• 不倫慰謝料

夫や妻に不倫されたら?離婚や慰謝料請求の方法を解説します!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫や妻の不倫が発覚した場合には、離婚を考える方も少なくありません。

そのようなときには、離婚ができうることはもちろん、配偶者や不倫相手に対して、不倫の慰謝料も請求することができます。

一方で、不倫した側も、これを機に離婚したいと考えていることがありますが、不倫をした側からの離婚を求めは許されるのでしょうか?

ここでは、不倫がきっかけで離婚や慰謝料請求を考えている人に、慰謝料請求の根拠や具体的な方法などについて解説していきます。

目次

不倫の慰謝料とは?法律の基準について

不倫をした配偶者や不倫相手に対して、慰謝料を請求できることが認められています。

不貞慰謝料とは、「不貞行為自体を理由とする慰謝料」のことを言います。また、不貞を理由に離婚した場合には、離婚慰謝料と言います。

慰謝料額については、不貞を理由に離婚した場合の方が高額となります。

慰謝料が認められる具体的な根拠について解説させていただきます。

不倫の慰謝料請求が認められる根拠

不貞の慰謝料を請求できる根拠は、民法709条にあります。

民法709条には、「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。

判例でも、不貞相手に対して他方配偶者が不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料の請求ができると認められています(大判明治36年10月1日、最判昭和46年7月23日など)。

また、判例では、「故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰藉すべき義務がある」と判示しています。

このように判例は、不貞関係が自然の愛情によって生じたかいずれかが誘惑して不貞関係に至ったかによらず、民法709条の要件を満たす限り、不貞の慰謝料を請求できると述べています。

 

不倫を不法行為として慰謝料請求する場合の基準や条件とは?

では、不法行為として、不倫の慰謝料請求が認められるためには、どのような条件が必要になるのでしょうか?

夫の不倫によって、慰謝料を請求するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 夫が既婚者であることを不倫相手の女性が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった
  2. 肉体関係や性交類似行為などがあった
  3. 不倫をしていた時期は、夫婦関係が破綻していなかった

不倫の慰謝料請求が認められる条件①夫が既婚者であることを不倫相手の女性が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった

不法行為とは、故意又は過失によって、相手の権利などを侵害する行為のことです。

「故意」や「過失」は法律用語ですので、普段はあまり聞き馴染みがないかもしれません。

まず、「故意」とは自己の行為により一定の結果が発生すべきことを認識しながら、その結果発生を認容して、その行為をあえてするという心理状態をいいます。

具体的には、不貞行為時において相手が既婚者であると知りながら、あえて肉体関係に及んだ場合は、故意が認められる可能性が高いです。

一方で、婚活会場やマッチングアプリなどで知り合い、互いの素性を知らないまま、相手が既婚者であると気付く余地のない状態で肉体関係を持った場合や、相手に聞いたところ独身であるなどと嘘を吐かれて肉体関係を持った場合などは、故意と認められない可能性があります。

次に、「過失」とは、自己の行為により一定の結果が発生すべきことを認識すべきであるのに、不注意のためその結果の発生を認識しないでその行為をするという心理状態をいいます。

具体的には、相手が既婚者であることを知ろうと思えば知れたのに、不注意で相手が既婚者だと分からずに不倫相手の女性が肉体関係を持った場合、過失として認められて、不倫による慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。

不倫の慰謝料請求が認められる条件②肉体関係や性交類似行為などがあった

夫の不倫行為による慰謝料請求が認められる典型的な例は、不貞行為、つまり、肉体関係を持った場合です。

もっとも、それ以外にも、性交類似行為、同棲などのほか、夫婦間の婚姻関係を破綻させる可能性のある異性との交流も不法行為に該当する可能性があるといわれています。

裁判例(東京地判平成20年12月5日)では、不貞相手が配偶者のある者との間で婚姻を約束して交際し、その配偶者のある者に対し、他方配偶者との別居及び離婚を要求し、キスしたことが認められた事案で、「これらの事実は、少なくとも…離婚原因となる民法770条1項5号の『婚姻を継続し難い重大な事由』の発生に加担したものということができ、…不法行為を構成するというべきである。」とされています。

どのようなケースで不倫の慰謝料請求が認められるかは判断が難しい場合がありますので、夫の不倫行為で慰謝料を請求することができるのか迷われる場合は、一度弁護士事務所にご相談されることをおすすめします。

不倫の慰謝料請求が認められる条件③不倫をしていた時期は、夫婦関係が破綻していなかった

肉体関係などがあったとしても、慰謝料請求を免れることができる場合があります。

判例によると、「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。」とされています。その理由として、判例は、不貞行為が不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するという行為ということができるからであって、婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、このような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからと述べています。

つまり、肉体関係を持った時点において、夫婦の婚姻関係が既に破綻していたときは、特段の事情がない限り、不法行為が成立しないと判例は述べています。

夫婦の婚姻関係が既に破綻していた場合というのは、具体的には、夫が不倫行為をしていた当時、夫婦が別居していている場合や、すでに離婚を視野にして夫婦で話し合いが行われていたり、離婚の調停などが申し立てられていた場合などだといえるでしょう。

そのため、上記のとおり、夫婦が別居している間に不貞行為をしたとしても、原則として慰謝料を支払わなくてもよいことになります。

不倫行為の慰謝料請求が認められた場合、どのくらいのお金がもらえるの?

ところで、夫の不倫行為による慰謝料請求が認められる場合に、どのくらいのお金がもらえるのでしょうか?

不貞により、離婚した場合の慰謝料請求の場合には、200万円から300万円ほどが相場と言われています。

もらえる金額には大きな幅がありますが、不倫発覚後に別居や離婚をしたかどうかによって、相場の幅も大きく変わります。

また、過去の判例などから、慰謝料請求の相場を増減する要素がわかりますので、詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。

不倫慰謝料の相場

夫に不倫されたら?離婚と一緒に不倫の慰謝料を請求することができます。

配偶者の不倫行為が1度でも発覚すると、その配偶者を信用できなくなり、離婚を考えてしまうのも仕方ありません。

不倫を原因として離婚する場合は、同時に不倫の慰謝料についても請求することができます。

では、具体的にどのようにして、不倫した配偶者に離婚や慰謝料請求の話を進めるのでしょうか?

離婚と同時に不倫の慰謝料を請求するためには、以下のような手段を取ることができます。

 

  • 当事者間で話し合う
  • 弁護士に依頼して、示談交渉を行う
  • 裁判所で調停又は訴訟を提訴する

 

以下は、それぞれの方法について解説します。

当事者間の話し合いで離婚や慰謝料について請求する

まずは、当事者同士の話し合いによって離婚や慰謝料について請求する方法です。

夫婦が離婚する場合、日本では夫婦が話し合いで合意すれば協議離婚をすることができます。

このときに、離婚の原因として配偶者の不倫を訴えることで、離婚と一緒に不倫についても慰謝料を請求することができます。

ただし、夫の不倫を訴える前に、まずは冷静に不倫行為の事実を確認する必要があるでしょう。

夫が不倫行為を認めている場合は、話し合いも比較的スムーズに進みやすいですが、夫が不倫を否認する場合は、話し合いが難航する可能性が高いです。

夫が不倫を否認する可能性も踏まえて、事前に不倫の証拠を準備しておくとよいでしょう。

また、離婚は、協議離婚書に必要事項を記入して役所に提出し、役所がこれを受理することで法的にも離婚したことが認められます。

一方で、不倫の慰謝料請求については、夫や不倫相手の女性が支払ってくれさえすれば、わざわざ書面にまとめる必要はないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この点、口約束では後からいくらでも慰謝料請求の条件を覆される可能性がありますので、口頭での約束にとどめることはおすすめできません。

不倫の慰謝料請求について話し合う際には、会話の録音をしたり、約束事項を書面にまとめるなどして、客観的な証拠を残しておきましょう。

慰謝料請求の条件を取りまとめる場合には、以下の内容を記載するとよいでしょう。

 

  • 不倫行為を認めること
  • 不倫の慰謝料として総額〇円を支払う
  • 慰謝料の支払い方法(一括か・分割か)
  • 慰謝料の支払い期限・支払い期間(〇年〇月〇日までに支払う/〇年〇月~〇年〇月の期間、毎月〇日限りに支払う)
  • 二度と不貞相手と接触しないこと
  • 合意が成立した日時
  • 当事者の氏名・住所

もっとも、合意書面の内容によっては、適切に支払を求められなくなる可能性があるため、注意が必要です。

話し合いの結果、不倫した夫と離婚しない場合は、約束事を作っておく

一方で、不倫が発覚しても、反省した態度や子供のことを考えて、離婚しないで婚姻生活を続けるようなケースもあるでしょう。

今後の夫婦生活のことも考えて、離婚しない場合でも、夫が不倫行為を繰り返さないために、いくつか約束事を作っておくことをおすすめします。

約束事は必ず書面などにまとめ、約束を破った場合のペナルティを作っておくとよいでしょう。

離婚しない場合のペナルティー付きの約束の例としては、

 

  • 夫は不倫相手の女性の連絡先、SNSの繋がりなどをすべて消去すること
  • 今後一切、不倫相手の女性と接触しないこと
  • 妻が要求した場合、夫は自身の携帯電話を妻に預けること
  • 離婚時の慰謝料は〇〇〇万円とすること

などです。

離婚しない場合は、今後の婚姻生活を安定させるために、きちんと約束事を作りましょう。

どのような約束にするかは、夫の性格や経済状況などにもよりますし、過大な請求をした場合や特に身分行為に関する合意については内容によっては無効となるリスクがあります。書面の内容に迷ったり、書面に法的な拘束力を付したい場合など、離婚しない場合の約束事で不安があるときには、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

弁護士に依頼して離婚や慰謝料について示談交渉を行う

配偶者が不倫を認めないなどして話し合いが難航する場合は、弁護士に依頼して離婚や不倫の慰謝料について示談交渉を行ってもらう方法があります。

弁護士は、プロの法律家ですので、法的に有効な証拠の集め方や離婚や不倫の慰謝料を請求できるケースかどうか、不倫の慰謝料の相場などについて判断を任せることができますし、依頼人の代わりにすべての示談交渉を行ってくれます。

弁護士の示談交渉の方法としては、まず内容証明郵便を利用して、弁護士から夫に対し離婚と慰謝料請求に関する通知書を送付します。

次に、相手からの返答を踏まえて、離婚、親権や養育費、慰謝料の請求金額やそのほかの条件について交渉していきます。

内容証明郵便とは、郵便局が内容文書の存在についてを証明してくれるサービスのことです。

内容証明郵便を利用すると、相手方に送った文書内容の存在を証明することができます。そのため、配偶者から「離婚や慰謝料請求の話なんて聞いていない!」と言われても、反論することができます。

弁護士による示談交渉によって、離婚や不倫の慰謝料請求に合意した場合は、その内容に基づいて弁護士が合意書を作成します。

公正証書とする場合は、夫や不倫相手の女性が慰謝料の支払いを怠った場合に強制執行をすることも可能になります。

さらに、不倫相手の女性についても、不倫相手の女性の情報がわからない場合などに、弁護士は職権によって「戸籍や住民票の職務上請求」や「弁護士会照会」という方法により不倫相手の連絡先を調べられる可能性があります。

また、弁護士に示談交渉を任せれば、妻は不倫相手と直接関わる必要はないので、精神的にも負担が減ることでしょう。

どのような内容で条件をまとめるのかは、ご相談者様のご希望をもとに弁護士が考えてくれます。

離婚や慰謝料請求の問題について一緒に解決することができますので、交渉の手間が省けるだけでなく、一貫して味方をしてくれます。

配偶者の不倫が発覚して動揺もある中で、弁護士にすべての示談交渉を任せられるので、非常におすすめです。

裁判所で離婚調停を申し立てる方法

弁護士による示談交渉を行ってもなお話し合いがまとまらない場合、裁判所で調停又は裁判を起こすことになります。

離婚と同時に慰謝料を請求したい場合は、まずは家庭裁判所で夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てることになります。

離婚調停では、離婚と同時に親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料請求などについても細かく内容を話し合うことができます。

調停を申し立てるときには、まず裁判所に対して必要書類を提出します。

必要書類には、申立ての趣旨や親権、養育費、慰謝料請求などについての希望条件を記載することになります。

提出した書類は、裁判官や調停委員によって、夫婦双方がどのような主張を行っているのかを確認し、その後の調停進行に反映されることになります。

したがって、配偶者の不倫行為が原因で離婚したいと考えていること、離婚と同時に慰謝料を請求したいことをしっかりと記載しておきましょう。

また、調停は、裁判官と二人の調停委員で構成された調停委員会が、夫婦の話し合いの仲裁を行います。

調停はそれぞれの条件で合意することができれば、離婚が成立しますが、一方が条件に応じない場合は話し合いが難航します。

不倫の慰謝料についても、配偶者が不倫を認めない場合は、話し合いが平行線になってしまうため、事前に不倫の証拠を準備しておきましょう。

そして、調停が成立すれば、調停調書が作成されます。調停調書には、夫婦が離婚することや、不倫の慰謝料の総額や支払い条件などについてまとめて記載されます。

調停調書に記載された内容は法的な拘束力が生じるため、不倫の慰謝料の支払いが滞った場合には、給与の差し押さえなどの強制執行が可能となります。

裁判所の調停手続は、弁護士に依頼しなくても一人で行うことができますが、法律の知識があるほうが、優位な主張を行うことができますので、一度は弁護士に相談しておくとよいでしょう。

特に不倫の慰謝料を請求する場合は、調停で有用なレベルの証拠を集めたり、過去の判例などから適切な慰謝料請求の相場を把握する必要がありますので、このような場合は弁護士に代理人を依頼することがよいでしょう。

離婚や不倫の慰謝料請求について話し合いが難航する場合は、調停は不成立となり、必要に応じて、裁判を提起することになります。

裁判所で離婚訴訟を提起する方法

調停が不成立となった場合、裁判所で離婚訴訟を提起することができます。

離婚裁判では、調停で話し合った内容などもある程度引き継がれますが、より厳密に法律の条文に沿った審理が行われます。

そのため、裁判で離婚するためには、民法の離婚事由を満たす必要があります。

不貞は、民法上の離婚事由として挙げられていますので、配偶者の不倫が不貞行為として認められる場合は、離婚と不倫の慰謝料請求が同時に認められる可能性が高いと考えられます。

ただし、不倫が不貞行為として認められるためには、その証拠が必要となります。

不貞行為の証拠としては、以下のようなものがあります。

 

  • ホテルや不倫相手の家に出入りしている写真や動画(短時間の滞在では肉体関係があったと認められないケースもあります。ホテルに入った時間と出て行った時間を必ず記録しましょう)
  • ホテルの領収書やクレジットカードの利用明細書
  • 配偶者と不倫相手のやり取りの記録(肉体関係をほのめかすようなやり取り、不貞行為を推察できる写真や動画など)
  • 不倫相手との肉体関係を認める音声や動画、LINEやSNSなどの記録 など

これらの証拠をもとに、配偶者が不貞行為を行っていたことを主張して不貞行為があったと認められる場合には、不貞行為による離婚や慰謝料請求が認められるでしょう。

裁判の終結方法としては、裁判官によって離婚と不倫の慰謝料の請求を認める旨の判決がでるか、裁判の途中で当事者双方が離婚と慰謝料を支払うことに合意して和解する方法があります。

裁判で判決が出る場合には、判決文が作成されるため、もし不倫の慰謝料の支払いが滞った場合には、強制執行が可能となります。

裁判で離婚や不倫の慰謝料を勝ち取るためには、法律の知識を基に上手に主張書面を作成したり、不倫の証拠を裁判所に提出する必要がありますので、ほとんどのケースで弁護士が依頼人の代わりに手続きを行っています。

また、調停で話し合っていた内容も踏まえて裁判手続は行われるので、調停と同じ弁護士に依頼することで、スムーズに手続きを行うことができるでしょう。

不倫した側が離婚したい場合、裁判では不利になる?

不倫した配偶者が他方配偶者と離婚をしたい場合は、どのような方法が取れるのでしょうか?

不倫した側が離婚を求める場合でも、夫婦のどちらも離婚することに合意してれば、離婚が可能です。

ただし、他方配偶者が離婚に応じない場合は、調停離婚や離婚裁判を行う必要があります。

この場合、不倫した側は「有責配偶者」となるため、離婚が認められないケースが多いので注意しましょう。

有責配偶者でも調停や裁判で離婚できる可能性がある

有責配偶者とは、離婚事由について専ら責任を負う配偶者のことです。

裁判では、離婚事由といって、離婚が認められる原因が定められています。そして、この離婚事由の原因を行った側が、有責配偶者となります。

そのため、配偶者が不倫をして夫婦関係が破綻した場合、その配偶者は有責配偶者となります。

判例によると、原則として、裁判では、有責配偶者からの離婚請求は認められません。

なぜなら、有責配偶者の言動によって相手に精神的な苦痛を与え、その上相手が望んでいない離婚を認めるというのは、信義に反すると考えられるためです。

したがって、不倫した配偶者から離婚訴訟を提訴しても、他方配偶者が離婚を拒んでいる場合には、離婚が認められない可能性が高いと考えられます。

一方で、離婚調停や裁判の和解手続であれば、相手が条件に合意すれば離婚できる可能性があります。

不倫した配偶者がどうしても離婚したい場合は、他方配偶者が納得できるような離婚条件を提示して、合意に持ち込めるかどうかが鍵となるでしょう。

不倫した側から離婚を求める場合には、弁護士などに相談して、どのような解決方法があるかプロのアドバイスをもらうことをおすすめします。

不倫相手の女性に損害賠償を請求することはできる?

不倫は共同不法行為にあたるため、不倫相手の女性に対しても損害賠償を請求することができる

配偶者の不倫が発覚した場合、不倫相手に対して損害賠償を請求することはできるのでしょうか?

結論として、不倫相手にも損害賠償を請求することは可能です。

不倫は1人でできるものではありません。

不倫は、「共同不法行為」といって、不倫相手がいなければ成立しない行為です。

そのため、配偶者と不倫相手は連帯して慰謝料の全額を支払う義務を負い、請求する側はどちらに対しても慰謝料を求めることができます。

ただし、配偶者と不倫相手のそれぞれから全額を受け取ることはできません。

ただし、注意しなければいけないこととして、慰謝料は二重取りはできません。

つまり、夫と不倫相手の女性が共同して慰謝料の合計金額を支払ったり、どちらか一方が全額を支払うことは認められますが、夫と不倫相手の女性の双方に全額を請求して、それぞれから全額を支払ってもらうことはできません。

そのため、夫と不倫相手の女性のどちらにも慰謝料を請求する場合と、どちらか一方に慰謝料を請求する場合、どちらも慰謝料の総額は同じになります。

例えば、不倫に対する慰謝料の額が200万円と認められた場合、夫と不倫相手の女性のそれぞれに200万円支払うことを請求できます。

この場合、夫と不倫相手の女性が分担して合計200万円を支払うか、どちらか一方が200万円を支払うことになります。

どちらかが200万円払った場合には、それ以上受け取ることはできません。

2人がどのような割合で負担するかは別途問題となりますが、合計額はあくまで200万円ということです。

不倫相手の女性だけに慰謝料を請求した場合でも、配偶者が支払いを肩代わりするケースもある

また、例えば不倫相手の女性だけに慰謝料を請求した場合でも、不倫相手が夫に相談して、不倫相手女性の代わりに夫が慰謝料を支払っているケースもあります。

せっかく不倫相手の女性に請求したのに夫が支払ってしまっては、気持ちも収まらないでしょう。

不倫相手の女性だけに支払ってほしいときは、夫に対して不貞慰謝料の免除をするか、不倫相手の女性のみ不倫の責任を果たすように援助しないよう念押しして伝えるとよいでしょう。

不倫相手への慰謝料請求が認められないケースもあるため、要注意

一方で、不倫相手の女性に慰謝料を請求しようとして認められないケースがあります。

慰謝料を請求する前に事前に確認しておきましょう。

すでに夫から不倫に対して慰謝料を受け取っている場合

不倫行為が発覚したことで、先に配偶者に対し慰謝料を請求し、すでに配偶者から慰謝料が支払われている場合は、不倫相手から重ねて慰謝料を請求することはできません。

これは先程説明した慰謝料の二重請求となります。

特に離婚する際には、離婚に伴い夫に対して先に慰謝料を請求していることも多いでしょう。夫から受け取った後に不倫相手の女性に請求しようとしても認められないため、夫との離婚を考えている場合は留意してください。

慰謝料請求の時効が経過してしまった場合

慰謝料請求を行う場合は民事上の時効があります。

不倫に対する慰謝料を請求する場合、不倫の事実及び不倫相手を知ったときから3年以内に請求する必要があります。

時効期間が経過すると、不貞慰謝料請求できない場合がありますので、留意してください。

一方で、時効期間内であれば、配偶者と離婚した後でも配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求することは可能です。

ただし、離婚後は元夫や不倫相手の女性と連絡が取れない状況であったり、証拠がなかなか集められないことがあります。

離婚後に元夫と音信不通になって時効期間内に慰謝料が請求できない事態にならないように、離婚する前から不倫の証拠などを準備しておくとよいでしょう。

また、離婚後でも弁護士であれば不倫相手の女性の連絡先などを調べられるケースもあります。

時効内に請求できるか不安なときには、弁護士事務所に一度相談してみてはいかがでしょうか。

不倫相手の女性に不倫の慰謝料を請求する場合は、民事訴訟を検討することになります

不倫相手の女性に不倫の慰謝料を請求したい場合は、民事訴訟を検討する必要があります。

不倫の慰謝料請求は、民法上の損害賠償請求になりますので、慰謝料が140万円以下の場合は簡易裁判所に、慰謝料が140万円を超える場合は地方裁判所に申し立てをします。

裁判で不倫の損害賠償が認められるためには、不倫が民法上の不法行為又は不貞行為であることを法律に沿って立証する必要があり、そのための証拠が不可欠です。

写真や動画などの客観性のある強力な証拠があれば、裁判や調停で有利な条件で交渉を進めることができますので、一度弁護士に相談するとよいでしょう。

夫や妻に不倫されたら?離婚や慰謝料の求め方に関するQ&A

不倫の慰謝料請求が認められる条件とは?

不倫の慰謝料請求が認められるのは、不倫が民法上の不法行為にあたる場合です。民法上の要件としては、①夫が既婚者であることを不倫相手の女性が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であったこと、②不貞行為をしていたこと、③不倫時に、夫婦関係が破綻していなかったことを満たす必要があり、これらに該当する場合は不倫の慰謝料請求が認められます。

不倫した夫と離婚する場合に不倫の慰謝料を請求することができますか?

夫の不倫行為を原因として離婚する場合は、同時に不倫の慰謝料についても請求することができます。

離婚と同時に不倫の慰謝料を請求する方法としては、①当事者間で話し合う、②弁護士に依頼して、③示談交渉を行う、④裁判所で調停又は訴訟を提訴するなどが考えられます。

夫の不倫が不貞行為として認められる場合は、離婚事由に該当するため、調停や裁判で離婚が認められる可能性が高いでしょう。

不倫した夫から離婚を求めることはできますか?

不倫した側が離婚を求める場合でも、夫婦双方が離婚することに合意すれば、離婚が可能です。

しかし、相手が離婚に応じない場合は、調停や裁判を行うことになります。

この場合、不倫した側は有責配偶者となるため、裁判で離婚することは困難でしょう。

相手が応じるような条件を提示することができれば、調停や離婚の和解手続で離婚できる可能性はあります。

配偶者の不倫が発覚したら一度弁護士事務所にご相談を!

不倫の慰謝料請求には、法律の知識が必要ですので、自分で準備をするのが難しいと不安に思われる方は、一度弁護士事務所に相談してみてください。

弁護士に依頼する場合は、以下のようなメリットがあります。

不倫行為によって離婚や慰謝料請求が可能か判断することができる

裁判や調停で離婚や不倫の慰謝料請求が認められるためには、法律の条件を満たす必要があります。

そのため、どのようなケースで離婚や不倫の慰謝料請求が可能であるのか判断するためには、法律の知識が不可欠となっています。

弁護士に相談することで、どのような場合であれば不倫の慰謝料を請求することができるかを判断することができるのでおすすめです。

離婚や不倫の慰謝料請求に必要な証拠などを集めることができる。

夫が不倫行為を認めない場合や、裁判などで不倫の慰謝料を請求する場合には、必ず不倫の証拠が必要になります。

特に不倫を立証するには、夫と不倫相手の女性が肉体関係にあることを証明しなければなりません。客観性の高い証拠を集めるためには、プロに任せることが一番です。

離婚や不倫の慰謝料請求の交渉、裁判手続などをすべて任せることができる

離婚や不倫の慰謝料を請求するためには、不倫の証拠を集めたり、配偶者や不倫相手と交渉する必要があります。

弁護士に依頼すると、弁護士が依頼人の妻の代わりに交渉をしてくれるため、手続きの手間が省けるほか、妻は不倫相手の女性と関わらずに済むため、気持ちの面でもとても負担が減ることでしょう。

慰謝料の額以外にも、支払い方法や支払いが怠った場合の条件等についても触れておく必要がありますが、弁護士に任せることで、書面に有効な条件をまとめて作成してくれます。

また、裁判で慰謝料を請求する場合は、裁判手続に則った書面の作成や立証の手順があります。自分ひとりでは難しいことでも、弁護士に任せることで、妻にとって優位な主張が可能となります。

不倫の慰謝料の増額が期待できる

不倫の慰謝料請求の知識がない場合、慰謝料を増額できる要素があるのに、うまく相手と交渉することができず、損をしてしまう場合があります。

不倫の慰謝料の金額には明確な基準はないため、相場の範囲内で、増額できる要素があれば相手に交渉することができますので、弁護士に依頼することで、依頼主の利益を優先した慰謝料請求が可能となります。

交渉が難しいと不安に思う場合は、弁護士事務所に相談して、依頼主の事案でどの程度の慰謝料相場になるのか、また、増減要素の見落としがないかなど、専門的なアドバイスをもらうとよいでしょう。

不倫で離婚や慰謝料を請求する場合、訴訟上は証拠がなければ請求が認められません。

また、当事者同士で話し合う場合でも、不倫をした配偶者や不倫相手が不倫した事実を認めなければ、離婚や慰謝料の支払いに応じないというケースもあります。

したがって、より確実に離婚や不倫の慰謝料を請求したいと考えている方は、プロの法律家である弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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