雑な書類手続きが挙げられます。この手続きは、一見シンプルに見えるものの、実際には戸籍謄本や土地の共有名義など、様々な事情が絡み合い、予想以上に時間と労力が要求されることが多いです。
具体的には、戸籍謄本や不動産の登記簿謄本など、正確な書類を集める必要がありますが、これが特に時間を要するプロセスです。
例えば、被相続人の戸籍謄本だけでなく、被相続人との続柄を証明するための自己の戸籍謄本も必要になる場合があります。また、相続放棄をするには家庭裁判所に申述書を提出する必要があり、この申述書には正確な情報の記載が求められます。
さらに、申述書の提出後、家庭裁判所からの受理通知を待つ間も、手続きが正しく進行しているかの不安を抱えることになります。
加えて、共有名義の不動産が絡む場合は、その分割協議や登記の手続きが必要になり、これがさらに手続きを複雑化させます。遠隔地に住んでいる場合や家族との絶縁状態にある場合は、これらの書類を自分一人で揃える必要があり、地理的・情緒的な障壁が手続きの負担を増加させます。
このように、相続放棄の手続きは、多くの書類や法的要件を正確に理解し、適切に対応することが必要です。手続きの煩雑さから「面倒くさい」「大変」との感想が多く聞かれるのは、こうした背景があるためです。自分で相続放棄の手続きを進める場合は、事前の準備と正確な情報の把握が重要となります。
相続放棄を自分でやる場合の手続き方法
手続は期限内に行う必要がある
相続放棄を自分で行う際には、特に期限内に申請を完了させることが必須です。法的には、相続が発生したことを知った日から正確に3ヶ月以内に相続放棄の手続きを開始する必要があります。この「相続が発生したことを知った日」とは、具体的には被相続人が亡くなったという事実を知った日を指します。
3ヶ月という期限を過ぎてしまうと、法的には相続を承認したとみなされてしまうため、その後で放棄を申し出ても認められなくなります。このため、相続放棄を考えている場合は、遺族からの連絡を受けた日からカレンダーを確認し、期限内に行動を開始することが重要です。
また、相続放棄の手続きには複数の書類が必要となるため、準備に時間がかかることが予想されます。そのため、3ヶ月という期間内に申請を行うためにも、早めに必要な書類の収集を始め、計画的に進めることが勧められます。この3ヶ月という期限は申請のためのものであり、手続きが完了する時期はそれを超えても問題ありませんが、申請自体は厳守すべき期限です。
相続財産を調査する
まずは、相続放棄をすべきか検討するために相続財産の調査をおこないます。例えば、以下のような資料を取得して相続財産の調査を行います。
- 通帳、貯金証書、オンライン口座の取引履歴
- 式や債券などの有価証券、生命保険の契約書
- 不動産の固定資産税の通知書や名寄帳(不動産登記簿)
- 借金やローンの契約書、取引履歴
被相続人の借金などの債務が財産を上回ることが明らかになったら、次に相続放棄の手続きを実際に進めていきます。
相続放棄の手続きにかかる費用を準備する
自分で相続放棄の手続きを行う際には、いくつか費用が必要になります。主な費用として、次のものがあります。これらの費用を合計すると、自分で手続きを行う場合の総額費用の相場はおよそ3,000~5,000円程度になると見積もられます。
収入印紙の費用
相続放棄の申述手続きの費用として、相続放棄申述人(相続放棄をする人)1人につき800円の収入印紙が必要です。この印紙は、申述書に貼付し、裁判所に提出します。家庭裁判所やコンビニエンスストア、郵便局などで購入できます。
郵便切手の費用
裁判所からの返信用に、連絡用の郵便切手を用意する必要があります。この切手の額面は裁判所によって異なり、一般的には400~500円程度です。具体的な額は管轄の家庭裁判所に問い合わせて確認する必要があります。
必要書類の取得費用
相続放棄の手続きには、以下の書類が必要になり、それぞれに取得費用がかかります。
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本: 750円
- 被相続人の住民票除票(または戸籍の附票): 300円
- 申述する人の戸籍謄本: 450円
また、市町村役場に郵送で戸籍謄本などを請求することも可能です。その場合は、往復の郵送費も必要になります。
市役所や裁判所で必要書類を準備する
次に、必要書類を準備します。準備した必要書類は、家庭裁判所へ申述手続きをする際に提出します。
ただし、相続放棄をする人が被相続人とどのような関係にあるかによって、必要な書類が異なります。そのため、手続きを始める前に、管轄の家庭裁判所のホームページを確認するか、または以下のページを参照ください。以下のページでは、被相続人との続柄別に必要書類を解説しています。
ここでは全員に共通する必要書類のみを列挙いたします。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
相続放棄申述書は家庭裁判所の窓口で入手することができ、また裁判所のホームページからダウンロードすることも可能です。成人と未成年者用の様式がありますので、間違えないように選んでください。
成人が相続放棄する場合:「相続の放棄の申述書(成人)」
未成年が相続放棄する場合:「相続の放棄の申述書(未成年)
相続放棄申述書の書き方は以下のページで解説していますので、自分で作成する場合はこちらを参考にしてください。
家庭裁判所に申述する
必要書類を用意して相続放棄申述書を作成したら、次は家庭裁判所に申述を行います。申述先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所となります。ここで言う「最後の住所地」とは、被相続人が亡くなった時点での住民票のある場所です。
裁判所のホームページに裁判所の管轄区域が掲載されていますので、該当する住所地の裁判所を調べてください。(裁判所HP:裁判所の管轄区域)
申述する際には、申述人の身分を証明する書類(例えば運転免許証)と認印も必要です。また、相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に完了させなければなりません。
相続放棄の申述は直接家庭裁判所に行って行うこともできますし、郵送で行うことも可能です。郵送の場合、配達証明付きの書留郵便を使うことで、書類が確実に届いたことを確認できます。
相続放棄照会書に回答する
相続放棄の申述手続きを行った後、家庭裁判所から照会書が送られてきます。この照会書は、相続放棄の理由や、相続の開始を知った日、申述が本人の意志に基づいて行われたかどうか、及び法定単純承認がなされていないかなどが問われます。
「法定単純承認」とは、相続人が被相続人の財産の一部または全部を処分した場合、その相続を承認したものと見なされことをいいます。照会書では、被相続人の財産の使用や債務の弁済を行っていないかが確認されます。もし、預金を引き出したり、借金の一部を返済したりなどの行為があった場合は相続放棄ができなくなります。
照会書には通常、「回答書」という書面が同封されており、これに必要事項を記入して返送することになります。裁判所ごとに書式が異なる場合もあるため、不明点があれば速やかに裁判所に問い合わせて確認しましょう。
相続放棄申述受理通知書が届く
照会書への回答を家庭裁判所に返送した後、通常10日程度で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この通知書が届くと、相続放棄の申述が正式に受理されたこととなり、これにより被相続人の一切の債務についての責任を負う必要はなくなります。
この「相続放棄申述受理通知書」を紛失してしまった場合、再発行はできませんが、心配する必要はありません。申請すれば、代わりとなる「相続放棄申述受理証明書」を裁判所に発行してもらうことができます。
なお、「相続放棄申述受理通知書」が届いても、稀に債権者や他の相続人から「相続放棄は無効である」と争われる場合があります。このような状況に直面した場合は、自分で対応せずに速やかに弁護士に相談してください。
相続放棄の手続きを自分でやってみたらかかる時間の目安
大変との体験談が多いのは戸籍の収集
相続放棄の手続きにおいて、多くの人が特に困難だと感じるのは戸籍関連書類の取得です。特に、被相続人の生前の情報が不足している場合や、家族と疎遠になっている場合には、この課題はさらに大きなものになります。
戸籍謄本を取得するには、まず被相続人の本籍地や最終の住所地を特定する必要があります。これらの情報があれば、戸籍謄本の取得は比較的スムーズに進むことが期待できます。
しかし、情報が不足している場合には、まず自己の戸籍や住民票を手がかりにして、被相続人の戸籍が記録されている市役所を突き止める作業が必要になります。これには、複数の市役所に連絡を取り情報を確認する手間と時間がかかります。
また、戸籍謄本の取得時には、死亡届が戸籍に反映されるまでに一定の時間がかかることを考慮する必要があります。通常、死亡届の提出後、戸籍謄本への反映までには7日から10日程度の時間が必要です。
そのため、死亡が戸籍に反映される前に戸籍謄本を取りに行っても、必要な情報が記載されていない可能性があります。この点を考慮し、余裕を持って手続きを行うことが重要です。
このような状況を踏まえると、戸籍謄本の取得は相続放棄のプロセスの中で特に注意を要するステップといえます。情報が不足している場合や確認作業が困難な場合には、専門家に相談することも一つの選択肢となり得ます。これにより、手続きの負担を軽減し、正確かつ効率的に必要な書類を集める支援を受けることができます。
相続放棄の手続きは、個人が自分で行う場合、時間管理が非常に重要です。手続き全体で約1ヶ月程度を要するとされていますが、その中で各ステップにどれくらいの時間がかかるかを理解しておくことが計画的に進めるために役立ちます。
まず、必要な書類の収集と提出には、丸1~2日かかることが一般的です。この段階では、戸籍謄本や不動産登記簿謄本など、複数の公的書類が必要になるため、地元の市役所や郵便での手配が必要です。
また、これらの書類の記入には注意が必要で、不備があると手続きに支障をきたすこともありますので、記入方法を確認しながら慎重に進める必要があります。
書類を家庭裁判所に提出後、裁判所からの照会書が届くまでには約1~2週間を要します。この照会書に対して、正確な回答を返送する必要があり、これにも1~2週間かかることが一般的です。照会書の内容に応じて、追加の書類が求められる場合もありますので、返送する際には再度、内容の確認を怠らないようにしましょう。
最終的に、相続放棄が受理されたことを示す通知書が届けば、手続きは完了となります。ただし、これらのステップに示された時間はあくまでも目安であり、手続きの複雑さや個別の事情によっては、さらに時間がかかることもあり得ます。
相続放棄を自分でやってみようと検討すべきケース
被相続人に多額の負債がある場合
相続放棄を自分で行うことを検討すべき主要なケースは、被相続人が多額の負債を抱えている場合です。相続とは故人が残した全ての財産を受け継ぐことを意味しますが、これにはプラスの資産だけでなく、マイナスの資産、すなわち借金も含まれます。
借金が大きい場合、相続人がその負債を引き継ぐことによって、経済的に大きな負担を背負うことになります。このような状況を避けるために、相続放棄が有効な選択肢となります。相続放棄を行うことで、相続人は故人の借金に対する一切の責任から解放されます。
相続トラブルに関わりたくないとき
相続放棄を自分で行うことを検討すべき別の重要なケースは、相続トラブルに関わりたくないときです。相続はしばしば金銭や財産の分配に関わる問題であり、親族間でさえも感情の衝突や深刻な対立を引き起こすことがあります。このような状況が発生すると、以前は良好だった家族関係が損なわれ、最悪の場合、絶縁に至ることもあります。
相続トラブルは、その性質上、一度発生すると関係の修復が難しくなることが多く、多大な時間と労力が必要になります。相続放棄を選択することにより、これらのトラブルに巻き込まれることなく、精神的な負担から解放されるメリットがあります。
相続放棄の手続きを自分でやってみる際の注意点
相続放棄後の取り消しと再申請はできない
相続放棄が一度法的に認可されると、その決定を取り消したり、再申請することは原則としてできません。これは、相続放棄後に予期せぬ財産が発見されたとしても、もとの相続権を回復することはできないことを意味します。したがって、相続放棄を決定する前に、財産の全体像を把握するための徹底した調査が非常に重要です。
例外的に、相続放棄が他の相続人による脅迫など不当な影響下で行われた場合は、この放棄の決定が無効となる可能性があります。このような状況では、法的な措置を講じることによって、相続放棄が取り消されることが考えられます。
このため、相続放棄を考えている際には、事前に遺産の詳細な調査を行い、必要に応じて法律専門家の助言を受けることが勧められます。
手続きに不備があると認められない場合もある
相続放棄申述書やその他の必要書類に不足があったり、記載に誤りや漏れがあったりすると、相続放棄が認められない可能性があります。申述書は性格に記入し、必要書類に漏れがないことを確認して提出しましょう。なお、家庭裁判所から、修正や追加書類提出の連絡があった場合は、必ず対応するようにしましょう。
次に、家庭裁判所から送付される照会書への回答が不十分である場合や、回答書を返送しない場合、相続放棄の申述が認められない可能性が高くなります。そのため、郵便物を定期的にチェックし、返送期限を守るようにしましょう。
照会書への回答は慎重に
相続放棄の手続きを進める際には、申述書の提出だけでなく、後に家庭裁判所から送られてくる「相続放棄照会書」への対応が重要となります。この照会書は、相続放棄の理由や申述の真意を確認するためのもので、照会書に同封されている「回答書」に記入して返送する必要があります。
回答書の内容が非常に重要である理由は、この内容に基づいて家庭裁判所が相続放棄の申し立てを認めるか否かを判断するからです。具体的には、回答書で提出された内容が相続放棄の意志が本当に申述者の真意であるか、そして申し立てが相続の発生を知った日から3ヵ月以内に行われたものかどうかなど、法的要件を満たしているかが確認されます。
相続放棄が受理されないケースとしては、以下のような事例があります:
- 申し立てが期限を過ぎている場合: 法定の3ヶ月以内に手続きが行われなかった場合、相続放棄は認められません。
- 書類に不備がある場合: 必要な情報が不足している、または誤記があると受理されないことがあります。
- 財産処分などで相続を認めた状況になっている場合: 一度相続財産を処分したり管理したりすると、相続放棄が認められない場合があります。
- 詐欺や脅迫によって手続きが行われたと判断された場合: 手続きの過程で不正があった場合、受理はされません。
これらを避けるためにも、回答書は非常に慎重に、かつ正確に記入する必要があります。不明点がある場合は、弁護士などの専門家に相談することが推奨されます。弁護士に依頼すると、書類の収集や回答書の記入、返送作業なども代行してもらえるため、法的な手続きの誤りを防ぐことができます。
このように、正確な手続きを行うことで、相続放棄の申し立てがスムーズに進み、望ましい結果につながる可能性が高まります。
生命保険の受け取りは可能
相続放棄を行った場合でも、生命保険金の受け取りは可能です。これは生命保険金が故人の財産とは見なされず、指定された受取人の財産として扱われるためです。例えば、故人が配偶者であり、配偶者が生命保険の受取人である場合、故人の死後に配偶者が保険金を受け取る際、これは配偶者の固有の財産とみなされます。
そのため、故人のその他の財産に対して相続放棄を行っても、生命保険金の受け取り自体に影響はありません。
ただし、税務上の取り扱いに注意が必要です。生命保険金は、税法上「みなし相続財産」として扱われるため、相続税の対象になります。この点を理解し、適切に対応することが重要です。
兄弟まとめて手続きすれば費用の節約に
相続放棄は、個々の相続人が単独で行うことが可能ですが、同じ相続順位にある兄弟姉妹が共同で行うこともできます。この共同の放棄には、手続きの簡素化や書類の数を減らすことができるといったメリットがあります。
兄弟姉妹が一緒に相続放棄を行う場合、各自が独立して行うよりも一連の手続きをまとめて行えるため、効率的です。たとえば、共同で申述書を提出することで、それぞれが個別に行う場合よりも書類の数や手続きの工程を減らすことが可能になります。
これにより、時間も節約でき、手続きの負担を軽減することができるため、相続放棄を考えている兄弟姉妹にとって有効な選択肢となるでしょう。
相続放棄は弁護士に依頼を
相続放棄を行う場合は、自分で手続きを行うのではなく、専門的な知識と経験を持つ弁護士に依頼することをおすすめいたします。理由としては以下の点が挙げられます。
失敗を防ぎ、期限内に正確に手続きを完了できる
相続放棄を行うには、さまざまな書類の収集と正確な申請書の作成が必要です。それらの書類を家庭裁判所に提出し、「相続放棄の申述」を行い、相続放棄を裁判所に認めてもらう必要があります。
多くの申述は受理されますが、書類の不備や手続き上の誤りがあると、申述は却下される可能性があります。一度却下されると、ほとんどの場合再度の相続放棄申述ができないため、このリスクを最小限に抑えることが重要です。
弁護士に依頼すれば、相続放棄の面倒な手続きを代わりに行ってくれるため、失敗を防ぎ、手続きを円滑に進めることができます。
さらに、相続放棄ができる期間は、相続開始を知ってから3カ月以内と定められています。この熟慮期間は意外と短く、葬儀や法要、遺品整理などで忙しくしている間にあっという間に過ぎてしまうことが多いです。
このため、弁護士に手続きを依頼すると、期限内に必要な手続きを正確かつ迅速に進めることができ、安心して相続放棄の手続きを進めることが可能です。
面倒な財産調査や戸籍収集を代行してもらえる
相続放棄を選択する際には、被相続人の財産や債務の状況を正確に把握することが重要です。弁護士に依頼すれば、銀行や役所などに対する財産調査を代行してくれます。
また、「相続放棄の申述」手続きには、様々な戸籍謄本の収集が必要となります。必要な戸籍謄本は被相続人と相続人の関係によって異なり、膨大な戸籍謄本が必要となる可能性もあります。
弁護士は、このような戸籍の収集などの時間がかかる面倒な作業も代わりに行うことができます。
親族間のトラブルを回避できる
相続放棄を行うと、相続権が次の順位の相続人に移るため、親族に相続放棄を反対されるなど親族間トラブルが起こる可能性があります。弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに他の相続人に対して相続放棄の意図や手続きの内容を正確に説明いたします。
親族間のトラブルは本人同士で解決するのは非常に難しいです。弁護士が仲介することで、親族間のトラブルを防ぎ、手続きを円滑に進めることができます。
代理人として債権者との交渉ができる
相続放棄の手続き中、借金の返済を求める債権者から支払いの督促があるかもしれません。弁護士がこれらの交渉を代行し、適切に対応いたします。
弁護士に債権者対応を依頼することで、相続放棄が完了するまでの間、債権者からの圧力に直接対応する必要がなくなります。この間、弁護士が債権者と直接コミュニケ―ションをとり、相続放棄が完了した後には、正当な理由を持って支払いを断ることが可能です。
期限が過ぎた後の手続きも可能に
原則則として相続放棄は3ヶ月以内に行う必要がありますが、特別な事情があれば期限を過ぎても手続きが可能な場合があります。
ただし、期限の延長を認めてもらうには「上申書」を作成して提出する必要がありますが、その内容には専門的知識が必要となります。
相続放棄の期限が迫っていたり、すでに期限が過ぎてしまったが、相続放棄をしたいと考えている場合は弁護士に依頼して手続きを進めてもらうようにしましょう。
弁護士費用の相場
相続放棄を弁護士に相談、依頼する場合の費用の相場は以下のとおりです。全てあわせて5万円~15万円程度と考えておくとよいでしょう。解決後の報酬金はかからない場合がほとんどです。
相談料(1時間あたり) |
無料または1万円程度 |
実費 |
5,000円~1万円程度 |
手続代行費用(着手金) |
5万円~10万円程度 |
実費とは、必要な書類の取得に関わる費用です。相続放棄の手続きにおいては、戸籍謄本の取得の際にかかる費用が「実費」として請求されます。
なお、特定のケースでは、追加の費用が発生することがあります。例えば、相続放棄の期限である「相続開始を知ってから3カ月」を過ぎてからの相続放棄手続きや、債権者との交渉が必要な場合、財産調査が必要な場合などがこれに該当します。
弁護士費用は、依頼する弁護士事務所や案件の特性によって変わるため、具体的な費用については相談時に詳細を確認することが重要です。また、費用に関する説明が明確な弁護士事務所を選ぶことが望ましいでしょう。
司法書士と弁護士では役割が異なる│弁護士への相談が最もおすすめ
司法書士は主に書類作成と提出のサポートを行う専門家です。相続放棄の手続きで申述書の作成や提出が必要な場合、すでに相続放棄をする決断が固まっている方には、司法書士のサービスが適しています。また、相続における不動産の名義変更といった登記手続きに関しても、司法書士の専門性を活かすことができます。
しかし、司法書士は法的アドバイスを提供する範囲が限定されており、相続放棄をするべきかの具体的な相談や複雑な法的判断を必要とする場合には適していません。また、司法書士には裁判所の代理権がないため、裁判所からの照会書に対する回答や裁判所への出頭は依頼者自身が行う必要があります。
対照的に、弁護士は代理権を持っているため、相続放棄の手続き全体を依頼者に代わって直接行うことが可能です。相続放棄に関する法的なアドバイスや判断、裁判所への対応も含めて、全ての手続きを一手に担うことができます。これは、特に時間や手間を節約したい場合、また法的な問題が複雑で専門的なサポートが必要な場合に非常に有効です。
費用面で考えると、司法書士は弁護士に比べて一般的に安価な傾向にありますが、依頼者自身が多くの手続きを行う必要があるため、結果的に多くの時間と労力を要することがあります。そのため、コストと利便性を考慮して最適な選択をすることが重要です。
相続放棄を自分でやってみたらどうなる?に関するQ&A
Q: 相続放棄の手続きを自力でやってみたら、どのような困難が予想されますか?
A: 相続放棄の手続きを自力でやってみた場合は、いくつかの困難が予想されます。まず、正確な書類準備が求められますが、これには戸籍謄本や不動産登記簿謄本など、多くの関連書類が含まれます。これらの書類に記載漏れや不備があると、申し出が受け入れられないリスクがあります。
さらに、相続放棄には法律で定められた厳格な期限があり、この期限内に手続きを完了させなければなりません。期限を逃すと、不利益な財産も含めて相続を受け入れたことになり、その結果、借金などのマイナスの財産を負担することになってしまいます。
また、必要書類が多岐にわたり、特に被相続人との関係が疎遠で情報が少ない場合には、書類収集が特に困難になることもあります。これらの点から、相続放棄の手続きは専門知識を持って慎重に行う必要があるため、多くの人が実際に手続きを進める際に難しいと感じています。
Q: 相続放棄を自分でやってみた場合、手続きにはどれくらいの時間がかかりますか?
A: まず、戸籍謄本や住民票除票の取得、相続放棄申述書の作成、印紙や郵券の購入など、申述の準備には通常最低でも1ヶ月程度を見積もると良いでしょう。特に、相続関係が複雑な場合は、必要な戸籍謄本の数が増え、準備にさらに時間がかかるため、このような状況では弁護士に相談することをお勧めします。
その後、相続放棄の申述書を裁判所に提出します。申述書の提出後、通常は約3週間から1ヶ月で裁判所から照会書が送付されます。照会書を受け取った後、返送するまでにも時間が必要です。その返送からまた約3週間から1ヶ月で、裁判所から受理通知が届くことが一般的です。
ただし、申述書や添付書類に不備がある場合、さらに時間がかかる可能性があります。
Q: 相続放棄の手続きを自分でやってみる際の注意点は何ですか?
A: 自分で相続放棄の手続きを行う際の主な注意点には、次のようなものがあります。まず、必要書類と相続放棄申述書の作成に不備がないことが重要です。
また単純承認にあたる行為(被相続人の財産を使用したり処分したりすること)を避けること、相続放棄をする旨を次順位の相続人に通知すること、そして相続放棄の申述期限(相続の開始を知ってから3ヶ月以内)を守ることが重要です。
まとめ
相続放棄を自分で行う過程は、一見シンプルに思えるかもしれませんが、実際には多くの注意点が伴います。この記事では、相続放棄の手続きの方法と重要な注意点について詳しく説明しました。
相続放棄は、申立の期限内に適切な書類を準備し、不備なく提出する必要があります。また、一度受理された相続放棄は原則として撤回ができないため、この決断が本当に自分にとって最適かを慎重に考えることが求められます。
もし相続放棄を考えているものの、手続きの具体的な流れや法的な影響について不安がある場合は、自力での処理に限界を感じることもあります。そのような場合、不安を少しでも解消し、正確な手続きを確実に行うためにも、弁護士に相談することをお勧めします。
初回相談を無料で提供している法律事務所も多く、気軽に弁護士の意見を聞くことができます。弁護士は相続放棄の手続きだけでなく、その後の法的影響についても適切なアドバイスを提供できるため、より安心して手続きを進めることが可能です。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。