養育費算定表|計算して、正確にシミュレーションしましょう!【最新版】
未成熟の子どもがいる夫婦が離婚する場合は、離婚協議や離婚調停の際に、子どもの養育費をいくら支払うかについて話し合いが行われます。
この時に、養育費の金額をいくらにするかの参考となるのが、家庭裁判所が公開している「養育費算定表」です。
この記事では、養育費算定表に注目して、弁護士が解説させていただきます。養育費算定表がどういったシーンで利用されるものなのか、算定表の見方とあわせて、分かりやすく解説いたします。
また、子供1人、子供2人の場合や、子供3人、子供4人の場合に特別な事情のあるケースについても、どのように養育費算定表を利用したらいいのか、具体的にご説明させていただきます。
養育費の金額は、未成熟の子どもを安定した生活環境で扶養するためにとても重要です。この記事が、養育費算定表を理解するのに、ご参考となりましたら幸いです。
目次
養育費算定表の基本的知識
それではまず、養育費算定表の基本的知識について見ていきましょう。
養育費算定表とは
養育費算定表とは、家庭裁判所が公開している養育費の金額を決定するための基準表です。子どもの養育費だけでなく、別居中の生活費である婚姻費用についても記載されているため、「養育費・婚姻費用算定表」と呼ばれます。この記事では養育費の計算に際しての養育費・婚姻費用算定表に焦点を当てますので、「養育費算定表」と表記いたします。
夫婦が離婚や別居をした際に、子どもが健全に育つためには、生活費や教育費が必要です。しかし、将来に渡って発生する養育費の金額を具体的に決めるのは、容易ではありません。そこで、家庭裁判所が提供する養育費算定表が役立つのです。
この算定表は、夫と妻のそれぞれの年収や子どもの年齢、人数などを考慮して、標準的な養育費の金額を示しています。
例えば、年収500万円の夫と年収300万円の妻が子ども2人を養育する場合、算定表を参照することで、適正な養育費の額を算出できます。これにより、夫婦間での金銭的なトラブルを減らし、子どもの福祉を守ることができます。
養育費算定表は家庭裁判所が公式に公開しているため、信頼性が高く、公平な基準として広く利用されています。家庭裁判所での調停や裁判での養育費決定においても、この算定表が基準として用いられることが多く、養育費を計算するために非常に重要な基準となっています。
離婚調停や離婚後の養育費の請求の際に利用されるツールです
そんな養育費算定表ですが、離婚協議や離婚調停における養育費の話し合いで利用されるのが一般的です。また、離婚後に養育費を請求する場合や、養育費の金額を変更したい場合などにも、養育費の金額の基準として参考にされます。
離婚協議や離婚調停では、夫婦双方が自分の主張を通そうとするため、養育費などのお金の問題については、その金額で折り合いがつかないことが少なくありません。そうした場合に、明確な金額の基準が載っている養育費算定表を利用することで、算定表に基づいて標準的な養育費を見積もることができ、養育費についての話し合いをスムーズに進めることが期待できるのです。
また、養育費を支払う側は、養育費算定表によって明確な基準の金額が分かるため、必要以上に高額の養育費で合意してしまう恐れもありませんし、養育費を受け取る側としても、相場よりも低い金額で合意してしまうことを避けられます。
2019年(令和元年)に改定されたものが最新版の算定表です
この養育費算定表ですが、現在参照されている最新版は、2019年(令和元年)に改定されたものとなっております。
改定前の養育費算定表は、長年使用されてきましたが、社会の変化や物価の上昇に伴い、その基準が現状にそぐわなくなってきていました。特に、年収や生活費の変動が大きい自営業者の場合、旧算定表では適切な養育費の計算が難しいことがありました。
そこで、2019年(令和元年)の改定により、新しい基準が設定され、より正確で実情に即した金額を算出することが可能となっています。
日弁連の養育費算定表もあります
養育費算定表には、家庭裁判所が公開しているものだけでなく、日弁連(日本弁護士連合会)が提供しているものもあります。日弁連の養育費算定表は、家庭裁判所の算定表とは異なる特徴を持ち、より詳細で実情に即した金額設定が行われています。
日弁連の養育費算定表は、2016年に公開されたものが最新版です。家庭裁判所の養育費算定表より多い金額で設定されておりますので、日弁連の養育費算定表を基準にして養育費の金額を取り決めた場合、家庭裁判所の養育費算定を基準に取り決めた時より、もらえる養育費の金額が多くなる可能性があります。
裁判所と日弁連のどちらを基準にしても問題ないので、養育費を請求する際には事前に比較し検討しておくと良いでしょう。
養育費算定表による計算
続いて、養育費算定表の見方について、家庭裁判所の養育費算定表を基に解説いたします。
養育費算定表の見方ですが、①子供の人数と年齢を確認する、②両親の年収(年間収入)を確認する、③養育費の金額を確認するの手順で見ることになります。
算定表による計算1.子どもの人数(子供1人~子供3人)と年齢を確認する
まず、養育費を請求する未成熟の子どもの人数と年齢を確認しましょう。
家庭裁判所の養育費算定表は、子の人数(子供1人・子供2人・子供3人)と年齢(0~14歳・15歳以上の2区分)に応じて、表が分かれています。
具体的には、養育費算定表は、「子供1人・0~14歳」、「子供1人・15歳以上」、「子供2人・第1子及び第2子0~14歳」、「子供2人・第1子15歳以上、第2子0~14歳」、といったように、子どもの人数と年齢によって、参考にする養育費算定表が異なります。
子供1人の場合は、14歳以下か15歳以上の養育費算定表を参照し、子供が複数いる場合には、子供の人数と、第1子と第2子・第3子の年齢に応じた養育費算定表を参照することになります。
なお、子供4人以上の場合には、裁判所の養育費算定表を直接参考することが不可能です。この場合は、養育費算定表ではなく、計算式を使う方法で養育費を計算することになります。
算定表による計算2.両親の年収(年間収入)を確認する
養育費算定表を正確に使用するためには、まず両親の年収(年間収入)を確認することが重要です。養育費算定表は、夫と妻の収入に基づいて養育費の金額を計算するための基準を提供しています。ここでは、年収の確認方法とその使い方について説明します。
年収とは、源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されている金額を指します。この金額は、税金や社会保険料などを差し引く前の総額であり、手取りの収入や必要経費を差し引いた「所得」とは異なります。
手取りとは、税金や社会保険料などを差し引いた後の実際に受け取る金額のことです。例えば、年収が500万円でも、手取りは税金や社会保険料などが差し引かれるため、実際に銀行口座に振り込まれる金額はそれより少なくなります。
所得とは、年収から必要経費を差し引いた金額を指します。自営業者の場合、事業に必要な経費を差し引いた後の利益が所得となります。会社員やパートの場合、経費は給与所得控除として計算されますが、養育費算定表で使われるのはこの控除前の年収です。
養育費算定表の縦軸は「養育費を支払う側の年収」、横軸は「養育費を受け取る側の年収」を示しています。この表を正確に読むためには、夫と妻それぞれの年収を確認し、それに基づいて表を参照することが必要です。
さらに、養育費算定表では、自営業者と自営業者以外(会社員・パートなど)の年収が区別されています。年収が2列表記されており、内側の列は自営業者の年収、外側の列は自営業者以外の年収を示しています。例えば、夫が自営業で妻が会社員の場合、夫の年収は内側の列から、妻の年収は外側の列から参照する必要があります。
算定表による計算3.養育費の金額を確認する
以上の通り、養育算定表の縦軸と横軸を確認し、交わっている部分の金額が、自身のケースで基準となる養育費の額になります。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円の場合、養育費算定表の縦軸で500万円を探し、横軸で300万円を探します。これらの交わっている部分の金額が、自身のケースで基準となる養育費の額です。
養育費算定表で計算した金額は、夫婦間の離婚協議や離婚調停、離婚後の養育費の請求や金額変更の話し合いにおいて、重要な基準となります。
養育費のシミュレーション
それでは、裁判所の養育費算定表を基準にし、実際に以下の3つの場合でシミュレーションしてみましょう。
なお、ここでは次の通り仮定します。
- 夫:養育費を支払う側、年収500万円の会社員
- 妻:養育費を受け取る側、収入のない専業主婦
ケース1.子供1人・13歳の場合
13歳の子供1人の場合、参照する養育費算定表は「(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)」となります。
養育費算定表の縦軸が「養育費を支払う側の年収」、横軸が「養育費を受け取る側の年収」で、会社員は2列あるうちの外側を参照します。
縦軸外側の500万円と、横軸0万円の交わった範囲を見ると、「6~8万円」のグレーの範囲であることが分かります。
この場合、基準となる金額は6~8万円です。
ケース2.子供2人・12歳と16歳の場合
14歳以下の子どもと15歳以上の子どもがいる場合、参照する養育費算定表は「(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)」になります。
ケース1の場合と同じように、表4の縦軸外側の500万円と、横軸0万円の交わった範囲を見ましょう。すると、「10~12万円」のグレーの範囲が基準になることが分かります。
なお、このケースで仮に養育費を受け取る側の妻が会社員として年間400万円の収入を得ている場合、横軸外側の400万円と交わる範囲は、4~6万円の白い範囲となります。
このように、養育費を受け取る側の収入によっても、かなり基準の金額は変動することになるのです。
ケース3.14歳未満の子供3人で、父親が自営業者の場合
子供3人が全員14歳未満の場合、参照する養育費算定表は「(表16)婚姻費用・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)」になります。
父親が自営業なので、縦軸の外側ではなく、自営業用の内側の列を参照します。
縦軸内側500万円と、横軸年収0の交わる範囲は、16~18万円のグレーの範囲となります。
子供4人以上の場合の計算方法
さて、子どもが3人までの場合は、裁判所の養育費算定表によって計算できますが、裁判所の養育費算定表は、子ども4人以上の早見表には対応していません。
このような場合には、次のような計算式と手順によって、養育費を計算することになります。
1.基礎収入の計算
まず、養育費を支払う側(義務者)と養育費を受け取る側(権利者)の年収から、税金や必要経費を差し引いた基礎収入を計算します。
会社員などの給与所得者の「基礎収入」とは、税込収入から「公租公課、職業費、特別経費」を差し引いた金額です。
一方、自営業の人の「基礎収入」とは、課税対象となる所得金額のことをいいます。
基礎収入は、給与所得者の場合は総収入の約38%~54%の範囲で、自営業の場合は総収入の約48%~61%の範囲とされております。
2.子どもの生活費の計算
次に、年齢によって異なる指数を使用し、子どもの生活費を計算します。指数とは、大人の必要とする生活費を100とした場合の、子どもの生活費の割合です。
0歳から14歳までの子どもには指数62、15歳以上の子どもには指数85を用います。
3.養育費の按分
最後に、子どもの生活費を義務者と権利者の基礎収入の割合で分配し、義務者が支払うべき養育費を決定します。
以上の方法による具体的な計算式は、以下の通りです。
子どもの生活費=(義務者の基礎収入×子どもの指数の合計) ÷(義務者の指数+子どもの指数)
義務者の養育費分担額=(子どもの生活費×義務者の基礎収入) ÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
計算例
例えば、養育費の義務者である父親の基礎収入が400万円、養育費を受け取る側(権利者)の母親の基礎収入が100万円で、14歳未満の子どもが4人いる場合でシミュレーションしてみましょう。
14歳未満の子ども4人の生活費は、指数62を用います。
子ども4人の生活費=義務者の基礎収入400万円 ×(子どもの指数62×子どもの人数4人)÷{義務者の指数100+(子どもの指数62×子どもの人数4人)}
=400万円×248÷(100+248)
=99200÷348
=約285万円
次に、父親が分担すべき養育費について計算します。
父親の養育費分担額=(子どもの生活費285万円×義務者の基礎収入400万円)÷(義務者の基礎収入400万円+権利者の基礎収入100万円)
=114000÷500
=228万円
そして、これは年額なので、228万円を12で割って月額を計算します。
228万円÷12=19
以上の通り、父親の養育費は月額19万円が目安となります。
養育費算定表に関するQ&A
Q1.養育費算定表とは何ですか?
養育費算定表とは、家庭裁判所が提供する、離婚や別居後に子どもの養育費の金額を公平に決定するための基準表です。この表は、両親の年収や子どもの年齢・人数を基にして、適正な養育費の金額を算出するための指針となります。養育費算定表を利用することで、スムーズかつ具体的に養育費を計算することが期待できます。
Q2.子どもが5人いるので、養育費算定表を使えません。どうしたら良いですか?
子どもが5人いる場合、養育費算定表では直接対応していません。そのため、計算式を使う方法で算定する必要があります。詳しくは本記事でもご説明しておりますので、ご参照いただければと思います。
Q3.子どもが障害児です。通院治療費が必要ですが、考慮してもらえるのでしょうか?
子どもが障害を持っている場合、その特別なニーズや通院治療費を考慮することが可能です。養育費算定表は標準的な生活費を基にしていますが、特別な事情がある場合には、その費用も考慮して養育費を決定することができます。具体的な治療費やその他の必要な費用については、弁護士や家庭裁判所に相談することで、適切な額を算定してもらうことができます。
養育費のトラブルは当法律事務所の弁護士にご相談ください
養育費算定表は、離婚や別居後に子どもの養育費を公平に決定するための重要なツールです。
しかし、実際の生活状況や特別な事情により、標準的な算定表だけでは適切な養育費を算出できない場合もあります。例えば、子どもが4人以上いる場合や障害を持つ子どもがいる場合など、特別な計算が必要になることがあります。
そのような複雑なケースや養育費のトラブルが発生した際には、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
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この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。