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不倫の慰謝料請求の時効とは?3年又は20年!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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不貞慰謝料請求には「時効」があります。

そのため、時効により慰謝料請求が認められないようなことにならないように、時効期間等について確認をしておきましょう。

しかし、時効の起点や期限についてはケースによっても異なるため、きちんと調べておくことが大切です。
ここでは、不倫の慰謝料を請求する場合の時効の考え方や留意点などについて解説していきます。

目次

不倫で慰謝料を請求する場合の時効の期限はいつまで?

不倫で慰謝料を請求する場合の時効の期限

配偶者の不倫について慰謝料を請求するときに、時効や除斥期間があることはご存知でしょうか?

「時効」とは、権利を行使することができる期間のことであり、一定の期間を過ぎると、その権利が消滅してしまいます。

一方、「除斥期間」とは、時効と同じく法律で定められた権利を行使できる期間のことであり、一定期間を過ぎると権利が消滅します。

時効との違いの一つは、時効は期間の延長ができることに対し、除斥期間は延長ができず、定められた期間が過ぎれば当然に権利が消滅することです。

不倫の慰謝料請求にも以下のように時効及び除斥期間が定められています。

 

  • 時効:3年
  • 除斥期間:20年

 

時効や除斥期間を超えてしまうと、不倫の慰謝料を請求する権利が消滅してしまうため、注意しましょう。
(参考法文)

民法第724条

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

① 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき

② 不法行為の時から二十年間行使しないとき

慰謝料には種類あり、それぞれで時効の起点が異なる

不倫の慰謝料請求の時効は、原則として3年です。

それでは、何を起点として時効を計算すればよいのでしょうか?

離婚の慰謝料を請求する場合と不貞行為について請求する場合で時効が異なる

不倫の慰謝料を請求する場合は、①離婚自体について慰謝料を請求する、②不貞行為について慰謝料を請求する場合の2パターンが存在し、それぞれで時効の起点が異なります。

まず、離婚について慰謝料を請求する場合について解説します。

配偶者の不貞行為(不倫相手と肉体関係があるもの)によって夫婦関係が破綻し離婚する場合、不倫された側は、不貞行為と離婚によって被る精神的苦痛を併せた形で慰謝料を請求することができます。

離婚について慰謝料を請求する場合の時効の起点と期間は以下のとおりです。

 

  • 時効の起点:離婚した日
  • 時効:離婚した日から3年

ただし、注意しておきたい点として、不倫相手に対しては離婚についての慰謝料を請求することはできず、不貞行為についての慰謝料のみを請求することになります。

有名な最高裁の判決で、不倫が発覚してから、約4年が経過した後に夫婦が別居して離婚した事例があります。

この事案では、夫が妻の不倫相手の男性に対して離婚の慰謝料を請求したのですが、最高裁は離婚するかは夫婦の自由であるため、離婚に被る精神的損害についてまで不倫相手に請求することはできないとしました。

したがって、不倫相手に慰謝料を請求する場合は、離婚ではなく、不貞行為についての慰謝料を請求することになります。

次に、不貞行為について慰謝料を請求する場合について解説します。

配偶者の不貞行為が発覚したからといって必ずしも夫婦が離婚するとは限りません。配偶者が不倫をしてもそのまま婚姻生活を継続することも少なくありません。

その場合も配偶者や不倫相手に慰謝料を請求することはできますが、離婚はしていないので、不貞行為についてのみ慰謝料を請求することになります。

不貞行為による精神的苦痛に対して慰謝料を請求する場合の時効の起点と期間は以下のとおりです。

 

  • 時効の起点:不貞行為があった日又は不倫相手を知った日
  • 時効:不貞行為があった日又は不倫相手を知った日から3年

不倫した配偶者に慰謝料を請求する場合は、不貞行為があった日から3年以内が時効となります。

ただし、不貞をした配偶者に対して不貞慰謝料を請求する場合には、夫婦の婚姻期間中は慰謝料請求権の時効が完成しません。

なぜなら、民法159条で「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定められているからです。

つまり、不貞行為があった日から3年を過ぎた場合でも、夫婦が離婚をするなどして婚姻を解消してから6か月が経過するまでは、時効消滅することがありません。

一方で、不倫相手に対しては民法159条のような時効の完成猶予事由に関する規定はないため、不倫相手に不貞行為についての慰謝料を請求する場合は、3年間の時効に注意しなければなりません。

なお、「不倫相手を知った日」というのは、不倫相手の住所及び氏名を知った時点のことをいいます。

したがって、不倫相手の住所や名前がわかるまで時効のカウントは開始しません。

以上のように、不倫の慰謝料を請求するときの時効については、慰謝料の種類や請求相手によって期間が変わっています。どの時効に該当するのか判断が難しい場合は、一度弁護士事務所などにご相談されてみることをおすすめします。

時効の期間内に慰謝料を請求できないかもしれない!

不倫の慰謝料の時効は更新することができる

配偶者の不倫について慰謝料を請求しようと思ったけど、時効までに時間がない!という場合に、時効を引き延ばすことはできるのでしょうか?

結論として、不倫の慰謝料請求の時効は更新することが可能です。

時効の更新とは、時効の期間を一旦リセットし、更新した日を1日目として改めて起算する方法です。

これは、不倫によって被害を受けた側の配偶者が、不倫の慰謝料を請求する場合に不利益を被らないように作られた法律制度です。

時効を更新する方法には、以下のようなものがあります。

 

  • 内容証明郵便により慰謝料を請求する
  • 相手に不倫の慰謝料について債務があることを承認させる
  • 裁判によって慰謝料を請求する
  • 強制執行や仮差し押さえ

ここから詳しく解説します。

内容証明郵便により慰謝料を催告する方法

不倫の慰謝料について、内容証明郵便などによって慰謝料を催告することができる場合は、催告があった日から6か月間、時効を更新することができます。

内容証明郵便とは、郵便局が内容文書について証明する制度のことです。

郵便局と自分の手元に相手に送った文書と全く同じ内容の写しが控えられるため、郵便物の「日時」「依頼元・宛先」「差し出された文章の記載内容」について客観的に証明することができます。この内容証明郵便を使って不倫した配偶者や不倫相手に対し慰謝料を催告することで、時効を6か月間延長させることができます。もっとも、文書の内容が真実であることを証明するものではないので注意して下さい。

ただし、内容証明による催告は繰り返し行うことができますが、時効の更新は1回限りとなっていますので、注意してください。

参考法文)

民法第150条

①催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない

②催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない

 相手に不倫の慰謝料について債務があることを承認させる方法

次に、不倫した配偶者や不倫相手に慰謝料の債務があることを認めさせることで、その時点を起点として新たに時効が3年間時効の完成が猶予されます。

債務を認めさせる方法に決まりはありませんが、口約束では後からトラブルに発展してしまう恐れがあります。きちんと書面によって不倫の慰謝料に対する債務について取り決めておき、確実な証拠を残しておきましょう。

不倫の慰謝料に対する債務の承認を取り決める場合、次の内容を含む書面を作るとよいでしょう。

 

  • 不貞行為を認めること
  • 不倫について慰謝料を支払う債務があることを認めること
  • 不倫の慰謝料を支払うことを約束すること
  • 上記内容を取り決めた日付
  • 署名・押印

 

(参考法文)

民法第152条

①時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める

②前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行動能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない

裁判によって慰謝料を請求する方法

時効の完成が猶予されるものものとして、不倫を原因とする慰謝料請求の裁判を起こすという方法があります。

裁判を起こしても慰謝料請求がすぐに認められるわけではありません。

裁判で判決が出るまで、平均でも半年から1年半程度掛かることが多いでしょう。その間に時効の期間が満了してしまっては、裁判を行う意味がありません。

そこで、法律では、裁判によって不倫の慰謝料を請求する場合、裁判を起こした時点でカウントがリセットされることになっています。

そして、裁判で慰謝料の請求が認められた場合、新たに時効がスタートし、新しい時効期間は10年となります。

内容証明書や催告を行っても配偶者や不倫相手が慰謝料を支払わない場合には、裁判を起こすことも選択肢の一つでしょう。

(参考法文)

民法第147条

① 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確 定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完結しない裁判上の請求支払催促民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法(昭和26年法律第222号)もしくは家事事件手続法⦅平成23年法律第52号⦆による調停破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

②前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各項に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める

民法第169条

①確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって新たに確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。

②前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債務については、適用しない

強制執行や仮差し押さえなどを行う方法

最後に、不倫の慰謝料請求の時効の完成が猶予される方法として、強制執行や差押えが考えられます。

裁判や調停で不倫の慰謝料が認められた場合、その内容は調書にまとめられ、法的効力を有することになります。

また、配偶者や不倫相手と慰謝料の支払いについて話し合った内容を公正証書にまとめた場合も法的効果を有します。この場合、その後不倫の慰謝料の支払いが滞るなどした場合は、給与などの財産について、強制執行や仮差押えなどを行うことができます。

不倫の慰謝料を支払ってもらえず、強制執行などを行った場合には、その手続きが終了したときから時効が新たにカウントされることになります。

このように、不倫の慰謝料請求について時効が差し迫っている場合には、時効の更新ができないか弁護士などに相談して確認してみることをおすすめします。

時効のほかに注意しておきたいのが20年間の除斥期間です

不貞行為があった日から20年が経過すると慰謝料請求はできません

不倫の慰謝料請求には、時効のほかに、20年の除斥期間があります。

例えば、不倫相手に対して不貞行為の慰謝料請求を行う場合、不倫相手を知った日を起点として3年が時効となります。

一方で、不倫相手のことを知らない場合、時効はカウントされませんが、不貞行為があった日から20年が経過すると、不倫の慰謝料請求の権利が消滅します。これを除斥期間といいます。

配偶者の不倫が発覚して、不倫相手に対しても不貞行為の慰謝料を請求したい場合には、できるだけ早く不倫相手を特定して時効や除斥期間に到達する前に手続きを終えることをおすすめします。

なお、時効が更新された場合であっても、除斥期間には影響しません。

したがって、時効の更新を行っても不貞行為があった日から20年が経過すると、除斥期間を超えて不倫の慰謝料請求の権利が消滅してしまうので、注意してください。

不倫の慰謝料請求の時効とは?3年又は20年!に関するQ&A

不倫の慰謝料請求の時効とは?

不倫の慰謝料を離婚の精神的苦痛として請求する場合、時効は、離婚した日から3年となります。

一方、離婚とは別に、不貞行為のみの慰謝料を請求する場合、不貞行為があった日又は不倫相手を知った日から3年が時効となります。不倫相手を知った日とは、不倫相手の氏名及び住所を知った日のことです。

不倫の慰謝料請求の時効を延長・更新する方法とは?

時効を更新する方法としては、①内容証明郵便により慰謝料を催告する、②相手に不倫の慰謝料について債務があることを承認させる、③裁判によって慰謝料を請求する、④強制執行や仮差押えなどがあります。

不倫の慰謝料請求の除斥期間とは?

不倫相手に対して不倫の慰謝料請求を行う場合、不倫相手を知った日を起点として3年が時効となります。

一方で、不倫相手のことを知らない場合、時効はカウントされませんが、不貞行為があった日から20年が経過すると、不倫の慰謝料請求の権利が消滅します。これを除斥期間といいます。

不倫の慰謝料を請求するときは、弁護士にご相談を!

不倫について配偶者や不倫相手に慰謝料を請求する場合は時効や除斥期間の理解が欠かせません。

しかし、不倫の慰謝料を請求する方法には、当事者間の話し合いから弁護士の示談交渉や裁判所の裁判手続など様々あり、手続きには相当な時間と手間が掛かってしまいます。

その間に不倫の慰謝料請求権が時効になり消滅することもあり得ますから、弁護士事務所に一度ご相談されることをおすすめします。

弁護士に慰謝料請求を依頼する場合は、以下のようなメリットがあります。

弁護士に依頼するメリット①:不貞行為の慰謝料請求が可能か判断することができる

不貞行為の慰謝料請求が認められるためには、法律の条件を満たす必要があります。

そのため、どの事案で慰謝料請求が可能であるのか判断するためには、法律の知識が不可欠となっています。

弁護士に相談することで、まずは自分の場合に慰謝料を請求することができるかどうかを確認することができるのでおすすめです。

弁護士に依頼するメリット②:不貞行為の慰謝料を請求するために有利な証拠などを集めることができる。

配偶者や不倫相手が不貞行為を認めない場合や、裁判などで不倫の慰謝料を請求する場合には、必ず不倫の証拠が必要になります。

特に不貞行為を立証するには、配偶者と不倫相手が肉体関係にあることを証明しなければなりません。

客観性の高い証拠を集めるためには、プロの弁護士に任せることが一番です。

弁護士に依頼するメリット③慰謝料請求の交渉や離婚手続、裁判手続などをすべて任せることができる

不倫の慰謝料を請求するためには、不倫の証拠を集めたり、配偶者や不倫相手と交渉する必要があります。

弁護士に依頼すると、弁護士が依頼主の代わりにすべての手続を行ってくれるため、依頼主は準備の手間が省けるほか、不倫相手に関わらずに済むため、気持ちの面でもとても負担が減ることでしょう。

不倫の慰謝料請求を行う場合は、支払い額や支払い方法、強制執行が可能な内容などにまとめておく必要があります。

時効や除斥期間を踏まえてながらそのような話し合いを行うのはとても大変です。

弁護士に任せることで、細かな条件のすり合わせも可能となり、法的に有効な内容で取りまとめることができるため、安心して任せることができます。

また、裁判で慰謝料を請求する場合は、裁判手続に則った書面の作成や立証の手順があります。自分ひとりでは難しいことでも、弁護士に任せることで、自分の優位な主張が可能となります。

さらに、不倫の慰謝料請求の段階で弁護士に手続きを依頼しておくと、事情を知っている弁護士が、別居や離婚についても配偶者と交渉を行ってくれたり、離婚調停や離婚裁判で手続を代理してもらうことができます。

このように、弁護士事務所では、依頼者に代わって、弁護士がすべての手続きを代理で行うことができます。

不倫をされた側はもちろん、不倫をした側で自分の行為によって慰謝料を請求されるか不安な方なども、一度弁護士事務所に相談して、弁護士からのアドバイスを受けるとよいでしょう。

不倫による慰謝料請求をお考えの方は、一度弁護士へご相談ください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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