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風俗は浮気か|既婚者の風俗は不倫になる?夫の風俗通いで離婚できる?弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫や妻の風俗通いに悩まされている、という悩みをお見受けすることがあります。

ところで、風俗店の利用は、既婚者にとって「浮気」といえるのでしょうか。恋愛感情が伴う不倫とは異なり、風俗は一時的な性的サービスに過ぎないから浮気には当たらない、と考えている人は少なくありません。

一方で、配偶者以外の異性と性的な接触を持つ行為自体を浮気と捉える人も、決して珍しくはありません。

実際に、夫の風俗通いをきっかけに離婚を考える妻は多く、その際には風俗通いが法律上の「不貞行為」とみなされるかどうかが重要な論点になります。

そこでこの記事では、風俗は浮気になるのかという疑問について、弁護士が詳しく解説させていただきます。

風俗通いが民法の不貞行為に該当する可能性はあるのか、浮気になる風俗と浮気にならない風俗はどういった点が異なるのか、風俗を理由に離婚するにはどう対応すべきなのか、具体的に掘り下げていきたいと思います。

配偶者の風俗に浮気じゃないかと迷った際に、本記事がご参考となりましたら幸いです。

風俗は浮気か

妻がいるというのに、結婚してからも夫の風俗通いがとまらない・・・などとお悩みの方もいらっしゃるかと思います。

風俗は浮気だ、と問い詰めようとしても、「ただのサービスを受けているだけだから」「恋愛感情はないから」と言われてしまうことも多いのではないでしょうか。

風俗は浮気になる?

さて、そもそも風俗とは、浮気に該当するのでしょうか。また、浮気といってもさまざまなイメージがあるかと思います。

本記事では、「浮気」について、民法上の慰謝料請求や離婚請求の原因となる、男女関係をともなう「不貞行為」の意味でご説明いたします。

風俗とは

風俗と一言で言っても、そのサービスの内容や営業形態はさまざまです。風俗が浮気に該当するのかを見ていく前に、風俗について確認しておきましょう。

 

風俗とは、一般的には性的サービスや接待を提供する業種の総称です。法律上は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる「風営法」)」の規制対象となる事業をいいます。

風俗の業種の幅は広く、キャバクラやバーといった接待を伴う飲食店のほか、性風俗関連特殊営業に分類されるソープランドやファッションヘルスなども含まれ、営業の時間や場所、許可の取得などに厳格な制限が設けられています。

店舗型の性風俗の中でも代表的なものはソープランドやファッションヘルスで、客が店舗に出向いて性的接触を伴うサービスを受けます。これに対して、デリバリーヘルスのような派遣型風俗では、従業員が利用客の自宅やホテルに派遣されて性的接触を伴うサービスを行います。

風俗の中でもより身近なキャバクラやガールズバーは、風営法上は「接待飲食等営業」に分類されるため、基本的には会話や接待を目的としており、直接的な性的サービスを含みません。

 

このように、風俗といっても、性的接触を前提とするものから、飲食業に類似するものまで、その業態はさまざまです。

デリヘル・ソープは浮気になる?

さて、以上のような風俗は、どういった場合に浮気に該当するのでしょうか。

ここでいう「浮気」とは、民法第770条1項1号の不貞行為のことを指します。

(裁判上の離婚)
民法第770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

つまり、民法上「不貞行為」とは離婚を請求できる法的な原因として明記されており、一般的には「自由な意思に基づく配偶者以外との性的関係」と解釈されているのです。

そのため、キャバクラやガールズバーといった直接的な性的サービスを含まない風俗よりも、デリヘルやソープといった直接的な性的サービスを行う風俗の方が、浮気に該当する可能性が高いといえます。

 

ですが、ただ単にデリヘルやソープで性的サービスを受けたというだけで、浮気と判断されるわけではありません。

法律上の不貞行為は、性交渉の有無だけでなく、その頻度や継続性も判断材料とされています。

ですので、デリヘルやソープのような性交を行う可能性が高い風俗であっても、1、2回の利用や短期間の利用にとどまる場合には、不貞行為とまでは評価されないこともあるのです。

したがって、風俗が浮気・不倫にあたるかを判断する際には、性交や性交類似行為があったかどうかだけでなく、どの程度の頻度で利用されていたか、同じ店舗や同じ従業員に繰り返し通っていたか、といった継続性の有無が大きな判断材料になります。

さらに、利用が単なる対価関係にとどまるのか、それとも店外での私的な交際や肉体関係に発展しているのかも重要です。

 

この点に関して、裁判所がどういった要素を考慮し判断しているのか、参考になる裁判例を一つご紹介させていただきます。

妻が夫と肉体関係を持った元ソープ勤務の女性に不貞慰謝料を請求した裁判例

【事案の概要】

既婚男性であるA(夫)は、週1回程度の頻度でソープランドを利用し、対価を支払って従業員である女性Bと肉体関係を持っていました。当初はあくまで店舗内でのサービス提供にとどまり、業務の一環として行われていたものでした。

ところが、Bがソープランドを退職する際、夫が好意を示して食事に誘ったことから、二人は店舗外でも会うようになります。夫は店舗と同じ料金をBに支払うことを条件に、Bの退職後もBと肉体関係を持つようになったのです。

二人は月1〜2回のペースでホテルに行き、肉体関係を持った上で食事をするという行為を、合計10回ほど繰り返しました。ボウリングやスケートに行くなど、通常のデートに近い行動もあったと認定されています。

【裁判所の判断】

裁判所は、店舗内での行為は「業務として対価を得て行われたにすぎない」として、たとえこの風俗通いで夫婦関係が悪化したとしても、直ちに婚姻関係を害する不法行為とは言えないと判断しました。

ですが一方で、店舗外での関係については次のように判断しています。

 

Aは、単に性的欲求の処理にとどまらず被告(B)に好意を持っていたからこそ、本件店舗の他の従業員ではなく、被告との本件店舗外での肉体関係の継続を求めたものであり、被告もこれを認識し又は容易に認識できたのにAの求めに応じていたものと認められるから、被告が自らは専ら対価を得る目的でAとの肉体関係を持ったとしても、これが原告(Aの妻)とAの夫婦関係に悪影響を及ぼすだけでなく、原告との婚姻共同生活の平和を害し、原告の妻としての権利を侵害することになることを十分認識していたものと認めるのが相当である。

 

つまり、「夫がBに好意を抱いていたこと」をBも認識して応じていたことから、単なる業務上の対価関係を超えた私的な交際関係に発展していた、と判断されたのです。

裁判所は、この関係が婚姻共同生活の平和を害し、配偶者の権利を侵害する違法な不貞行為に当たると結論づけました。

 

ただし、不貞行為の主導は夫であり、B自身には恋愛感情があったわけではないこと、行為の回数が10回程度にとどまること、関係発覚後にBが謝罪文や誓約書を提出して一定の対応を取っていたことが考慮され、慰謝料額は60万円が相当であると判断されました。

(東京地方裁判所平成27年7月27日判決)

既婚者の風俗通い

以上の通り風俗通いは、その内容や頻度によっては、不貞行為に該当してしまいかねない行為です。

そもそも配偶者がいるのに、なぜ既婚者がこうしたリスクを冒してまで風俗通いをしてしまうのでしょうか。

結婚後もなぜ風俗を利用するのか

まず挙げられるのは、夫婦の性生活に関する不一致です。結婚当初は問題がなくても、年月を重ねるうちに性生活の頻度が減ったり、相手の体調や気持ちが合わなくなったりすることがあります。その結果、夫が欲求を満たせず、外部に欲求解消の場を求めてしまうことは少なくありません。

ストレスや承認欲求といった心理的な要因もあります。仕事で疲れているときや、家庭で居場所を感じられないときでも、風俗店では「お客様」として扱われ、優しく接してもらえます。そのため、風俗に行けば一時的に心が満たされるからと、その「癒やし」や「非日常の感覚」を求め、継続して利用してしまうのです。

また、社会的な要因も無視できません。職場の飲み会や接待の流れで風俗に行くことが慣習のように残っている場合もあり、本人の意思よりも「付き合い」で足を運ぶケースも見られます。経済的に余裕のある人ほど「遊びの一つ」として利用してしまう傾向もあるでしょう。

 

このように、結婚後の風俗利用には、性欲の問題だけでなく、夫婦の関係性、精神的な充足、職場環境などさまざまな事情が関わっているのです。

夫の風俗通いで離婚できる?

それでは、夫の風俗通いを理由に離婚することはできるのでしょうか。

風俗を理由に離婚するには

風俗を理由に離婚する方法ですが、主に協議や調停などの話し合いで離婚する方法と、離婚裁判によって離婚する方法があります。

話し合いの場合は、夫婦双方が離婚することに合意すれば離婚が成立するため、離婚理由を細かくは問われません。

ですが、裁判による離婚の場合は、民法に定められている離婚理由(法定離婚事由)に該当しなければ、離婚が認められないので注意が必要です(民法第770条)。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

風俗通いの場合、本記事で前述した通り、「不貞行為(民法第770条1項1号)」に該当すれば、離婚が認められる可能性があります。特に、ソープのような性交に至ることが事実上前提となっている風俗は、不貞行為として認められる可能性が高いでしょう。

ただし、性交を伴わないサービスであれば、民法上の「不貞行為」には該当しないと判断されることもあります。つまり、性的な接触があったとしても、性交類似行為にとどまる場合は、不貞とは認められにくいのが現実です。

 

ですが、たとえ不貞行為に当てはまらない場合でも、風俗通いが民法第770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断された場合には、風俗通いによる離婚が認められる可能性があるのです。

この「婚姻を継続し難い重大な事由」ですが、具体的には、「夫婦の関係がすでに破綻していて、修復が困難であると裁判所が認めた場合」をいいます。

ここで大切なのは、「風俗通いそのものが違法である、不貞行為にあたる」という判断ではなく、風俗通いという行動が、結果的に夫婦関係をどれだけ壊しているかを総合的に判断される、という点です。

たとえば、夫が家庭ではまったく妻に関心を示さず、性生活を拒絶し続ける一方で、10年以上継続して風俗に通っていたというような場合は、もはや婚姻継続が困難であると判断されることがあります。

 

風俗を理由に離婚するには

 

また、風俗による離婚が認められるようなケースでは、慰謝料の請求が認められる可能性もあります。

 

ただし、離婚を請求するにしろ慰謝料を請求するにしろ、客観的な証拠があるかどうかが非常に重要です。夫が実際に風俗店を利用していたこと、どのような行為があったのか、どの程度の頻度だったのか、夫婦関係にどれほどの影響が生じていたのか、証拠によって証明しなければなりません。

離婚や慰謝料を本気で考えるのであれば、感情だけで動くのではなく、法的に主張を裏付けられる材料を集めることが欠かせないのです。

風俗通いの証拠は何がある?

それでは、どのようなものが、不貞行為や婚姻関係破綻の証拠として使えるのでしょうか。

 

まず、もっとも分かりやすい証拠としては、風俗店を利用したことが分かる領収書やクレジットカードの利用明細があります。たとえば、「〇〇ヘルス」「〇〇ソープ」などと記載された明細があれば、特定の風俗店の利用を示す有力な証拠となります。

 

また、スマートフォンの位置情報の履歴や検索履歴、LINEやSMSのやり取り、風俗店の予約確認メールなども、利用の事実を裏づける材料になります。特定の女性と繰り返し連絡を取り合っていたり、店外で会っていた記録が残っていたりすれば、関係が継続していたことを示す証拠にもなり得ます。

 

夫が風俗店のポイントカードや会員証を所持していた場合、常連として頻繁に通っていたことを示す状況証拠になります。加えて、日記やメモ、スケジュール帳にそれらしい記録が残っていれば、他の証拠とあわせて活用できる可能性もあるでしょう。

 

自分自身でこうした証拠を集めることが難しい場合は、調査会社(探偵や興信所)に、浮気調査と調査報告書の作成を依頼するという方法もあります。調査会社が撮影した写真や尾行記録をまとめた調査報告書は、実務でも広く利用されています。

 

風俗通いの証拠は何がある?

 

離婚や慰謝料請求を現実的に進めていくには、「疑っている」だけでは不十分です。実際にどのような行動があったのか、それがどのように夫婦関係に影響を与えていたのかを示す、確かな証拠が必要です。

こうした証拠の内容や有効性は、当事者による判断では見落としてしまうこともあります。何をどう集め、どのように整理すれば離婚や慰謝料請求につなげられるのかを冷静に見極めるためにも、早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

風俗と浮気に関するQ&A

Q1.風俗は全て肉体関係を前提としていますか?

A:いいえ、風俗といってもその内容はさまざまです。ソープランドのように実質的に性交が行われることが前提とされている風俗もあれば、キャバクラやガールズバーなどの、接待や会話が中心で、性的サービス自体がない風俗もあります。

Q2.配偶者が風俗に通っていたら、離婚は認められますか?

A:離婚が認められるかどうかは、風俗通いの内容と夫婦関係への影響により判断されます。実際に性交渉があったかどうかだけではなく、繰り返し通っている、家庭を顧みていない、生活費を費やしているなどの事情があれば、「不貞行為」や「婚姻を継続し難い重大な事由」として裁判においても離婚が認められる可能性があります。

Q3.夫の風俗通いが浮気にあたるか判断するには、どんな点に注目すればよいですか?

A:判断のポイントは、まず性交の有無です。性交があれば「不貞行為」として法的に認められる可能性があります。その上で、どれくらいの頻度で通っていたのか、どの程度の期間続いていたのか、同じ店や同じ女性に継続的に通っていたか、そして夫婦関係にどのような影響があったかなど、さまざまな事情を総合的に見る必要があります。内容が曖昧だったり判断に迷ったりする場合には、なるべく早めに弁護士へ相談し、事実関係を客観的に整理することが大切です。

まとめ

本記事では、風俗と浮気の関係について、弁護士が法律的な観点から解説させていただきました。

風俗の利用が必ずしも法律上の「不貞行為」に当たるとは限りませんが、その利用頻度や行為の内容によっては、離婚請求や慰謝料請求の認められる「不貞行為」に該当する可能性があります。

夫の風俗通いに対して、離婚すべきか迷っている、あるいは法的措置を検討しているときは、ぜひ弁護士にご相談ください。今後の対応を誤らないためにも、早い段階で弁護士に相談し、ご自身の状況に合ったやり方で、適切に対応していただければと思います。

弁護士法人あおい法律事務所は、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。対面でのご相談だけでなく、電話でのご相談もお受けしておりますので、当ホームページのWeb予約フォームやお電話にて、お気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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