養子縁組とは?特別養子縁組と普通養子縁組の違いや条件をわかりやすく解説

法定相続人

更新日 2024.10.02

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

養子縁組とは、法的に親子関係を確立する制度です。この制度は、子供が安定した家庭環境で育つための機会を提供する一方で、家族を望む多くのカップルや個人にとっても家庭を形成する手段となります。

養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」という二つの形式があり、それぞれ異なる目的と特徴を持っています。普通養子縁組とは、主に成人間での養子縁組であり、相続などの法的利益を重視します。一方、特別養子縁組とは、乳幼児や未成年の子供が対象で、子供の福祉を最優先とするものです。

この記事では、これらの養子縁組の違いや条件など「養子縁組とは」について、わかりやすく解説していきます。

目次

養子縁組とは?

養子縁組(ようしえんぐみ)とは、法律上の親子関係を人工的に作り出す制度です。具体的には、養親となる人が、他人である養子を迎えて、自分の子として法律上の親子関係を結ぶことをいいます。

養子縁組はなんのためにする?目的は?

養子縁組の目的は、大きく分けて以下の3つがあります。

①子供の福祉の増進

これは、養子縁組制度の最も重要な目的です。里親や児童養護施設などで暮らす子供の中には、虐待やネグレクトを受けていたり、家族を失ったりして、安定した家庭環境で育つことができない子供たちがいます。養子縁組は、このような子供たちに、愛情あふれる家庭環境を提供し、健全な成長を促すことを目的としています。

②家族の形成と家庭の構築

子供を持つことができない、またはさらに子供を持ちたいと考えている夫婦や個人が、養子を迎えることで家族を形成し、親子の絆を育むことも一つの目的です。これにより、親としての喜びを得られると共に、子供には愛情溢れる家庭での生活が保証されます。

③相続財産や家業の継承

に成人間で行われる普通養子縁組では、養子になった人が法的に親子関係を持つことで、相続人としての法的な権利を得ることが目的です。これにより、財産や事業の継承が行われます。

近年では、上記のような目的以外にも、様々な理由で養子縁組が行われています。例えば、同性カップルが子どもを育てたいという場合や、再婚した夫婦が連れ子を自分の子どもとして認めたいという場合なども考えられます。

養子縁組は、子どもにとっても、養親にとっても、大きな決断を伴うものです。それぞれの目的を理解した上で、慎重に検討することが大切です。

養子・養親とは

養子は、養子縁組を通じて新たな家庭に迎え入れられる個人のことです。養子は、生物学的な親から離れ、養親と法的な親子関係を結びます。養子となる人は、乳幼児から成人まで様々で、その背景には家庭環境の改善、親の愛情を受ける機会の提供、相続権の確保など、様々な理由があります。

養親は、養子縁組によって子供を法的に自分の子として迎え入れる個人または夫婦です。養親は養子に対して法的な親としての責任と権利を持ち、子供の養育、教育、保護の義務を負います。養親になる動機としては、子育ての喜びを享受すること、家族を拡大すること、または相続財産の継承や家業を次世代に継がせたいという願望などがあります。

養子縁組には2種類ある

養子縁組には、普通養子縁組特別養子縁組の2種類があります。

①普通養子縁組

養子縁組をしても、養子と実親との間の親子関係は解消されません。養子は、養親と実親の両方から愛情を受けることができます。

②特別養子縁組

養子縁組が成立すると、養子と実親との間の親子関係は解消され、養子と養親との間に(実の親子と同様の)親子関係が成立します。

普通養子縁組と特別養子縁組の違いを表でわかりやすく解説!

以下の表に普通養子縁組と特別養子縁組の特徴をまとめました。

 

普通養子縁組

特別養子縁組 

成立条件

養親と養子の同意が必要。

(未成年者を養子にする場合は夫婦共同で養親となり、家庭裁判所の許可が必要。15歳以上は自己の意思で養子縁組可能。)

家庭裁判所の決定により成立。

原則として実父母の同意が必要。

実親との関係

実親との親族関係が存続。

実親との親族関係が消滅。

相続権

実親と養親の双方の法定相続人になれる。

養親に対してのみ法定相続人になれる。

養親の年齢制限

成年であること。

養親のいずれかが25歳以上、かつ夫婦がともに20歳以上であること。

養子の年齢制限

尊属または養親より年下であること。

申立時に15歳未満であること。(2020年4月1日より6歳から15歳に引き上げ)。

離縁

原則として養親と養子の同意により可能。

原則不可であり、家庭裁判所の審判が必要

戸籍の表記

実親の名前が記載され、続柄は養子・養女と記載。

実親の名前が記載されず、続柄は長男・長女などと記載。

 以下では普通養子縁組、特別養子縁組と普通養子縁組について詳しく解説していきます。

特別養子縁組とは?

特別養子縁組は、実親との親子関係を法的に解消し、養親との間に新たな親子関係を確立する養子縁組の形式です。この制度は主に、実親が育児を適切に行うことができない場合に適用されます。

具体的には、育児放棄、虐待、経済的な困窮などが理由で実親が子供の養育を適切に行えない状況が対象となります。特別養子縁組の手続きは、養親と養子の双方の同意に加え、実の父母の同意も必要であり、最終的には家庭裁判所の審判を経て正式に成立します。

特別養子縁組の特徴として、以下の点が挙げられます。

①実親との親子関係の解消

特別養子縁組を行うと、養子は実親との法的な親子関係を完全に解消します。これにより、実親からの扶養権利や相続権がなくなります。

②子供の福祉が最優先されれる

制度の根本的な目的は、子供の福祉を最優先にすることです。特別養子縁組は、子供が安定した環境で育つことを保証するために設計されています。そのため、養親選びや養子縁組の手続きは、子供の心理的、物理的福祉に焦点を当てて行われます。

③厳格な審査がある

養子となる子供の実の親の同意が必要であり、加えて家庭裁判所の承認を受ける必要があります。特別養子縁組の成立には、養親となる人々の適格性を評価する厳格な審査が伴います。家庭裁判所により、養親の経済的、心理的安定性や養育環境が適切かどうかが調査されます。

特別養子縁組の条件

特別養子縁組は認められるための条件は以下のとおりです。

  • 夫婦共同で養親になること(一方の連れ子を養子にする場合は養親となるのはもう一方のみ)
  • 養親となる夫婦のどちらか一方が25歳以上で、もう一方が20歳以上であること
  • 養子となる人の年齢が原則として15歳未満であること
    ※例外として一定の条件を満たす場合に15〜17歳の人も可(本人の同意があり、15歳未満から養父母が養育していて、やむを得ない事情で15歳までに申し立てができなかった場合)
  • 実親の同意があること(意思表示が難しい場合や、虐待などの理由で養子となる人の利益を著しく害する事由がある場合、同意は不要)
  • 父母による、養子となる者の監護が著しく困難または不適当であること、その他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があること
  • 特別養子縁組を請求してから6か月間監護した状況を考慮して家庭裁判所によって認められること

各条件の具体的な内容については、下記記事でわかりやすく解説していますのでこちらを参照ください。

普通養子縁組とは

普通養子縁組は、実親との法律上の親子関係を維持しつつ、新たに養親との間にも法的な親子関係を確立する養子縁組の形式です。この形式で養子となる人は、実の親と養親の両方から法的な権利と義務を有することになります。具体的には、扶養を受ける権利や相続権がそれぞれの親から与えられます。

普通養子縁組の特徴として、以下の点が挙げられます。

①実親と養親の両方と親子関係をもつ

養子は実親と養親の両方と法的な親子関係にあるため、二つの家庭において権利と義務を持ちます。これには扶養を受ける権利や相続権が含まれます。

②条件が特別養子縁組よりも厳しくない

普通養子縁組は特別養子縁組に比べて条件が柔軟であり、成年に達していて養親となる意思がある人であれば、基本的には誰でも養子を迎えることができます。ただし、養子となる人は、養親やその尊属より年少でなければなりません。

③多様な目的で利用される

普通養子縁組は、相続税対策として孫を養子にするケースや、再婚相手の連れ子を法的に家族とする場合など、多様な家庭状況に対応しています。また、旧民法時代の婿養子の習慣など、文化的または伝統的な背景に基づく養子縁組も普通養子縁組に含まれます。

普通養子縁組の条件

普通養子縁組は認められるための条件は以下のとおりです。

  • 養親が20歳以上であること
  • 養子が養親よりも年齢が下であること、尊属でないこと
  • 養親・養子ともに養子縁組をする意思を持っていること(養子となる人が15歳未満の場合は法定代理人が代わりに承諾を行う)
  • 養親または養子になる人が結婚している場合は配偶者の同意を得ること
  • 養子となる人が未成年者の場合は家庭裁判所の許可を得ていること(養子が養親や配偶者の直系卑属の場合は許可不要)
  • 後見人が被後見人を養子にする場合は家庭裁判所の許可を得ていること
  • 婚姻関係にある夫婦が未成年者を養子にする場合は、夫婦ともに養親になること
  • 養親または養子の本籍地か住所地を管轄する市区町村役場に養子縁組の届出をしていること

各条件の具体的な内容については、下記記事でわかりやすく解説していますのでこちらを参照ください。

普通養子縁組の手続きの流れ

養子縁組の手続きは、養子が未成年か成人かによって異なります。具体的には、未成年の場合には家庭裁判所への許可が必要で、成人の場合はそのステップが省略されます。以下に、手続きの流れをわかりやすく説明します。

①家庭裁判所へ養子縁組許可の申立てを行う

未成年を養子縁組する場合は、家庭裁判所の許可を得ることが条件となります。許可を得るためには、家庭裁判所へ養子縁組許可の申立てをしなければなりません。申立ては以下の手順で行います。

1.養子縁組許可申立書を作成する

この書類には、養子となる未成年者の情報と養親になる人々の情報を詳細に記入します。

2.必要書類の準備と提出

養子縁組許可申立書と一緒に、以下の書類を集めて家庭裁判所に提出します。未成年の養子縁組を進める際に必要な書類は次の通りです。

申立ての必要書類と費用

必要書類

説明 

養子縁組許可申立書

家庭裁判所が提供する申立書。記入例を参照して正確に記入してください。家庭裁判所ホームページよりダウンロード可。

申立人(養親)の戸籍謄本

養親となる人の最新の戸籍謄本。

養子の戸籍謄本

養子となる未成年者の戸籍謄本。

法定代理人の戸籍謄本

養子が15歳未満の場合、その法定代理人(通常は親)の戸籍謄本も必要です。

収入印紙

一人の養子につき800円。養子縁組許可の申立てに必要な手数料として、申立書に添付する収入印紙。

返送用郵便切手

手続き後に書類を返送するための郵便切手。必要な枚数は管轄の家庭裁判所によって異なるため、事前に確認が必要。

養子縁組許可の申立てに必要な費用は主に以下のものが含まれ、全体としては数千円程度が必要です。

  1. 収入印紙代(養子一人につき800円)
  2. 返送用の郵便切手代
  3. 戸籍謄本発行の手数料

②戸籍の届出を行う

普通養子縁組の手続きでは、戸籍の届出を行うことによって法的な親子関係が正式に認められます。未成年の養子縁組の場合は、家庭裁判所から養子縁組許可が下りた後、戸籍の届出が必要です。成人の養子縁組では、家庭裁判所の許可は必要なく、戸籍の届出だけで親子関係が成立します。

養子縁組の当事者である養親または養子が、それぞれの本籍地の市区町村役場に届出を行います。なお、養子が15歳未満の場合は、法定代理人(通常は親)が届出を行う必要があります。

必要書類と費用

書類を一覧で確認できます。

書類名

説明 

養子縁組届

届出に必要な主要書類。市役所HPなどからダウンロード可。

届出人の本人確認書類

運転免許証やパスポートなど、身分を証明する公的書類。

養子縁組許可審判書の謄本

養子が未成年の場合のみ必要。家庭裁判所からの許可書の謄本。

養親と養子の戸籍謄本

養子縁組が行われる本籍地の市区町村に届出をする場合は不要。

配偶者の同意書

配偶者がいる場合に必要。

外国の法律に関する資料

外国籍の人を養子にする場合のみ必要。

養子縁組の届出に必要な主な費用は、養親と養子の戸籍謄本の発行手数料です。これ以外に特別な費用は発生しないことが一般的です。

特別養子縁組の手続きの流れ

特別養子縁組は、実親との親子関係を解消する重要な手続きであり、一度成立すると原則的に解消されません。そのため、養親には大きな法的責任が伴います。こうした背景から、特別養子縁組に向けた慎重な準備が必要です。以下は、特別養子縁組における準備手続きのステップをわかりやすくまとめたものです。

特別養子縁組の準備手続き

①申請要件の確認

特別養子縁組を行う資格があるかどうか、まずは法的要件を確認します。これには年齢、経済状況、健康状態などが含まれます。

②里親研修の受講

特別養子縁組を行う前に、児童相談所やあっせん機関から里親としての基本的な研修を受講します。これは、将来的に子供を育てるための準備として必要です。

③里親の登録申請

研修を終えたら、里親として正式に登録を申請します。申請後、児童相談所による詳細な調査や審査が行われます。

④養子縁組里親に登録

里親の登録が承認されれば、特別養子縁組を行う里親として正式に認定されます。

⑤養子となる子供の紹介

児童相談所を通じて、養子となる可能性のある子供が紹介されます。その後、数か月間、子供との交流を深める期間が設けられます。

⑥養育の委託

交流期間を経て、児童相談所は里親と子供の相性や状況を評価し、養育を委託するか決定します。委託が承認されれば、試験養育として約6か月間、実際に共に生活をし、養育を行います。

特別養子縁組に必要な法的手続き

①特別養子縁組成立の申立て

試験養育期間が無事に終了した後、家庭裁判所に特別養子縁組成立の申立てを行います。以下の書類が必要です。

  • 特別養子適格の確認申立書
  • 特別養子縁組成立の申立書
  • 養親と養子の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 養子となる人の実父母の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)

②特別養子縁組届の提出

家庭裁判所での審判が確定したら、確定日から10日以内に特別養子縁組届を市区町村の役場に提出します。提出先は養子の本籍地、または養親の本籍地・住所地・所在地のいずれかの市区町村です。以下の書類が必要です。

  • 特別養子縁組届書
  • 家庭裁判所の審判書謄本と確定証明書
  • 養親・養子の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)

特別養子縁組の手続きにかかる費用

特別養子縁組を行う場合にかかる費用は、家庭裁判所に申し立てる際の収入印紙代が養子1人あたり800円と、連絡用の郵便切手代です。

また、戸籍謄本を取得する場合には、1通につき450円が必要です。

養子縁組は相続に及ぼす影響とは

相続におけるメリットとは

養子縁組は、相続に関して複数のメリットがあります。これにより、相続人として認められる範囲を拡大し、遺産分割や税負担に関して有利な状況を作り出すことができます。

①相続人の範囲を拡大できる

法定相続人は通常、配偶者、子ども、親、祖父母、兄弟姉妹に限定されていますが、養子縁組により相続人の範囲を拡大することができます。養子は法律上、被相続人の子と同等に扱われ、自動的に相続人に加わります。

②相続税の基礎控除額の増加

相続税の計算においては、「3000万円 + 600万円 × 相続人の数」という式で基礎控除額が決定されます。養子を迎えることで相続人の数が増え、この基礎控除額が増加し、結果として相続税の負担を軽減することが可能です。

③生命保険金・死亡退職金の非課税枠の増加

生命保険金や死亡退職金の受取には、相続人の数に応じた非課税枠が設定されています。この非課税枠は「500万円 × 相続人の数」として計算されるため、養子を迎えることで受取金の非課税枠を増やすことができます。

なお、養子縁組によって相続人の数が増えることは、基本的には相続税の節税につながりますが、相続人が多い場合や特定の順位の相続人が多い場合(例えば、第2順位や第3順位の兄弟姉妹)は、逆に基礎控除額や非課税枠が減少する可能性もあるため、慎重な計画が必要です。

相続におけるデメリットとは

養子縁組は、相続における様々な経済的利益をもたらす一方で、いくつかのデメリットもあります。

①相続人間のでトラブルが起きやすい

養子縁組により養子が法定相続人に加わると、元々の法定相続人(実子や親、兄弟姉妹など)の遺産の取り分が減る可能性があります。これは、養子が法定相続人として遺産の一部を請求する権利を有するためです。その結果、家族内での相続トラブルが発生するリスクが増大します。

②相続税の増加の可能性

孫を養子にすることは、相続税の基礎控除額の増加を期待させる一方で、特定の条件下では相続税額が2割加算されることもあります。この加算は、孫を養子にすることで生じる可能性があるため、節税を目的とする場合は逆効果となることがあります。

相続における養子縁組のメリット・デメリットはその他にもあります。メリット・デメリットについて詳細は、下記記事でわかりやすく解説していますので、こちらをご覧ください。

養子縁組すると養子の戸籍はどうなる?

養子縁組を行った場合の戸籍の変更は、養子が結婚しているかどうかに応じて異なります。ここで具体的に、どのように戸籍が変わるのかをわかりやすく説明します。

養子が結婚していないの場合

単身者が養子となる場合、戸籍の取り扱いは以下の三つの基本的なパターンに分かれます。

①養子が養親の現在の戸籍に入る

 最も一般的なケースです。養親が戸籍の筆頭者またはその配偶者である場合、養子縁組が行われると養子は元の戸籍から抜けて養親の戸籍に加わります。これにより、養子の苗字も養親の苗字と同じになります。

②戸籍に変動はなく、身分事項欄に記載される

養親と養子が元々同じ戸籍に属している場合、たとえば父が再婚してその再婚相手と父の連れ子が養子縁組をする場合、養子の戸籍自体には変動がありません。このケースでは、戸籍の身分事項欄に養子縁組が行われた事実が記載されるだけです。

③養子が養親の新しい戸籍に入る

養親が戸籍の筆頭者やその配偶者ではない場合、例えば親の戸籍に名前がある未婚の成人が養親になる場合、新しい戸籍が作成されます。この新しい戸籍には養親と養子の名前が記載され、養子はこの戸籍に正式に入籍します。

養子が結婚している場合

既婚者が養子となる場合、その戸籍の取り扱いは二つの主なパターンに分けられます。

①養子夫婦で新戸籍を作成する場合

このケースでは、戸籍の筆頭者(氏を改めていない者、例えば婚姻により配偶者の苗字を取っていない夫)が養子となると、養子は養親の氏に従って新しい戸籍を作成します。この新戸籍には、養子の配偶者も一緒に入ることになります。これを「随従入籍」といいます。

この際、配偶者の氏も養子(夫)と同じになります。ただし、養子に既に子供がいる場合、子供は元の戸籍に残ります。新しい戸籍に子供を移すためには、市役所で届出を行う必要がありますが、この際、両親が婚姻中であれば家庭裁判所の許可は不要です。

②戸籍に変動がなく身分事項欄に記載される場合

このケースでは、既に配偶者の苗字を取っている(氏を改めている)配偶者が養子となる場合、養子の戸籍に変更はありません。養子縁組が行われた事実は、戸籍の身分事項欄にのみ記載されます。

例えば、苗字を夫のものに変えた妻が、実父の後妻と養子縁組を行う場合、養子(妻)の戸籍は変動せず、養子の氏は変わりませんが、養親の苗字は異なるままです。

養子縁組と里親制度の違い

養子と里子の違い

養子と里子の最大の違いは、家族関係の持続性にあります。養子縁組は、一生続く家族関係を築くことを前提としています。養子となった子どもは、法的に養親家族の一員となり、「長男」や「長女」として実子と同等の地位を得ます。これにより、養子は養親の姓を受け継ぎ、相続人としての権利も有します。

一方、里親制度は、一定期間子どもを養育することを目的とした制度です。里親と子どもとの関係は一時的なものであり、里親期間が終了すると法的な親子関係は解消されます。したがって、里親は子どもに対して恒久的な法的責任を負うことはありません。

養子縁組と里親制度の違い

特別養子縁組は、子どもと養親家族の間で法的な親子関係を確立することを目的としています。この制度では、生みの親から養親に親権が完全に移転します。これにより、養子は法的に養親の実子と同等の扱いを受けます。

一方、里親制度の主な目的は、子どもが心身ともに健全に成長できる環境を一時的に提供することにあります。里親制度では、子どもの親権は生みの親に留まり、里親は子どもに対する一時的なケアを提供します。

これは、子どもが一時的に家庭外で養育を受ける必要がある場合に適用される制度であり、子どもの心身の傷を癒やしながら、安定した環境で成長できるようサポートします。

里親制度はお金がもらえるが特別養子縁組はもらえない

特別養子縁組では、子どもの養育費用は新たに親となる養親が負担します。養親は子どもの生活費、教育費、医療費などを全て自己負担で賄わなければなりません。

しかし、養親の経済状況や子どもの年齢、健康状況に応じて、公的な経済支援が提供される場合があります。この支援は限定的であり、基本的には養親の自己責任に基づく経済負担が大きな特徴です。

里親制度では、子どもを一時的に養育するための経済的負担を軽減するため、継続的な経済支援が提供されます。里親は養育手当や支援金を受け取ることができ、これらの支援は子どもが成人するまで続きます。この支援には、子どもの食費、教育費、医療費などが含まれ、里親の負担を軽減するために設計されています。

このように、特別養子縁組と里親制度の間には、経済的支援に関する重要な違いがあります。特別養子縁組では主に養親が経済的負担を担う一方、里親制度では公的支援が充実しており、経済的負担を軽減するための手当が提供されます。

「養子縁組とは」に関するQ&A

Q: 相続対策として利用される養子組とはどのようなものがありますか?

A: 相続対策として利用される養子縁組には普通養子縁組があり、これにより相続税の非課税枠を増やしたり、他の相続人の遺留分割合を減らしたり、兄弟姉妹が法定相続人である場合に妹を養子にして全ての財産を相続させたり、相続人がいない場合に養子を迎えて相続人不存在の状態を回避することができます。

Q: 特別養子縁組の相続の取り扱いはどうなりますか?

A: 特別養子縁組では、養子は養親と法的な親子関係を結ぶため、養親が亡くなった際には養子も法定相続人となります。養子は実子と同じく相続分を持ち、相続税の基礎控除額も養子を含めた法定相続人の人数によって計算されます。

例えば、配偶者と実子1人、養子1人が法定相続人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3)となります。特別養子縁組では、養子が実親との法的な親子関係を解消するため、実親の相続人にはなりません。

また、特別養子縁組には法定相続人に含められる人数の制限がなく、普通養子縁組とは異なり、基礎控除額を増やすための養子縁組の制限がありません。

Q: 養子縁組をしたときに戸籍はどうなりますか?

A: 養子縁組後の戸籍の取り扱いは、養子が婚姻しているかどうかによって異なります。養子が婚姻していない場合、養子は現在の養親の戸籍に入るか、養親が戸籍の筆頭者以外の場合は新しい養親の戸籍に入ります。

養親と養子がもともと同じ戸籍にいる場合は、戸籍に変動はありません。

養子が婚姻している場合、養子が戸籍の筆頭者の配偶者であれば戸籍に変動はなく、養子が戸籍の筆頭者であれば新しい養子夫婦の戸籍が作られ、配偶者も養親と同じ氏になり、養子の戸籍に入りますが、養子の子は従前の戸籍に残るため、市役所で届出をする必要があります。

Q: 養子縁組と里親制度の違いは何ですか?

A: 養子縁組と里親制度は、保護を必要としている子どもに家庭での養育を提供するための制度ですが、以下の点で大きな違いがあります。里親制度は一時的に家庭内で子どもを養育するもので、法的な親子関係はなく、実親が親権者となります。里親には自治体から里親手当てや養育費が支給されます。

一方、養子縁組は民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度で、養親が親権者となります。養子縁組が成立した家庭には自治体からの金銭的な支援はありません。養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、特別養子縁組は特に保護を必要とする子どもが実子に近い安定した家庭を得るための制度です。

まとめ

養子縁組は、法的に親子関係を新たに確立する制度で、子どもに安定した家庭環境を提供するために重要な役割を果たします。養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組の二つの形式があります。それぞれの目的や手続き、法的な影響に違いがあります。

特別養子縁組とは、子どもの福祉を最優先に考え、実親との法的な親子関係を解消して養親との間に新たな親子関係を築く制度です。養子は実子と同等の地位を得て、法的にも完全な家族として扱われます。この制度は、特に保護を必要とする子どもが安定した家庭で育つことを目指しています。

一方、普通養子縁組とは、実親との法的な親子関係を維持しつつ、養親との間に法的な親子関係を結ぶものです。これにより、養子は二組の親から相続権や扶養を受ける権利を持つことができます。普通養子縁組は、相続対策や家族の名跡を継ぐために利用されることが多いです。

養子縁組を検討する際には、それぞれの制度の違いや条件をよく理解し、自分たちの状況に最適な選択をすることが重要です。また、法的な手続きや条件を確認し、必要な準備をしっかりと行うことが求められます。子どもの将来を見据えた慎重な決断が、家族全員にとって良い結果をもたらすでしょう。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。