不倫は法律違反になる?民法上の不法行為とは
「配偶者の不倫に気付いたけど、不倫って犯罪なの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本には、不倫は犯罪ではありません。
「被害者は泣き寝入りするしかないの?」と悩まれるかもしれませんが、民事事件として損害賠償などを請求することはできます。
ここでは、不倫が犯罪にならない理由や、不倫に関する法律などについて解説していきます。
目次
不倫は犯罪?合法か違法か?
不倫は犯罪ではないため、刑法上の法律違反にはなりません。
冒頭でもお伝えしましたが、不倫は、犯罪ではありません。
なぜなら、日本の法律には、不倫を取り締まる条文や罰則規定がないからです。そのため、不倫が合法なのか、違法なのか?と問われたら、刑法上、違法であるとはいえません。
例えば、人に暴力を振るって、相手に怪我を負わせた場合は、「暴行罪」や「傷害罪」などの犯罪になります。
これらは、「刑法」という法律において、犯罪が成立する要件や罰則などが明記されています。
一方で、不倫には、そのような条文が存在しないため、不倫をしても犯罪ではなく、懲役刑や罰金系などの罪を与えることはできませんし、逮捕されることもありません。
不倫でも例外的に法律違反となり、逮捕されるケースがあります。
このように、不倫は犯罪ではありません。ただし、16歳未満の者と性交を行った場合には犯罪になる場合があります。
なぜかというと、刑法177条3項に次のように定められているからです。
要するに、16歳未満の者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合には、5歳以上年が離れている者が性交を行った場合に限ります)と性交を行った場合には、不同意性交罪に該当するからです。
不同意性交罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。
また、児童福祉法という法律でも、18歳未満の未成年者を相手とする性交又は性交に類似した行為を禁止しています。
児童福祉法の法律では、罰則規定があり、未成年者と性交を含む不倫をした場合、「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、もしくは併科」の罰則が適応されます。
以上より、不倫自体を罰する法律は基本にはなく、刑法上の違法とはいえませんが、16歳未満の未成年者に対して性交などをする行為自体が処罰の対象となっているので、そのような場合には、刑事罰を受けるおそれがあります。
不倫がだめな理由は?不倫に罰則規定はないが、民法上の不法行為や不貞行為にあたります。
不倫は犯罪にはなりませんが、決して許されることではありません。
また、不倫をされた側は、不倫によって大変傷付き、甚大な損害を被ることになります。
しかし、「不倫をした側がなぜその責任を取らないのか」と不満に思う方も多いでしょう。
では、不倫について責任を問うためには、どのような方法があるのでしょうか。
配偶者が不倫をした場合、刑法上の法律では裁くことができませんが、民事上の法律において、損害賠償を請求することができます。
不倫は、民事上の法律に違反している?
不倫が不法行為(民法709条)に該当する場合には、損害賠償請求をすることができます。
このように、民事上の責任追及をすることはできます。
不法行為とは、どのようなものか、以下で詳しく解説しましょう。
不倫が民事上の不法行為にあたるケースとは?
民法709条では、「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
不法行為とは、この故意又は過失によって、相手の権利などを侵害する行為のことをいいます。そして、不法行為をしたものは、相手に対して、その責任を負うことになります。
なお、不貞行為の場面に限定した場合の故意とは、簡単に言うと、相手が既婚者だと知っていた場合を言います。不貞の場面に限定した場合の過失とは、十分に注意していれば既婚者だと認識できたのに、不注意のために既婚者と認識できなかったことをいいます。
不法行為は、犯罪のように、罰金や懲役などの罰則を与えることはできませんが、民事上、不倫による損害を賠償する責任が生じます。
不倫が民事上の不法行為と認められた場合、不倫した側や不倫相手に損害賠償を請求することができます。
不倫について、民事上の不法行為として損害賠償を請求するための方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
不倫の損害賠償を請求するためには、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 配偶者が既婚者であることを不貞相手が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった
- 不貞について自らの自由意思で肉体関係を持っていた
民法709条の不法行為に基づく損害賠償を請求するために必要となるので注意が必要です。
次に、損害賠償を請求する手順ですが、まずは、①不倫をした証拠を集める、②不倫相手にも慰謝料を請求する場合は、不倫相手の名前や住所を特定する、③不倫した配偶者又は不倫相手と直接交渉する、もしくは弁護士を介して示談交渉する、④交渉が難しい場合は、裁判所で調停又は訴訟手続を行うことになります。
不倫について、損害賠償を請求する場合の具体的な方法や損害賠償の相場などについては、こちらに詳しくまとめていますので、参考にしてください。
不倫と浮気の境界線とは?
みなさんは、不倫と浮気の違いはどこだと思いますか?配偶者が隠れて恋人を作っている場合、不貞と浮気のどちらになるのでしょうか?
一般には、浮気は、心の浮つきを意味していて、配偶者や恋人以外の相手に恋愛感情を持つことを指します。
一方、不貞とは、どちらか一方が既婚者であり、かつ配偶者以外の相手と肉体関係を持つことを指します。
したがって、既婚者であっても、肉体関係がなければ基本的には不貞ではなく、浮気ということになります。
つまり、たとえば夫が妻以外の女性と会っていても、不倫にはならないケースがあります。
簡単にまとめますと、以下の2つの場合は不貞にならない可能性が高いでしょう。
- 性交又は性交に類似した行為がない場合
- 性交又は性交に類似した行為を強要されている場合
ここから、法律上、不倫と認められない可能性があるケースについて解説します。
法律上、不倫(=不貞行為)と認められないものがある
法律上、どういう行為が不倫(=不貞行為)となるかの境界線を紹介していきます。なお、肉体関係がないキスや抱擁といった行為も、場合によっては、不法行為になることもありますので、詳しくお知りになりたい方は弁護士に相談しましょう。
①SNSやメールでやり取りをする、二人で食事をする、二人で映画館やドライブに行く
不倫は、配偶者以外の相手と性交又は性的に類似した行為を行うことをいいます。
したがって、配偶者以外の相手に恋愛感情を抱くだけでは、不貞とはいえません。
また、配偶者以外とメールやSNSでやり取りをする、電話をする、二人で食事に行く、二人でドライブに行く、二人で映画館や水族館に行く、といった行為だけでは不貞と認定されないことが通常です。
②手をつなぐ、キスや抱擁をする
手をつなぐ行為そのものが不貞とは通常言い難いです。
もっとも、配偶者以外と手をつなぐ、キスや抱擁をするなど、前後の状況によって不貞行為があったことを推論することが可能な場合があります。
例えば、裁判例(東京地判平成17年11月15日)では、狭い一室に男女が数日間にわたって泊まっており、部屋の外に出る際には、身体を密着して手をつないで歩いていたこと等から肉体関係があったと推論しています。
他方で、別の裁判例(東京地判平成20年10月2日)では、関係者の目撃した浮気相手と一緒にいた女性がすべてYさんであって、浮気相手がYさんと手をつないでいたとしても、そのことから当然に不貞行為があったとは推論できない旨判示して、不貞行為を否定しています。
③飲酒で酔った状況で性交を行った場合
不倫が法律上不貞行為と認められるのは、自由意思で肉体関係を持った場合です。自由意思とは、相手や第三者から強制されておらず、自発的に行為を行う心理状態をいいます。
では、アルコールに酔った状態で相手と性交又は性的な類似行為をした場合は、不倫といえるのでしょうか?
結論としては、アルコールで酔っている状況であっても、既婚者と性交をした場合には、不貞といえるケースがほとんどでしょう。
なぜなら、「自由意思ではなかった」と言えるためには、事理弁識能力が全くなく、責任能力が欠如していたという状況が求められるためです。
意識がないほどに酩酊している中で、強制的に性交させられる場合は、自由意思でなかったといえるかもしれません。
しかし、単に飲酒して酔っていたからと言って、どちらかの家やホテルに行って性交するのは、多少自分にも性交する意思があったと考えられます。
そのため、アルコールの影響があったとしても、配偶者以外の相手と性交又は性的に類似する行為を行った場合、原則として不貞行為に該当します。
④風俗店の利用
配偶者が風俗を利用した場合、不貞行為といえるのでしょうか。
風俗には様々な種類があり、性的行為がない風俗を利用する場合は、法律上の不貞行為と認められないのが通常です。
他方で、何度も性的行為のある風俗に通っている場合には、法律上の不貞行為として認められる可能性があります。
配偶者の行為が浮気なのか、不倫なのか、その境界を理解するには判例などを調べる必要があります。
また、不倫を法律上の不貞行為として認めるには、証拠なども必要になりますので、一度弁護士事務所などに相談されることをおすすめします。
不倫は憲法違反になる?
結論から言うと不倫をしても憲法に違反しないと言っていいでしょう。
憲法には、以下の条文で夫婦の婚姻について触れています。
日本国憲法24条
1.「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」
2.「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。」
憲法を受けて、日本では、一夫一婦制という婚姻制度を採用しておいますが、憲法それ自体は不倫を禁じていません。
不倫は1回でもだめ?
1回だけの不倫であっても、不倫をされた側は大きなショックを受けます。しかし、その1回の不倫を理由として、慰謝料請求や離婚訴訟が認められるのでしょうか?
結論としては、たとえ配偶者の不倫が1回だけであっても、それが不貞行為として認められる場合は、慰謝料請求や離婚訴訟の事由として認められる可能性があります。
ただし、一回きりの不貞行為の場合には、慰謝料額としては比較的減額される可能性があります。
なお、不貞により離婚したい場合には、1回の不倫によって、配偶者と別居するなどの結果になったなど、不倫が婚姻関係を破綻させる原因であると認められる必要があります。
1回の不貞行為でも、配偶者が我慢をして共同生活を約半年間続けていた場合などは、離婚理由として認められないでしょう。
不倫は法律違反になる?民法上の不法行為とはに関するQ&A
不倫は法律違反になりますか?
不倫は犯罪ではありませんが、民事上は不法行為に該当しえます。
不倫が不貞行為として認められる場合は、慰謝料を請求したり、不倫した配偶者を相手方として離婚訴訟を起こすことができます。
不倫が民事上の不法行為となるには、どのような要件が必要ですか?
不倫が、民事上の不法行為として認められるためには、次の要件が必要になります。①配偶者が既婚者であることを不倫相手が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった、②不倫について自らの自由意思で肉体関係を持っていた、③不倫をしていた時期は、夫婦関係が破綻していなかった。
不倫が違法となる境界線はどこでしょうか?
不倫が違法となる境界線としては、①性交又は性交に類似した行為の有無、②性交又は性交に類似した行為を強要されているかどうか、が鍵となります。したがって、既婚者が自分の意思で配偶者以外と性交又は性交に類似した行為を行った場合は不貞行為として認められるでしょう。
配偶者の不倫がわかったら弁護士にご相談を
配偶者の不倫が民事上の不法行為として認められるかどうかは、過去の判例などと照らし合わせて考える必要があります。
特に、不倫した配偶者や不倫相手に対して慰謝料請求を行ったり、離婚訴訟を起こす場合などは、不貞行為の要件を満たすための証拠を集めたり、裁判所の手続に基づいて、法律の要件に沿った主張が必要となります。
弁護士事務所では、依頼者に代わって、すべての手続きを代理で行うことができます。
不倫された側はもちろん、不倫した側で自分の行為によって慰謝料を請求されるか不安な方なども、一度弁護士事務所に相談して、専門家からのアドバイスを受けるとよいでしょう。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。