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興信所|探偵との違いとは?身辺調査・相談依頼に安心な興信所の選び方も

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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「興信所」の言葉を聞いたことのある方は多いかと思います。特に、配偶者に浮気の疑いがある時など、「興信所や探偵で浮気の調査をしたい」と思い浮かべる方は少なくないでしょう。

ところで、興信所とは何をする所なのか、どういった場合にどのような人が利用するのか、具体的な内容をご存知でしょうか。

名前は知っていても、その実態は意外と知られていないのが興信所です。興味はあっても、「怪しくないの?」「本当に頼んで大丈夫?」「どこに相談すればいいの?」と、不安や疑問が先に立ってしまい、なかなか依頼に踏み切れない、といった声も耳にすることがあります。

また、興信所に近い事業に「探偵」がありますが、興信所と探偵の違いについて知っておかなければ、自身のケースでどちらに依頼すべきか迷ってしまうかもしれません。信頼できる興信所の見極め方などについても、ポイントをおさえておきたいところです。

そこでこの記事では、興信所の基本的な役割から、探偵との違い、安心できる興信所の選び方のポイントについて、弁護士が詳しく解説させていただきます。

興信所

それでは、興信所とはどういった事業者なのか、具体的に見ていきましょう。

興信所とは

興信所とは、個人や企業からの依頼を受けて、必要な情報や事実を調査する民間の調査機関です。

たとえば、配偶者の浮気を確かめたい人や、結婚を考えている相手の素行を確認したい人、行方不明になった家族を捜している人などが、調査を依頼することがあります。また、企業が取引先の信用状況や採用予定者の経歴などを調べる目的で、興信所を利用するケースもあります。

結婚後に法的トラブルが起きる可能性があるのか、入籍前に確認しておきたい人や、大きな取引をする前にリスク回避のために相手を調査しておきたい人にとって、興信所の存在はとても重要です。 

昨今はインターネットで簡単に情報が手に入る時代ではありますが、個人の素行や企業の内部事情など、表には出てこない情報を確実に調べるには限界があります。そうしたとき、専門の知識と経験をもった第三者に調査を依頼できるというのが、興信所の最大のメリットと言えるでしょう。

日本初の興信所は「商業興信所」

日本で初めて「興信所」が設立されたのは、1892年(明治25年)のことです。当時は近代化の波に乗って新しい企業や取引が急速に増えていましたが、取引相手の信用を判断する手段が乏しく、倒産や未払いといったリスクが社会問題となっていました。そこで、企業の信頼性を調査し、安心して取引できる仕組みを整えるために誕生したのが「商業興信所」です。

興信所という名前は、「信用を興す所」という意味から来ています。

商業興信所は、銀行や企業の協力を得て設立され、取引先の経営状態や資金の流れ、過去の実績などを調査して報告する役割を担いました。この仕組みは企業にとって大きな支えとなり、信用調査の制度が広く認知されるきっかけとなったのです。

やがて、興信所の必要性は大阪だけにとどまらず全国的に高まり、1896年(明治29年)には東京にも「東京興信所」が設立されました。大阪の商業興信所と並んで二大拠点を形成し、全国の銀行や企業が利用する体制が整えられたことで、信用調査は日本の経済基盤を支える重要な制度として定着していったのです。

設立当初の興信所は、今日のように個人からの依頼に応じるのではなく、あくまで企業間取引の安全を守る「信用調査機関」として活動していました。しかし、社会の変化とともに調査の対象は少しずつ広がり、現在の個人や家庭の問題にも対応する興信所へと発展していったのです。

興信所と探偵の違い

さて、浮気調査や素行調査をしたいと思った時、考えられる選択肢として、興信所の他に「探偵」も考えられます。

どちらも浮気調査などをする、という点では似ていますし、法律上も特に違いがあるわけではありませんが、細かく見ていくと以下のような違いが見受けられます。

 

興信所が受ける依頼は、結婚前の身辺調査や採用時の雇用調査、企業取引に関する信用調査など、社会的信用や将来のリスク判断など、個人から企業まで多岐にわたります。法人として組織的に運営されているケースが多いです。

前述の通り、取引の安定性を目的として企業の信頼性を調査する「商業興信所」が始まりとなっています。

 

一方、探偵とは、情報が無い部分を実際に尾行したり、張り込みをしたりする「行動調査」に強みを持つ民間の調査会社です。

探偵を名乗る事務所は、個人経営や少人数で運営されることが多く、迅速な対応や依頼者の細かな事情に柔軟に応じる柔軟性が特徴といえます。

 

興信所と探偵の違い

 

このように、興信所は「社会の安心に関わる信用調査を幅広く手がける組織」、探偵は「目で見る調査・生活に密着した問題に対応する事務所」という印象の違いがあります。ただし、両者の業種や業務内容に明確な違いはありません。

ですので、どちらに依頼するか迷った時には、興信所か探偵かではなく、自分のケースにどちらが適しているのかを考えることが大切です。調査にかかる時間や費用、報告書の形式、裁判で証拠として通用するかどうかといった点を確認するといいでしょう。

興信所の仕事内容は身辺調査や信用調査

興信所と探偵の違いが分かったところで、興信所の仕事内容についてもう少し詳しく確認しておきましょう。

 

興信所の仕事内容は身辺調査や信用調査

 

① 結婚・交際相手の身元調査

典型的な興信所の仕事内容の一つが、婚約者や交際相手の素行や経歴を調べる身辺調査です。依頼者が安心して人生のパートナーを選べるよう、次のような情報について調査します。

  • 本名や住所、職業、勤務先といった基本情報
  • 借金やギャンブルなどの金銭トラブルの有無
  • 前科や逮捕歴の有無
  • 家族構成や家庭環境
  • 交友関係や異性関係での問題点

こうした調査は、いわゆる結婚前のブライダルチェックとして利用されることが多く、特に企業経営者の家族や資産家の婚姻に際して依頼される傾向があるようです。

② 採用調査(雇用前調査)

企業が新たに人材を採用する際、特に、管理職などの重要なポジションを任せる場合には、履歴書だけでは判断できない情報を把握するために、興信所に調査を依頼することがあります。

  • 学歴や職歴に虚偽がないか
  • 前職でのトラブルや勤務態度
  • 反社会的勢力との関係性
  • 社内外からの評判や人望

ただし、個人情報保護の観点から、調査には法的な制限があり、たとえ採用のために必要といっても、正当・合法な調査方法で行われます。

③ 企業間の信用調査

法人同士で新たな取引をする際には、相手企業の信用性を調査するために、興信所に依頼するケースも多く見受けられます。興信所は、財務状況や経営者の経歴などを調べて、取引に伴うリスクを未然に防ぐ役割を果たします。

  • 会社の設立年数や事業内容
  • 資本金や代表者の背景
  • 売上や利益などの財務指標
  • 金融機関や他社からの信用評価
  • 反社会的勢力との関わりがないか

このような企業の信用調査は、特に新規取引先との契約前や、M&A(企業の合併・買収)において重視されています。

④ その他の調査

興信所では、前述した内容の他にも、次のような調査を手がけていることがあります。

  • 社内の横領や内部不正の調査
  • 情報漏えいの原因調査
  • 夜逃げや倒産に関する所在調査
  • 詐欺被害や契約トラブルの相手方調査

このように、興信所の業務は主に人や企業の「信用」に関わる調査が中心です。人生やビジネスにおいて、慎重な判断を下すための情報源として活用されているのです。

興信所の選び方

いざ興信所に調査を依頼したいと思っても、実際には「どこに頼めばいいのかわからない」と悩む方が多いのではないでしょうか。

特に、初めての方にとっては、興信所ごとの違いや注意点がわかりにくく、不安を感じてしまうことも少なくありません。

そこで最後に、興信所を選ぶ際に確認しておきたいポイントを、いくつかに分けて簡潔にご紹介します。

無料相談はある?

まず確認したいのが、相談を無料で受け付けているかどうかです。

初めて興信所を利用する場合、調査内容や費用、期間について不明な点が多く、いきなり興信所を訪れてその場で契約するのは、不安が大きいものです。

その点、無料相談を実施している興信所であれば、事前に気になることをじっくり確認することができます。たとえば、「どんな調査ができるのか」「どれくらい費用がかかるのか」「依頼する場合の流れはどうなっているのか」といった、基本的な疑問について確認しておくと安心です。

また、相談時の対応が丁寧かどうかを見ることで、実際に依頼したあとの信頼性もある程度判断できるでしょう。

まずは、ホームページなどでその興信所に無料相談があるのかをチェックしてみてください。

なお、興信所などで浮気調査を依頼する場合の費用の相場については、こちらの関連記事をご覧ください。

安心・信頼できる興信所を選ぶには

興信所に調査を依頼するということは、大切な情報やプライバシーを相手に委ねるということです。そのため、「信頼できるかどうか」は、料金や調査内容と同じかそれ以上に重要な判断基準となります。

まず確認しておきたいのは、法令を守って正しく運営されている興信所かどうかという点です。

興信所は、「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」における「探偵業」に該当します。

探偵業を営むには、警察署への届出が義務付けられています(探偵業法第4条1項)。

(探偵業の届出)
探偵業法第4条1項 探偵業を営もうとする者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。

一 商号、名称又は氏名及び住所

二 営業所の名称及び所在地並びに当該営業所が主たる営業所である場合にあっては、その旨

三 第一号に掲げる商号、名称若しくは氏名又は前号に掲げる名称のほか、当該営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称があるときは、当該名称

四 法人にあっては、その役員の氏名及び住所

そして、届出を済ませた業者には「探偵業届出証明書」が交付されています。この番号が公式サイトなどに明記されていない場合は、そもそも届出を行っていない違法業者の可能性もあるため、注意が必要です。

 

また、悪質な業者のなかには、調査の実態が曖昧であったり、根拠のない成果を誇張したりするケースもあります。

そういったトラブルを避けるためにも、以下のようなポイントを参考にして、信頼できる興信所かどうかをチェックしておきましょう。

  • 探偵業届出証明書の番号がサイトや契約書に明記されているか。
  • 事前のヒアリングが丁寧で、依頼内容や希望をしっかり聞いてくれるか。
  • 調査の進捗状況を適切に報告してくれる体制があるか。
  • 調査が完了した後、調査報告書の内容が詳細かつ明確であるか。
  • 虚偽の広告や誤解を招く表現(「必ず成功」「お金を取り戻せます」など)をしていないか。
  • 数値に根拠のない成功率や料金の最安値をうたっていないか。
  • 調査対象や手法について、違法行為をほのめかす説明がないか。
  • 自社の得意分野(結婚調査、企業調査など)を明示し、専門性が感じられるか。

また、調査の範囲を超えた過剰な期待をさせる業者にも注意が必要です。興信所の役割はあくまで「情報収集」であり、金銭の回収や交渉の代行などは法律上できません。そうした法的限界を理解せずに、大げさな広告をしている業者は避けたほうがよいでしょう。

 

こうした複数の視点から冷静に比較・検討することで、安心・信頼できる興信所を見つけられるかと思います。焦らず、複数の事務所を比較して、無料相談などを活用しながら興信所を選びましょう。

興信所に関するQ&A

Q1.興信所に頼めば、必ず浮気の証拠が手に入りますか?

A:調査は必ずしも成功するとは限りません。対象者の行動次第では、情報が得られないこともあります。ただし、調査計画が緻密で、途中経過の報告がある興信所であれば、結果に至らなくても納得のいく説明を受けられるはずです。過度に期待せず、冷静に目的を整理して依頼することが大切です。

Q2.興信所の調査が違法じゃないのか心配です。

A:正規の手続きで探偵業の届出をしている興信所であれば、法律の範囲内で調査を行っています。ただし、中には違法な手段(盗聴や不正な個人情報取得など)を使う悪質な業者も存在するため、事前に信頼できる業者かどうかをしっかり確認することが重要です。

Q3.興信所には匿名で相談できますか?

A: はい、多くの興信所では、匿名での相談に対応しています。いきなり個人情報を伝えるのが不安な方でも、まずは名前を伏せたまま、電話やメールで相談内容を伝えることができます。対応の丁寧さや信頼性を確認してから、本格的な依頼を検討するのがおすすめです。

まとめ

この記事では、興信所とはどういった事業者かという点について、弁護士が解説させていただきました。

興信所は、結婚相手の身元調査や企業間の信用調査など、人や組織の「信用」に関する情報を調べることを主な業務としています。探偵と混同されがちですが、名称の違いよりも、行っている業務内容や調査の手法をしっかりと確認することが重要です。

また、興信所の仕事内容は探偵業法の対象となるため、正規の届出をしているかどうかについても、きちんと確認しておく必要があります。

興信所を利用する際は、事前に無料相談の有無や調査体制、費用の説明が明確かどうかをチェックし、信頼できる事業者を見極めるようにしましょう。

興信所の利用を含め、浮気や不倫の調査に疑問やお悩みがありましたら、お気軽に当法律事務所へご相談ください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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