養子縁組をしたら相続人になれる?!節税対策の効果やメリット・デメリットも

法定相続人

更新日 2024.07.05

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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養子縁組を行うと、養子は法律上、養親の子供とみなされるので、養親が亡くなった際には、自然な子供と同様に相続人として財産を引き継ぐ権利を有します。しかし、養親に実子がいる場合、相続関係がより複雑になり、法定相続人としての位置づけや相続分に細心の注意が必要です。

この記事では、養子縁組の相続への影響や節税対策としてのメリットとデメリットを解説していきます。節税対策を考えている方や、養子縁組について理解を深めたい方はぜひこの記事を参考にして、トラブルなくスムーズに手続きを進めましょう。

目次

養子縁組をすれば実子と同じく相続権をもつ!

養子縁組を行うと、養子は民法上、実子と同等の親子関係を築くことになり、相続の面では重要な権利を持ちます。具体的には、養子は法定相続人としての地位を確立し、実子と同様に財産相続の権利を有することになります。これは、養子が血縁関係にはないものの、法的には完全な親子関係が認められているためです。

養子は相続順位第一位の法定相続人である

相続人になれる順位では、養子は第一順位に位置づけられます。これには実子も含まれるため、養子と実子は相続において同等の権利を享受します。相続の際には、配偶者も必ず法定相続人となるため、配偶者と子どもたちが主な相続人となります。

第一順位

被相続人の直系卑属(子・養子や孫)

第二順位

被相続人の直系尊属(両親や祖父母)

第三順位

被相続人の兄弟姉妹

法定相続分(相続割合)も実子と同じ

養子縁組を行った家庭では、養子も実子も区別なく財産を相続する権利を有します。具体的には、配偶者と子どもが相続人である場合、配偶者は遺産の半分を、残りの半分はすべての子どもに等しく分配されます。

たとえば、遺産が総額3,000万円の場合、配偶者には1,500万円が、子どもたちには残りの1,500万円が分配されます。子どもが実子2人と養子1人の3人いる場合、それぞれの子どもには500万円ずつが平等に分けられることになります。

実親の相続人にもなれるのは普通養子縁組のみ

養子縁組には2種類ある

養子縁組には、異なる法的特性を持つ「普通養子縁組」と「特別養子縁組」という2種類が存在します。これらの違いは、実親との法的関係や相続の権利に大きく関連しています。

まず、「普通養子縁組」は、養子となっても実の父母との関係が維持されるため、養子は実父母と養父母の両方から相続権を持つことができます。これにより、普通養子は実親の財産も養親の財産も相続する可能性があります。普通養子縁組の手続きは比較的簡単で、必要な書類を市区町村の役所に提出することで完了します。

特別養子縁組した養子は実親の相続人になれない

一方で、「特別養子縁組」は、主に子供の福祉を最優先とするケースで適用されます。この制度を利用すると、養子は実の父母との法的な関係が断たれ、実父母からの相続権を失います。相続権は養父母に限定されるため、特別養子縁組はその後の相続の場面で養父母のみが相続人となります。特別養子縁組の手続きには、実父母の同意が必要であり、さらに家庭裁判所の許可も求められるため、時間と手間がかかることが特徴です。

このように、普通養子縁組と特別養子縁組は、その目的や手続きの違いだけでなく、相続における権利にも大きな違いがあります。普通養子縁組を選択した場合には実親と養親の双方からの相続権が保持されるため、法的な選択をする際にはこれらの点をよく理解し、慎重に決定することが求められます。

以下の表に普通養子縁組と特別養子縁組の特徴をまとめました。

 

普通養子縁組

特別養子縁組 

成立条件

養親と養子の同意が必要。
(未成年者を養子にする場合は夫婦共同で養親となり、家庭裁判所の許可が必要。15歳以上は自己の意思で養子縁組可能。)

家庭裁判所の決定により成立。原則として実父母の同意が必要。

実親との関係

実親との親族関係が存続。

実親との親族関係が消滅。

相続権

実親と養親双方に対して法定相続人になれる。

養親に対してのみ法定相続人になれる。

要件

・養親:成年であること。
養子:尊属または養親より年下であること。

・養親:養親のいずれかが25歳以上で配偶者は20歳以上の夫婦。
・養子:申立時に15歳未満(2020年4月1日より6歳から15歳に引き上げ)。

戸籍の表記

実親の名前が記載され、続柄は養子(養女)と記載。

実親の名前が記載されず、続柄は長男(長女)などと記載。

 法定相続人となれる養子の人数に制限はない

日本の民法では、養子縁組をする際にその数に制限は設けられていません。これは、養子縁組を通じて法定相続人として迎えられた全ての養子が、遺産を相続する法的な権利を持つことを意味します。このため、実子がいようがいまいが、養子縁組をした養子全員が法定相続人となり得るのです。

しかし、相続税の基礎控除額を計算する際には、相続人の数に基づく一定の制限が存在します。

相続税の基礎控除額を計算する際は養子の人数に制限がある

相続税計算における基礎控除額は、遺産の総額から一定額を控除することで、実際に課税される金額を算出します。この基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式によって決定されますが、ここでの法定相続人の数には特定の制限が存在します。

具体的には、法定相続人として数えられる養子の人数には以下のような制限が設けられています:

  • 養親に実子がいる場合:養子は1人まで
  • 養親に実子がいない場合:養子は2人まで

この制限は、相続税の基礎控除額を不当に増やすことを防ぐための措置です。相続税法は、実子に対しては人数制限を設けていませんが、養子に関しては上記の制限を適用し、相続税の公平性を保っています。

また、この人数制限は死亡退職金や死亡保険金の非課税枠の計算にも影響を与えます。ここでは「500万円×法定相続人の数」という式で非課税枠が計算されるため、養子の人数が多くても、基礎控除額の計算で認められる養子の人数に応じてのみ非課税枠が決定されます。

なお、特別養子縁組による養子や、被相続人の配偶者の実の子ども(連れ子)で後に被相続人の養子となった者、またはその他特定の条件を満たす養子は、相続税法上では実子として扱われるため、これらの人数制限の対象外となります。これにより、特定の養子に対してはより公平な相続の機会が与えられています。

養子縁組は節税対策に有効?!相続におけるメリット

養子縁組の相続におけるメリットは主に以下の5つです。

①再婚相手の連れ子も実子と同等に財産を相続できる

養子縁組が成立すると、養子は実子と全く同じ法定相続分を主張できるようになります。これにより、再婚家庭における連れ子など、法律上は直接の血縁関係がない子どもたちも、養子縁組を行うことで実子と同様の相続権を得ることができるのです。再婚した配偶者の子供がいる場合、彼らが法的に親子関係を持たない限り、自動的に相続権は発生しません。

しかし、養子縁組により、これらの子供たちも実子として認められ、相続において公平な権利を保証されることになります。

②法定相続人ではない人へ相続できる

たとえば、被相続人の孫が非常に身近に感じられる存在でありながらも、法定相続人ではない場合、通常は直接的な相続権はありません。しかし、養子縁組を利用することで、孫を法定相続人とすることができ、遺産を直接引き継ぐことが可能になります。同様に、長男の配偶者など、親族外の重要な人物に対しても、養子として迎え入れることにより相続権を与えることができます。

③相続税の基礎控除額が増えるため節税になる

養子縁組が相続税の節税対策として有効である理由の一つは、基礎控除額の増加による税負担の軽減です。基礎控除とは、相続税計算時に遺産から差し引くことができる非課税枠であり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出されます。養子縁組を行うことにより法定相続人の数が増えるため、結果的により大きな基礎控除額が適用され、課税対象となる遺産の金額が減少します。

例えば、法定相続人が1人の場合、基礎控除額は「3000万円+600万円×1人=3600万円」となります。しかし、養子を迎えることで法定相続人が増加すると、この控除額も大きくなります。養子が1人加わると「3000万円+600万円×2人=4200万円」、さらにもう1人迎えると「3000万円+600万円×3人=4800万円」と増加していくのです。

ただし、相続税法では養子の数に制限が設けられています。亡くなった人に実子がいる場合、法定相続人として数えられる養子は最大1人まで、実子がいない場合は最大2人までと定められています。この制限は、養子縁組を通じた過度な節税を防ぐために設けられており、基礎控除額の適用においてはこれを考慮する必要があります。

④生命保険金の非課税限度額を増やせるため節税になる

養子縁組が相続税の節税対策として有効である理由の一つに、生命保険金の非課税控除額を増やすことができる点があります。生命保険金は、被相続人の死亡に伴って受け取る金額に対して一定の非課税控除が適用されます。この非課税控除額は、「500万円 × 法定相続人の数」で計算されるため、法定相続人の数が増えるほど控除額も大きくなります。

ただし、養子縁組を行う際は、法定相続人の数による非課税限度額の増加が目的である場合、その他の法的な影響や道義的な責任も考慮する必要があります。相続は単に税金を節済むことだけでなく、家族関係や個人の意志も重要な要素として関与するため、すべての側面から慎重な検討が求められます。

⑤死亡退職金の非課税限度額を増やせるため節税になる

退職金は、被相続人が生前に勤務していた企業から死亡によって支払われるべき金額であり、この金額には一定の非課税枠が設けられています。

死亡退職金に適用される非課税限度額は、「500万円 × 法定相続人の数」と定められています。つまり、法定相続人の数が多いほど、退職金に対する非課税枠が広がることになります。この非課税枠の拡大により、相続税の課税対象となる死亡退職金の金額が減少し、結果として相続税の総額も低減されます。

しかし、養子縁組による法定相続人数の増加は、相続手続き全体に影響を与えるため、節税目的で養子縁組をする場合は慎重に検討するようにしましょう。

養子縁組の相続におけるデメリットと注意点

養子縁組の相続におけるデメリットと注意点は主に以下の6つです。

①遺産分割協議でトラブルになる可能性がある

実子が養子縁組の事実を知らなかった場合、本来予想していた相続分が減少することから、相続人間での意見の対立が生じやすくなります。このような状況は、相続手続きの長期化を招き、場合によっては遺産分割が合意に至らず手続きが完了できなくなる可能性があります。

この問題を未然に防ぐためには、養子縁組を行う前にその意図や理由を実子に説明し、家族間の理解と同意を得ることが重要です。さらに、遺言を通じて財産の分割方法を明確に示すことも有効です。こうすることで、相続時の不測のトラブルを避け、家族関係をより良好に保つことができます。

②孫を養子にした場合は相続税が2割加算される

養子縁組を通じて孫を法的な子として迎え入れる場合、特定の税法上のデメリットが存在します。一般的に、相続は親から子、そして子から孫へという順序で行われますが、直接的に親から孫へ財産が移る「孫養子」のケースでは、通常の相続税に加えて2割の税が加算されます。これは、税法において孫への直接承継が通常の相続の流れを阻害すると見なされるためです。

法的には養子縁組により孫も「一親等の血族」として扱われますが、税法上ではこの関係が特別視され、通常の相続と異なる扱いを受けることになります。この規定の目的は、財産の世代間移転を通常の親子関係に限定し、それ以外の移転に対しては税負担を増やすことにあります。したがって、孫を養子にする際には、この追加税金が発生することを予め理解し、相続計画において十分に考慮する必要があります。

③相続税が増えるケースもある

養子縁組が行われる際、意図せず相続税が増加する可能性がある点には注意が必要です。この現象は法定相続人の数が意外な形で減少するケースで発生します。例えば、被相続人に直接の親や子がいない場合、法定相続人として通常は配偶者と甥姪が含まれます。甥姪が複数いる場合、それぞれが相続人としてカウントされ、相続税の基礎控除額がそれに応じて計算されます。

しかし、被相続人が甥姪のうちの一人と養子縁組を行うと、養子が第一順位の相続権を持つ法定相続人となり、他の甥姪は相続人から外れることがあります。この結果、法定相続人の総数が減少し、それに伴って相続税の基礎控除額も減少します。結果的に残された遺産に対する相続税の負担が増えることになるのです。

このように、養子縁組を行うことで相続人構成が変わり、税負担が増加するケースは珍しいものの、起こり得ます。相続計画を立てる際には、養子縁組の影響を全面的に検討し、予期せぬ税金の増加に備えることが重要です。

④相続税対策のための養子縁組は否認される可能性がある

養子縁組を利用した相続税の節税対策が、税務当局によって否認されるケースがあります。このような状況は、主に養子縁組が相続税を不当に減少させる目的で行われたと判断された場合に発生します。特に、被相続人の死亡直前に養子縁組が行われたケースや、養子縁組後に養子に遺産が全く渡らない場合などは、節税目的のための形式的な養子縁組と見なされ否認されるリスクが高まります。

税務署が養子縁組を否認すると、法定相続人としての養子の増加が認められず、相続税の計算も修正されます。この結果、追徴課税が行われたり、相続税の申告をやり直す必要が出てくるなど、時間とコストの両面で大きな影響を受けることになります。

また、法的な手続きにおいて信頼性が損なわれることもあり、家族間のトラブルに発展する可能性も否定できません。

養子縁組による節税を考える際には、これらのリスクを十分に理解した上で、専門家の意見を聞くことが推奨されます。

⑤養子縁組を解消するのは難しい

養子縁組をした後に、被相続人と養子の間で関係が悪化し、最終的に遺産を譲渡したくないと考えるケースもあります。このような状況に直面した場合、養子縁組を解消することが必要になるかもしれませんが、これは必ずしも簡単な手続きではありません。

養子縁組の解消には、養親と養子の双方の合意が必要です。どちらか一方でも解消に同意しない場合、離縁を法的に成立させるためには裁判を通じて離縁請求を行い、裁判所にその必要性を認めてもらう必要があります。この過程は時間と労力を要するものですし、必ずしも希望通りに解決されるとは限りません。

また、特に注意が必要なのは、親が再婚してその配偶者の子を養子にした場合です。もし親とその再婚相手が離婚しても、養子縁組は自動的には解消されません。このため、再婚が破綻しても養子関係が継続することになり、遺産相続などの問題で予期せぬ複雑さが生じる可能性があります。

⑥養子の子が代襲相続人になれない場合がある

養子縁組を行った後に生まれた養子の子供は、被相続人が亡くなった場合に代襲相続人として相続権を有します。これは、養子とその子供が法的に親子関係にあり、相続人として認められるからです。

しかし、養子縁組を行う前に既に生まれていた養子の子供(連れ子)は、代襲相続人としての権利を持ちません。これは、養子縁組が行われた時点で既に存在していた子供は、被相続人と法的な血縁関係がないとみなされるためです。例えば、養子が縁組前に持っていた子供(孫①)は、その後の被相続人の死亡時には法定相続人とは認められないのに対し、養子縁組後に生まれた子供(孫②)は法定相続人になることができます。

このような状況を避け、養子の連れ子にも財産を残したい場合は、いくつかの方法が考えられます。一つは、連れ子自体と養子縁組をあらかじめ行い、法的な親子関係を確立することです。もう一つの方法は、遺言書を作成して明確に財産の分配指示を行うこと、または生前贈与を利用して連れ子に財産を渡すことです。これらの手段により、養子の連れ子にも適切に財産が行き渡るようにすることが可能となります。

相続税対策のために養子縁組をするには?手続き方法

①相続税専門の税理士に相談する

まず、相続税の専門家である税理士に相談して、養子縁組が自身の状況で節税につながるかどうかを検討しましょう。養子縁組による節税効果は確実ではなく、他の非課税制度を利用した方が有利な場合もあります。また、養子が孫の場合は相続税が2割加算されるため、その点も詳しく試算してもらうことが重要です。

②養子縁組の届出に必要なものを集める

養子縁組の届出には、以下のような書類が必要です。

  • 養子縁組届(市区町村ごとに様式が異なる場合があります)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 家庭裁判所の許可書謄本(未成年者を養子にする場合や、後見人が被後見人を養子にする場合など特定の状況で必要です)

注意点として、2024年3月1日から戸籍謄本の提出が原則不要になった点を確認しておくと良いでしょう。

③市区町村の役所に届け出る

最後に、準備した書類を持って、市区町村の役所に届け出ます。届け出は自身で行うことができ、通常は弁護士や他の専門家に依頼する必要はありません。届け出先は、養親または養子の本籍地、または住所地の市区町村役場になります。どの窓口に提出すれば良いかは、届け出先の市区町村によって異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。

養子縁組と相続に関するQ&A

Q: 法定相続人として認められる養子の数には上限がありますか?

A: 法律上、養子を迎える数に制限はありませんが、相続税法上では法定相続人として認められる養子の数には制限があります。養親に実子がいる場合は養子を1人まで、実子がいない場合は2人までとして法定相続人に含めることができます。この制限は、相続税の基礎控除額の計算に影響を与えるため、相続計画を立てる際には注意が必要です。

Q: 孫を養子にする場合の相続における注意点は?

A: 孫を養子にすることで、法的に第1順位の相続人となり、遺産の継承がスムーズに行われる可能性があります。しかし、この場合に問題となるのが相続税の2割加算です。一般的に、孫が直接相続人となる場合(代襲相続を除く)、相続税は2割加算されるため、税負担が増大します。遺言で相続の指定を行っても、この加算から免れることはできません。

そのため、孫に遺産を譲りたいと考える場合は、養子縁組を行う前に、他の方法として暦年贈与を検討することが推奨されます。暦年贈与では、年間110万円までの贈与には贈与税が課税されず、計画的に贈与することで大きな税負担を避けることができます。

ただし、この方法でも、一定の規則性をもって贈与すると、意図的にまとまった金額を贈与すると見なされるリスクがあるため、具体的な計画は専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。

Q: 配偶者の連れ子を養子にした場合、その養子の子は代襲相続を行うことができますか?

A: 配偶者の連れ子を養子にすることにより、その子は法律上あなたの子どもとして相続権を持つことができるようになりますが、代襲相続の資格については特定の制限があります。具体的には、養子縁組を結んでから生まれた子どものみが代襲相続の権利を有します。

これは、法律上、養子縁組が成立した時点で新たに形成される家族関係に基づくため、養子縁組を結ぶ前に既に生まれていた連れ子には、養親が先に亡くなった場合にその養親の財産を代襲相続する権利が与えられません。

Q: 普通養子縁組を行った場合、養子の法定相続人の地位はどのように変わりますか?

A: 普通養子縁組を行うと、養子は法的に養親と実親の両方から相続権を持つことになります。これにより、養親または実親のいずれかが亡くなった場合、養子はそのどちらからも第1順位の法定相続人となります。例えば、養親に実子が1人と養子が1人いる場合、養親の遺産は実子と養子で均等に分けられ、それぞれが1/4ずつを相続します(配偶者が1/2を相続する場合)。

また、養子が亡くなった際には、養子に配偶者や子供がいない限り、その遺産は養親と実親が相続することになります。このように、普通養子縁組は養子の相続権を大きく拡張する一方で、養親と実親双方の遺産に関する権利も持つため、相続の際には複雑な関係が生じる可能性があります。

Q: 特別養子縁組を行った場合、養子の相続人の地位はどのようになりますか?

A: 特別養子縁組を行うと、養子は実親との法的な親子関係を断ち切るため、養親のみが法定相続人となります。これにより、養親が亡くなった際、特別養子は実子と同じく第1順位の法定相続人になり、法定相続分も実子と同様に計算されます。

ただし、特別養子が養親より先に亡くなった場合、その養子に配偶者や子供がいない限り、遺産は養親が相続します。特別養子の実親は、特別養子縁組によって親子関係が断たれるため、相続権は一切持ちません。このように、特別養子縁組は養親との関係においてのみ相続の権利が認められることになります。

まとめ

養子縁組を行うことは、相続計画において様々なメリットとデメリットをもたらします。法的に養子は実子と同等の法定相続人とみなされるため、養子縁組を通じて法定相続人の数を増やすことで、基礎控除額の増加による節税効果が期待できます。

しかしながら、この行動は実子が受け取るべき遺産の額を減少させることにもなり、家族間での遺産分割を巡る争いが生じる可能性があります。そのため、養子縁組を検討する際には、全ての家族メンバーと十分な対話を行い、相続におけるプラス面とマイナス面をしっかりと理解することが不可欠です。

また、相続における養子の扱いについて不明瞭な点や疑問が生じた場合は、専門知識を持つ相続の専門家に相談することをお勧めします。専門家に相談することで、適切な法的アドバイスを受け、トラブルを未然に防ぐ助けになります。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。