法定相続人とは?範囲と順位・相続割合について詳しく解説

法定相続人

遺産分割

更新日 2024.08.12

投稿日 2024.01.24

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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相続は人生で何度もあることではありませんから、その際に、聞きなれない法律用語で困惑することもあると思います。

相続が生じたときに、必ず押さえておきたい用語の一つに、「法定相続人」という用語があります。「法定相続人」と聞くと、法律上、相続人となる人という何となくのイメージは湧くと思います。しかし、「法定相続人」とは具体的にどの人を指すのかはなかなか分かりにくいところですよね。

本記事では、まずは「法定相続人とは?」という疑問に端的にお答えする共に、法定相続人の範囲、相続割合、そして法定相続人を確認する方法まで、「法定相続人」について包括的にわかりやすくご説明いたします。

相続でお困りの方、将来的に備えたい方、それから知識として理解しておきたい方まで、ぜひ本記事で必要な知識をすべて押させておきましょう。

目次

法定相続人とは?

「法定相続人」とは、民法により相続の権利を持つと定められた人のことを指します。つまり、ここでいう「法定」とは、民法に定められたという意味です。

このように、法定相続人は、法的に権利を保護されている立場といえ、原則的に、相続をする権利を認められた人ということができます。

もっとも、もし遺言がある場合には、遺言で法定相続人以外の人が遺産の受取人として指定されていることがあります。この場合には、法定相続人よりも優先して、遺言で指定された人が相続する権利を持つことになります。つまり、民法で定められた「法定相続人」よりも、遺言で指定された人の方が優先して相続することになります。これは、遺言を書いた人の意志を尊重するためであり、原則に対する例外ということができます。

それではどのような人が法定相続人になるのでしょうか。法定相続人の範囲について見ていきましょう。

法定相続人の範囲はどこまで?

さて、民法は、いったい誰を相続人と定めているのでしょうか。

そもそもですが、当然ながら、全くの赤の他人を法律で相続人と定めることは合理的ではありません。遺産は、亡くなった方と繋がりが深いであろう人に相続させるのが合理的です。

そこで、民法は、繋がりが深いであろう人を相続人として指定しています。具体的には、「親族」の中から決められた範囲で指定されおり、民法上、「親族の範囲」は、「3親等内の姻族」、「6親等内の血族」、そして「配偶者」と定義されています。

そして、民法は、この親族の中でも、亡くなった方と特に繋がりが深いであろう人を優先的に相続人として指定するという方法を取っています。

具体的には、まず、配偶者は死亡した夫や妻の財産を相続する特権を持っており、無条件で法定相続人として認められます。一方、配偶者以外の親族、例えば子供や親、兄弟姉妹などについては、法律によって明確な相続の順位が定められています。

配偶者以外に法定相続人となれる親族の順位は以下の表のとおりです。

第一順位

子や孫など直系卑属

第二順位

親や祖父母など直系尊属

第三順位

兄弟姉妹

 

法定相続人の範囲

つまり、もし配偶者がいて、被相続人に子供が存在する場合、その配偶者と子供が法定相続人となります。 子供が存在しない場合、その配偶者と被相続人の両親や祖父母が法定相続人となります。 さらに、子供や両親、祖父母も存在しない場合、その配偶者と被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。
このように、上位に位置する親族が存在する場合、その下位の親族は法定相続人となることができません。
なお、同じ順位の親族が存在する場合は、その全員が法定相続人となります。

なお、法定相続人である子供が死亡している場合は、代わりに孫が相続することができます。これを「代襲相続」といいます。孫が死亡していればひ孫が相続します。
兄弟姉妹が死亡している場合についても、甥や姪が代わりに相続することができますが、甥や姪が死亡している場合、その甥や姪の子は相続人になることはできません。甥や姪の子は亡くなった方とほとんど繋がりがないことが通常であろうと考えられるからです。

以下、法定相続人の順位について、それぞれ詳しく解説いたします。

法定相続人の順位│子や孫・両親・兄弟姉妹が相続人になるケースは?

配偶者は常に法定相続人

民法890条において、被相続人の配偶者は、常に法定相続人であると定められています。ここでの「配偶者」は、正式に法的手続きを経て結婚した夫または妻を指します。

つまり、戸籍に夫婦として記載されている場合のみ、その人は法定相続人としての資格を持つことができます。

一方で、結婚の手続きをせずに実際には夫婦のように生活している「事実婚」のケースや、過去に結婚していたが現在は離婚している「元配偶者」の場合には、法定相続人としての資格は認められませんのでご注意ください。

また、例えば被相続人が夫や妻とともに子供や孫がいる場合、この子供や孫は配偶者と同じ第一順位の相続人として扱われます。この際、遺産は配偶者とその他の第一順位の相続人(例えば子供や孫)との間で分割されることになります。

子や孫など直系卑属が相続人になる場合

民法887条において、血のつながりのある親族の中で、子供が一番先に法定相続人となることが定められています。

もし子供が早く亡くなっていたり、廃除や欠格などにより相続の資格を失っている場合は、その子供の子供(つまり孫)が財産を受け継ぐことになります。

さらに、その孫も早く亡くなっていたり、相続の資格を失っている場合は、その孫の子供(つまり曾孫)が財産を受け継ぐことになります。
第一順位の相続人が1人でも存在する場合には、第二順位以下は相続人になることはできません。

両親や祖父母など直系尊属が相続人になる場合

民法889条において、被相続人の子や孫がいない場合は、直系尊属である両親や祖父母が法定相続人になることが定められています。

両親が共に亡くなっている場合などは祖父母が、祖父母も全員亡くなっている場合には曽祖父母が第二順位の相続人となります。

もっとも、通常は、祖父母より上の代までいくことはないでしょう。直系尊属については代襲相続は認められていませんので、祖父母より上の代まで遡って、存命であるかどうかを確認する必要は通常はないと考えられます。

なお、親や祖父母など、被相続人より前の世代の直系の血族のことを直系尊属と言います。

兄弟姉妹が相続人になる場合

民法889条において、被相続人に子がおらず、また被相続人の両親等の直系尊属が亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になることが定められています。

つまり、第一順位の相続人も第二順位の相続人もいない場合にのみ兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子(甥・姪)が代襲して相続人となります。ただし、兄弟姉妹の孫(大甥・大姪)には再代襲が認められていません。

相続する割合は?

法定相続人の範囲については、上記のように定められますが、法定相続人はそれぞれどのような割合で被相続人の財産を相続するのでしょうか。

法定相続人が受け取ることができる財産の割合を「法定相続分」と言います。
民法において法定相続分が定められていますが、実際の相続で必ずしもその割合に従って遺産が分けられるわけではありません。

もし遺言書が存在すればその内容に従って財産を分けます。また、全ての相続人間で遺産の分割に合意がある場合、法定の割合にとらわれずに遺産を分けることも可能です。

法定相続分についての詳しい解説については、下記記事に記載しておりますので参照してください。

法定相続分とは?│法定の相続割合と計算方法を事例で解説します!

法定相続人の相続割合は、誰が法定相続人になるか、法定相続人が何人であるかによって変わります。ここでは、具体的にケース別に相続割合について解説します。

1.配偶者と子ども(または孫)の場合

まず、遺産全体の半分、つまり2分の1は配偶者が相続します。残りの2分の1は、子どもや孫(子どもが亡くなった場合)が相続することとなります。

もし子どもや孫が複数人存在する場合、この2分の1の部分を均等に分け合います。例えば、3人の子どもがいる場合、残りの2分の1の遺産は3等分されますので、それぞれの子どもの相続割合は6分の1ずつとなります。

2.配偶者と両親(または祖父母)の場合

まず、遺産全体の3分の2は配偶者が相続します。一方、残りの3分の1は、父母や、もし父母がすでに亡くなっている場合には祖父母が受け取ることとなります。

もし、父母または祖父母の両方が生存している場合、この3分の1の遺産は2人で均等に分け合います。

たとえば、父と母が両方とも生存している場合、3分の1の遺産はそれぞれが2分の1ずつ受け取ることになります。つまり、父母の相続割合はそれぞれ6分の1ずつとなります。

3.配偶者と兄弟姉妹がいる場合の場合

まず、遺産全体の4分の3は、配偶者が受け取ることになります。

配偶者以外の相続人の相続順位が低いほど、配偶者の相続割合が大きくなることからも、配偶者の法定相続人としての地位が強く保護されていることがわかります。

残りの4分の1は、兄弟姉妹の間で共有されます。もし、兄弟姉妹が複数人存在する場合、この4分の1の部分を均等に分け合うことになります。例えば、兄弟姉妹が3人いる場合、残りの4分の1を3等分しますので、それぞれの兄弟姉妹の相続割合は12分の1ずつとなります。

人数の数え方の注意点│民法と相続税法で異なる

法定相続人の範囲と人数を把握することは、遺産分割協議や遺言書作成などの際にも重要な情報となります。

その他、相続税計算の際にも非常に重要となります。相続税の額は、遺産の総額だけでなく、相続人の数や被相続人との関係によっても変わります。

ここで注意が必要となるのが、法定相続人の数は、民法と相続税法で違うという点です。
相続税の計算の際に用いる法定相続人の数は、税の計算上で考慮する必要がある人数を指します。こちらは税額の計算のために特定の条件下で算出されるものであり、実際の法定相続人の数とは異なることがあります。

例えば、相続放棄や養子縁組の場合、民法と相続税法とで法定相続人としての取り扱いや、その数え方に違いが生じることがあります。
したがって、具体的な相続の際には、それぞれの場面に応じて、適切に法定相続人の数を確認することが大切です。

確認方法は?│戸籍謄本の集め方

このように家族構成によって、誰が法定相続人になるかが定まり、また法定相続人が何人であるかによって相続割合が変わります。

そのため誰が法定相続人となるかを調べることが非常に重要となります。
法定相続人の範囲を定めるためには、被相続人の生まれた日から亡くなった日までの連続した戸籍謄本が必要となります。

被相続人が最後に登録していた市区町村役場から、戸籍謄本をまず取得します。この謄本には前の本籍地が記載されているので、その記載に従い前の市区町村役場にも謄本を請求します。これを、被相続人が生まれた時点の戸籍謄本を取得するまで続けます。

この作業はかなりの時間と労力がかかるものです。早めに取り組むことをおすすめします。もし難しいときには、弁護士などの専門家にお早めに相談しましょう。

法定相続人に関するQ&A

Q:何親等までが認められますか?

A:法定相続人として認められるのは、血族において6親等まで(大曾祖父母の世代)と、配偶者です。

Q:遺言書がある場合の扱いはどうなりますか?

A:遺言書が存在する場合、その遺言書の内容に従って財産が分割されます。ただし、法定相続分を保障するため、法定相続人がその保障された最低限の部分を受け取る権利(遺留分)を有します。

Q:相続放棄をした場合は除外されますか?

A:はい、相続放棄を正式に行うと、その人は法定相続人としての権利を放棄したものとみなされ、相続の対象から除外されます。

Q: 配偶者と離婚した場合は除外されますか?

A: はい、配偶者と離婚した場合、法定相続人から外れます。ただし、離婚後に再婚した場合や、離婚前に子供がいた場合は、再婚した配偶者や子供が法定相続人になります。

Q:被相続人が未婚で子供もいない場合は誰がなりますか?

A:被相続人が未婚で子供もいない場合、まず直系尊属(親や祖父母)が法定相続人となります。直系尊属もいない場合は、次に兄弟姉妹が法定相続人として遺産を相続します。

まとめ

本記事を通じて、「法定相続人」という言葉の背後にある意味やその具体的な内容を深く探ってきました。法定相続人は、相続法のもとで特定された範囲や順位に基づいて、遺産を受け継ぐ権利を持つ人々を指します。その範囲や順位は、被相続人の家族構成や関係性によって大きく影響されることが明らかとなりました。

下記の記事において「法定相続人」について図や事例を用いてわかりやすく解説しておりますので、こちらも参照ください。

法定相続人とは?わかりやすく解説します!│範囲と順位を図解!

また、法定相続人が遺産を受け継ぐ際の割合についても解説しました。この割合は、法定相続人の範囲や数によって異なり、その把握が遺産分割や相続税の計算において極めて重要であることを理解しました。

戸籍謄本を使用した法定相続人の確認方法についても解説しました。確かに、その取り寄せや確認には時間と手間がかかることも事実ですが、それを通して正確な相続人の範囲や数を把握することが、後のトラブルを避けるためには不可欠です。

最終的に、法定相続人の概念やその詳細を理解することは、相続をスムーズに進めるための第一歩であり、今後の皆様の相続手続きにおいて、本記事が有益な参考となることを心より願っています。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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