年収600万円の場合の養育費の相場|子供2人なら?共働きでは?
離婚後に子供を養育する親にとって、元配偶者から受け取る養育費は非常に重要です。可能であれば、離婚を考え始めた段階で、離婚後の養育費をいくらもらえるのか、知っておきたいところでしょう。
この記事では、離婚後に養育費をいくらもらえるのか、という疑問について、年収600万円の場合を例に、想定される相場の金額を解説させていただきます。
また、元配偶者が年収600万円である場合に、子供が2人以上いるケースや、共働きのケースについてもご説明いたします。
年収600万円の場合の養育費の相場の金額を知り、離婚後の養育費についてのイメージを掴んでいただければと思います。
目次
年収600万円の場合の養育費の相場
さて、年収600万円の場合の養育費の相場について確認する前に、そもそも養育費の金額はどうやって決められているのか、基本的な知識をおさえておきましょう。
養育費はどうやって決まる?
養育費とは、離婚後に、親が子供の生活費や教育にかかる費用を支援するために支払うお金のことです(民法第877条1項)。
そして、養育費の毎月の支払額を決定する際には、両親の収入や子供の人数、年齢などを考慮して、具体的な金額を算出する方法が一般的です。通常は、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を基準にして、離婚後の養育費の額が決められます。
養育費算定表は、家庭裁判所による標準的な養育費の相場の金額を記載した早見表です。この養育費算定表は、両親の収入や子供の年齢、生活費などを考慮して作成されているため、離婚裁判だけでなく、協議離婚の話し合いの場などにおいても、広く一般的に使われています。
養育費算定表を利用して養育費の金額を決める際には、まず、夫と妻それぞれの収入を基に、両親の経済状況を総合的に評価します。この収入には、給与収入だけでなく、事業所得や不動産収入なども含まれる場合があります。また、子供の人数も養育費の金額を決めるために重要な要素です。例えば、子供が1人の場合と2人以上いる場合では必要な生活費が異なるため、人数に応じた金額が算出されます。子供が多い場合には、各子供が最低限の生活水準を維持できるよう、適切に配分が行われます。
加えて、子供の年齢も養育費の金額に影響します。年齢が上がるにつれて、教育費や生活費が増加する傾向にあるため、子供の年齢に応じた負担額が考慮されることになるのです。特に、中学校や高校、大学への進学時には、それに伴う費用が見込まれるため、必要に応じて金額が相場よりも多めに調整されることもあります。
年収600万円の場合の養育費の相場【一覧】
以上の通り、養育費は養育費を支払う側の収入だけでなく、子供の年齢や人数、養育費を受け取る側の収入なども考慮して決められるため、年収600万円の場合でも、ケースによって養育費の相場の金額は異なってきます。
本記事でご紹介する相場の金額は、養育費を受け取る側が無収入の場合と、両親が共働きで双方に収入がある場合の相場の金額です。それぞれの場合において、養育費を支払う側の働き方と、子供の年齢・人数に応じたものとなっています。
それでは、年収600万円の場合の養育費の相場について、具体的に見てみましょう。
一方が無収入の場合
子供の人数 | 子供の年齢 | 給与所得者 | 自営業者 |
1人 | 0~14歳 | 6~8万円 | 10~12万円 |
15歳以上 | 8~10万円 | 12~14万円 | |
2人 | 全員0~14歳 | 10~12万円 | 14~16万円 |
第1子15歳以上、第2子0~14歳 | 12~14万円 | 14~16万円 | |
全員15歳以上 | 12~14万円 | 16~18万円 | |
3人 | 全員0~14歳 | 12~14万円 | 16~18万円 |
第1子15歳以上、第2子・第3子0~14歳 | 14~16万円 | 18~20万円 | |
第1子・第2子15歳以上、第3子0~14歳 | 14~16万円 | 18~20万円 | |
全員15歳以上 | 14~16万円 | 18~20万円 |
上の表は、養育費を支払う側が年収600万円で、養育費を受け取る側が無収入の場合の養育費の相場の金額をまとめたものになります。
養育費を支払う側の働き方が、サラリーマンなどの給与所得者であるか、個人事業主などの自営業者であるかによっても、金額は異なってきます。
また、子供が2人いる場合でも、その年齢に応じて、相場の金額が高くなっていくことがお分かりいただけるかと思います。
続いて、夫も妻も共働きで、養育費を支払う側の年収が600万円あり、養育費を受け取る側にも収入がある場合の相場の金額を見てみましょう。
共働きで双方に収入がある場合
養育費を受け取る側が給与所得者で、年収が仮に100万円である場合は、相場の金額は下の表の通りになります。
子供の人数 | 子供の年齢 | 給与所得者 | 自営業者 |
1人 | 0~14歳 | 6~8万円 | 8~10万円 |
15歳以上 | 6~8万円 | 10~12万円 | |
2人 | 全員0~14歳 | 8~10万円 | 12~14万円 |
第1子15歳以上、第2子0~14歳 | 10~12万円 | 12~14万円 | |
全員15歳以上 | 10~12万円 | 14~16万円 | |
3人 | 全員0~14歳 | 10~12万円 | 14~16万円 |
第1子15歳以上、第2子・第3子0~14歳 | 10~12万円 | 14~16万円 | |
第1子・第2子15歳以上、第3子0~14歳 | 12~14万円 | 16~18万円 | |
全員15歳以上 | 12~14万円 | 16~18万円 |
養育費を受け取る側にも収入がある場合は、受け取る側が無収入の場合の金額に比べ、若干低めに設定されているのが分かります。そして、受け取る側の収入が多いほど、養育費の相場の金額は低くなっていきます。
例えば、受け取る側の年収が100万円である表のケースでは、14歳未満の子供1人で支払う側が給与所得者の場合、相場は6~8万円です。この時、仮に受け取る側が年収300万円だと、養育費算定表では相場の金額が4~6万円となります。
個々の事情を総合的に考慮して養育費を決めましょう
養育費を決定する際、養育費算定表にある相場の金額は、あくまで参考となる基準に過ぎず、それがそのまま各家庭において妥当な金額であるとは限りません。実際のケースで養育費の金額を決めるためには、各家庭の具体的な事情や離婚後のそれぞれの生活などを十分に検討する必要があります。
例えば、表向きには給与収入が一定の金額に見える場合でも、実際には副業や資産運用からの収入があるかもしれません。そのため、全体の収入構造を把握することが重要です。また、収入が毎年変動する場合には、その変動が一時的なものか継続的なものか、あるいは将来的に増減が見込まれるかなど、状況を具体的に検討する必要があります。
また、養育費を受け取る側が専業主婦であっても、必ずしも収入がゼロであるとは限りません。例えば、不動産の賃貸収入や投資による利益がある場合、専業主婦といえども、こうした不労所得がある場合などは、収入があると考えて養育費の金額を考慮するべきでしょう。そして、離婚時には専業主婦でも、離婚後に就職を予定している場合などもあります。離婚後に収入が見込まれる時期や金額についても、あらかじめ検討しておくことが重要です。
さらに、子供の生活環境や必要な費用も重要な要素です。子供が特別な医療ケアを必要とする場合や、将来的な進学に備えた教育費がかかる場合には、その具体的な支出を見込んだ調整が必要です。加えて、複数の子供がいる場合、それぞれの年齢や進学状況に応じて費用が異なるため、細かく考える必要があります。
支払う側の事情も重要です。他に扶養している子供がいる場合や、住宅ローンなどの負債を抱えている場合には、養育費の支払い能力が変わります。また、高収入であれば、算定表の基準を超えた金額が求められる可能性もあります。
このように、養育費を決める際には、算定表を基準にしつつも、それぞれの家庭の状況に応じた柔軟な調整が不可欠となります。
Q&A
Q1.収入のない妻が年収600万円の夫から養育費を受け取る場合、相場の金額はいくらですか?
養育費の相場は、一般的に家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を基準に決定されます。年収600万円の夫と収入のない妻という条件で、子供が1人の場合、0~14歳であれば月額6~8万円程度、15歳以上であれば8~10万円程度が相場とされています。子供が2人以上の場合は、年齢や構成によって相場が異なり、複数人分の養育費が考慮されることになります。
Q2.年収600万円という収入条件だけで一律に養育費の金額は決まるのでしょうか?
年収だけで養育費が一律に決まるわけではありません。養育費算定表は目安として提供されていますが、具体的な金額は両親の個別事情によって調整されることがあります。例えば、夫の年収が600万円でも副収入がある場合や、毎年の収入に大きな変動がある場合には、その状況を踏まえて再計算が必要になる場合があります。また、子供の医療費や教育費といった特別な事情がある場合も、相場を超えた金額が設定されることがあります。
Q3.夫婦が共働きの場合、養育費の金額の検討でどういった事情が考慮されますか?
夫婦が共働きの場合、養育費を決める際には両親それぞれの収入が考慮されます。算定表では夫と妻の収入バランスを基に金額が決められるため、妻に収入がある場合はその金額が養育費に影響します。例えば、妻の収入が夫と同程度またはそれ以上の場合には、養育費が減額される可能性があります。一方で、妻の収入が低い場合や不安定な場合には、夫の負担が増える場合もあります。また、離婚後に妻がフルタイムで就労する予定がある場合、その将来的な収入見込みも考慮されることがあります。その他、子供が生活する環境や子供にかかる特別な費用も重要な要素として検討されます。
まとめ
年収600万円の養育費の相場について検討する際、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が一つの参考となります。しかし、算定表の金額はあくまで目安であり、実際の養育費の金額は、両親の収入状況や子供の人数、年齢、特別な事情などを総合的に考慮して決められます。
また、離婚後の経済状況や子供の生活環境によっても調整が必要な場合があります。そのため、養育費について適切な判断を下すためには、個別の事情を詳しく整理し、法的なアドバイスを受けることが重要です。
養育費に関する悩みや疑問がある場合は、弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。当法律事務所でも、離婚のさまざまな問題について初回無料で相談を行っておりますので、お気軽にお問合せいただければと思います。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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