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離婚後再婚したら養育費はどうなる?養子縁組したら減額できるの?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚後に再婚した場合、養育費はどうなるのか気になる方は多いでしょう。

元夫や元妻から支払われている養育費は、再婚や養子縁組の影響を受けるのでしょうか?特に、受け取る側が再婚した場合や養子縁組を行った場合、養育費の支払い義務がどう変わるのかは重要なポイントです。

一方で、養育費を払っている側としても、養育費を受け取る側が再婚したり、養子縁組を行った場合に、養育費の支払い義務がどう変わるのかについては、知っておきたいですよね。

そこで、この記事では、離婚後に元夫や元妻が再婚した場合に、子供の養育費の支払い義務がどうなるのか、といった疑問に着目して、弁護士が詳しく解説させていただきます。

また、離婚後に再婚した場合に、養育費を減額あるいは免除されるケースがあるのか、といった点についても、見ていきたいと思います。

離婚後に再婚を考えている方や、現在養育費を支払う側・受け取る側にある方にとって、本記事の解説が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

養育費とは?離婚後もなぜもらえるの?

離婚後に再婚した場合の養育費について見る前に、養育費の基本的な知識について把握しておきましょう。

法律上の「扶養義務」とは

民法第877条1項には、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養する義務があると定められています(扶養義務)。

(扶養義務者)

民法第877条1項
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

この扶養義務には、食費や住居費、教育費、医療費など、子供が生活するために必要な一切の費用が含まれます。「直系血族」とありますので、両親が結婚しているか離婚しているかに関係なく、子供に対する扶養義務が生じます。子供の親であることから、子供に対する扶養義務があるのです。

なお、子供の養育費については民法第766条1項に「子の監護に要する費用の分担」と明記されており、離婚協議の際に、子の利益を最優先して考慮し取り決めること、とされています。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

民法第766条1項
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

離婚後いつまでもらえる?相場の金額は?

養育費をいつまでもらえるのか

法律上、養育費を支払う年齢や期間について明確な規定はありません。養育費の支払い期間は子供の状況や家庭の経済状況により異なるため、個々のケースに応じて、個別具体的に決定されます。離婚後の養育費の支払い期間については、夫婦間の合意や家庭裁判所の判断によって決まります。

一般的には、養育費は子供が成人するまで支払うという取り決めになることが多いです。具体的には、18歳や20歳まで支払うという合意をすることが多く見られます。

また、「子供が高校を卒業するまで支払う」、「子供が大学を卒業するまで支払う」、「子供が経済的に自立できるようになるまで支払う」など、子供の教育や経済的自立に基づいた条件で養育費の支払い期間を取り決める場合もあります。

例えば、離婚しようとしている夫婦に、大学進学を希望している高校生の娘(17歳)がいるとしましょう。この場合、夫婦の話合いで、親権者は母親として、養育費は娘が大学を卒業するまで支払うという合意をすることがあります。そうすると、父親は、娘が大学を卒業するまで母親に対して養育費を支払うということになります。

養育費の相場の金額

養育費の金額は、夫婦の収入や生活費、子供の年齢や必要な支援の程度によって異なります。一般的には、養育費の金額は元夫と元妻の収入を基に計算され、具体的な金額は家庭裁判所の算定表を参考にして決定されます。

例えば、元夫の年収が500万円、元妻の年収が300万円の場合、1人の子供に対して毎月5万円から10万円程度の養育費が支払われることが多いです。この金額は、子供が成長するにつれて教育費や生活費が増加する場合には見直されることもあります。

一般的には、養育費の金額は、元夫と元妻の年収を元に計算されますが、夫婦の合意さえあれば、家庭裁判所の算定表の金額の範囲よりも高額の養育費を定めることも可能です。例えば、元夫の年収が500万円、元妻の年収が300万円であり、14歳以下の子供が1人いるとします。そうすると、1人の子供に対する養育費の金額の相場は、約4万円前後となりますが、夫婦の合意で9万円などとすることは可能です。

離婚後に再婚しても養育費はもらい続けることができる?

それでは、離婚後に再婚しても養育費をもらい続けることができるのか、養育費を受け取る側が再婚する場合と、養育費を支払う側が再婚する場合にわけて、見ていきましょう。

なお、この記事では養育費を受け取る側を元妻、養育費を支払う側を元夫としております。

元妻(養育費を受け取る側)が再び結婚した場合の支払い義務はどうなる?

養育費を受け取る側である元妻が再婚しても、原則として、元妻との子供に対する元夫の扶養義務はなくなりません。離婚後、元夫には子供に対する養育費を支払う義務が法律によって定められていますので、元妻が再婚したとしても、この義務が免除されることはありません。これは、子供の福祉を最優先に考えた法律の趣旨によるものです。

再婚後の元妻の新しい夫が、子供と養子縁組をする場合を除き、元夫の養育費支払い義務は継続されます。

養育費は、子供が成人するまで、または高校卒業や大学卒業までなど、あらかじめ取り決めた期間にわたって支払われることが一般的です。再婚により家庭の経済状況が変わったとしても、元夫には子供に対する扶養義務があり、そのため養育費の支払い義務が免除されることはありません。

また、再婚後の元妻の家庭の収入が増加した場合でも、元夫が養育費の支払い義務から解放されるわけではありません。養育費は、元夫と元妻の収入を基に算定されるものであり、元妻が再婚したからといって、元夫の義務が自動的に免除されることはないのです。

このように、元妻が離婚後に再婚した場合も、基本的には養育費をもらい続けることができます。元妻が再婚した場合でも、元夫は子供に対する養育費を支払い続ける必要があるのです。

元夫(養育費を支払う側)が再び結婚した場合の支払い義務はどうなる?

元夫が再婚すると、新たな妻との間に生じる生活費や家庭の負担が増加し、経済的な圧迫を感じることが多くなります。このため、元夫が養育費の減額を考えることもあるでしょう。しかし、再婚というだけの理由では、元妻との子供に対する養育費の支払い義務は変わりません。

養育費は、元妻との間に生まれた子供の福祉を守るために支払うものであり、元夫の再婚という個人的な事情によって支払い義務が免除されることはありません。法律は子供の安定した生活を第一に考えており、元夫が再婚したからといって養育費の支払いがなくなるわけではないのです。

元夫が新たな家庭を持つことによって増加する支出は、元夫自身が管理すべき問題であり、元妻との子供に対する責任とは切り離して考えなければなりません。

再婚によって養育費が減額・免除になるケース

以上の通り、子供に対する扶養義務と、元配偶者の再婚とは別問題なので、元夫や元妻の再婚が養育費の支払いに影響することは、原則としてありません。

ですが、次のような場合には、元配偶者の再婚によって養育費が減額・免除になる可能性があります。一つずつ、具体的に見ていきましょう。

1.親権者(元妻)の再婚相手と子供が養子縁組をした場合

子供の養育費を受け取っている元妻が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組をした場合、養育費が減額または免除される可能性があります。

養子縁組とは、法律的に親子関係を成立させる制度です。養子縁組の要件などについては、民法第792条以下に具体的に規定されています。

また、民法第809条の規定により、養子縁組をした子供は、養子縁組をした日から、母親の再婚相手の嫡出子としての身分を取得することになります。

(嫡出子の身分の取得)

民法第809条
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

そのため、再婚相手が子供と養子縁組をすることによって、元夫ではなく再婚相手が子供の第一次的な扶養義務者となるのです。

しかし、養育費が自動的に減額または免除されるわけではありません。再婚相手の収入状況や経済力、労働することができるか、といった事情を考慮して判断することになります。例えば、再婚相手が無職で収入がなく、経済的に扶養義務を果たすことができない場合には、養育費の減額が認められないこともあります。

具体的なケースとして、再婚相手が安定した収入を持ち、経済的に子供を養育する能力がある場合には、元夫の養育費を支払う義務が軽減されることがあります。

しかし、再婚相手が仕事を持っていない、または収入が不安定な場合には、養育費の減額は難しいでしょう。子供の福祉を最優先に考えるため、元夫が引き続き養育費を支払う必要があると判断されることも多いです。

また、再婚相手が収入を得ていても、その収入が十分でない場合には、養育費の全額免除は難しく、減額にとどまることも考えられます。

いずれにしても、親権者や元夫、元妻は、子供の福祉を守るために、再婚相手の状況を正確に把握し、適切な対応をすることが求められます。

このように、親権者の再婚相手と子供が養子縁組をした場合には、養育費が減額または免除される可能性がありますが、その判断は再婚相手の収入状況や経済力によって左右されます。そのため、親権者の再婚相手と子供が養子縁組をしたからといって、当然に養育費が減額または免除されるわけではないということに注意しましょう。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組をしたことを理由に、養育費の減額が認められた実際の裁判例(千葉家裁平成29年12月8日)をご紹介します。

この事案は、元夫である申立人が元妻である相手方に対して、裁判上の和解で取り決めた養育費について,その後の事情変更(相手方の再婚相手と事件本人らとの養子縁組及び申立人の減収)を理由として、養子縁組にした日以降の養育費を零円に変更することを求めた事案です。より簡単にまとめると、離婚した夫婦の間で、長男と長女の養育費について、子供1人につき2万円を毎月支払うと決めていたのに、その後に、養育費を受け取っている元妻がCと再婚し、再婚相手であるCが子供と養子縁組をしたという事情の変更を理由に、元夫が養育費を0円に減額したいと主張した事件です。

裁判所は、「相手方は,・・・Cと再婚し,長男及び長女は,同日,Cと養子縁組をしていることから,同日以降長男及び長女の扶養義務は第一次的には相手方及びCが負うことになる・・・原則として,反射的に申立人は養育費の支払義務を免れることになったというべきであり・・・例外として,相手方及びCの基礎収入が最低生活費(相手方,C,長男及び長女を含む子ら全員分)を下回り,長男及び長女の養育費が不足する場合に,当該不足分に限り申立人が養育費を負担するものと解される。」と判示しています。つまり、元妻の再婚相手のCが、長女と長男と養子縁組をしている以上は、長男と長女の扶養義務は第1次的には、再婚相手のCと元妻が負うことになり、例外的な場合を除いて、元夫は養育費の支払い義務を免れると判断しているといえます。

2.非親権者(元夫)と再婚相手の間に子供ができた場合

非親権者である元夫が再婚し、再婚相手との間に新たに子供ができた場合、元夫が元妻との間の子供に対して支払う養育費を減額できる可能性があります。これは、再婚相手との間に生まれた子供に対しての扶養義務が生じるためです。

具体的には、元夫が再婚相手との間に子供を持つと、その子供に対しても扶養する義務が生じ、家庭の経済的負担が増えることになります。このため、元妻に対する養育費の支払いが経済的に厳しくなる場合があります。しかし、単に新しい子供が生まれたという事実だけで、自動的に養育費が減額されるわけではありません。

元夫と再婚相手との間に新しい子供が生まれた場合、養育費の減額が認められるかどうかは、元夫の収入状況や経済力、家庭全体の経済状況を総合的に判断して決められます。例えば、元夫が十分な収入を持っており、新しい子供に対する扶養義務を果たしつつ、元妻に対する養育費を支払うことが可能であれば、養育費の減額は認められないことがあります。

一方で、元夫の収入が限られており、新しい子供の養育に伴う経済的負担が大きい場合には、養育費の減額が認められることがあります。

また、再婚相手の収入も考慮されます。再婚相手が働いていて安定した収入を持っている場合には、家庭全体の収入が増えるため、元夫が支払う養育費の減額が認められないことがあります。一方、再婚相手が専業主婦で収入がなく、病気などで働けないといった事情があるような場合には、元夫の収入だけで新しい子供と元妻との子供の両方を扶養する必要があるため、養育費の減額が認められる可能性が高くなります。

そして、いずれの場合でも、子供の福祉を最優先に考慮することが求められます。元妻に対する養育費の支払いが子供の生活に重要な役割を果たしている場合、減額が認められる範囲は限られることがあります。

3.非親権者(元夫)が再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合

 

3.非親権者(元夫)が再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合

 

元夫が再婚するケースにおいて、再婚相手の連れ子と元夫が養子縁組をする場合もあるでしょう。

養子縁組とは、法律上の親子関係を成立させる手続きであり、再婚相手の子供に対する扶養義務が元夫に生じることになります。これにより、元夫の経済的負担が増えるため、養育費の減額が認められる可能性があります。

養育費の減額が認められるかどうかは、再婚相手の子供に対する元夫の扶養義務と、元妻に対する養育費支払い義務のバランスが重要です。再婚相手の子供が養子縁組により元夫の扶養家族となるため、元夫の収入や経済状況が大きな影響を与えます。例えば、元夫が再婚相手の子供に対する養育費を支払うことで、元妻に対する養育費の支払いが困難になる場合には、減額が認められることがあります。

ですが、元夫が、再婚相手の子供を養子縁組したという事情だけで、元妻に対する養育費の減額や免除が当然に認められるわけではありません。養育費は、子供の養育のために必要なものであるため、養育費の減額や免除は慎重に判断されることになります。

また、再婚相手の収入状況も考慮されるため、再婚相手が安定した収入を持っている場合には、元夫の養育費が減額される可能性は低くなります。一方、再婚相手が無職で収入がない場合や、経済的に自立できない場合には、元夫の経済的負担が大きくなり、養育費の減額が認められることが考えられます。

再婚相手の収入に左右される?

再婚相手の収入は、養育費の減額や免除に影響を与える重要な要素となります。

例えば元夫が再婚し、新しい妻が高収入である場合には、家庭の全体的な経済状況が改善されるため、元夫が支払う養育費の減額が難しくなる可能性があります。一方で、再婚相手が無職で収入がない場合には、元夫の経済的負担が大きくなるため、養育費の減額が認められる可能性があります。

元夫が再婚相手の収入が高い場合には、家庭全体の経済力が増し、元妻に支払う養育費を減額する必要がなくなることがあります。この場合、法律は子供の福祉を最優先に考慮し、養育費の支払い義務が継続されることが多いです。一方、再婚相手が専業主婦で収入がない場合、元夫が全ての経済的負担を負うことになるため、養育費の減額が検討される場合があります。

再婚相手の収入が中程度の場合でも、その収入が家庭全体の経済状況にどう影響するかが重要です。再婚相手の収入が元夫の経済負担を軽減するものであれば、養育費の減額が認められない可能性があります。再婚相手が働いているが、その収入が家庭の基本的な生活費をまかなう程度であれば、元夫が支払う養育費の金額が減額されることも考えられます。

また、再婚相手の収入が不安定であったり、一時的な収入源である場合には、元夫の経済状況に大きな影響を与えないため、養育費の減額が難しいこともあります。再婚相手の収入が元夫の経済状況に与える影響を総合的に判断し、養育費を支払う義務がどのように調整されるべきかが決定されます。

いずれにしても、養育費の減額や免除を求める際には、再婚相手の収入状況を詳しく把握し、それを基に協議や離婚調停を行うことが重要です。勝手に養育費を打ち切ることは避けるべきであり、法的な手続きを踏むことが求められます。

このように、再婚相手の収入は、元夫の養育費を支払う義務に大きな影響を与えることがあります。適切な手続きを経て、子供の福祉を第一に考えた上で、養育費の減額や免除について検討することが重要です。

勝手に打ち切りにせず、協議や調停で減額・条件変更の交渉を

養育費の支払いについて、元夫や元妻の経済状況や再婚後の家庭環境が変わったとしても、一方的に養育費を打ち切ることは適切ではありません。養育費は子供の福祉を守るために重要であるため、支払う義務があります。元夫や元妻が独断で養育費を減額したり、支払いを停止したりすることは避けるべきです。

例えば、元夫が再婚し、新しい妻との間に子供が生まれた場合、家庭の経済的負担が増えることがあります。

こうした場合に、元夫が養育費の減額や免除を求めたい場合には、まず元妻と協議を行うことが必要です。養育費についての話し合いは、感情的にならないよう、冷静に努めましょう。

協議により合意が得られない場合には、調停を通じて正式に減額や免除の交渉を進めることになります。

調停では、双方の経済状況や再婚後の家庭環境を考慮して、公平な判断が下されます。調停委員が元夫と元妻の双方の主張を聞き、子供の最善の利益を考慮した上で、養育費の適切な額について調整を行います。

また、養育費の減額や免除が認められた場合でも、それは一時的なものであり、元夫や元妻の経済状況が再び変わった場合には、再度見直しが行われることがあります。例えば、元夫の収入が大幅に増加した場合や、再婚相手の収入が安定した場合、無職だった元妻が働き始めて一定の収入を得た場合などには、再度養育費の増額が求められることもあります。

このように、養育費の支払いに関しては、一方的に打ち切ることなく、協議や調停を通じて適切に対応することが重要です。子供の福祉を第一に考え、公平な解決を目指すために、法律に則った手続きを踏むことが求められるのです。養育費の問題を円満に解決するためには、元夫と元妻の協力が不可欠です。

再婚によって扶養義務者が増えた場合、例えば新しい妻が収入を持ち、家庭の経済状況が改善されたとしても、一方的に養育費を打ち切るのではなく、適切な手続きを経て調整を行うことが重要です。子の福祉の観点からも、様々な事情を考慮した上で、慎重に判断するべきです。こうした場合でも、元夫と元妻が協力し、子供の最善の利益を守るために努力することが求められます。

離婚後に結婚したことを元配偶者に報告する義務はある?返還請求できる?

ところで、離婚後の元配偶者の状況については、大抵の場合は疎遠になりますので、正確に把握している人は少ないかと思います。

「わざわざ再婚したことを知らせる必要もないだろう。」と考えて、知らせない人も多いかもしれません。

実際に、離婚後に元配偶者に再婚を報告しなければならない、といった法律上の決まりもありません。そのため、例えば元妻の再婚や、再婚相手と養子縁組したことを知らずに、養育費を支払い続けていた、というような場合もあるでしょう。

こうした場合に、元配偶者が再婚していたなら養育費を減額できたかもしれないと考え、多く支払った養育費を返還してほしいと思うかもしれません。

ですが、現実的には養育費の返還請求は難しいとされています。基本的に、養育費についての支払い条件などの取り決めは離婚協議や離婚調停で行われますが、この合意内容は変更手続きを行うまで維持されることになります。

そのため、元配偶者が再婚したことにより、養育費の支払いが不要だろうと思われるような状況になったとしても、自動的に養育費が減額されることはありません。養育費の支払い条件の変更には、協議や調停による合意、裁判による判断が必要です。

ただし、元妻が意図的に再婚を隠していた場合や、再婚相手との養子縁組が行われていたにもかかわらずその事実を知らせなかった場合には、返還請求が認められる可能性もあります。例えば、元夫が「再婚した?」と確認したのに、元妻が再婚の事実を隠して養育費を受け取り続けていた場合、元夫の養育費の返還請求が認められる可能性があります。

なお、養育費の返還請求や条件の変更については、一人で判断せず、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

養育費については離婚協議書や公正証書にしておきましょう

養育費の支払いを確実にするためには、離婚協議書や離婚公正証書を作成することが重要です。これにより、養育費の支払いに関する取り決めが明確になります。

離婚協議書は、離婚に際して元夫と元妻が協議して取り決めた内容を文書にまとめたものです。特に養育費については、支払う額や支払いのタイミング、支払い期間などを詳細に記載します。これにより、後々のトラブルを避けることができ、元夫や元妻の双方が安心して子供の養育に専念できるようになります。養育費は、子供の養育のために必要な費用ですので、明確に定めておくことをおすすめします。

さらに、離婚協議書を離婚公正証書にすることをおすすめします。離婚公正証書は、公証役場で公証人が作成する公的な文書であり、法的な強制力があります。元夫や元妻が養育費の支払いを怠った場合、離婚公正証書があれば、裁判所を介さずに強制執行手続きを行うことが可能です。元夫や元妻が、養育費の支払いを怠った場合には、元夫や元妻の預貯金や必要に応じて給料債権を差し押さえることにより、強制的に養育費の支払いを実現させることができます。これにより、養育費の支払いを確実にし、子供の生活を安定させることができます。

例えば、元夫が再婚して新しい妻との間に子供が生まれた場合でも、離婚公正証書に基づく養育費の支払いの義務は変わりません。再婚後も養育費をもらい続けるためには、離婚公正証書が大きな助けとなります。また、法律に基づいた正式な文書であるため、元夫や元妻の双方にとって公平な取り決めとなり、養育費の支払いに関する紛争を避けることができます。

そして、離婚後に元夫や元妻の事情が変更した場合にも、養育費の減額・免除についての協議を行ったら、協議書や公正証書を作成しておくことを推奨いたします。

離婚協議書や離婚公正証書の作成方法・手続きや効果については、こちらの関連記事をご覧ください。

[離婚協議書とは?法的効力や書くべき内容、注意点を弁護士が解説]

[離婚協議書と公正証書|それぞれの意味や両方の違いを解説]

Q&A

Q1.離婚後に再婚した場合、養育費はどうなりますか?

離婚後に再婚しても、基本的には元夫が支払う養育費をもらい続けることができます。養育費の支払いは法律で定められた子供の権利を守るためのものですので、再婚したという事情だけによって養育費の支払い義務が自動的に消えるわけではありません。

Q2.元妻の再婚相手が養子縁組をした場合、元夫が支払う養育費はどうなりますか?

元妻が離婚後に再婚し、その再婚相手が子供と養子縁組をした場合、元夫が支払う養育費が減額または免除される可能性があります。養子縁組によって再婚相手に扶養義務が生じるためです。ただし、具体的な状況により判断されるため、元妻の再婚相手が養子縁組をしたという事情だけで、養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。そのため、元妻の再婚相手が子供の養子縁組をしたということを知ったとしても、協議などをすることなしに、養育費を支払わなくても良いということにはならないので、注意が必要です。

Q3.元妻の再婚を知らずに養育費を支払っていました。返還してもらえますか?

元妻が再婚した事実を知らずに養育費を支払い続けていた場合でも、原則として支払った養育費を返還してもらうのは難しいでしょう。養育費は子供の福祉を守るためのものであり、元妻が再婚したとしても、その時点までに支払われた養育費は子供の養育に使用されるべきものと考えられます。再婚後の養育費の見直しや減額を求める場合には、元妻と協議を行い、合意に達しない場合は調停を通じて解決を図ることが必要です。再婚の事実を確認した時点で、速やかに法律に基づいた対応を行うことが重要です。

法律事務所の弁護士にご相談ください

離婚後に再婚しても、元夫や元妻が養育費をもらい続けることは可能です。養育費の支払いは子供の福祉を守るために法律で定められた重要な義務です。再婚によって家庭の状況が変わった場合でも、養育費の支払い義務は基本的には変わりません。

再婚相手が子供と養子縁組をした場合や、元夫や元妻の収入が大幅に変わった場合など、特定の状況では養育費の見直しが必要となることもあります。このような場合には、元夫や元妻との協議や調停を通じて、公平に養育費の金額や支払い方法を再評価することが大切です。

養育費の取り決めを確実にするためには、離婚協議書や離婚公正証書を作成することを強くおすすめします。これにより、養育費の支払いが明確になり、後々のトラブルを避けることができます。

そして、こうした養育費に関する手続きについては、専門的な法律の知識や理解が重要です。

自身や元配偶者の再婚や経済状況の変化などにより、養育費の支払いについて疑問や不安が生じた場合には、なるべく早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

当法律事務所でも、離婚後の養育費についてのご相談をお受けしております。初回の法律相談は相談料無料とさせていただいておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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