法定相続情報一覧図とは│各テンプレートの取得と自分で作成する方法

法定相続人

更新日 2024.06.04

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

遺産相続は多くの人にとって一生に数回しか経験することのない、やや複雑な手続きの一つです。その中でも、特に負担となるのが戸籍謄本の収集です。これまでの方法では、相続関係を証明するために、多くの戸籍謄本類を収集し、名義変更や遺産分割など毎に窓口へ提出する必要がありました。

このような煩雑さを一掃する「法定相続情報一覧図」は、遺産相続における簡易な手続きの新たな方針として導入されました。この法定相続情報一覧図は、亡くなった方と相続人間の関係性を明確に示し、一目で理解できるよう設計されています。そして、多くの手続きで戸籍謄本の代わりとして法定相続情報一覧図を使用することができるのが特長となっています。

しかし、法定相続情報一覧図の存在や活用方法を知らない方も少なくありません。そこで、この記事では法定相続情報一覧図の具体的な利点、正しい書き方、そして交付までの手順を、わかりやすく解説していきます。

目次

法定相続情報一覧図とは

法定相続情報一覧図とは相続関係を図にまとめたもの

「法定相続情報一覧図」とは、被相続人(亡くなった方)に関連する法的な相続関係を明示的に示す文書のことを指します。具体的には、法によって定義される相続人(例:子供、配偶者、親など)が誰であるかを一目でわかるようにまとめられたもので、家系図と似た形式を取っています。
この制度は、平成29年5月29日に「法定相続情報証明制度」として導入されました。主な目的は、相続に関する手続きをスムーズに進めるとともに、相続関連のトラブルを防ぐことです。

相続が発生した際、法法定相続人を明確に示す戸籍謄本などの情報と共に、法務局に提出することで、認証文を受けた一覧図の写しを取得できます。この制度の導入以前は、相続手続きの際、被相続人の生涯の戸籍謄本を全て集めて提出する煩雑な手続きが求められていました。このため、文書が一つでも紛失すると再取得の手間が発生していました。しかし、この制度の導入により、A4サイズ1枚の一覧図の写しの提出だけで手続きが可能となり、大変便利になりました。特に多くの銀行や資産を持つ方々にとっては、この制度の利用は非常に有効であり、各手続き窓口でも効率的に作業が進められるようになりました。

ただし、この制度にもデメリットが存在します。具体的には、利用者自身で一覧図を作成する必要があるため、その作成に時間がかかる場合があります。特に、相続手続きをする機関が少ない場合は、この制度を利用するメリットが少ないと感じるかもしれません。

相続登記や銀行の手続きに利用できる

「法定相続情報一覧図」は相続手続きを行う際の重要な文書であり、その写しを保有していることで多くの手続きを円滑に行うことができます。以下に、法定相続情報一覧図の写しを利用して進めることができる主な手続きをまとめます。

  • 被相続人名義の不動産の名義変更
  • 預貯金の払い戻しや名義変更
  • 被相続人名義の有価証券や投資信託の名義変更
  • 相続された自動車や船舶の名義変更
  • 相続税の申告および納付
  • 遺族年金や未支給年金の手続き

これらの手続きを行う際に、法定相続情報一覧図の写しを提示することで、相続関係を明確にし、手続きの正確性や迅速性を確保することができます。

例えば、この一覧図の写しを相続登記時に提出すれば、被相続人の生涯に関する多くの書類、具体的には、出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍や相続人の戸籍謄本(抄本)などの提出を省くことができます。
さらに、法定相続情報一覧図に被相続人の最終の住所や、相続人の住所情報を含めることで、住民票やその除票の提出も不要になります。

ただし、この一覧図だけで完結するわけではありません。遺産分割協議書や印鑑証明書など、戸籍や住民票によらない他の証明書類は引き続き提出が必要となります。

なお、法定相続情報一覧図の他に相続関係説明図があります。

法定相続情報一覧図は、法務局が作ってくれる証明書です。法務局が作るから、信用できる書類として、様々な相続手続きに使えます。しかし、作成するのに時間がかかるのが難点です。

一方で、相続関係説明図は、自分で作ることができます。また、書式や記載事項などが決まっていないので、比較的自由に記載することができます。ですが、証明書ではないので、手続きに使うときは戸籍謄本など他の証明書類をあわせて提出する必要があります。

相続関係説明図については、下記記事で詳しく解説しております。あわせて参照してください。

相続関係説明図とは│書き方やひな形の紹介と法定相続情報一覧図との違い

相続登記手続きと同時申請も可能

また、特筆すべき点として、相続登記の申請時に同時に法定相続情報一覧図の申請も行うことができます。この同時申請により、多くの書類が共通しているため、一度の法務局での手続きで、ともに処理される利点があります。この結果、相続手続全体が非常にスムーズに進行し、多くの手間やストレスを軽減することが可能となります。

法定相続情報一覧図の写しの交付と再交付

法定相続情報一覧図の取得に関して、申し出から一覧図の写しが手に入るまでの期間は、一般的に1~2週間ほどです。ただし、この期間は法務局や申請時期によって異なることがあり、特に早い場合には翌日に交付されることもあります。ただし、戸籍謄本の取得など準備に時間がかかることがあり、特に被相続人の戸籍が複数の自治体にまたがっている場合、各自治体の窓口での手続きが必要となります。また、相続関係が複雑である場合には、必要な戸籍謄本の数も増える可能性があるので、一覧図の作成を含めて余裕を持った計画が求められます。

さらに、法定相続情報一覧図の保存期間について、申出日の翌年から起算して5年間となっています。この期間内であれば、何らかの理由で手続きが遅れた場合や、手続きの漏れが発生した場合など、申出人からの要請で一覧図の写しの再交付を受けることが可能です。再交付に際しての料金は発生せず、無料で必要な通数が提供されます。

ただし、再交付を申請できるのは、法定相続情報一覧図の申出を初めて行った申出人のみとなります。そのため、他の相続人が一覧図の交付を希望する場合には、初めの申出人からの委任状が必須となります。

法定相続情報一覧図を自分で取得する方法

法定相続情報一覧図を自分で取得するための手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 必要書類の収集
  2. 法定相続情報一覧図の作成
  3. 申出書の記入,登記所へ申出

以下で、それぞれについて順に解説してきます。

①必要書類を収集

以下のような書類が必要となります。

必要書類

取得方法

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改正原戸籍謄本、除籍謄本

被相続人の出生地や居住地の市町村役場窓口

被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

居住地の市町村役場窓口

相続人全員分の現在の戸籍謄本または戸籍抄本

各相続人の出生地や居住地の市町村役場窓口

申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(例:免許証の表裏両面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写し)

※公的書類のコピーには、原本と相違がない旨の記載をし、申出人の氏名を記入します。

保有している場合はそのまま提出。住民票の場合は居住地の市町村役場窓口から取得

作成した法定相続情報一覧図

既に作成済みなら提出。

必要事項を記入した申出書

申出時に記入・提出。

また、状況によっては必要となる書類もあります。
法定相続情報一覧図の必要になる可能性がある書類とその必要となる場合、および取得方法をまとめた表を以下に示します。

必要書類

必要となる場合

取得方法

各相続人の住民票の写し

一覧図に相続人の住所を記載する場合

各相続人の居住地の市町村役場窓口

委任状

申出を他者に委任する場合

申出人が作成

申出人と代理人が親族関係にあることを証明する戸籍謄本

親族が申出の代理を行う場合

申出人または代理人の出生地や居住地の市町村役場窓口

資格者代理人団体所定の身分証明書の写し

資格を持つ代理人(例:弁護士、司法書士など)が代理の場合

資格者代理人が所属する団体から取得

被相続人の戸籍の附票

被相続人の住民票の除票が取得できない場合

被相続人の出生地や居住地の市町村役場窓口

具体的なケースによって必要な書類や状況が異なる可能性がありますので、詳細は各市町村役場や関連機関に確認してください。

委任状は法務局ホームページよりダウンロードできる

法務局のホームページには、委任状のテンプレートとその記入例が掲示されています(「法務局の法定相続情報一覧図の様式及び記載例」)。この委任状には、以下の情報を記載する必要があります。

  • 代理を行う方の住所と氏名
  • 被相続人の最後の住所(もしくは本籍)、氏名、そして死亡の日付
  • 委任される日の日付と、委任する相続人の住所及び氏名

②法定相続情報一覧図を作成する│テンプレートをダウンロード

法定相続情報証明制度を活用する際、まずは法定相続情報一覧図の作成が必須となります。被相続人の情報や、戸籍に記載されている相続人の情報を基に、一覧図を整理して作成します。以下では、この一覧図の作成手順と記入方法について詳しく解説いたします。

法定相続情報一覧図のテンプレートと見本の参照

法務局の公式サイトには、法定相続情報一覧図のテンプレートと詳しい見本が提供されています。これらをダウンロードして利用することで、手続きをよりスムーズに行えるでしょう。テンプレートを活用することで、ミスを減らし効率的に情報を記入できますので、ぜひ参考にしてみてください。
法務局ホームページ:「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

法定相続情報一覧図の見本と書き方

<見本の挿入>

記入項目

詳細説明

タイトル

冒頭に「被相続人 ○○ 法定相続情報」と記載。○○には亡くなった方の名前を記入。

被相続人の情報

 氏名、最後の住所、最後の本籍地、生年月日、死亡年月日を記載。「(被相続人)」と併記。

※最後の住所は、共に提出する住民票の除票や戸籍の附票の除票により確認。

相続人の情報

各相続人の氏名、生年月日、被相続人との続柄を記載。 住所の記載は任意だが、記載時は住民票の写し提出が必要。相続放棄した人、相続欠格者、遺産分割協議結果で相続しなくなった人の情報、生年月日、続柄も記載。

申出人を併記

申出人となる相続人の氏名の横に「(申出人)」と併記。

作成年月日、作成者名

一覧図の作成日、作成者の氏名、住所を記載。

法定相続情報一覧図を自分で作成する際のポイント

 

法定相続情報一覧図を自分で作成する際のポイント

 

まず、使用する用紙はA4サイズを選びましょう。そして、その用紙の下端から5センチの部分を空けることを忘れずに。この5センチの空き部分は、後に法務局が認証文を挿入するためのスペースとなります。

作成手段に制約は特になく、手書きでもパソコンを用いての作成でも良いです。ただし、押印は不要であり、署名だけで十分です。一覧図上での関係者間の線の引き方には固定のルールは存在しないものの、わかりやすさを考慮して配偶者間は二重線、親子間は一重線で繋ぐことを推奨します。
最後に、万が一間違えて記載してしまった場合には、二重線で訂正し、印鑑を押すこともできます。しかし、それにより内容が読み取りにくくなる場合は、清書することを検討しましょう。

③申出書の記入し法務局へ申し出

申出書のテンプレートと書き方│法務局ホームページからダウンロード

法務局のホームページ「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」において、申出書(Word形式)のダウンロードが可能です。また、申出書の記入例 (PDF形式 : 199KB)も掲載されていますので、参考にして必要事項を記入してください。

管轄の法務局(登記所)へ提出

書類が整ったら、次に管轄の法務局へ提出を行います。
「管轄の法務局」とは、具体的には以下の場所のいずれかを指します。

  1. 被相続人の死亡時の本籍地にある法務局
  2. 被相続人の最後の住所地に該当する法務局
  3. 申出人の住所地に所在する法務局
  4. 被相続人名義の不動産が存在する地域の法務局

これらの選択肢から、自身にとってアクセスしやすい場所や、手続きをスムーズに進められる場所を選んで提出先としてください。
さらに、法定相続情報一覧図の提出方法には柔軟性があります。実際に法務局に足を運ぶ必要はなく、郵送を利用して書類を送ることも可能です。ただし、郵送の場合、必要書類が確実に届いたかの確認や、書類に不備がないかのチェックが必要になる場合も考えられますので、その点を考慮して最適な方法を選びましょう。

法定相続情報一覧図の注意点

死亡した相続人の扱い

法定相続情報一覧図では、亡くなった方(被相続人)および相続人の情報のみが記載されます。つまり、相続人以外の親族や関係者の情報は、原則としてこの図には含まれません。例外的なケースとして、代襲相続が発生した場合でも、被代襲者の具体的な氏名は記載せず、「被代襲者」という表記とその死亡日のみを記入します。このような特殊なケースにおいては、金融機関などが戸籍謄本の束の提出を求めることも少なくありません。

また、もし被相続人の死亡時には生存していた相続人が、その後に死亡しても、その後の死亡事実は一覧図には反映されません。一覧図に記載されるのは、被相続人の死亡時点での相続人の情報のみとなります。

先に死亡した配偶者は記載しない

法定相続情報一覧図には、被相続人の相続に関連しない情報を記載することは認められていません。具体的には、被相続人より先に死亡した配偶者や離婚した元配偶者に関する情報は記載することができません。これは、このような者たちが法的に相続人としての資格を持たないためです。

そのため、被相続人の死亡前に離婚した元配偶者や、死亡前に亡くなった配偶者の情報は、法定相続情報一覧図には絶対に含めてはならない項目となります。

相続放棄した人なども記載する

相続に関連する法定相続情報一覧図では、実際に相続財産を受け継ぐ人だけでなく、特定の条件や状況で相続から除外される人の情報も正確に記載することが必要です。以下に、その点に関する具体例を簡潔に解説します。

  1. 相続放棄した人:自らの意思で相続権を放棄した法定相続人。
  2. 相続欠格者:法律により相続資格を失う人。(例:被相続人を故意に殺害した者)
  3. 遺産分割協議での合意により相続しないこととなった人:相続人間の協議結果、一部の相続人が相続から除外されることを合意した場合。

養子がいる場合は区別して記載

法定相続情報一覧図は、相続税申告の際の添付資料として活用できます。しかし、具体的な続柄の記載が要求される場面があります。特に、相続人に「子」が含まれる場合、実子と養子の明確な区別が必要です。

この理由は、相続税の計算において、養子の取り扱いが特別であり、例えば3人の養子がいる場合でも、税の計算上では1人または2人として扱われることがあるためです。国税庁のガイドラインも、相続税申告の添付資料として使用する一覧図には、実子や養子の具体的な続柄が要求されると明示しています。従って、一覧図を相続税申告に利用する際には、続柄の正確な記載を心がけることが重要です。

住所を記載した方がメリットが大きい

法定相続情報証明制度の申出をする際、当事者の「住所」を書くか書かないかを選ぶことができます。住所を書くと「被相続人や相続人の居住地」を証明でき、さまざまなメリットが享受できます。

原本還付を希望する場合

戸籍謄本など、申出時に提出する書類は、登記官が内容を確認した後、一覧図の写しを交付する際に原本が還付されます。

一方、申出をする本人の確認のために提出する住民票の写しについては、基本的に原本の返却は行われません。ただし、原本と一致する内容が記載されたコピー(原本と相違がないことを示す旨の記載と、代理人の記名がされたもの)を併せて提出する場合、その原本は返却されます。

法定相続情報一覧図に関するQ&A

Q: 何のために「法定相続情報一覧図」が必要なのですか?

A: 法定相続情報一覧図は、相続関係者や財産の所在を一目で確認できるため、遺産分割協議や相続手続き、名義変更、相続税の申告などでの文書提出として利用されます。この一覧図があれば、多くの場合で戸籍謄本の繁重な提出を省くことができます。

Q: 法定相続情報一覧図の取得にかかる費用はどのくらいですか?

A: 法定相続情報一覧図自体の取得費用は、一覧図の作成や諸手続きに伴う費用となります。具体的な費用は、申請手続きの内容や依頼する専門家により異なりますので、詳しくは関連機関や専門家に直接確認すると良いでしょう。

Q: 法定相続情報一覧図はいつまで有効ですか?

A: 法定相続情報一覧図には明確な有効期限は設けられていませんが、事実関係が変わるとその内容が古くなるため、新しい情報に基づいて再度取得することが推奨されます。

Q: 法定相続情報一覧図はどこで発行されますか?

A: 法定相続情報一覧図は、法務局での申請により発行されます。また、適切な手続きを経て、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家を通じても取得することが可能です。

まとめ

遺産相続において多くの文書が必要となる中、法定相続情報一覧図を利用すれば、戸籍謄本などの取得が一度で済む大きなメリットがあります。これにより、手間や費用を大幅に削減することができます。特に不動産や預貯金、株式の名義変更や相続税の申告などの手続きを行う方にとっては、法定相続情報一覧図の利用は非常に役立ちます。

法定相続情報一覧図の正確な作成は、弁護士に依頼することが可能です。自身での作成に不安や疑問がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。適切なアドバイスとサポートを受けて、スムーズな相続手続きを進めることが可能です。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。