相続放棄が認められない事例│失敗例と対処法
相続放棄を行うことで、借金などの負の遺産から逃れることができますが、認められない事例もあります。相続放棄が認められない事例にはどのようなものがあり、どういった理由で認められないのか、その具体的な内容を解説していきます。
例えば、相続放棄を希望しても、一定の期限を過ぎてしまったり、一部の財産を利用してしまったりすると、相続放棄は認められません。このような認められない事例を理解し、適切に対処することが重要です。
また、相続放棄が認められなかった場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。この状況に直面したときに知っておくべきポイントや、適切な対処法についても解説していきます。認められない事例に遭遇した際の対策や、事例ごとの対応法を理解し、相続放棄の手続きを自信を持って進めるために役立つ情報をお届けします。
目次
相続放棄が認められない事例は少ない?
相続放棄が認められない事例を解説する前に、まずは相続放棄に関する基礎知識を解説いたします。
相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、相続人は相続方法を選択する必要があります。
この選択には、単純承認、限定承認、または相続放棄の3つがあります。
- 単純承認:被相続人のプラスの財産とマイナスの財産(例えば、借金)を含む全ての財産を相続する方法。
- 限定承認:被相続人のプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を弁済する方法
- 相続放棄:被相続人のプラスの財産とマイナスの財産全てを一切受け継がない方法
「相続放棄」とは、相続開始による包括承継、つまり被相続人の権利義務の全てを引き継ぐことを全面的に拒否する意思表示です。相続放棄を行うと、相続人は最初から相続人ではなかったとみなされ、この結果として、被相続人の借金などのマイナスの財産を負うことはありません。このため、被相続人に借金がある場合、相続放棄は有効な手段となり得ます。
相続放棄を行うためには、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述の申し立てをする必要があります(民法915条、938条)。
それでは、相続放棄を家庭裁判所に認めてもらうのは難しいことなのでしょうか。
相続放棄が認められない可能性は低い
最高裁判所が発表した司法統計によると、相続放棄が認められない(申し立てが却下された)件数と確率は以下のとおりです。
年度 | 申立て受理件数 | 却下件数 | 却下率(%) |
令和元年 | 233,566 | 538 | 0.23 |
令和2年度 | 248,374 | 426 | 0.17 |
令和元年には233,566件の相続放棄の申し立てがあり、538件が却下されており、却下率は0.23%です。一方、令和2年度には248,374件の申し立てがあり、426件が却下されており、却下率は0.17%となっています。
また過去の判例でも、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を認めるべきであると明確に示されています。
「却下すべきことが明らかな場合以外は認めるべき」とした事例
裁判所は、基本的に相続放棄の申述に対して柔軟な対応を取る傾向があります。これは、相続放棄の申述を広く認めるという方針のもと運用されているからです。
簡単に言うと、相続人が相続放棄を求める際、裁判所はその申し立てを広く受け入れる姿勢を持っているということです。
それを示すものとして、例えば以下のような裁判例があります。
事例
相続人が被相続人と賃貸借契約を結んでおり、被相続人の死後も賃料の支払いを続けていましたが、相続の開始については認識していませんでした。この相続人に対し、被相続人の債権者から滞納賃料の請求書等が送付されましたが、相続人はこれを受け取らず、その配達日から約40分後に家庭裁判所に相続放棄の申述を行いました。
しかし、家庭裁判所はこの相続放棄の申述を却下しました。理由は、相続人が滞納賃料の請求書等の配達日に債務について認識し得たと判断されたためです。法律では、相続の開始を知った時から3カ月以内に相続放棄の申述を行わなければならないと規定されています(民法915条、938条)。しかし、相続人は熟慮期間の3カ月以上経過した後に相続放棄を申し立てたため、相続放棄は認められなかったのです。
東京高等裁判所は、この家庭裁判所の判断を誤りとし、次のように判示しました。判決の内容
『相続放棄の申述がされた場合、相続放棄の要件の有無につき入念な審理をすることは予定されておらず、受理がされても相続放棄が実体要件を備えていることが確定されるものではないのに対し、却下されると相続放棄が民法938条の要件を欠き、相続放棄したことを主張できなくなることにかんがみれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきであると解される』
相続放棄が認められない事例とは
では、どういった場合に相続放棄が認められないのでしょうか。それは以下3つに該当するケースです。それぞれどのようなケースなのか具体的に解説していきます。
認められない事例①単純承認が成立した場合
相続人が相続財産の一部を処分するような行為は、法律上で「単純承認」とみなされるケースがあります。これは民法921条に基づいており、この規定によると、相続人が相続した財産を売却したり、その他の方法で処分したりすると、彼らはその遺産全体を受け入れたものと見なされます。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
このように、相続人の行為によって自動的に単純承認が成立することを「法定単純承認」と言います。つまり、相続人が遺産の一部を処分すると、彼らは遺産全体、つまり借金やその他の負債も含めて受け入れたことになり、その後の相続放棄はできなくなるということです。
具体的には、以下のような行為を行った場合に単純承認したとみなされて相続放棄が認められません。
- 口座からの預貯金の引き出しや解約
- 相続財産を使い込んだ
- 不動産や車の名義変更
- 有価証券の売買や名義変更
- 不動産のリフォーム
- 被相続人の借金の返済や税金・光熱費の支払い
- 遺産の譲渡や遺品の持ち帰り
- 遺産分割協議への参加
これらの行為は、相続財産に対する権利の行使や、相続財産を利用したことを示す行為であるため、相続放棄の意思がある場合は避けることが重要です。一度これらの行為を行うと、相続放棄の申述が認められない可能性が高くなります。
なお、遺産の価値を保持または保護するための行為、例えば遺産である建物の雨漏りを修理するなどの「保存行為」は、遺産を受け継ぐ意思があるとは必ずしも見なされません。これは、遺産を守るための行動であり、遺産の所有権を主張するものではないためです。
認められない事例②熟慮期間が過ぎてしまった場合
相続放棄を行うためには、相続人が「相続が開始したことを知った時から3カ月以内」に行う必要があります。この3カ月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が相続方法についてどれを選択するか慎重に考える時間を確保するために設けられています。
民法921条2号によれば、この3カ月の熟慮期間内に相続放棄や限定承認を行わない場合、相続人は自動的に単純承認をしたものとみなされます。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
「相続が開始したことを知った時」というのは、以下のような状況を指します。
- 被相続人の死亡を知った時点
- 先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った時点
通常、熟慮期間は3カ月ですが、期間が経過した後でも相続放棄が認められるケースがあります。特に、相続債務の存在を知るきっかけがなく、後になって初めて債務の存在を知った場合、熟慮期間が過ぎた後でも相続放棄が認められる可能性が高いです。
認められない事例③必要書類に不備や不足があった場合・照会書へ回答しなかった場合
相続放棄を行う際には、家庭裁判所に対して相続放棄の申述書及び必要書類の提出が求められます。通常、これには被相続人の住民票除票や戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本、被相続人の除籍謄本などが含まれます。詳しい必要書類については裁判所ホームページ「相続の放棄の申述」をご覧ください。
もし提出された書類に不備や不足がある場合、家庭裁判所から補正を求められることがあります。この補正の指示に応じない場合、相続放棄の申述が認められない恐れがあります。したがって、相続放棄をスムーズに進めるためには、必要書類を正確かつ不足がないよう提出することが重要です。
また、相続放棄の申述書を提出した後、家庭裁判所から送られてくる「相続放棄の照会書」へ必ず回答する必要があります。この照会書には、相続開始の知った時期や相続放棄が本人の意思によってなされているかなどの質問が記載されています。この照会書に対して回答を返送しない場合も、相続放棄の申述が却下される恐れがあるため、受領したら迅速に回答を返送しなければなりません。
相続放棄の申述が却下された失敗例をご紹介
ここでは、相続放棄が認められないとされた裁判例をいくつかご紹介します。
①債権の取り立てが単純承認に該当し認められなかったケース│最高裁昭和37年6月1日
このケースでは、亡くなった妻が経営していた事業からの売掛金(商品を渡し、後で代金を回収する予定のお金)を、相続人である夫が回収した事例が問題となりました。最高裁判所は、売掛金を取り立てて回収する行為を相続財産の「処分」と見なし、これを単純承認の行為と判断しました。その結果、その後の相続放棄は認められないとされました。
②名義変更が単純承認に該当し認められなかったケース│東京地裁平成26年3月25日
このケースでは、被相続人が生前に不動産の贈与契約を結んでいましたが、所有権移転の手続き、つまり名義変更は行っていませんでした。被相続人の死後、その法定相続人である配偶者と子が義務者として、所有権移転の申請を行いました。この手続きの後で彼らは相続放棄の申述を行ったのです。
裁判所はこのケースについて、法定相続人が行った所有権移転の申請は、被相続人の生前処分の履行とみなされる相続財産の「処分」に該当すると判断しました。その結果、これは単純承認とみなされ、その後の相続放棄は認められないとされました。
③期限が過ぎているとして認められなかったケース│東京高裁平成14年1月16日
このケースでは、被相続人が亡くなった直後に、相続人たちは被相続人が所有していた不動産の存在を知り、全員で協議しました。そのうえで、この不動産を長男である相続人に単独で取得させることに合意し、他の相続人たちは各自の相続分に関する不存在証明書に署名押印しました。これにより、相続人たちは被相続人から相続すべき遺産があることを具体的に認識していたとされます。
その後、相続人たちは銀行から訴えを受けて初めて請求を受けた日から3ヶ月以内に相続放棄の申述を行いましたが、裁判所はこれを認められないとしました。
裁判所の判断では、相続人たちが被相続人から相続すべき財産がないと信じたとは認められず、死亡を知った時から3ヶ月以内に手続きしなければ相続放棄は認められないとされました。
相続放棄に失敗しないためには│認められない事例への5つの対処法を解説
①相続財産の調査を速やかにかつ正確に行う
相続放棄を成功させるためには、まず相続財産の迅速で正確な調査が重要です。特に、被相続人の負債が多いと思われる場合には、相続放棄が有力な選択肢になりますが、よく調べてみると予想外にプラスの財産があったなどといったこともあり得ます。このため、財産全体の把握が必須となります。
相続財産は多種多様であり、そのうえ被相続人の死後には多くの手続きを行う必要があります。相続放棄の判断を下すための熟慮期間は3ヶ月とされていますが、これは想像以上に短い時間です。そのため、相続財産の調査をスピーディーに徹底した財産調査を進める必要があります。
また、財産調査は一般の人でもある程度は行えますが、隠れた借金の有無や不動産の詳細、預貯金の情報など専門知識が求められる調査もあります。そのような場合、専門家である弁護士などに相談することで、より正確な情報を得ることが可能です。相続放棄を検討する際には、弁護士への相談を検討することをお勧めします。
②遺産を適切に管理する│請求書が来ても支払いはしないでおく
単純承認と見なされることを避けるためには、相続財産の適切な管理が必要です。特に、相続人が相続財産の一部を処分する行為は、単純承認と見なされる可能性が高く、これが行われた場合、たとえ相続放棄の意思があったとしても、家庭裁判所は相続放棄の申述を認めません。
相続人が被相続人の財産に関わる行為を行う場合は、単純承認に該当しないかどうか慎重に検討してください。
③できるだけ速やかに手続きを行う│相当な理由があれば期限を延長できる
相続放棄には法律で定められた3カ月という厳格な期間制限があります。このため相続放棄を考える場合、できるだけ速やかに手続きを開始することが望ましいです。
相続放棄が認められない事例の中でも、特に3ヶ月の熟慮期間を過ぎてしまったために申立てが却下されるケースは多いです。熟慮期間内に申立てを行わなければ、相当な理由がない限り、通常は相続放棄は認められません。相続放棄の申立てには必要書類の準備など、時間がかかる作業が伴いますので、余裕を持って早めに手続きを開始しましょう。
被相続人に借金があった場合、請求書や督促状といった郵便物が届いて初めて借金の存在が明らかになることがあります。これらの文書を受け取った時点が、期間の起算点と見なされることが多く、この日から3カ月以内に相続放棄の申述を行う必要があります。そのため、債務に関する通知を受け取ったら、直ちに弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。
なお財産調査が難航し、期限に間に合わない場合には、期間の延長を家庭裁判所に申し立てることができる可能性があります。延長の申し立ては必ずしも認められるとは限りませんが、検討する価値があります。
④照会書にはきちんと回答する
相続放棄の申し立て手続きを行った後、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送られてきます。この照会書には、申述者の意思を確認するための重要な質問が記載されており、例えば、なぜ相続放棄をすることにしたのか、申述者が相続財産の状況をどの程度理解しているのか、単純承認にあたる行為がなかったかなどが問われます。この照会書への回答内容は、相続放棄が受理されるかどうかに大きく影響します。
照会書への回答が不十分だと、相続放棄の申立てができない恐れがあるため、内容には十分注意して記述する必要があります。特に、期限を過ぎた手続きの場合には、さらに注意が必要です。もし回答内容に疑問がある場合は、家庭裁判所が追加の聴き取りを行うか、出頭を求めることもあります。このような審査を経て、相続放棄が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄受理通知書」が送られ、手続きは完了します。
不適切な回答により相続放棄が却下されることもありますので、事前に弁護士に相談し、確実に相続放棄が認められるよう手続きを進めることをお勧めいたします。
万が一申立てが却下された場合は、高等裁判所への即時抗告により再審理を求めることができます。しかし、不受理の決定を覆すためには相当な理由が必要であり、理由がない場合は即時抗告も却下されることになります。
⑤法律の専門家である弁護士に依頼する
相続放棄を考える際は、弁護士に依頼することをお勧めいたします。弁護士は、被相続人の財産や借金の状況を詳しく調べ、相続放棄が最良の選択かどうかをアドバイスいたします。3ヶ月という短い期限内で重要な決断を迫られますので、弁護士の客観的なアドバイスが役立ちます。
また、弁護士は財産調査や戸籍の収集を代行するため、期限内に手続きを完了させやすくなります。また、他の相続人とのトラブルを防ぐための調整も行ってくれます。弁護士が介入することで、感情的な対立を避け、円満な解決に導くことができます。
さらに、債権者からの返済要求に対しても、弁護士が全面的に対応しますので、相続人のストレスを大幅に軽減することができます。
熟慮期間が過ぎた後の相続放棄申立てについても、特別な事情があれば例外的に認められる可能性があり、弁護士はそのような場合の適切な解決策を見つけることが可能です。
⑥次の相続人に相続放棄することを伝える│黙ってするとトラブルに
相続には順位が設けられており、子どもが第1順位、親や祖父母などの直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位となります(民法887条・889条)。配偶者は常に相続人となります。
先順位の相続人が相続放棄をすると、自動的に後順位の相続人に相続権が移ります。これにより、マイナスの財産も含めた相続財産が次の順位の相続人に渡ることになります。
このため、先順位の相続人が黙って相続放棄をすると、後順位の相続人が突然債権者からの請求に直面する可能性があります。相続放棄を考えている場合は、その意思を後順位の相続人に事前に伝えることが大切です。このようなコミュニケーションをとることで、後順位の相続人とトラブルになるのを防ぐことができます。相続放棄を検討している場合は、他の相続人との協議や相談を怠らないようにしましょう。
家庭裁判所は手続きに関する相談のみ│相続放棄すべきかなどは弁護士へ相談を
相続放棄の申述は、各都道府県にある家庭裁判所で行われます。家庭裁判所では、相続放棄の申請や手続きに関する基本的な案内を受けることができます。自分で相続放棄の手続きを行う人や、手続きの流れをある程度理解している人は家庭裁判所に申述の手続きについて問い合わせてみてください。
しかし、家庭裁判所では手続きに関する基本的な相談のみを受け付けており、相続放棄をすべきかどうか、または相続人間でのトラブルに関する複雑な問題について、専門的なアドバイスはしてくれません。そのため、相続放棄に関する相談や、特に助言が必要な場合などは、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、相続放棄すべきかどうかの判断や、具体的な問題解決のアドバイスを提供することができます。
相続放棄が認められない事例に関するQ&A
Q: 相続放棄が認められないのはどのような場合ですか?
A: 相続放棄が認められない主な事例には、相続人が相続財産の一部を処分した場合(例えば、不動産の売却や被相続人の銀行口座からの資金引き出し)、被相続人の借金や請求書の支払いなど、相続財産に関わる行為を行った場合があります。これらは単純承認とみなされるため、相続放棄はできなくなります。また、相続開始の事実を知ってから3ヶ月を過ぎてしまった場合も、相続放棄が認められないことが多いです。3ヶ月の熟慮期間内に申し立てを行わないと、相当な理由がない限り相続放棄は受理されません。
Q: 相続放棄をしたいが、被相続人の請求書の支払いをしてしまった。これは問題ですか?
A: はい、問題になる可能性があります。被相続人名義の請求書を支払うことは、被相続人の負債を引き受ける行為と見なされるため、単純承認と解釈されるリスクがあります。これにより、相続放棄の申述が受理されない恐れがあります。そのため、相続放棄を検討している場合は、被相続人の未払いの請求書に対して支払いを行う前に、十分な検討が必要です。
Q: 相続放棄をするための手続きはどのように行うのですか?
A: 相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。必要な書類には、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本などが含まれます。申述書に必要事項を記入し、提出する必要があります。また、熟慮期間内、つまり相続の事実を知った日から3ヶ月以内に手続きを完了させる必要があります。
まとめ
相続放棄が認められない事例には、上で解説したように3つのパターンがあります。まず、相続人が相続財産の一部を処分したり、被相続人の借金や請求書の支払いを行ったりすると、これらの行為は単純承認とみなされ、その結果、相続放棄が認められない可能性があります。そのため、相続財産の調査中であっても、遺産に手をつけるべきではありません。
また、相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄の申述を行う必要があります。この期間を過ぎてしまうと、相当の理由がない限り、相続放棄は認められません。したがって、相続開始を知ったら速やかに手続きを進めることが重要です。
相続放棄の手続きは複雑であり、間違った判断や行動をすると相続放棄が認められない原因となってしまいます。相続放棄を検討している場合は、アドバイスを得るために専門家である弁護士に相談することをお勧めします。当法律事務所では、相続放棄に関する専門的なサポートを提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。