不倫の内容証明|浮気相手に送る内容証明郵便の例文は?奥さんから内容証明が届いたら?

配偶者が浮気をしていたとき、その不倫相手に対して責任を追及したい、慰謝料を請求したいと考える方も多いのではないでしょうか。
そうした場合に用いられる手段の一つが、「内容証明郵便」です。
内容証明郵便は、いつ・誰が・どのような内容の文書を送付したかを郵便局が証明してくれる制度なので、後々の法的手続きを考えた場合も非常に有用です。
とはいえ、「証明」などと聞くと堅苦しく感じますし、どういった手続きで、どのような文面を送ったらいいのか、具体的には知らないという方が多いかと思います。
また、内容証明郵便を送られた側からしても、「突然奥さんから内容証明が届いたが、どう対応すればよいのか分からない」といった不安があるかもしれません。
そこでこの記事では、不倫に関する内容証明郵便について、送る側・受け取る側のそれぞれの立場から、基本的な考え方や注意点を弁護士が解説していきます。
実際にどのような文章を送るのか、文例も載せてありますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。
目次
不倫の内容証明
それでは、不倫に関する内容証明郵便について、具体的に確認していきましょう。
不倫・不貞行為における内容証明郵便とは
「内容証明郵便」とは、郵便局が文書の内容・差出人・宛先・発送日を証明してくれる制度です。
たとえば、慰謝料請求の通知や、法的トラブルに備えた警告文などを相手に送る際に、「このような文書を、確かに〇月〇日に相手に送付した」という事実を証拠として残すことができます。
内容証明郵便の出し方の流れとしては、まず同一の文書を3通作成します。受取人に送る分と、郵便局と差出人がそれぞれ控えとして保管する謄本になりますので、3通全て同じ形式・内容でなければなりません。
そして、通常は内容証明郵便に、配達したという事実を証明するサービスである「配達証明」をオプションとして付けることが一般的です。
配達証明を付加することで、相手がその文書をいつ受け取ったのかが記録されますので、後の交渉や訴訟において、証拠資料として活用することができます。
なお、発送手続きは、郵便局の窓口で行うのが一般的ですが、現在では「e内容証明」というオンラインサービスを利用すれば、自宅のパソコンから内容証明を作成・送付することも可能です。紙での作成や窓口に行く手間を省けるため、近年利用が広がっています。
ただし、内容証明郵便はあくまでも、「この文書がこのような内容で確かに差し出された」という形式的な事実を証明するものです。内容証明郵便は「文書に書かれた内容が真実であることまでを証明する制度ではない」という点に、注意してください。
浮気・不倫の慰謝料請求に利用される
さて、以上の通りの内容証明郵便ですが、浮気や不倫によって精神的苦痛を受けた配偶者が、不倫相手に対して慰謝料を請求する際に用いられることが多いです。
不倫が民法上の不法行為(民法第709条)となる「不貞行為」に該当する場合、損害賠償として慰謝料を請求することができます。
実際に慰謝料を請求する際、口頭での請求では記録が残らないことや、話し合いで感情的になりやすいことから、証拠として残る形で、冷静に請求の意思を伝えられる内容証明郵便が活用されているのです。
前述の通り、いつ・誰が・どのような文書を送付したかを公的に証明できるため、「不倫相手に正式に慰謝料を請求した」という事実を記録に残すことができます。万が一、話し合いが不調に終わって裁判や調停に進んだ場合でも、「事前に慰謝料請求したにもかかわらず支払われなかった」と主張する根拠として活用することができるのです。
そして、単なる金銭請求にとどまらず、以下のような目的においても、内容証明郵便が利用されています。
- 不倫の事実を前提として、慰謝料の支払いを求める意思を明確に伝える。
- 請求金額や支払期限、振込先などの具体的な条件を明確に示す。
- 今後一切の接触や連絡を断つよう相手に求める。
- 同様の不貞行為を二度と繰り返さないよう、再発防止を促す警告的な意味を持たせる。
- 話し合いに応じない場合には、訴訟などの法的措置も検討する意向があることを示す。
また、内容証明という形式で文書が届くこと自体が、相手にとっては大きな心理的プレッシャーになります。
というのも、内容証明は通常の手紙とは異なり、郵便局が文書の内容や送付日を証明するため、受け取った側に「これはきちんと記録に残されている正式な通知なのだ」という硬い印象を与えやすいのです。
実際、通常の手紙やメールとは異なり、慎重な対応が求められるものだと感じる人も多く、無視せず対応しなければという気持ちにさせる効果があります。
内容証明郵便自体に法的拘束力があるわけではありませんが、文書のやり取りが記録として残ることで、受け手に一定の緊張感を与えることができるため、受け取った側からのリアクションを期待できます。
浮気の内容証明郵便の例文
内容証明郵便を送る際には、書式や構成、文言の選び方など、さまざまな点において注意が必要です。不倫の慰謝料請求は、お互い感情的になりやすいですし、相手との今後のやり取りや、裁判での影響も視野に入れなければなりません。
以下では、不倫に関する慰謝料請求の内容証明書き方と、例文について見ていきたいと思います。
浮気・不倫相手への内容証明郵便の例文
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
〇〇 〇〇 様(浮気相手の住所・氏名)
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
〇〇 〇〇(自分の住所・氏名)
通知書
私、〇〇〇〇は、〇〇〇〇の妻として、貴殿に対し、以下のとおり通知いたします。
貴殿は、私の夫である〇〇〇〇が婚姻関係にある既婚者であることを知りながら、令和〇年〇月頃から令和〇年〇月頃までの間、夫と不貞関係を継続しておりました。
妻のある男性と不倫関係を続けることは、配偶者である私の法的権利を著しく侵害する不法行為であり、貴殿には、民法第709条に基づき、精神的損害に対する賠償責任が発生します。
つきましては、貴殿に対し、慰謝料として金〇〇〇万円の支払いを請求いたしますので、本書到達後10日以内に下記口座へご送金くださるようお願いいたします。
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 〇〇 〇〇
なお、本書到達後10日以内に慰謝料の支払いまたは誠実なご連絡をいただけない場合には、やむを得ず調停または訴訟等の法的措置を取らせていただく可能性がございますので、あらかじめご了承ください。
浮気・不倫の内容証明の書き方
内容証明郵便には形式的な制限があります。手紙のような自由なレイアウトではなく、一定の様式に従って作成しなければなりません。たとえば、日本郵便が定める標準的な様式では、1行あたりの文字数は20字以内、1枚あたりの行数は26行以内とされており、これを超える場合には複数枚にわたる扱いとなります。2枚以上になる場合には、それぞれのページの継ぎ目に契印を押す必要があるため、事前に用紙の使い方や文字数の配分を意識しておくことが大切です。
内容証明郵便は、文書の内容・送付日・差出人・宛先などを郵便局が証明する特殊な郵便です。そのため、一般的な手紙と異なり、記載できる文字数・行数に制限があります。
この制限は、日本郵便が定める以下の様式に従って設定されており、作成時には必ずこの枠内で収まるように文面を調整しなければなりません。
様式 |
1行あたりの文字数 |
1枚あたりの行数 |
特徴 |
縦書き・横書き(①) |
20文字以内 |
26行以内 |
一般的な書式で最も多く使用される |
横書き(②) |
26文字以内 |
20行以内 |
横書きのワープロ文書に向く形式 |
横書き(③) |
13文字以内 |
40行以内 |
行数を増やして縦長の文面に対応可能 |
いずれの形式を選んでもかまいませんが、使用する文字数・行数を必ず守る必要があります。
そして、記号や句読点にも注意が必要です。句読点(「、」「。」)やスペース、カギ括弧(「」)や丸括弧(())などの記号も1文字としてカウントされます。また、「㎡」「㎥」「㎝」などの特殊記号は、全角で1文字に見えますが、2文字分としてカウントされます。
このように、パッと見た文量よりも、実際にカウントされる文字数の方が多くなることもあるため、特に句読点や単位記号を多く含む内容の場合には気を付けましょう。
また、内容証明郵便の文書が1ページに収まらず、2ページ以上にわたる場合には、すべてのページにおいて「契印(けいいん)」を押す必要があります。
契印とは、複数枚の文書が正しく一体のものとして作成されたことを示すための印で、ページとページのつなぎ目に押印するのが一般的です。たとえば、1ページ目と2ページ目の間にまたがるように、差出人の印鑑を押すことで、改ざんや差し替えの防止になります。
そして、前述いたしましたが、内容証明郵便は全部で3通必要です。差出人が保管する控えの1通、郵便局が保管する1通、そして相手方に送付される1通、合計3通を用意しなければなりません。
なお、複写や印刷によって3通を作成することも可能ですが、インクのかすれやズレ、紙の切り替えミスなどがあると訂正を求められる場合がありますので、同一のものを用意するように気を付けてください。
奥さんから内容証明が届いたら
不倫相手の妻から「慰謝料を請求する」という内容証明郵便が届いたら、法的に何か強制されるのではないかと慌ててしまうこともあるかもしれません。
例文にもある通り、たいていの場合「本書到達後10日以内に慰謝料の支払いまたは誠実なご連絡をいただけない場合には、やむを得ず調停または訴訟等の法的措置を取らせていただく可能性があります」などと対応の期限が記載されています。
一体、どのように対応すれば良いのでしょうか。
不貞行為をして内容証明が届いたらどうすべき?
まずは落ち着いて状況を把握し、冷静に対応することが大切です。
① 文書の内容を最後まで確認する
まずは届いた内容証明の文面を、はじめから最後まで丁寧に読みましょう。
相手が主張している不貞の期間や状況、請求金額、支払期限、振込先、法的措置に関する記載など、主張の全体像を把握することが必要です。
たとえ書かれていることに心当たりがあっても、すぐに謝罪したり、支払ったり、反論を書き送ったりするのは避けましょう。後述するように、必ずしも全てのケースで慰謝料を支払う義務が発生するわけではないからです。
② 文書と封筒を大切に保管する
内容証明郵便は、相手の主張を文書で正式に伝える手段です。到着日や文面の内容は、将来的な交渉や法的手続きにおいて「どのような請求を受けたか」を示す重要な記録になります。
封筒や文書を破棄せず、開封した状態のまま保管しておきましょう。
③ すぐに支払うかどうかは慎重に判断する
内容証明で慰謝料を請求されたからといって、必ずしもその通りに支払わなければならない、というわけではありません。
たとえば、相手が既婚者であることを知らなかった、すでに夫婦関係が破綻していた、関係がごく短期間であったなど、支払義務が否定されるケースもあります。
また、請求されている金額が相場より明らかに高額である場合もあります。
後ろめたさや焦りから安易に支払ってしまうと、結果的に不必要な損失を被ることもありますので、金額や事情を整理してから判断することが大切です。
④ 弁護士に相談する
内容証明郵便は、相手が本気で慰謝料請求や法的措置を考えているというサインでもあります。
一つひとつの対応が今後に大きく影響する可能性があるため、自分だけで判断せず、できる限り弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、法的責任の有無、妥当な金額の相場、相手との交渉の進め方などについて、具体的な法律相談を行うことができます。
内容証明が届いたからといって、すぐに慰謝料の支払い義務が確定するわけではありません。
ですが、相手が正式なかたちで責任を追及しようとしているのは事実です。
慌てず、冷静に状況を整理し、必要に応じて専門家の助言を得るようにしましょう。
内容証明が事実と異なる場合は?
内容証明郵便で慰謝料を請求されたものの、「そもそも交際していない」「既婚者とは知らなかった」「書かれている内容が明らかに事実と違う」など、相手の主張に納得できないこともあるかと思います。その場合も、すぐに返事を出したりせず、冷静に対応してください。
① 相手の主張の全体像を整理する
事実と異なると感じても、文面のどの部分に問題があるのかを客観的に整理しておくことが必要です。
交際の有無、既婚者であることを知っていたかどうか、連絡の頻度や内容、期間など、相手の主張と自分の認識にどのようなズレがあるのかを冷静に確認しましょう。
記憶に頼るだけでなく、やり取りの履歴や写真、SNSの投稿、周囲の証言など、状況を証明できる客観的な情報があるかどうかも検討してください。
② すぐに反論の手紙を送るのは避ける
内容証明に対して「事実無根だ」「名誉毀損だ」といった感情的な反論を書いて送り返すことは、かえって不利な結果を招くおそれがあります。やり取りの記録として残る以上、言葉は慎重に選ばなければなりません。また、不適切な言い回しや事実誤認があった場合、それ自体が相手の新たな主張や反論の材料となってしまうこともありますので注意しましょう。
たとえ相手の請求が明らかに行き過ぎであったとしても、自分の立場を冷静に守る姿勢を崩さないことが大切です。
③ 相手の誤解に基づく請求である可能性も考える
また、そもそも単なる知人関係であったにもかかわらず、浮気を疑われてしまったという場合や、過去に一時的な関係があっただけで、それ以降は連絡も取っていないようなケースもあるかもしれません。
このように、相手が一方的な情報だけで判断して請求してきていることもあり得ます。
相手がどのような証拠や背景情報を基に請求してきているのかを冷静に分析し、それに対してどのような対応が適切かを判断することが重要です。
④ 弁護士を通じて対応することを検討する
自分の言葉で反論することに不安がある場合や、相手が明らかに誤った主張に基づいて慰謝料を請求してきていると感じた場合には、弁護士を通じて対応することをおすすめします。
弁護士であれば、請求内容に対して法的根拠があるかを判断し、不必要な支払いや不当な名誉毀損を防ぐための方策を講じてくれます。
また、必要に応じて、相手方に対して警告や通知書を送るなど、適切な手続を取ることも可能です。
不倫の内容証明郵便に関するQ&A
Q1.内容証明郵便とはどういう郵便ですか?
A:内容証明郵便とは、「いつ」「誰が」「誰に対して」「どのような内容の文書を送ったか」を、日本郵便が公的に証明してくれる特殊な郵便です。
主に、法的トラブルを防ぐための通知や請求などに利用されており、後日「言った・言わない」の争いを防ぐ証拠として活用されます。
Q2.内容証明が届いたら、必ず慰謝料を支払わなければなりませんか?
A:内容証明は、差出人が自分の主張を正式なかたちで通知するための手段であり、受け取ったからといって、すぐに慰謝料の支払い義務が確定するわけではありません。
たとえば、相手が既婚者であることを知らなかった、すでに夫婦関係が破綻していた、実際には不貞行為がなかったなどの事情があれば、慰謝料が認められないケースもあります。
まずは冷静に内容を確認し、安易に支払ったり謝罪したりする前に、事実関係を整理し、できれば弁護士に相談することをおすすめいたします。
Q3.浮気相手の住所が分からないので職場に内容証明を送っても大丈夫ですか?
A:住所が分からない場合に職場宛へ送ること自体は可能ですが、慎重に判断すべきです。
職場は第三者の目に触れる可能性がある場所であり、仮に不倫の事実が周囲に知られてしまった場合、浮気相手から「名誉毀損」や「プライバシー侵害」などの反論を受けるおそれがあります。
送付前に弁護士に相談し、職場宛に送る必要性や、文面・封筒の表記などを慎重に検討するようにしてください。
まとめ
本記事では、不倫における内容証明郵便について、弁護士が詳しく解説させていただきました。
内容証明郵便は、不倫相手に対して慰謝料を請求したいときや、今後の接触を禁止したいときなどに、意思を明確に伝えるために有効な手段です。
誰に対して・いつ・どのような文書を送ったかが記録として残るため、後のトラブル防止や裁判での証拠としても役立ちます。
ただし、文面の書き方や送り方を誤ると、法的トラブルが生じてしまうおそれもあるため、注意が必要です。
内容証明を送るにしても受け取るにしても、正しい法的知識を持っておき、落ち着いて冷静に対応するようにしましょう。
もし自分だけで判断するのが難しいと感じた場合は、なるべく早めに弁護士へご相談いただくことをおすすめいたします。
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この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。