法定相続人|法定相続人とは?範囲や割合を弁護士が徹底解説!

法定相続人

遺産分割

更新日 2024.11.11

投稿日 2024.01.24

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

相続は人生で何度もあることではありませんから、その際に、聞きなれない法律用語で困惑することもあると思います。

相続が生じたときに、必ず押さえておきたい用語の一つに、「法定相続人」という用語があります。「法定相続人」と聞いてイメージするのは、「法律上決められている相続人となる人」ではないでしょうか。しかし、具体的に誰が「法定相続人」になるのかは、なかなか分かりにくいところですよね。

本記事では、まずは「法定相続人とは?」という疑問に端的にお答えいたします。そして、法定相続人の範囲や相続割合、法定相続人を確認する方法など、「法定相続人」について包括的に、わかりやすく解説させていただきます。

相続でお困りの方、将来的に備えたい方、それから知識として理解しておきたい方まで、ぜひ本記事で必要な知識をすべておさえておきましょう。

目次

法定相続人とは?

法定相続人の「法」とは、民法のことを意味します。つまり、「法定相続人」とは、民法により相続の権利を持つと定められた人のことを指します。

法定相続人は、法律によって権利を保護されている立場にあり、原則的に、相続をする権利を法律において認められている人なのです。

もっとも、もし遺言がある場合には、遺言で法定相続人以外の人が遺産の受取人として指定されていることがあります。この場合には、法定相続人よりも優先して、遺言で指定された人が相続する権利を持つことになります。つまり、民法で定められた「法定相続人」よりも、遺言で指定された人の方が優先して相続することになります。これは、遺言を書いた人の意思を尊重するためであり、原則に対する例外ということができます。

それでは、具体的にはどのような人が法定相続人になるのでしょうか。法定相続人の範囲について見ていきましょう。

法定相続人の範囲はどこまで?

さて、民法は、いったい誰を相続人と定めているのでしょうか。

言うまでもなく、顔も名前も知らない赤の他人が法律によって相続人となることはありません。遺産は、亡くなった人と繋がりが深いであろう人に相続させるのが合理的だからです。

そこで、民法は、遺産を相続する人として合理的な深い繋がりを持つ人について、「親族」の中から決められた範囲で法定相続人として指定することにしたのです。民法上、この「親族の範囲」は、「3親等内の姻族」、「6親等内の血族」、そして「配偶者」と定義されています。

そして、これらの親族は、全員が同列の法定相続人ではありません。民法は、この親族の中でも順位をつけ、亡くなった人と特に繋がりが深いであろう人を優先的に相続人として指定する、という方法を取っているのです。

具体的に、相続人の範囲と順位を見てみましょう。
まず、亡くなった人の「配偶者」は、死亡した夫や妻の財産について常に相続人となり、無条件で法定相続人として認められます(民法第890条)。

次に、故人の子供や親、故人の兄弟姉妹といった配偶者以外の親族については、法定相続人となるものの、法律によって次の表の通り、順位が定められています。

第一順位

子や孫など直系卑属(民法第887条)

第二順位

親や祖父母など直系尊属(民法第889条1項1号)

第三順位

兄弟姉妹(民法第889条1項2号)

なぜ法定相続人なのに、順位が定められているのでしょうか。
そもそも相続の「順位」ですが、「上位の相続人から優先して得たい遺産を得ることができる」というような優先権ではありません。漠然と「故人の兄弟や甥姪も相続権がある」と思っている人が多いのですが、故人の配偶者以外の親族については、自分より上位の相続人がいる場合は相続人になることができないことに注意しましょう。

 

法定相続人の範囲

つまり、例えば故人の配偶者と第一順位である子が存命で法定相続人となる場合、第一順位より下位の直系尊属や兄弟姉妹などは、相続人にはならないのです。また、第一順位者である子も孫もいない場合は、次の順位者である第二順位者が法定相続人となります。配偶者は「常に」法定相続人となるため、順位者の変動に左右されることはありません。
このように、上位に位置する親族が存在する場合、その下位の親族は法定相続人となることができません。
なお、同じ順位の親族が存在する場合は、その全員が法定相続人となります。

なお、法定相続人である子供が死亡している場合は、子供の代わりに孫が相続することができます。これを「代襲相続」といいます。孫が死亡していれば、ひ孫が相続します。
兄弟姉妹が死亡している場合についても、甥や姪が代わりに相続することができますが、甥や姪が死亡している場合、その甥や姪の子は相続人になることはできません。社会通念上、甥や姪の子は故人とほぼ繋がりがないことが通常であると考えられるためです。

さて、法定相続人の範囲と順位について、簡単にご説明しますと以上の通りとなりますが、以下でより詳しく見ていきましょう。

法定相続人の順位│子や孫・両親・兄弟姉妹が相続人になるケースは?

配偶者は常に法定相続人

民法第890条は、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」と規定しています。これが、被相続人の配偶者が常に法定相続人となる根拠です。
なお、民法第890条の「配偶者」は、正式に法的手続きを経て結婚した、法律上の夫または妻を指します。

つまり、戸籍に夫婦として記載されている場合のみ、その人は法定相続人としての資格を持つことができるのです。

一方で、法律上の結婚の手続きをせずに夫婦のように生活している「事実婚」の場合や、過去に結婚していたが現在は離婚している「元配偶者」の場合には、法定相続人としての資格は認められませんのでご注意ください。

また、例えば被相続人が夫や妻とともに子供や孫がいる場合、この子供や孫は配偶者と同じ第一順位の相続人として扱われます。この際、遺産は配偶者とその他の第一順位の相続人(例えば子供や孫)との間で分割されることになります。

子や孫など直系卑属が相続人になる場合

民法第887条1項は「被相続人の子は、相続人となる。」と定めています。これは、血の繋がりのある親族の中で、子供が一番先に法定相続人となる、ということです。

もし子供が相続前に亡くなっていたり、廃除や欠格などにより相続の資格を失っている場合は、子供は相続人にはなれないため、その子供の子供(つまり孫)が相続人になることになります。

さらに、その孫も早く亡くなっていたり、相続の資格を失っている場合は、その孫の子供(つまりひ孫)が相続人となります。
第一順位の相続人が1人でも存在する場合には、第二順位以下の親族は相続人になることはできません。

両親や祖父母など直系尊属が相続人になる場合

被相続人の直系尊属である両親や祖父母に関しては、民法第889条1項1号において、被相続人の子や孫がいない場合は法定相続人になる、と定められています。

両親が共に亡くなっている場合などは祖父母が、祖父母も全員亡くなっている場合には曽祖父母が第二順位の相続人となります。

もっとも、通常は、祖父母より上の代までいくことはないでしょう。直系尊属については代襲相続は認められていませんので、祖父母より上の代まで遡って、存命であるかどうかを確認する必要は通常はないと考えられます。

なお、親や祖父母など、被相続人より前の世代の直系の血族のことを直系尊属と言います。

兄弟姉妹が相続人になる場合

民法第889条1項2号において、被相続人に子がおらず、また被相続人の両親等の直系尊属が亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になることが定められています。

つまり、故人の兄弟姉妹が相続人になることができるのは、第一順位の相続人も第二順位の相続人もいない場合に限られるのです。

兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子(甥・姪)が代襲して相続人となります。子供が死亡した場合に孫が相続人になるのと似ていますが、孫が死亡した場合はひ孫が相続人になることと異なり、甥や姪の子(兄弟姉妹の孫)には再代襲が認められていないため、甥・姪の子は相続人になることはできません。

相続する割合は?

法定相続人の範囲については、上記のように定められますが、法定相続人はそれぞれどのような割合で被相続人の財産を相続するのでしょうか。

法定相続人一人ひとりが受け取ることができる財産の割合を、「法定相続分」と言います。
法定相続分についても、「法定」の通り民法に定められています(民法第900条)。ですが、必ずしも守らなければならない割合という意味ではありません。実際の相続では、もし遺言書が存在あれば遺言書の内容に従って財産を分けますし、遺産分割協議をして相続人間で合意した場合は、法定相続分にとらわれずに合意した相続分で遺産を分けることも可能です。

法定相続分について、事例や計算方法などの詳細については、下記関連記事にて解説しておりますので、ぜひあわせてご一読ください。

さて、法定相続人の相続分は、誰が法定相続人になるか、法定相続人が何人であるかによって変わります。ここでは、具体的なケース別に、相続割合について解説させていただきます。

1.配偶者と子供(または孫)の場合

相続人が配偶者と子供(または孫)の場合の相続割合ですが、民法第900条1号により、「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。」と定められております。ですので、遺産全体の半分、つまり2分の1は配偶者が相続します。残りの2分の1は、子供(子供が亡くなった場合は孫)が相続することとなります。

もし子供や孫が複数人存在する場合、子供や孫の人数で、この2分の1の部分を均等に分け合います(民法第900条4号)。

例えば、配偶者と3人の子供が相続人のケースを考えてみましょう。相続する財産が仮に現金1200万円だとした場合、まず配偶者が2分の1の相続分に従い、1200万円の2分の1である600万円を相続します。残りの2分の1の相続分については、子供3人で分割することになるので、子供一人の相続分は6分の1(2分の1÷3=1分の6)となります。したがって、相続財産1200万円から配偶者の相続分600万円を差し引いた残額600万円については、子供がそれぞれ200万円ずつ相続することになるのです(1200万円×6分の1=200万円)。

2.配偶者と両親(または祖父母)の場合

相続人が配偶者と直系尊属(両親または祖父母)の場合の相続割合は、「配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。」と定められています(民法第900条2号)。ですので、遺産全体の3分の2を配偶者が相続し、残りの3分の1は、父母(もし父母がすでに亡くなっている場合には祖父母)が受け取ることとなります。

もし、父母の両方または祖父母の両方が生存している場合、この3分の1の遺産は、父母または祖父母で均等に分け合います(民法第900条4号)。

例えば、父と母が両方とも生存している場合、3分の1の遺産は父と母それぞれが2分の1ずつ受け取ることになります。つまり、父母の相続割合はそれぞれ6分の1ずつとなります。

3.配偶者と兄弟姉妹がいる場合の場合

配偶者と、故人の兄弟姉妹が相続人である場合は、民法第900条3号の「配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。」の規定により、まず、遺産全体の4分の3を配偶者が受け取ることになります。

民法第900条1号から3号までを見比べるとお気づきかもしれませんが、配偶者以外の相続人の相続順位が低いほど、配偶者の相続割合が大きくなることからも、配偶者の法定相続人としての地位が強く保護されていることがわかります。

配偶者が4分の3を相続すると、残りの4分の1は、兄弟姉妹で均等に分け合うことになります(民法第900条4号)。もし、兄弟姉妹が複数人存在する場合、この4分の1の部分を均等に分け合うことになります。例えば、兄弟姉妹が4人いる場合、遺産の4分の1を3等分しますので、それぞれの兄弟姉妹の相続割合は12分の1ずつ、となります。

人数の数え方の注意点│民法と相続税法で異なる

法定相続人の範囲と人数を把握することは、遺産分割協議や遺言書作成などの際に重要な情報となります。また、それだけでなく、相続税計算の際にも非常に重要となります。相続税の額は、遺産の総額だけでなく、相続人の数や被相続人との関係によっても変わるためです。

法定相続人の数は、民法と相続税法とで異なるという点に注意が必要です。
相続税の計算の際に用いる法定相続人の数は、税の計算上で考慮する必要がある人数を指します。こちらは税額の計算のために特定の条件下で算出されるものであり、実際の法定相続人の数とは異なることがあります。

例えば、故人が養子縁組をしていた場合、民法上は、養子は実子と同じように法定相続人になります。養子が5人いる場合、5人全員が法定相続人として数えられることになるのです。ところが、相続税法では、基礎控除が認められる養子の人数を最大2人までに制限しているのです。

これは、相続税法においては、基礎控除の金額は法定相続人の人数に比例して多くなるためです。つまり、相続税法上、養子の人数も無制限に基礎控除を受けられる法定相続人として認めてしまうと、基礎控除の金額が多くなり、課税される相続税が少なくなるのです。養子の人数を無制限に認めてしまうと、制度を濫用される恐れがあるため、このような制限が設けられました。

また、民法では相続放棄をした相続人は、最初から相続人ではなかった者として扱いますが、相続税を計算する際の法定相続人の人数には、相続放棄をした人の数も含みます。民法では法定相続人ではない相続放棄者が、相続税法では法定相続人として扱われることになるわけです。

このように、民法における法定相続人の数と、相続税法における法定相続人の数が、異なる場合があるのです。

具体的な相続の際には、それぞれの場面に応じて、適切に法定相続人の数を確認することが大切です。

確認方法は?│戸籍謄本の集め方

このように家族構成によって、誰が法定相続人になるかが定まり、また法定相続人が何人であるかによって、それぞれの相続割合が変わります。

そのため、誰が法定相続人となるかを調べることが非常に重要となります。

法定相続人の範囲を確定させるために必要になってくるのが、被相続人の生まれた日から亡くなった日までの連続した戸籍謄本です。

まず、被相続人が最後に登録していた市区町村役場から、戸籍謄本を取得します。この謄本には前の本籍地が記載されているので、戸籍謄本の記載に従い、前の市区町村役場にも戸籍謄本を請求します。これを被相続人が生まれた時点の戸籍謄本を取得するまで続けることで、被相続人の出生から死亡までの家族構成を把握することができるのです。

この戸籍謄本の取得作業は、かなりの時間と労力がかかるものです。早めに取り組むことをお勧めいたします。もし難しいときには、弁護士などの専門家にお早めにご相談ください。

法定相続人に関するQ&A

Q:何親等までが法定相続人として認められますか?

A:法定相続人として認められるのは、血族において6親等まで(大曾祖父母の世代)と、配偶者です。

Q:遺言書がある場合の法定相続人の扱いはどうなりますか?

A:遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って遺産が分割されます。ただし、法定相続人には遺留分と呼ばれる最低限の相続権があり、この遺留分を侵害する遺言内容は法的に無効となる可能性があります。遺留分は配偶者や子供、父母に認められていますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。遺言書が正しく作成されていれば、それに基づいて遺産分割が進みます。

Q: 養子は法定相続人として認められますか?

A:養子も法定相続人として認められます。養子は実子と同じ権利を持ち、相続人となります。ただし、相続税法上の法定相続人の数に関しては、控除の計算で養子の数に制限があり、実子がいる場合は養子1人、実子がいない場合は養子2人までが相続税の計算に含まれる法定相続人として認められます。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。