相続放棄の必要書類は?│子供・親・兄弟・孫・甥姪など続柄別に解説

相続放棄

更新日 2024.10.01

投稿日 2024.02.09

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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相続放棄は、被相続人からの借金や負債を引き継がずに済む重要な手続きです。相続放棄の手続きには必要書類の準備が欠かせません。この記事では、子供、親、兄弟、孫、甥姪など、それぞれの続柄に応じた具体的な必要書類一覧と、それらの書類の取得方法、提出先について詳しく説明します。

目次

相続放棄の必要書類は家庭裁判所に提出

必要書類は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。
裁判所のホームページに裁判所の管轄区域が掲載されていますので、該当する住所地の裁判所を調べたい方は下記URLをご覧ください。
裁判所HP:裁判所の管轄区域

提出する主な必要書類は、自らが相続人であることを証明する戸籍謄本です。例えば、被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、戸籍の附票、相続人全員の戸籍謄本などを提出します。
これらの書類を提出することによって、自分が相続人であり、相続放棄をする資格があることを証明します。
家庭裁判所に提出する際には、これらの戸籍謄本に加え、相続放棄申述書も必要となります。申述書は、相続放棄を明確に意思表示するための書類であり、ルールに従って記載する必要があります。

また、必要書類の提出は、被相続人の死亡を知った時から3か月以内に行わなければならないという期限が設けられています。この期限を過ぎると、相続放棄ができなくなるため、相続放棄を考えている場合は、すぐに必要書類の準備を始めるようにしましょう。

相続放棄の必要書類一覧│申述書と必要な戸籍謄本は?

全員が提出する必要書類と、被相続人との続柄によっては用意しなければならない必要書類に分けて解説していきます。まずは、全員が共通して用意しなければならない必要書類について解説します。
次に、それぞれの続柄ごとに追加で用意しなけれならない必要書類について解説していきます。

全員に共通する必要書類

  必要書類 書類の詳細 取得先
相続放棄申述書 相続放棄の意志を表明する書類です。被相続人と申述人の住所、氏名、生年月日や相続財産の内容、相続放棄の理由などを記載します。 全国の家庭裁判所で入手でき、裁判所のホームページからダウンロードも可能です。
被相続人の住民票除票または戸籍附票 死亡により除かれた住民票、または戸籍が作られてから除籍されるまでの住所が記録された書類を指します。 被相続人の死亡時の住所地の役所(住民票除票)、本籍地の役所(戸籍附票)で取得でき、郵送での取得も可能です。
申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本 申述人が記載されている戸籍の謄本です。相続人としての身分を証明します。 申述人の本籍地の役所でしか取得できず、居住地と本籍地が異なる場合は注意が必要です。遠方の場合は郵送での取得が可能です。
収入印紙 相続放棄の手続きの手数料として必要です。1人につき800円分を納付します。 郵便局やコンビニエンスストアで購入できます。
切手 相続放棄受理通知書などの書類を裁判所から申述人に郵送するために必要です。必要な切手の金額は家庭裁判所によって異なります。 郵便局で入手できます。必要な金額は事前に家庭裁判所で確認してください。余った切手は返還されます。

配偶者や子のケース

被相続人の配偶者や子が相続放棄する場合は、上記の①~⑤の必要書類に加えて、下記の書類が必要となります。なお、配偶者や子が被相続人と同じ戸籍に乗っている場合は、通常は上記③の「申述人の戸籍謄本」を用意すれば足ります。

  必要書類 書籍の詳細 取得先
被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本です。除籍とは、戸籍から個人が削除された記録のことで、改製原戸籍とは、戸籍が新しく作られた際の以前の戸籍のことを指します。 被相続人の本籍地の役所で取得できます。郵送での取得も可能です。
※死亡届の受理後1週間程度で戸籍に死亡の旨が記載されます。

孫のケース

もし被相続人に子どもがいたが、被相続人が亡くなる前にその子どもが既に亡くなっていた場合、孫が相続人としての地位を引き継ぎます。このケースは「代襲相続」と呼ばれ、既に亡くなっている子どもを「被代襲者」とし、その孫を「代襲者」といいます。
被相続人の孫が相続放棄をする際は、まず自分の親(被代襲者)が亡くなったことを証明する必要があります。これを行うためには、「被代襲者の死亡が記された戸籍謄本」を提出することが求められます。この戸籍謄本によって、孫が相続人としての立場にあることが証明されます。
したがって、被相続人の孫が相続放棄する場合は、上記の①~⑤の必要書類に加えて、下記の書類が必要となります。

  必要書類 書類の詳細 取得先
被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本です。除籍とは、戸籍から個人が削除された記録のことで、改製原戸籍とは、戸籍が新しく作られた際の以前の戸籍のことを指します。 被相続人の本籍地の役所で取得できます。
※死亡届の受理後1週間程度で戸籍に死亡の旨が記載されます。
被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 申述人が孫など代襲相続人の場合に必要です。本来の相続人(被相続人の子)の死亡が記載された戸籍の謄本を指し、除籍や改製原戸籍が含まれます。代襲相続により自分が相続人となったことを証明します。

被代襲者(被相続人の子)の本籍地の役所で取得可能です。

※死亡届の受理後1週間程度で戸籍に死亡の旨が記載されます。

親や祖父母のケース

被相続人に子や孫がいない、または子や孫も相続放棄している場合は、次に相続人となるのは被相続人の親です。もし親も亡くなっていれば、生存している祖父母が相続人となります。
親や祖父母が相続放棄をする場合は、上記①~⑤の必要書類の他、他の相続人がいないことを示すために、被相続人の生まれてから亡くなるまでの全戸籍を集める必要があります。
また、「子や孫が亡くなっているケース」と「被相続人の親が死亡しているケース」ではさらに以下のような書類が必要となります。

  必要書類 書類の詳細 取得先
被相続人の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 被相続人に子や孫がいないことを確認するため、出生から死亡までのすべての戸籍謄本を提出します。 被相続人の本籍地の役所で取得できます。転居や結婚で本籍地が変わっている場合は、それぞれの役所から必要な戸籍を取得する必要があります。もし被相続人の過去の住所が不明な場合は、最新の戸籍から過去の住所をたどることになります。
<子や孫が既に死亡している場合>
被相続人の子と孫の出生時から死亡時までの戸籍謄本
他に相続人となる人がいないことを確認するため、被相続人の子と孫の生涯にわたる戸籍記録を集める必要があります。 子と孫の本籍地にある役所で取得できます。転居や結婚で本籍地が変わっている場合は、複数の役所から戸籍を取得する必要があります。
<親が既に死亡している場合>
被相続人の親の死亡の記載のある戸籍謄本
親の死亡が記載された戸籍謄本を提出することで、親の相続権がないことを証明します。 被相続人の親の本籍地の役所で取得できます。

兄弟姉妹のケース

被相続人に子や孫、親や祖父母がいない場合、またはこれら全員が相続放棄している場合は、次に相続人となるのは被相続人の兄弟姉妹です。
兄弟姉妹が相続放棄する場合は、上記①~⑤の必要書類の他、以下の書類が必要となります。

  必要書類 書類の詳細 取得先
被相続人の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 被相続人に子や孫、親や祖父母がいないことを確認するため、出生から死亡までのすべての戸籍謄本を提出します。 被相続人の本籍地の役所で取得できます。転居や結婚で本籍地が変わっている場合は、それぞれの役所から必要な戸籍を取得する必要があります。もし被相続人の過去の住所が不明な場合は、最新の戸籍から過去の住所をたどることになります。
<子や孫が既に死亡している場合>被相続人の子と孫の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 他に相続人となる人がいないことを確認するため、被相続人の子と孫の生涯にわたる戸籍記録を集める必要があります。 子と孫の本籍地にある役所で取得できます。転居や結婚で本籍地が変わっている場合は、複数の役所から戸籍を取得する必要があります。
被相続人の親の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 親や祖父母に相続権がないことを証明します。通常、親の生年月日から祖父母が亡くなっていることが明らかであれば、祖父母の戸籍謄本は不要です。 被相続人の親の本籍地の役所で取得できます。

甥や姪のケース

被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合で、被相続人が亡くなる前に兄弟姉妹が既に亡くなっていた場合、甥や姪が相続人としての地位を引き継ぎます。なお、甥や姪も亡くなっている場合は、甥や姪の子が相続人となることはありません。
甥や姪が相続放棄をする場合は、上記①~⑤と兄弟姉妹のケースで挙げた⑥~⑧と併せて、下記書類が追加で必要となります。

  必要書類 書類の詳細 取得先
被相続人の兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 兄弟姉妹に相続権がないことを証明します。 兄弟姉妹の本籍地の役所で取得できます。

印鑑証明書は必要なし

相続放棄の手続きでは、印鑑証明書は必要ありません。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行われ、本人または本人から依頼された弁護士だけが手続きを進めることができます。他の相続人などから印鑑証明書の提出が求められる場合、それは「相続放棄」ではなく、「相続分の放棄」や「相続分の譲渡」を行う際の可能性が高いです。

相続分の放棄や譲渡は、本人の意思表示や両者の合意があれば成立します。これらは口頭でも可能ですが、遺産を取得する人が不動産などの名義変更の手続きをする際などには、実印が押された遺産分割協議書や相続分譲渡証明書の提出が必要です。この時、金融機関や法務局などの手続き先では、協議書に押された印が実印であるかを確認するために、すべての相続人の印鑑証明書が必要になります。

土地などの不動産を相続放棄する場合の必要書類はなし

被相続人が土地やその他の不動産を所有していたか否かは、相続放棄の手続きには影響しません。相続放棄は、被相続人の残した全ての財産への権利を放棄することを意味します。つまり、相続財産に不動産が含まれている場合でも、相続放棄の手続きに特別な書類は必要ありません。

ただし、遺産分割協議において相続放棄を行うことに決めた場合、その過程で遺産分割協議書の作成や不動産の登記変更などの手続きが発生することがあります。このような場合には、遺産分割協議書と、それに押された印鑑の印鑑証明書が必要になることもありますが、これは相続放棄そのものの手続きとは異なります。

申述書や戸籍謄本等はどこでもらえるのか

相続放棄申述書に関しては、裁判所のホームページ「相続の放棄の申述」でダウンロードが可能です。記載例も掲載されていますので、ご参照ください。
なお、相続放棄申述書の書き方は以下のページでわかりやすく解説しています。こちらもご覧ください。

戸籍謄本は、本人の本籍地にある市区町村役場で取得できます。また、被相続人の住民票除票は、被相続人が最後に居住していた地域の市区町村役場で手に入れることができます。これらの書類は窓口で直接請求することも、郵送での請求も可能です。

市区町村役場の窓口を利用すれば、多くの場合、即日で書類を受け取ることができますが、本籍地が遠方にある場合は、郵送での請求が現実的です。
郵送請求の際は、書類の発送から受領まで通常1~2週間程度かかることを見込んでおく必要があります。
相続人の調査や必要書類の準備には、それなりの時間と手間がかかることも認識しておきましょう。

相続放棄の期間内に家庭裁判所に提出する

相続放棄を行うには、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、自動的に相続を承認したものとみなされ、被相続人の財産だけでなく借金も引き継ぐことになります。

「相続が開始したことを知ったとき」とは、被相続人の死亡を知り、自分が相続人であることを認識した時点を指します。相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に、相続放棄の申述書と必要な添付書類を家庭裁判所に提出する必要があります。

つまり、相続放棄を行いたい場合、裁判所の最終的な承認が3ヶ月以内に得られる必要はなく、必要書類の提出が期限内に完了していれば、その後の裁判所の審査が期限を超えても問題ありません。
期限が迫っている場合は、すべての添付書類が揃っていなくても、まずは申述書とその時点で揃えた書類を提出し、受付手続きを完了させておきましょう。

相続放棄の期間を伸長する手続きの必要書類

 

相続放棄の期間を伸長する手続きの必要書類

 

相続放棄をするかどうかが3ヶ月の期間内に決まらない場合、特別な事情があれば、この期間を延長することが可能です。期間の延長をしたい場合は、被相続人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所に対し、申し立て手続きを行う必要があります。
この申立てを行う際の必要書類は以下の通りです。

  1. 申立書
    裁判所のホームページ「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」で申立書の書式のダウンロードが可能です。記載例もありますので、ご参照ください。
  2. 被相続人の住民票の除票または戸籍附票
  3. 申立てを行う相続人の戸籍謄本
  4. 収入印紙800円および郵券(郵券の必要金額と枚数は各家庭裁判所によって異なるため、事前に確認が必要です。)

相続放棄の必要書類に関するQ&A

Q: 相続放棄の手続きに戸籍謄本はどうして必要なのですか?

A: 相続放棄の手続きでは、被相続人と相続人との関係を証明するために戸籍謄本が必要です。これには、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本が含まれます。これらの書類によって、法律上の相続人であることが証明されます。

Q: 相続放棄の申述書はどこで入手できますか?

A: 相続放棄申述書は、最寄りの家庭裁判所または裁判所の公式ホームページからダウンロードできます。書類は印刷して、掲載されている記載例に従って必要事項を記入し、裁判所に提出します。

Q: 被相続人の兄弟が相続放棄する場合の必要書類は何ですか?

A: 被相続人の兄弟が相続放棄をする場合の必要書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の親や祖父母の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

Q: 被相続人の甥や姪が相続放棄する場合の必要書類は何ですか?

 A: 被相続人の甥や姪が相続放棄する場合の必要書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の親や祖父母の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の兄弟(甥や姪の親)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

Q: 他の相続人がすでに相続放棄を行っている場合、同じ書類を再度提出する必要はありますか?

A: 同じ被相続人に関して他の相続人が既に相続放棄の手続きをしている場合、その手続きで提出された戸籍謄本などは再提出の必要がありません。ただし、相続放棄申述書は個人ごとに提出する必要があります。

Q: 生前に相続放棄を決めることは可能ですか?

A: 生前に具体的な相続放棄の申述を行うことはできません。相続放棄は、被相続人が亡くなった後に始まる相続手続きの一部であり、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。

まとめ

相続放棄を行う場合は、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄申述書や戸籍謄本などの必要書類を準備し、提出する必要があります。
被相続人との続柄別に必要書類を紹介して参りましたが、続柄によっては取得する戸籍謄本等の数が多くなる場合があります。

「正確な必要書類の収集に不安がある方」や「相続放棄の期限が迫っていて必要書類が集めれそうにない方」などは、専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。