生前に相続放棄できる?生前贈与や事前にできる手続きを弁護士が解説

相続放棄

更新日 2026.02.17

投稿日 2024.02.09

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

遺産相続を拒否したい相続人や、特定の人に遺産を相続させたい被相続人にとって、相続権を失う「相続放棄」は有用な手段です。ですが、家庭裁判所で行う相続放棄の手続きは、基本的に被相続人が死亡してから行うものになります。

被相続人が存命のうちに相続放棄をできれば安心ですが、生前に相続放棄をすることは可能なのでしょうか。

そこでこの記事では、「被相続人の生前に相続放棄をすることはできるのか」をテーマに、弁護士が詳しく解説させていただきます。あわせて、生前贈与を受けた場合の相続放棄がどうなるかといった点や、相続放棄の代わりとなる対策についても、具体的にご説明いたします。

被相続人の生前に取り得る対策とその効果について確認することで、あらためて相続放棄を検討する材料にもしていただけると思います。

本記事が、少しでもお役に立ちましたら幸いです。

目次

生前の相続放棄

1.生前に相続放棄できる?

結論から申し上げますと、相続放棄は被相続人の生前にすることはできません。

生前に相続放棄はできない!手続きはいつからできる?

なぜ生前に相続放棄をできないのか、詳しく見ておきましょう。

1-1.相続放棄のタイミング

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3か月以内にしなければならない、と法律に定められています(民法第915条1項)。「相続の開始を知った」というのは、被相続人が死亡してからのことになるため、相続放棄をする期間の起算点に「生前」は想定されていません。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

そして、相続放棄の手続きは、家庭裁判所で申述を行って認められる要式行為とされています(民法第938条)。生前に「相続放棄をする。」と口頭で言うだけでは相続放棄にはならず、有効に相続放棄をするためには、遺産相続が始まってから家庭裁判所での手続きを経る必要があるのです。

(相続の放棄の方式)
民法第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

相続が始まる前は、「法定相続人になる可能性がある」というだけで、具体的な相続分などはまだ発生していません。まだ発生していない相続権の自由な処分は認められないとして、被相続人の生前における相続放棄は学説上も否定されています。

実際の裁判例でも、相続開始前の相続放棄の効力は否定されており、例えば以下のように判断している判例があります。

相続開始前の相続放棄の効力を否定した判例

いうまでもなく、遺産の範囲は相続の開始により初めて確定するのであつて、その相続放棄や分割協議の意思表示は、そのとき以後における各相続人の意思によりなさるべきものであるから、当事者間で事前にこれらの意思表示をなすも何らの効力を生じないものといわなければならない。このことは、吾が民法が、相続放棄は相続開始後一定期間内に、家庭裁判所に対する申述によりなさるべきことを定め(民法第九一五条第一項)、また、相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずると定めている(同法第一〇四三条第一項)ことによつても明らかである。

(横浜地方裁判所川崎支部昭和44年12月5日判決)

1-2.「推定相続人」は相続放棄できない

相続放棄は、被相続人の死亡などによって相続が開始した後に、「相続人」が自己の意思によって申述をする法的な手続きです。相続放棄の申述ができるのは、相続権を持つ相続人であって、「推定相続人」は相続放棄をすることができません。

「推定相続人」とは、一般に「将来、被相続人が死亡した場合に相続人となるべき者」を指します。「相続人」とは異なり、まだ相続権が確定していないのです。

判例も、推定相続人は相続の開始前にあらかじめ相続放棄をすることはできないと述べています。

推定相続人の相続開始前の相続放棄を否定した判例

わが民法が相続人に対し、相続開始後自由に承認又は放棄することができる旨の選択権を与えた所以は、相続人が相続開始当時における相続人と被相続人その他の利害関係人との人的関係ならびに相続財産の状態を配慮し、これによって他の掣肘をうけることなく独立かつ自由な意思に基づいて承認又は放棄の決意をなさしめんとした趣旨と解されるのである。したがって、推定相続人が相続開始前に相続放棄をすることは、わが民法の許さないところというべきである。

(東京高等裁判所昭和54年1月24日決定)

2.事前に相続放棄の念書を作成しても無効

ところで、家庭裁判所での相続放棄の手続きができない場合に、当事者間で「遺産相続が始まっても相続を放棄する。」などと念書を作成しておくことは有効なのでしょうか。

この点に関しまして、あらかじめ相続放棄を約束しておきたいと念書を作成したとしても、念書は相続放棄について法的な効力を持たないとされています。

判例も、将来相続が開始した場合に相続人の地位に就かないことを目的とした事前の相続放棄の契約について、「わが民法上相続人が相続開始前にあらかじめ相続を放棄することは許されず、また相続開始前に他の相続人との間で相続を放棄したり、自己の相続分を譲渡する契約を締結しても右契約は無効と解するのが相当である。(札幌高等裁判所昭和59年10月22日判決)」として、その効力を否定しています。

ですので、他の相続人に「相続しません」という内容の念書を書かせても、これには法的な効力がありません。したがって、相続放棄すると約束した相続人が、相続開始後に相続権を主張することも可能とされています。

生前贈与を受けても相続放棄はできる

被相続人が生存している間に、相続人やその他の人に財産を贈与することを「生前贈与」といいます。相続税対策などで、活用されることが多いです。生前贈与をすることによって、特定の人に遺産を承継させることができ、相続開始時の相続財産の総額を減らすことができるため、相続税の軽減も可能となります。

1.土地などの財産の生前贈与は相続放棄に影響しない

この生前贈与が、被相続人の財産を特定の人に移転する行為なので、「相続財産の処分(民法第921条1号)」などに当たり、相続放棄することに影響が生じるのでは、と疑問に思う方もいらっしゃるようです。

たしかに、預貯金の解約や高額な財産の持ち帰りといった行為は、相続財産の処分に当たるとされ、単純承認とみなされる可能性があります。単純承認であると判断された場合、「遺産を相続することを承認したもの」ととらえられるため、相続放棄することが認められなくなってしまいます。

ですが、生前贈与はあくまで「相続開始前に財産を移転する行為」です。一方の単純承認は「相続開始後に相続財産の処分等をしたことによる法的効果」になります。相続人が生前贈与によって財産を得た場合、それは相続人に固有の財産となるため、固有財産を処分したとしても「相続財産の処分」には該当せず、単純承認は成立しません。

したがって、生前贈与を受けたとしても、相続放棄することに影響はないとされています。ですので、土地を生前贈与されたとしても、相続放棄することに問題はありません。

2.生前贈与と相続放棄の場合の相続税

相続放棄をした者は、法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、被相続人の資産だけでなく、債務も一切承継しないことになります。そのため、相続放棄した相続人は、原則として相続税の納税義務を負うことはありません。

ですが、その生前贈与が暦年贈与ではなく「相続時精算課税制度による贈与」であったときには、たとえ受贈者が相続放棄をしたとしても、その贈与時の価額が相続税の課税価格に加算されることになります。

相続時精算課税制度とは、贈与を受けた時には軽減された贈与税を支払い、将来その贈与者が亡くなった際に、この制度で贈与された財産を相続財産に合算して相続税額を計算し、支払い済みの贈与税額を精算(控除または還付)するという制度です。

相続時精算課税制度が適用されて生前贈与を受けていた場合、加算された贈与財産の価額が相続税の基礎控除額を超えたときには、相続放棄をした相続人も納税義務を負うことになります。

3.借金がある場合の生前贈与に注意

上述のとおり、被相続人から生前贈与を受けた相続人が相続放棄をすること自体は可能ですが、被相続人に借金がある場合は、生前贈与に注意が必要です。

資力のない債務者が、自己の唯一の財産を贈与するなどの生前贈与を行った場合、その行為は債権者の利益を害するため、詐害行為取消権の対象となることがあります。詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、裁判所に請求できる債権者の権利です(民法第424条)。

(詐害行為取消請求)
民法第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

例えば、被相続人に現金500万円を貸していた債権者Aがいたとしましょう。被相続人はAに借金を返済するよりも、自分の家族に財産を残してやりたいと考え、預貯金600万円から、妻子に対して300万円ずつ生前贈与を行いました。
生前贈与によって妻子がそれぞれ得た300万円は、妻子に固有の財産です。被相続人名義の財産ではないため、Aは弁済を求めることができません。

Aに他の財産があったり、不動産の売却益から弁済できたりするような場合は、それをAへの弁済に充てられるため問題ないでしょう。ですが、相続開始時に相続財産が何も無かった場合、Aは「生前贈与があったことで自身の債権が害された」状態になるのです。

このように、債務者が債務の弁済を逃れるために故意に財産を親族などに移転する場合に、債権者はその行為を取り消すことができます。したがって、もし多額の借金がある状況で生前贈与をした場合、詐害行為取消権が行使されると、生前贈与が取り消される可能性があるのです。

このように、生前贈与をすることが相続放棄に影響を与えない場合でも、生前贈与の効力自体が後に争われることもあるため、被相続人に借金がある場合の生前贈与は特に注意が必要です。

相続放棄の代わりに生前にできる手続き

1.相続放棄の代わりに生前にできること

さて、生前に相続放棄の手続きをすることはできませんが、相続放棄の代わりとなる手続きがいくつかありますので、ご紹介いたします。

1-1.遺留分放棄

被相続人が遺言書で、遺留分を持つ相続人に財産を残さないように指定し、その遺留分の権利者が遺留分放棄を行うことで、相続放棄と似た効果を得ることができます。

遺留分とは、一部の法定相続人に最低限保障される相続分のことです。相続放棄は「相続権」の放棄ですが、遺留分の放棄は最低限の相続分を放棄することなので、相続人の地位を失わない、という点で相続放棄と異なります。そして、相続放棄と異なり、遺留分の放棄は相続開始前に手続きをすることが可能です(民法第1049条1項)。

(遺留分の放棄)
民法第1049条1項 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

遺留分の放棄は、遺留分を放棄する相続人本人が、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。手続きには、必要書類と申立手数料として800円の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。

遺留分を放棄した場合、相続人は依然として相続人であり続けます。そのため、もし被相続人に借金がある場合、遺留分を放棄しても借金の弁済義務からは免れることができません。そのため、被相続人の借金を受け継ぎたくない場合には、遺留分の放棄に加え、相続開始後に相続放棄の手続きをする必要があります。

1-2.推定相続人の廃除

被相続人が家庭裁判所に申立てを行い、特定の相続人の相続権を失わせる「推定相続人の廃除」も、生前に可能な手続きです。

推定相続人の廃除は、被相続人が虐待や重大な侮辱などを受けたことを理由に、遺留分を有する推定相続人から相続権を剥奪する手続きです。(民法第892条)

例えば、被相続人に対して虐待を加えたり、重大な罪を犯したりした場合に、家庭裁判所に対して推定相続人の廃除を請求することができます。ただし、この手続きは相続権を失わせるという強力な効果があるため、裁判所は慎重に審査します。そのため、実際に廃除が認められるケースは多くありません。

1-3.遺言書の作成

特定の相続人に相続放棄をさせたい場合に、遺言書を作成し、特定の相続人に遺産を相続させないよう指定しておくことも考えられます。

例えば、被相続人と同居して長年介護してくれた長女に全財産を残したいため、疎遠だった次女に相続放棄してもらいたい、といったケースにおいて、「全財産を長女に相続させる。」などと指定しておきます。遺言がある場合の相続は、原則として遺言の内容が尊重されるため、間接的に相続放棄させたいという意思を実現させることができるのです。

ただし、この場合でも次女には遺留分を請求する権利がありますので、完全に相続放棄の代わりになる手段ではありません。遺留分は法律で認められた権利ですから、たとえ遺言書に「遺留分を放棄するように。」と書いても、効力は認めらないことに注意しましょう。

1-4.相続欠格

相続欠格とは、相続人となるべき者に民法が定める重大な非行や不正行為があった場合に、法律上当然にその人の相続権を剥奪する制度です(民法第891条)。

(相続人の欠格事由)
民法第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

故意に被相続人や相続人を死亡させた者や、詐欺や脅迫によって遺言を作成させた者などが、相続欠格者に該当します。

推定相続人の廃除と異なり、申し立ての必要はありません。民法第891条に定められた欠格事由に該当すれば、相続人となることができなくなります。

2.借金のある被相続人が生前に備えておけること

続いて、借金のある被相続人が生前に備えておけることを3つ、ご紹介いたします。相続人の相続権に働きかける手続きではないため、直接的に相続放棄の代わりになる手段ではありませんが、相続放棄の原因となる借金をなくす、というアプローチです。

2-1.債務整理

借金があっても被相続人が生前にできること

債務整理とは、借金などの返済が困難になった際に、法的な手続きや当事者間の交渉によって債務を整理し、経済的な再生を図るための手続きのことです。

債務整理をすることによって、そもそも相続財産として負債を残さない、という対策になります。

債務整理の方法

  1. 任意整理

    任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、利息の減額や返済額の見直しを行う方法です。手続きが簡易・迅速で、裁判所を介さないため費用が比較的安く済み、秘密裏に進められるため事業価値の毀損を防ぎやすいとされています。当事者間で交渉するため、柔軟な解決が可能な一方、対象となる債権者全員の同意が必要です。

  2. 個人再生

    個人再生は、経済的に困窮した個人債務者が、破産せずに住宅などの資産を保持しながら、経済生活の再生を図ることを目的とした手続きです。借金などの返済総額を法律に従って減額し、分割返済する再生計画を裁判所に提出します。計画が認められると、借金が大幅に減額されることがあります。
    自己破産のような法律上の資格制限や、「破産者」という事実上の不利益を受けることなく、経済的再生を目指せる点がメリットです。

  3. 自己破産

    自己破産は、債務が多額になり支払不能に陥った債務者が、自ら裁判所に申立てを行う手続きです。裁判所による破産手続開始決定後、免責許可決定を得ることで、残りの債務の支払いが免除され、経済的な更生を図ることができます。自己破産をすると、財産は債権者への配当に充てられるため、原則として住宅や不動産などの高価な財産は手放さなければなりません。

債務整理を行うことで、被相続人は借金の負担をあらかじめ軽減し、相続時に家族への負担を減らすことが期待できます。

ただし、これらの手続きは複雑ですので、弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。

2-2.生命保険に加入する

生命保険に加入し、死亡保険金の受取人を相続人に指定しておくことで、相続人にお金を残すことができます。死亡保険金は、受取人固有の財産として扱われるため、相続財産には含まれません。ですので、たとえ相続人が相続放棄したとしても、保険金を受け取ることが可能なのです。

なお、保険金の受取人を被相続人自身としてしまうと、その保険金は相続財産となってしまいますので、受取人に相続人を指定しておくことが重要です。

また、死亡保険金を受け取る場合、相続税の課税対象となるため、受取人は相続税を支払う必要がある点にも注意が必要です。

2-3.生前贈与

本記事で前述しましたが、「借金を受け継がせたくないが、資産を残したい」という場合に生前贈与も有効な方法です。

生前贈与された財産は、その受取人が後に相続放棄をしたとしても、原則として返還する必要はありません。

ただし、生前贈与が借金の返済や財産の隠蔽を目的としていると判断された場合、これは詐害行為とみなされ、贈与が取り消される可能性があります。したがって、贈与する際には、被相続人の財産額が負債を上回っている状態で行うことが重要です。

また、相続開始前3年以内に行われた贈与は相続財産に含まれるため、相続税がかかってしまう点にも注意が必要です。年間110万円を超える贈与にも、贈与税が課されます。

生前贈与は、特定の相続人にのみ資産を与えたい場合にも有効ですが、他の相続人の遺留分には注意が必要です。遺留分を侵害しないよう、贈与の範囲を慎重に決めることが大切です。

2.被相続人が生前に相続放棄してもらうには

以上のとおり、被相続人が相続人となる人に相続放棄をしてもらいたい場合、生前に相続放棄をしてもらうことはできません。

本記事でご紹介した、相続放棄の代わりになる手続きもありますが、厳密な法的効果は異なります。自身の状況にあわせて、例えば「生前贈与と遺留分放棄をしておき、遺言書であらためて相続放棄してほしい旨を記しておく」といった複合的な対策も検討してみましょう。

また、相続人の権利にアプローチする対策以外に、被相続人の相続財産を整理しておくことも重要です。被相続人が元気なうちに、家財や財産の整理を進めておきましょう(生前整理)。

そして、生前のうちに、弁護士などの専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。弁護士であれば、生前贈与や遺留分放棄といった法的手続きをサポートするほか、有効な遺言書の作成や、債務整理なども、幅広く対応することが可能です。
無料相談を行っている法律事務所は多くありますので、まずは一度、ご相談していただければと思います。

生前の相続放棄に関するQ&A

Q1.生前に相続放棄をすることは可能ですか?

A:いいえ、相続放棄は、被相続人が亡くなった後に、家庭裁判所で行って認められる必要があります。生前に相続放棄の意思を示しても、法的な効力はありません。

Q2.生前に相続放棄を考えている場合、どのような対策がありますか?

A:相続放棄は被相続人の死後にしか行えないため、生前に相続を放棄したいと考える相続人は、遺留分放棄を検討することになるでしょう。遺留分放棄とは、相続人に法的に保障された最低限の相続分を放棄することです。相続放棄とは異なり、遺留分は被相続人の存命中に放棄の手続きを行うことができます。
ただし、遺留分放棄では借金などのマイナスの財産までは放棄できません。被相続人の借金を相続したくない場合には、被相続人の死後にあらためて相続放棄の手続きを行う必要があります。

Q3.被相続人が生前に相続放棄してもらいたい場合、どのような方法がありますか?

A:被相続人が生前に相続放棄してもらいたい場合に、「推定相続人の廃除」を検討する余地があります。これは、被相続人が虐待や重大な侮辱を受けたときなど、特定の事由がある場合に裁判所に対して申し立てを行い、相続人の権利を剥奪する手続きです。

まとめ

本記事でお伝えしたとおり、相続放棄は、生前に行うことができません。被相続人が亡くなり、相続が発生した後に、相続放棄の手続きをすることが可能となります。

なお、生前に相続放棄はできませんが、家族に借金を残さないための方法や、特定の人に遺産相続させる方法など、生前に取り得る対策はあります。法的な手続き以外にも、実際に自分の将来的な遺品となる財産を整理しておく「生前整理」などの簡便な方法もあるため、自身の状況に適切な方法を検討してみてはいかがでしょうか。

生前の遺産整理や相続放棄に向けてお悩みがある場合は、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あおい法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。対面によるご相談だけでなく、お電話によるご相談もお受けしておりますので、当ホームページのWeb予約フォームやお電話にて、お気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。