夫死亡時に70歳以上の妻は遺族年金をもらえる?80歳以上は?弁護士が解説

相続手続き

更新日 2026.06.10

投稿日 2024.07.29

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫死亡後、70歳以上の方が遺族年金を受け取れるかどうか、またその金額について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。70歳以上となると、自身の年金も受給している方もいるため、夫の遺族年金との併給が可能なのかも気になるところです。

結論から申しますと、遺族年金は一定の条件を満たすことで、70歳以上の妻も受け取ることが可能です。しかし、その受給額は個々の状況によって異なり、計算方法も複雑なため、しっかりと確認することが重要です。

そこでこの記事では、夫の死亡時に70歳以上の妻が受け取ることができる遺族年金の概要について、弁護士が解説させていただきます。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますので、それぞれの場合で70歳以上の妻がいくら受け取ることができるのか、自身の年金との併給はどうなるのか、といった点についてわかりやすくご説明いたします。

70歳以上の配偶者が遺族年金を受け取るケースに着目した記事となっておりますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。

目次

夫死亡時に70歳以上の妻は遺族年金をもらえる?

遺族年金は、夫死亡時に70歳以上だった妻でも、一定の要件を満たすことで受給可能です。夫婦共に70歳以上の場合や、夫婦のうち亡くなった方だけが70歳以上の場合、または遺族となった方が70歳以上の場合でも、遺族年金の支給要件に該当していれば、遺族年金を受け取ることができます。

前提として、遺族年金には、国民年金制度に基づく「遺族基礎年金」と、厚生年金制度に基づく「遺族厚生年金」の二種類があります。遺族基礎年金は、亡くなった人やその配偶者の年齢に関係なく、子供が18歳になる年度末の3月31日までの要件を満たせば受給できます。一方、遺族厚生年金は、受給資格期間が25年以上あることなどの要件を満たせば受け取ることができます。

遺族年金の制度全般については、こちらの関連記事にて解説しておりますので、ぜひ本記事と合わせてご覧ください。

1.遺族年金は何歳まで受け取れる?

それでは、70歳以上でも受け取ることのできる遺族年金は、何歳まで受け取ることができるのでしょうか。

遺族基礎年金の場合は、被保険者の子どもが18歳に達する年度末まで支給されます。子どもが障害等級2級以上に認定されている場合は、特例として20歳に達するまで受給することが可能です。

一方で、遺族厚生年金の場合の支給開始時期や受給期間は、受給者の年齢や子どもの有無などの条件によって異なります。「70歳以上の妻」に限っていえば、「子どもがいる場合、または30歳以上の場合」に該当するため、「夫が亡くなった日の翌月から一生涯」受給することが可能です。

2.70歳以上で遺族年金を受給するための要件

受給者が70歳以上でも、遺族年金を受給するための要件は70歳未満の場合と同じです。遺族基礎年金と遺族厚生年金とで異なるため、順に確認していきましょう。

2-1.遺族基礎年金を受給する場合

国民年金に加入していた方が亡くなった場合に支給される遺族基礎年金の場合は、亡くなった方が以下のいずれかの要件を満たしている必要があります(国民年金法第37条)。

1.国民年金の被保険者である間に死亡した場合
2.国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方が日本国内に住所を有している間に死亡した場合
3.老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡した場合
4.老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡した場合

その上で、受給者の要件としては、① 子どもがいる配偶者、または② 子ども(18歳未満の子、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子)であることが必要ですが、受給者が70歳以上の高齢者であるため、②は当てはまらず、① 子どもがいる配偶者である場合に受給できる、ということになります。

また、受給対象者は、故人によって生計を維持されていたことが必要です。この「生計を維持されていた」とは、故人と生計を同一にしていたことを指し、具体的には以下の条件を満たす必要があります。

  1. 生計を同じくしていること
    同居していること、または別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  2. 収入要件
    前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

同居している必要はなく、単身赴任や子どもの下宿などで別居している場合でも対象となります。また、内縁関係にある場合でも、事実上の婚姻関係があり、生計が維持されていることが確認できれば受給可能です。

遺族基礎年金については、こちらの関連記事で詳しく解説しておりますので、本記事とあわせてぜひご覧ください。

2-2.遺族厚生年金を受給する場合

厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に支給される遺族厚生年金の場合は、次のいずれかの要件を満たす必要があります(厚生年金保険法第58条)。

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

ただし、1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

そして、遺族厚生年金は、死亡した人によって生計を維持されていた家族が受給することができます。遺族厚生年金の場合も、生計維持と収入の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 生計を同じくしていること
    同居していること、または別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  2. 収入要件
    前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

遺族厚生年金の受給者は遺族基礎年金の場合よりも広く、配偶者、子、父母、孫、祖父母のうち、以上の条件と年齢要件を満たす人、とされています(厚生年金保険法第59条)。年齢要件に関してですが、70歳以上は配偶者、父母、祖父母のいずれの立場であっても、被保険者の死亡当時に55歳以上であること、という要件を満たしているため問題ありません。ただし、子や孫については「18歳年度末または20歳未満障害者であること」が要件であるため、70代の子や孫は受給権者にはなれません。

遺族厚生年金については、こちらの関連記事でより詳しく解説しておりますので、ぜひ本記事と合わせてご覧ください。

3.70歳以上の人の遺族年金の手続き

遺族基礎年金や遺族厚生年金は年齢に達すれば自動で受給できるわけではないため、年金の請求手続きが必要です。70歳以上の高齢者でも、基本的な請求手続きは変わりません。

まずは、以下のいずれかの提出先に必要書類を提出します。

  • 遺族基礎年金のみを請求する場合
    お住まいの市(区)役所または町村役場に提出してください。
  • 遺族厚生年金や共済組合等の加入期間がある場合
    お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出してください。これにより、共済組合等に加入していた期間の年金も請求することができます。

参考:遺族基礎年金を受けられるとき(日本年金機構)

参考:遺族厚生年金を受けられるとき(日本年金機構)

遺族年金の請求書を提出すると、1か月程度で日本年金機構から年金証書や年金決定通知書が送付されます。年金証書とは受給権者であることを証明するための書類で、年金の請求や氏名変更、未支給年金の請求などの手続きにおいて提示が求められることがあります。年金決定通知書とは、厚生労働大臣等が年金受給権を裁定・確定した内容を通知する文書で、受給権の存否や障害等級、年金額などの基本的事項を確認することができる書類です。どちらも受領したら、なくさないように大切に保管しましょう。

なお、年金保険の加入状況の確認などで時間が必要な場合や、共済組合等から年金を受け取る権利がある場合には、さらに時間がかかることもあります。

年金証書が自宅に届いてから約1~2か月後に振り込みが始まり、年金請求時に指定した口座へ、偶数月に2か月分ずつ入金されます。

手続きや必要書類の詳細については、日本年金機構のホームページや年金事務所で確認するようにしてください。

4.70歳以上の老齢年金の受給者は遺族年金も受給できる?

70歳以上の老齢年金の受給者は遺族年金も受給することができます。

基本的に、日本の公的年金制度においては、60歳から64歳の間に遺族年金と老齢年金の両方の受給権が生じた場合、「1人につき1つの年金」という考えによって、どちらか一方しか受け取ることができないため、どちらの年金を受給するか選択する必要があります。ですが、65歳以降であれば、遺族年金と自身の年金を同時に受け取ることが可能になるのです。

ただし、この同時受給には一定の条件があり、配偶者や受給者自身のこれまでの働き方が影響します。

  1. 妻が専業主婦等で配偶者が厚生年金に加入していた場合

    妻が専業主婦あるいは個人事業主として働いてきた場合で、配偶者が会社員や公務員であったときには、配偶者の遺族厚生年金を受け取ることができます。

    また、老齢基礎年金と遺族基礎年金の併給は認められないため、いずれかを選択する必要があります。ですが、遺族基礎年金は子どもがいない妻には支給されません。妻が65歳になる頃には一般的に子どもが成人しているため、この場合、自身の老齢基礎年金を選択することになるかと思います。結果として、70歳以上の妻は「遺族厚生年金+老齢基礎年金」の組み合わせで年金を受け取ることになるでしょう。

  2. 共働きで会社員や公務員として働いた経験がある場合

    会社員や公務員として少なくとも1ヶ月以上働いた経験がある場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることができます。さらに、亡くなった配偶者も会社員や公務員であった場合、年齢やその他の条件を満たせば、配偶者の遺族厚生年金も受け取ることができます。

    この場合、70歳以上の妻は「遺族厚生年金+老齢基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせで年金を受給することにります。ただし、実務上は「一人一年金」の原則に基づく調整(先充て)が行われるため、妻自身の老齢厚生年金が全額優先的に支給された上で、遺族厚生年金については本来の権利額との差額分のみが支給される形となるでしょう。

  3. 亡くなった配偶者も自身も国民年金に加入していた場合

    亡くなった配偶者も妻自身も自営業や個人事業主であり、会社員や公務員として働いた経験がない場合は、国民年金のみに加入していることになります。そのため、厚生年金への加入を前提とした遺族厚生年金は受給できません。

    したがって、70歳以上の妻は「老齢基礎年金+自分の老齢厚生年金」のみを受け取ることになります。

以上では70歳以上の妻のケースに着目して見てまいりましたが、遺族年金と自身の年金の併給に関しては、こちらの関連記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひご一読いただければと思います。

5.70歳以上の遺族年金の受給者も扶養に入れる

ところで、遺族年金を受給していると、「収入があるから子や孫の扶養に入ることができないのでは」と思われるかもしれません。ですが、70歳以上の遺族年金の受給者であっても、次の要件に該当すれば、健康保険や所得税の扶養に入ることが可能です。

5-1.健康保険の扶養

70歳以上の遺族年金の受給者が社会保険上の扶養に入るためには、以下の要件に該当する必要があります。

  1. 生計を一にしていること(別居していても常に生活費などを仕送りしている場合、生計を一にしていることになる)。

  2. 扶養に入る高齢者の年収が180万円未満で、その年収が被保険者の2分の1未満であること。

  3. 扶養に入る高齢者の年齢が75歳未満であること(75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入することになるため)。

70歳以上の方が子どもや孫の社会保険上の扶養に入ることで、国民健康保険料を支払わずに済むメリットがあります。

5-2.税制上の扶養

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます(扶養控除)。

  1. 子どもや孫と生計を同一にしていること。
  2. 年間の合計所得金額が58万円以下であること(給与収入がある場合、年間103万円以下)。

なお、収入要件の所得に遺族年金は含まれませんので、遺族年金を除いた金額が58万円以下であって、かつ納税者と生計を一にしている親族であれば扶養に入ることができる、ということになります。

税制上の扶養に入るメリットは、子どもや孫といった扶養者の所得税や住民税を軽減できる点です。具体的には、所得税と住民税に関して、それぞれ以下の控除額が適用されます。

そして、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人は「老人扶養親族」に区分されるため、同居している直系尊属(父母・祖父母等)であれば58万円となり、別居している場合や、同居していても直系尊属以外の親族(伯叔父母等)である場合には48万円が、所得税の算定において控除されます(所得税法第84条、租税特別措置法第41条の16第1項)。

(扶養控除)
所得税法第84条 居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)を控除する。
2 前項の規定による控除は、扶養控除という。

(同居の老親等に係る扶養控除の特例)
租税特別措置法第41条の16第1項 居住者の有する所得税法第二条第一項第三十四号の四に規定する老人扶養親族が当該居住者又は当該居住者の配偶者の直系尊属で、かつ、当該居住者又は当該配偶者のいずれかとの同居を常況としている者である場合には、当該老人扶養親族に係る同法第八十四条第二項に規定する扶養控除の額は、同条第一項の規定にかかわらず、同項の金額に十万円を加算した額とする。

そして、住民税における扶養控除の制度も、原則として所得税法の規定に準じています。ですので、同居している70歳以上の親族(直系尊属)に係る住民税の扶養控除額は45万円、同居していない場合には38万円が、住民税の算定において控除されます。

70歳以上の人は遺族年金を平均いくらもらえる?

遺族年金を受給するための要件を満たせば、亡くなった人が70歳以上、80歳以上であっても、受給者が70歳以上であっても、遺族年金を受給できます。そして、受給できる遺族年金の金額の計算方法は、70歳以上であっても70歳未満であっても何歳でも変わりません。

1.70歳以上の人が受け取る遺族基礎年金

子どもがいる配偶者が遺族基礎年金を受け取る場合、「基本となる年額 + 子の人数に応じた加算額」で金額が決定されます。基本となる年額は、受給者の出生がいつかに応じて、次のとおり異なります。

昭和31年4月1日以前生まれの方

年額844,900円 + 子の加算額

昭和31年4月2日以後生まれの方

年額847,300円 + 子の加算額

子どもの加算額は、1人目および2人目の子どもについては各243,800円、3人目以降の子どもについては各81,300円です。

例えば、昭和31年4月2日以後生まれで、2人の子どもがいる70歳以上の配偶者が遺族基礎年金を受給する場合、「847,300円 +(子の加算額243,800円 × 2人)= 1,332,500円」となります。

参考までに、昭和31年4月1日以前に出生した70歳以上の受給者の遺族基礎年金の金額を、子どもの人数ごとに表にすると以下のとおりとなります。

子どもの数

基本額

子ども加算額

合計

1人

844,900円

243,800円

1,088,700円

2人

844,900円

487,600円(243,800円 × 2人)

1,332,500円

3人

844,900円

568,900円(487,600円 + 81,300円)

1,413,800円

4人

844,900円

650,200円(568,900円 + 81,300円)

1,495,100円

なお、支給額は毎年度、物価や賃金の変動により改定されるため、最新の情報を確認することが重要です。 ​

2.遺族厚生年金の受給金額の計算方法

遺族厚生年金の受給金額の計算方法は、受給者の年齢や被保険者との続柄によって異なりますが、いずれの場合も基本となっているのは「厚生年金加入期間と報酬額に基づく計算方法」です。

2-1.基本的な受給金額の計算方法

遺族厚生年金の基本的な年金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間と報酬額に基づいて計算されるのが原則です。具体的には、亡くなった方が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が遺族厚生年金として支給されます。

計算方法は以下の通りです。

遺族厚生年金の年金額 = 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4 =(A + B)× 3/4

上の計算式の「A」とは平成15年3月以前の加入期間に基づいた平均標準報酬月額による報酬比例部分で、「B」とは平成15年4月以降の加入期間に基づいた平均標準報酬月額による報酬比例部分です。

A:平均標準報酬月額 ×(7.125 ÷ 1,000)× 平成15年3月までの被保険者期間の月数

B:平均標準報酬額 ×(5.481 ÷ 1,000)× 平成15年4月以降の被保険者期間の月数

2-2.65歳以上の配偶者に対する計算方法

以上の基本を踏まえた上で70歳以上の高齢者が受給する場合の計算方法を確認しましょう。

65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある方が配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取る場合は、以下の①と②の額を比較して、高い方が支給されます(厚生年金保険法第60条1項2号)。

  1. 遺族厚生年金の基本的な受給金額 = 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4 =(A + B)× 3/4
  2. (遺族厚生年金の基本的な受給金額 × 2/3)+(本人の老齢厚生年金の額 × 1/2)

(年金額)
厚生年金保険法第60条1項 遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、第一号に定める額とする。
一 第五十九条第一項に規定する遺族(次号に掲げる遺族を除く。)が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 死亡した被保険者又は被保険者であつた者の被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額の四分の三に相当する額。ただし、第五十八条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が三百に満たないときは、これを三百として計算した額とする。
二 第五十九条第一項に規定する遺族のうち、老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 前号に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額
イ 前号に定める額に三分の二を乗じて得た額
ロ 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(第四十四条第一項の規定により加給年金額が加算された老齢厚生年金にあつては、同項の規定を適用しない額とする。次条第三項及び第六十四条の二において同じ。)に二分の一を乗じて得た額

なお、上記の計算方法によって支給金額が決まったら、実務上は「受給者自身の老齢厚生年金」が全額優先的に支給されます。そして、遺族厚生年金の額のうち、自身の老齢厚生年金に相当する部分の支給は停止されます。その上で、「遺族厚生年金額が自身の老齢厚生年金額を上回る場合に限り、その差額分が遺族厚生年金として支給される」という調整が行われるのです(先充て)。

具体的な計算方法や詳細については、年金事務所や法律事務所でご相談いただくことをお勧めいたします。

80歳以上の人は遺族年金を平均いくらもらえる?

80歳以上の人は遺族年金を平均いくらもらえるかについて、個人によって金額は異なるため、平均額というものはありません。正確な金額を確認するためには、亡くなった夫の年金加入期間や平均標準報酬額、受給者である妻自身の年金記録などから計算する必要があります。自身で計算するのが難しいときには、年金事務所の相談窓口や、法律事務所の無料相談などを活用してみてください。

なお、80歳以上の遺族年金の受給額の計算方法も、70歳以上の場合と基本的に変わりません。

「亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4 =(A + B)× 3/4」と「(遺族厚生年金の基本的な受給金額 × 2/3)+(本人の老齢厚生年金の額 × 1/2)」のそれぞれの金額を比較して、高い方が支給額となります。

そして、その上で実務上は先充てという形で「受給者自身の老齢厚生年金」が全額優先的に支給され、遺族厚生年金額が自身の老齢厚生年金額を上回る場合に、差額分が支給される、という仕組みです。

70歳以上の高齢者の遺族年金に関するQ&A

Q1.夫の死亡時に70歳以上だった妻でも遺族年金は受け取れる?

A:はい、夫の死亡時に70歳以上だった妻でも、遺族年金を受け取ることができます。遺族基礎年金や遺族厚生年金は、一定の要件を満たしていれば受給可能です。

  1. 遺族基礎年金

    遺族基礎年金は主に18歳未満の子どもがいる配偶者が対象です。ただし、子どもが成人している場合などは受給できません。

  2. 遺族厚生年金

    遺族厚生年金は、亡くなった方が会社員や公務員であり、厚生年金に加入していた場合に支給されます。70歳以上でも受給条件を満たせば、妻は夫の遺族厚生年金を一生涯受給することができます。

Q2.遺族基礎年金を受給する場合、老齢年金と同時に受給することはできますか?

A:いいえ、遺族基礎年金を受給する場合は、老齢年金と一緒に受給することはできませんので、どちらか一方を選択する必要があります。自営業者の場合、通常は老齢基礎年金を受給しますが、老齢基礎年金の額より遺族基礎年金の額が大きくなることが多いため、遺族基礎年金を選択する方が有利となることがあります。一方、会社員や公務員だった方は、基礎年金に加えて老齢厚生年金も受給することになります。多くのケースで老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額の方が大きくなりますので、遺族基礎年金ではなく老齢年金を選択する方が有利となることもあります。

Q3.遺族厚生年金を受給する場合、老齢年金と同時に受給することはできますか?

A:遺族厚生年金と老齢年金を同時に受給できる場合とできない場合があります。遺族厚生年金と老齢基礎年金は同時に受給できますが、遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金(60歳から64歳までの老齢厚生年金)は同時に受給できません。65歳以降に受給する老齢厚生年金は遺族厚生年金と一緒にもらうことができますが、自身の老齢厚生年金が優先され、差額分のみが遺族厚生年金として支給されます。具体的には、以下のいずれか大きい方の金額が遺族厚生年金の額となります。

  1. 亡くなった方の老齢厚生年金額の4分の3
  2. (遺族厚生年金の基本的な受給金額 × 2/3)+(本人の老齢厚生年金の額 × 1/2)

まとめ

本記事では、夫が死亡した時に70歳以上だった妻が遺族年金を受給できるかに焦点を当てて、弁護士が解説させていただきました。

遺族年金は70歳以上でも一定の要件を満たせば受給可能です。遺族基礎年金と遺族厚生年金のどちらを受け取るか、または両方を受け取るかは、受給者の状況や生計の維持関係によります。具体的な受給額は、亡くなった方の年金加入期間や報酬額、受給者自身の年金受給状況によって異なります。

特に、専業主婦や個人事業主であった方と、会社員や公務員として働いた経験がある方では、受け取ることのできる年金の種類が異なるため、受給額や受給条件に違いがあります。専業主婦の場合、遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金の組み合わせが一般的ですが、会社員や公務員として働いた経験がある場合は、配偶者の遺族厚生年金に加え、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることが可能です。

70歳以上の高齢者が遺族年金をいくら受け取れるか、早めに正確な情報を収集して金額を確認しておくと安心です。

遺族年金でお悩みがありましたら、弁護士法人あおい法律事務所にご相談いただければと思います。当法律事務所の弁護士による法律相談は、初回無料で行っております。当ホームページのWeb予約フォームやお電話にてお問合せいただけますので、ぜひお気軽にご利用ください。

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代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。