未支給年金は相続財産ではない!相続税申告と所得税の確定申告は必要?

相続手続き

更新日 2026.08.26

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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家族や親族が亡くなった際に、故人が受け取るはずだった未支給年金が発生することがあります。この未支給年金は、故人の遺産ではなく、遺された家族が受け取る固有の財産として扱われるため、遺産分割の対象にはなりません。そのため、相続放棄をしても受け取ることが可能です。

未支給年金を請求できる遺族の範囲や請求順位は法律で定められています。

ただし、請求には「生計を同じくしていた」ことなどの要件があり、先順位者がいる場合は後順位者が請求することはできません。また、未支給年金の種類によって相続税や所得税がかかる場合もあるため、注意が必要です。

この記事では、未支給年金に関する相続税・所得税の取扱いや、確定申告が必要となる場合についても詳しく解説します。未支給年金を正しく理解し、適切な手続きを行うための参考にしてください。

目次

未支給年金は相続財産ではない!

公的年金の未支給年金は、年金受給権者の死亡当時にその人と生計を同じくしていた一定の遺族が、自ら請求して受け取るものです。この未支給年金は相続財産ではないため、遺産分割の対象にはなりません。また、相続放棄をしても受け取ることができます。未支給年金は遺族の固有財産であるため、受取人が自分の名義で請求できます。

また、既に死亡した人の口座に年金が振り込まれることがあります。このように死亡後に振り込まれた年金のうち、死亡月分までに対応する金額は未支給年金に当たり、一定の要件を満たす遺族が請求することができます。

それでは、なぜ未支給年金は相続財産とされないのでしょうか?未支給年金の請求権が遺族の固有の権利とされているのは、年金が故人のみならず、故人と生計を同じくしていた遺族の生活をも保障することを目的としているためです。そのため、受給権者の相続財産には含まれず、相続税の課税対象にもなりません。

一方、企業年金や個人年金保険などの私的年金は、制度の規約や保険契約の内容、保険料負担者と受取人の関係によって、相続税・贈与税・所得税の取扱いが異なります。そのため、個別の制度内容を確認することが重要です。

そもそも未支給年金とは

未支給年金とは、年金受給権者が死亡した月分までの年金のうち、まだ受け取っていないものをいいます。死亡後に振り込まれた年金も、死亡月分までに対応する金額であれば未支給年金に含まれます。年金は偶数月の15日に支給され、前月および前々月分が一度に振り込まれるため、未支給年金が発生する場合があります。

たとえば、年金を受給している人が5月20日に亡くなった場合、その人の口座には6月15日に4月分と5月分の年金が振り込まれます。

国民年金や厚生年金保険などの公的年金には、法律に基づく未支給年金の請求制度があります。企業年金、国民年金基金および個人年金保険については、遺族への給付の有無、請求できる人および手続が制度ごとの規約や契約で異なるため、加入先に確認が必要です。

未支給年金はいくらもらえる?

未支給年金の月数は、死亡月までの年金のうち、死亡時点で既に支給済みとなっている月分を除いて決まります。年金は原則として偶数月に前2カ月分が支給されるため、死亡日と直前の支給日との関係によって、未支給となる月数は異なります。個別の支給額は、年金振込通知書や年金事務所で確認してください。

このように、未支給年金の金額は、受給者が亡くなったタイミングによって変わります。

未支給年金を請求できる人は生計を同じくしていた遺族のみ

平成26年4月1日以降に死亡した受給権者については、未支給年金を請求できる遺族の範囲に、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」に加え、これら以外の「三親等内の親族」が含まれます。これにより、曾孫、曾祖父母、甥・姪、おじ(伯父)・おば(伯母)、配偶者の曾祖父母や甥・姪、配偶者のおじ(伯父)・おば(伯母)なども含まれます。

ただし、いずれの場合も、受給権者の死亡当時にその人と「生計を同じくしていたこと」が必要です。生計を同じくしていない場合、請求権は認められません。

受給権者と生計を同じくしていた遺族は、次の順位で未支給年金を請求できます。先順位者がいる場合、後順位者は請求できません。また、同順位者が複数いる場合は、そのうち1人が代表して請求します。

  1. 配偶者
  2. 子
  3. 父母
  4. 孫
  5. 祖父母
  6. 兄弟姉妹
  7. 上記の親族以外の三親等内の親族

未支給年金を受け取れる遺族がいない場合又は未支給年金が発生しない場合は、「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出します。誰が提出するかを含め、具体的な手続は年金事務所に確認してください。

厚生年金や国民年金など公的年金の未支給年金の請求手続き

未支給年金の請求書は、年金事務所に郵送又は電子申請で提出できます。対面で相談しながら手続を行う場合は、予約のうえ、年金事務所又は街角の年金相談センターを利用します。主な提出書類は、次のとおりです。なお、請求者の属性やマイナンバーの記載状況により、添付を省略できる書類があります。

  1. 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書
  2. 亡くなった人の年金証書
  3. 請求者のマイナンバー確認書類
  4. 亡くなった人と請求者の続柄が確認できる書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しなど)
  5. 亡くなった人と請求者が生計を同じくしていたことを確認できる書類(住民票など)
  6. 受取口座が確認できる書類(通帳またはキャッシュカードなど)

未支給年金の請求権には5年の時効があります。請求が遅れると、時効により受け取れない月分が生じるおそれがあるため、早めに手続を行いましょう。

支給年金を請求する場合は、原則として「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。

手続きには、以下の書類が必要です。

  1. 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書
  2. 年金証書
  3. 死亡の事実がわかる書類(死亡診断書のコピーなど)

日本年金機構に個人番号が収録されている場合、死亡届のみの提出は原則として省略できますが、未支給年金を請求するための手続まで不要になるわけではありません。

企業年金など私的年金の未支給年金の請求手続き

企業年金の未支給分や遺族給付について、誰が受け取れるかは、企業年金の規約や制度設計によって異なります。公的年金と同じ基準が適用されるとは限らないため、企業年金基金、事業主又は制度の運営主体に確認してください。

個人年金保険の死亡後の給付については、保険契約で指定された年金受取人その他の受取人が受け取るのが一般的です。受取人の指定がない場合を含め、具体的な取扱いは保険契約の内容を確認する必要があります。

未支給年金の請求手続きについては、以下の窓口で確認できます。

企業年金の場合

企業年金の未支給分や遺族給付の請求先は、企業年金基金、事業主、保険会社その他の制度運営主体です。加入していた制度を確認したうえで、指定された窓口に必要書類と手続の流れを確認してください。

個人年金保険の場合

個人年金保険の未支給分を請求するには、加入している保険会社で手続きを行います。必要書類や手続き方法については、各保険会社にお問い合わせください。

企業年金や個人年金保険の未支給分については、それぞれの契約内容や規定に基づいて請求手続きを進めることが重要です。手続きの詳細や必要書類については、各窓口に確認し、適切に対応してください。

未支給年金に相続税はかかる?公的年金か企業年金かによって異なる

未支給分が生じる年金の種類と税金の取り扱い

ここでは、未支給分に関する税務上の取扱いを、「公的年金」、「企業年金」および「個人年金保険契約に基づく年金」の3類型に分けて説明します。ただし、実際の課税関係は、根拠法令、制度の規約又は保険契約の内容によって異なります。

1. 公的年金(国民年金や厚生年金など)

公的年金は、国民年金や厚生年金などが含まれます。これらの年金は、2カ月に1回、前月分と前々月分がまとめて支払われる後払いの仕組みです。

受給者が亡くなった場合、死亡月分までの年金のうち未払いのものが未支給年金となることがあります。公的年金の未支給年金は相続税の課税対象にはなりませんが、遺族が受け取った金額は原則として一時所得に該当します。確定申告が必要かどうかは、その年分の所得状況に応じて判断しなければなりません。

2. 企業年金

企業年金には、退職給付を年金として支給する制度など、さまざまな仕組みがあります。受給者の死亡後に遺族への給付が継続するか、死亡時点の未払い分と、将来の年金を受け取る権利は分けて確認しましょう。また、受給者の死亡後に遺族への給付が継続するか、その権利が相続税の対象となるかは、企業年金の規約や給付内容によって異なります。企業年金の未支給分が高額になることがあるため、相続税の計算に注意が必要です。

3. 個人年金契約に基づく個人年金

個人年金保険では、年金支払保証期間中に被保険者(年金受取人)が死亡した場合、遺族等が年金受給権を取得することがあります。この権利に相続税あるいは贈与税が課されるかは、保険料負担者、被保険者および年金受給権の取得者の関係によって異なります。

以上のように、未支給年金が発生した場合、その年金の種類によって税金の取り扱いが異なるため、適切な手続きを行うことが重要です。以下、それぞれについてより詳しく解説します。

公的年金の未支給年金には相続税がかからないが、一時所得として所得税の申告が必要となる場合がある

公的年金の未支給年金は、一定の遺族が自己の固有の権利として請求するものです。そのため、受給権者の相続財産には含まれず、相続税の課税対象にもなりません。国民年金法より、未支給年金は「遺族の固有財産」として扱われます。

遺族が受け取った金額は、原則として一時所得に該当しますが、確定申告の要否は、その年分の一時所得の合計額や他の所得状況を踏まえて判断します。

企業年金の未支給年金には相続税がかかる

企業年金に関する死亡後の給付は、公的年金の未支給年金とは異なり、相続税の課税対象となる場合があります。以下では、在職中に死亡した場合と、企業年金の受給中に死亡した場合に分けて説明します。

1. 在職中に死亡した場合

在職中の死亡により、勤務先の規程等に基づいて遺族に支払われる死亡退職金は、相続税法上の「退職手当金等」として相続税の課税対象となります。

ただし、死亡退職金には非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」までの相続税は非課税です。この非課税枠は、遺族にとっての経済的な負担を軽減するために設けられています。

2. 受給中に死亡した場合

企業年金の受給中に受給者が亡くなった場合、遺族への給付が継続するかどうかは、制度の規約によって異なります。残りの期間の年金を遺族が受け取れるか、定期金に関する権利として評価されるか、非課税枠が適用されるかは、企業年金の種類と規約によって異なります。

相続税の取扱いを検討する際は、死亡時点で未払いとなっている給付と、将来の年金を受け取る権利を区別し、制度の根拠法令や規約に基づいて確認する必要があります。

個人年金の未支給分には相続税がかかる

以下では、保険料負担者、被保険者および年金受取人が同一である個人年金保険契約を前提に説明します。年金支払保証期間中に年金受取人が死亡した場合、契約に基づき、遺族等が残存期間に係る年金受給権を取得することがあります。これが未支給年金です。

死亡した年金受取人が保険料を負担していた場合、遺族等が取得する年金受給権は、相続により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。ただし、保険料負担者等の関係によっては贈与税の対象となる場合があります。また、年金受給権の取得後に毎年受け取る年金については、相続税等の対象となった部分とそれ以外の部分を区分して、雑所得を計算します。

個人年金の未支給分は、遺族が故人から「年金受給権」を相続したと見なされます。これにより、未支給年金は相続税の課税対象となります。具体的には、遺族が受け取る未支給年金は相続財産として扱われ、その金額に対して相続税が課されます。

未支給年金が高額になると、相続税の計算にも大きな影響が出ることになります。

未支給年金は一時所得として所得税の確定申告が必要

公的年金の未支給年金を遺族が受け取った場合、その金額は相続税の課税対象にはなりませんが、原則として遺族の一時所得に該当します。一時所得の金額は、以下の式で計算します。

一時所得の金額=総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

公的年金の未支給年金について、通常は必要経費が生じないことが多いものの、個別の事情に応じて確認が必要です。特別控除後の一時所得の金額は、原則としてその2分の1を他の所得と合算して税額を計算します。確定申告の要否は、他の一時所得、他の所得および各種控除を含めて判断します。

公的年金の未支給年金を受け取った場合は、受取年分の一時所得の合計額を確認し、他の所得や控除も踏まえて確定申告の要否を判断しましょう。

確定申告の方法

公的年金の未支給年金を受け取り、確定申告が必要となる場合は、その金額を一時所得として申告します。ここでは、申告する場合の一般的な手順を解説します。

1. 確定申告に必要な書類を準備する

未支給年金による一時所得を適正に計算するため、次のような書類の提出を求めらる可能性があります。

  • 確定申告書第一表
  • 確定申告書第二表
  • マイナンバーカードまたは身分証明書の写しなど
  • 所得控除や税額控除がある場合、その関連書類

申告に当たっては、受取額と受取時期を確認できる未支給年金・未支払給付金決定通知書その他の資料を保管しておきましょう。申告書の様式、本人確認書類および控除に関する添付書類は、申告年分と提出方法に応じて国税庁の案内で確認してください。

2. 確定申告書を作成する

確定申告書は、手書きのほか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成できます。

3. 確定申告書を提出する

作成した確定申告書は、次の方法で提出できます。

  • 税務署の窓口
  • 郵送
  • 電子申告(e-Tax)

4. 所得税を納税する(または還付を受ける)

所得税の納付が必要な場合は、申告期限までに手続を行います。利用できる納付方法は変更されることがあるため、申告時点の国税庁の案内を確認してください。

還付申告となる場合は、指定した口座への還付を受けます。

未支給年金の相続に関するQ&A

Q1.未支給年金は相続財産になりますか?

A:国民年金や厚生年金保険などの公的年金の未支給年金は、一定の遺族が自己の固有の権利として請求するため、受給権者の相続財産には含まれません。

したがって、遺産分割の対象にもなりません。企業年金や個人年金保険の死亡後の給付は、制度又は契約ごとに取扱いが異なります。

Q2.未支給年金を受け取るときの注意点は何ですか?

A: 未支給年金を受け取る際には、以下の点に注意する必要があります。

  1. 個人年金の契約形態による贈与税の可能性
    個人年金保険の年金受給権については、被保険者(年金受取人)、保険料負担者および年金受給権の取得者の関係により、相続税又は贈与税の取扱いが異なります。例えば、死亡した人と年金受給権の取得者のいずれも保険料負担者でない場合には、贈与税の対象となることがあります。
  2. 遺族年金には所得税がかからない

    公的年金の遺族年金は、所定の受給要件を満たす遺族に支給されるもので、原則として所得税および相続税は課されません。未支給年金と遺族年金は別の制度であるため、区別して確認しましょう。

Q3.介護施設に入所していた場合でも未支給年金を受け取ることはできますか?

A:介護施設に入所していることだけで、生計同一の要件を満たさないことになるわけではありません。受給権者と別住所であった場合は、「生計同一関係に関する申立書」等により事情を示し、日本年金機構の審査を受けます。

実際に請求できるかは、死亡当時の生計関係に基づいて判断されます。

まとめ

未支給年金と相続税・所得税の関係について詳しく解説しました。未支給年金は、故人が受け取るはずだった年金を遺族が受け取るものですが、その取り扱いにはいくつか注意点があります。

公的年金の未支給年金は、一定の遺族が固有の権利として請求するものであり、相続税の課税対象にはなりません。遺族が受け取った金額は、原則として一時所得に該当します。一方、企業年金や個人年金保険の死亡後の給付は、制度の規約、保険契約の内容および保険料負担者等の関係によって、相続税・贈与税・所得税の取扱いが異なります。

公的年金の未支給年金について確定申告が必要かどうかは、受取年分の一時所得の合計額や他の所得・控除を踏まえて判断しましょう。この記事を参考に、未支給年金の正しい理解と手続きを進めるようにしてください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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