法定相続人|法定相続人とは範囲はどこまで?兄弟も入る?図で解説!

法定相続人

遺産分割

更新日 2025.11.28

投稿日 2024.01.24

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

相続は何度も経験するようなことではありませんから、あまり聞き慣れない法律用語に困惑することもあると思います。

そんな法律用語のうちの一つが、「法定相続人」です。

「法定相続人」と聞いて、どういった相続人をイメージされたでしょうか。
また、意味は知っていても、具体的に誰が「法定相続人」になるのかは、なかなか分かりにくいところですよね。

そこで本記事では、まずは「法定相続人とは?」という疑問に端的にお答えいたします。
法定相続人を確認する方法や、誰が法定相続人となるのかといった法定相続人の範囲について見ていきます。
そして、相続手続きの中で「誰が法定相続人になるのか」がどのように重要なのか、本記事の全体を通して確認していきたいと思います。

相続でお困りの方、将来的に備えたい方、それから知識として理解しておきたい方まで、ぜひ最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

法定相続人

「相続人」という言葉は人生の節目やドラマ、ニュースなどで耳にしたことがある、という方も多いかと思います。
ですが、「法定相続人」はそこまで日常生活の中では一般的ではありません。

以下では、「法定相続人」について、まずはどういった意味なのか確認していきましょう。

法定相続人とは【図解】

民法の「法定相続人」とは

「法定相続人」の言葉を分解しますと、「法律に相続人として定められた人」、そしてここでいう「法」とは「民法」のことを意味します。

つまり、「法定相続人」とは、民法により相続の権利を持つと定められた人のことです。

法定相続人の範囲

法定相続人は、法律によって権利を保護されている立場にあり、原則的に、相続をする権利を法律において認められている人になります。

上の図ですと、「相続人ではない」と表記されている「兄弟の配偶者」と「長女の配偶者」を除いた全ての人が、「法定相続人」ということになります。
もっとも、厳密に言えば「図中の法定相続人全員が同時に相続人になるわけではない」ため、この点は後ほど確認しましょう。

法定相続人の範囲

法定相続人の範囲はどこまで?

さて、言うまでもなく、顔も名前も知らない赤の他人が、法律によって相続人となることはありません。

故人の遺産は、亡くなった人と繋がりが深いであろう人に相続させるのが合理的だとされているからです。

そこで、民法は遺産相続させるに適切な、被相続人と合理的な深い繋がりを持つ人について、「親族」の中から決められた範囲で指定することにしたのです。これが、法定相続人です。

具体的には、以下の人が法定相続人となります。

法定相続人の範囲

亡くなった人の「配偶者」は、死亡した夫や妻の財産について常に法定相続人になります(民法第890条)。配偶者は無条件で法定相続人として認められるのです。

(配偶者の相続権)
民法第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

故人の子供や親、故人の兄弟姉妹といった、「配偶者以外の親族」も法定相続人となります。

(子及びその代襲者等の相続権)
民法第887条1項 被相続人の子は、相続人となる。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第889条1項 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹

 

ここで注意が必要なのは、配偶者以外の親族は、同時に法定相続人になるわけではない、という点です。

配偶者以外の親族については、民法によって、「法定相続人となる順位」が定められているのです。
民法は、配偶者以外の親族の中でも、法定相続人になる「順位」をつけています。亡くなった人と特に繋がりが深いであろう人を、優先的に法定相続人として指定する、という方法を取っているのです。

つまり、配偶者を除けば、まずは子や孫といった故人の直系卑属(故人から見て親子関係で縦に血の繋がりがある、故人より下の世代の人)が法定相続人となります。
その次に、親や祖父母といった故人の直系尊属(故人から見て親子関係で縦に血の繋がりがある、故人より上の世代の人)が法定相続人となり、最後に故人の兄弟姉妹が法定相続人となるのです。

このように、上位に位置する親族が存在する場合、その下位の親族は法定相続人となることができません。
なお、同じ順位の親族が存在する場合は、その全員が法定相続人となります。

なぜ、同じ法定相続人なのに、順位が定められているのでしょうか。

そもそも相続の「順位」ですが、これは「上位の相続人から優先して得たい遺産を得ることができる」という性質の優先権ではありません。
この点に関して漠然と「故人の兄弟や甥姪にも相続権がある」と思っている方が多いのですが、故人の配偶者以外の親族については、「自分より上位の相続人がいる場合は、自身が相続人になることはできない」ことに注意しましょう。

例えば、故人の配偶者と故人の子が法定相続人になる場合、第一順位者である子より下位の直系尊属や兄弟姉妹などは、相続人にはならないのです。
次の順位者である第二順位者が法定相続人になるのは、第一順位者である子も孫もいない場合となります。
なお、配偶者は「常に」法定相続人となるため、順位者の変動に左右されることはありません。

法定相続人は何親等まで?

ところで、しばしば「何親等までが法定相続人になるのでしょうか?」と聞かれることがあります。

民法上、法定相続人における「親族の範囲」は、「3親等内の姻族」、「6親等内の血族」、そして「配偶者」と定義されています(民法第887条、第889条、第890条)。

これを見ると「6親等まで」と思われるかもしれませんが、法定相続人になる人に関して「何親等まで」と決められているわけではありません。

後述する通り、例えば被相続人の子や孫が死亡している場合には、さらにその子、孫・・・と相続権が移っていくことになります。そのため、厳密に「何親等まで」と定義することはできないのです。

さて、法定相続人の範囲について、以下で法定相続人ごとに個別で見ていきましょう。

①配偶者

民法第890条は、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」と規定しています。これが、被相続人の配偶者が常に法定相続人となる根拠です。

なお、民法第890条の「配偶者」は、正式に法的手続きを経て結婚した、法律上の夫または妻を指します。

つまり、戸籍に夫婦として記載されている場合のみ、その人は法定相続人としての資格を持つことができるのです。

法律上の結婚の手続きをせずに夫婦のように生活している「事実婚」の場合や、過去に結婚していたが現在は離婚している「元配偶者」の場合には、法定相続人としての資格は認められません。「被相続人の法律上の配偶者」ではないからです。

②子や孫

前述の通り、民法第887条1項は「被相続人の子は、相続人となる。」と定めています。これは、血の繋がりのある親族の中で、子供が一番先に法定相続人となる、ということです。

なお、「被相続人の子」には、実子以外の以下のような子も含まれます。この場合、第一順位の「子」として法定相続人になります。

  • 故人と元配偶者との間の子供
  • 内縁関係・事実婚の女性との間に生まれ、故人が認知した子供
  • 故人と養子縁組した子供
  • 胎児

一方で、次のような場合には「被相続人の子」に含まれないため、法定相続人にはなりません。

  • 内縁関係・事実婚の女性との間に生まれ、故人が認知していない子供
  • 故人と養子縁組していない、再婚相手の連れ子
  • 胎児が死産だった場合

なぜこのように異なるかというと、被相続人との「法的な親子関係の有無」によって判断されるからです。

そして、子供だけでなく、孫やひ孫といった故人の直系卑属も相続人となる可能性があります。

ですので、もし子供が相続前に亡くなっていたり、廃除や欠格などにより相続の資格を失っている場合は、子供は相続人にはなれないため、その子供(故人にとっての孫)が相続人になることになります(民法第887条2項)。

さらに、その孫も早く亡くなっていたり、相続の資格を失っている場合は、その孫の子供(つまりひ孫)が相続人となります。
第一順位の相続人が1人でも存在する場合には、第二順位以下の親族は相続人になることはできません。

③両親や祖父母

親や祖父母など、被相続人より前の世代の直系の血族のことを直系尊属と言います。

被相続人の直系尊属である両親や祖父母に関しては、民法第889条1項1号において、被相続人の子や孫がいない場合は法定相続人になる、と定められています。

これは、実親だけでなく、養親の場合も「第二順位の親」として法定相続人になります。

両親が共に亡くなっている場合は祖父母が、祖父母も全員亡くなっている場合には、曽祖父母が第二順位の相続人となります。

もっとも、通常は、祖父母より上の代までいくことはないでしょう。
祖父母より上の代まで遡って、存命であるかどうかを確認する必要は、通常はないと考えられます。

④兄弟姉妹や兄弟の子

民法第889条1項2号において、被相続人に子がおらず、また被相続人の両親等の直系尊属が亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になることが定められています。

つまり、故人の兄弟姉妹が相続人になることができるのは、第一順位の相続人も第二順位の相続人もいない場合に限られるのです。

兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子(甥・姪)が代襲して相続人となります。子供が死亡した場合に孫が相続人になるのと似ていますが、孫が死亡した場合はひ孫が相続人になることと異なり、甥や姪の子(兄弟姉妹の孫)には再代襲が認められていないため、甥・姪の子は相続人になることはできません。

遺言書で、法定相続人ではない人が遺産の受取人として指定されていることがあります。
例えば、元配偶者や事実婚の夫・妻、被相続人の友人といった関係の人が考えられます。
この場合は、遺言を書いた人の意思を尊重するため、遺言で指定された内容が優先されることになります。そのため、遺言で指定された人が法定相続人に優先して相続する権利を持つことになるのです。

兄弟の配偶者はどうなる?

故人の兄弟姉妹の配偶者は、法定相続人にはなりません。

まず、兄弟姉妹の配偶者は、被相続人から見れば血族ではなく「姻族」にあたるため、血族相続人の範囲には含まれません。

そして、そもそも「故人の兄弟姉妹」が法定相続人として認められる背景に、大きく次の2つの考え方があるとされているためです。

  1. 被相続人に子や直系尊属がいない場合、相続によって収入がない兄弟姉妹の生活を保障する。
  2. 兄弟姉妹は一般的に、共通の親の下で育ち、同一の核家族の構成員であったことが多い。

こうした考え方からすれば、兄弟姉妹の配偶者は法定相続人にはならないのです。

法定相続人が死亡している場合は?

法定相続人である子供が死亡している場合は、子供の代わりに孫が相続することができます。孫が死亡していれば、ひ孫が相続します。
兄弟姉妹が死亡している場合についても、甥や姪が代わりに相続することができます。

こうした相続を、代襲相続といいます。

ですが、甥や姪が死亡している場合、その甥や姪の子は相続人になることはできません。社会通念上、遺産相続を考えるほど親密に、甥や姪の子と日常的に接しているという方はそこまで多くはないからです。
甥や姪の子は、故人とほぼ繋がりがないことが一般的である、と考えられるため、このような差異が生じています。

法定相続人だが相続人にはならない人

「法定相続人だが相続人にはならない人」というのもあるので、確認しておきましょう。

ややこしく思われるかもしれませんが、簡単に言いますと「立場としては法定相続人だが、相続人として不適切なので相続する権利を失った人」です。
それが、相続欠格(民法第891条)と相続廃除(民法第892・第893条)です。

相続欠格

相続欠格は、本来であれば相続人になる人が、民法第891条に該当する行為をした場合に、自動的に相続権を失う制度です。以下のいずれかに当てはまる場合、特に何の手続きを経ることなく、相続権を失います。

(相続人の欠格事由)
民法第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続廃除

相続廃除とは、相続欠格事由には該当しないものの、被相続人に対する虐待・重大な侮辱といった非行があった場合に、相続権を失う制度です。これは、相続欠格とは異なり、被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所が相続権を剥奪する仕組みになっています。

(推定相続人の廃除)
民法第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

(遺言による推定相続人の廃除)
民法第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

なお、相続欠格や相続廃除によって相続権を失った人の子が、代襲相続によって遺産相続することは可能です。

法定相続人が相続権を放棄したらどうなる?

上記に関連して、法定相続人が自分の意思で相続権を失うこともあります。それが、「相続放棄」です。

相続放棄した法定相続人については、「最初から相続人ではなかった」という扱いになります。最初から相続人ではないのですから、当然代襲相続もできません。

例えば、被相続人の唯一の子が相続放棄した場合、孫に相続権は移らず、第二順位の「被相続人の親」に相続権が移ることになるのです。

法定相続人がいない場合

未婚で親兄弟もいない・法定相続人が全員相続放棄してしまったなど、亡くなった人に法定相続人がいない場合、その遺産はどうなるのでしょうか。

この場合、まずは家庭裁判所が相続財産清算人を選定します(民法第897条の2)。

(相続財産の保存)
民法第897条の2 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

相続財産清算人は、遺産の調査や管理を行います。
まず、借金の清算や特別縁故者への遺産の配当などを行い、それでも遺産が余った場合、その遺産は最終的に国庫に帰属することになるのです。

法定相続人の確認方法は戸籍謄本

以上のとおり、法定相続人の範囲について詳しく見てきました。

そんな法定相続人の確認方法ですが、「戸籍謄本」で行います。

法定相続人確認するために必要なのが、「被相続人の生まれた日から亡くなった日までの連続した戸籍謄本」です。

戸籍謄本は、行政手続きで取得したことのある方も多いかと思います。申請方法を簡単に確認しておきましょう。

戸籍謄本の取り方ですが、最初に取得するのは、被相続人が最後に登録していた市区町村役場の戸籍謄本です。役所の窓口で直接申請するか、遠方の場合は郵送で申請します。郵送の場合は、交付申請書や本人確認書類のコピーのほか、手数料として定額小為替、返信用封筒などが必要になります。各自治体のホームページなどで事前に確認しておきましょう。

そして、ほとんどの場合、婚姻や離婚、転居などで戸籍に変動があります。一箇所だけで出生まで遡れることは稀ですので、取得した戸籍謄本に記載されている本籍地を参考に、出生まで遡っていくことになるでしょう。

被相続人が転居している場合は、転居してくる前の本籍地が記載されているので、転居前の市区町村役場に戸籍謄本を請求します。
この作業を、被相続人が生まれた時点の戸籍謄本を取得するまで続けることで、被相続人の出生から死亡までの家族構成を把握することができるのです。

戸籍謄本の取得には、かなりの時間と労力がかかります。郵送申請の場合、申請してから戸籍謄本を受け取るまでに1週間前後かかることもあるので、早めに準備を始めましょう。
もし難しいときには、弁護士にお早めにご相談いただければと思います。

法定相続人の数

ここまで見てきた法定相続人ですが、法定相続人の数によって、遺産相続そのものと、その後の相続税の手続きにも影響が生じます。

法定相続人の数は何に影響する?

法定相続人の人数に関して、当事者に最も影響があるのが「相続分」、つまり「一人が受け取ることができる財産の割合」です。

法定相続人一人ひとりが受け取ることができる財産の割合を、「法定相続分」と言います(民法第900条)。
この法定相続分は、誰が法定相続人になるか、法定相続人が何人であるかによって変わってくるのです。

例えば、配偶者と3人の子供が相続人のケースを見てみましょう。
相続する財産が、仮に現金1200万円だとします。

まず配偶者が2分の1の相続分(民法第900条1号)に従い、1200万円の2分の1である600万円を相続します。
残りの2分の1の相続分については、子供3人で分割することになるので、子供一人の相続分は6分の1(2分の1÷3=1分の6)となります。したがって、相続財産1200万円から配偶者の相続分600万円を差し引いた残額600万円については、子供がそれぞれ200万円ずつ相続することになるのです(1200万円×6分の1=200万円)。

 

 

もっとも、法定相続分を必ずしも守らなければならない、ということではありません。
実際の相続では、例えば遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って財産を分けることになります。また、遺産分割協議で相続人全員が合意した場合は、法定相続分に関係なく、合意した相続分で遺産を分けることも可能です。

法定相続分について、事例や計算方法などの詳細については、下記関連記事にて解説しておりますので、ぜひあわせてご一読ください。

法定相続人の数は法律ごとに基準が違う?

以上のとおり、遺産相続を進めるにあたっては、法定相続人の範囲と人数を把握することが重要です。

さらに、遺産相続が終わった後、相続税計算の際にも「法定相続人の数」は非常に重要となります。
というのも、相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で算定するのです。つまり、法定相続人の数が多いほど、基礎控除額が大きくなり、相続税の負担を軽減できるということになります。

そのため、相続税の軽減を目的とした養子縁組が行われることもあるのです。
そこで相続税法は、こうした税負担から逃れるための意図的な養子縁組を防ぐため、「法定相続人の数」に関して民法とは異なる基準を設けています。

民法では、養子の人数に特に制限はありません。

一方で相続税法では、相続税の負担を不当に軽くすることを防ぐため、養子の人数に上限が定められています。
具体的には、実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は養子は2人までが、相続税の計算上「法定相続人」として扱われます(相続税法第15条2項)。

(遺産に係る基礎控除)
相続税法第15条 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

なお、相続税法と民法における「法定相続人」の違いは、相続放棄においても見られます。
相続人の中に相続放棄をした人がいる場合でも、相続税の計算においては「相続放棄がなかったもの」として、法定相続人の人数に含めることになるのです。

このように、遺産相続を進める際には、分割の場面だけでなく、その後の相続税の計算についても考慮して、適切に法定相続人の数を確認することが重要なのです。

法定相続人に関するQ&A

Q1.法定相続人とはどういう人ですか?

A:「法定相続人」とは、民法により相続の権利を持つと定められた人のことです。

Q2.遺言書がある場合の法定相続人の扱いはどうなりますか?

A:遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って遺産が分割されます。ただし、法定相続人には遺留分と呼ばれる最低限の相続権があり、この遺留分を侵害する遺言内容は法的に無効となる可能性があります。遺留分は配偶者や子供、父母に認められていますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。遺言書が正しく作成されていれば、それに基づいて遺産分割が進みます。

Q3.養子は法定相続人として認められますか?

A:養子も法定相続人として認められます。養子は実子と同じ権利を持つため、相続人となります。
ただし、相続税法上の法定相続人の数に関しては、控除の計算で法定相続人として扱われる養子の数に制限があるため注意してください。実子がいる場合は養子1人、実子がいない場合は養子2人までが、相続税の計算に含まれる法定相続人として認められます。

まとめ

この記事では、法定相続人について弁護士が解説させていただきました。

遺産分割を進める上で、法定相続人を正確に把握しておく必要性についてご理解いただけたかと思います。

法定相続人が誰なのか正しく特定しておかないと、遺産分割後に新たな相続人が現れて遺産分割をやり直すことにもなりかねません。思わぬトラブルや負担が生じてしまうこともあります。

法定相続人について疑問や不安に感じることがありましたら、お気軽に弁護士へご相談ください。
弁護士法人あおい法律事務所では、初回無料で弁護士による法律相談を行っております。Web予約フォームやお電話にてお申込みいただけますので、お困りの際にはご活用していただければと思います。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。