親権者変更調停|離婚後に子供の親権を変更する申し立て手続きの方法
離婚後の親権者変更は、子供の最善の利益を考慮した重要な手続きです。元妻や元夫の生活状況や健康状態の変化、子供の成長に伴うニーズの変化など、さまざまな理由から親権者変更が必要になることがあります。
このような場合、家庭裁判所を通じた調停手続きを経て親権者の変更が行われます。
そこでこの記事では、親権者変更調停の基本的な手続きの流れや、申し立てに必要な書類といった基本的事項について、弁護士が詳しく解説させていただきます。
また、親権者変更調停で親権者の変更が認められるためには、申し立てるにあたってどういった理由が必要なのか、といった点にも触れていきたいと思います。
この記事が、離婚後の親権者変更の手続き方法についての理解を深めるために、少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
離婚後に子供の親権を取り戻す方法はある?
離婚時には、夫婦間の話し合いで合意して親権者を決めることが一般的です。
しかし、離婚後に生活環境や健康状態などの事情が変わり、親権者としての役割を果たすことが子供の最善の利益に適わなくなる場合があります。
例えば、離婚後に親権者である母親が重病を患い、長期間の治療や入院が必要となる場合や、親権者である父親が離婚後に新しい仕事の都合で長期間海外に赴任することになり、子供と一緒に暮らせない場合などです。このような状況では、離婚後に親権者の変更が必要になることがあります。
こういった場合に、親権者でない方の子供の親は、親権を取り戻すことを検討するかもしれません。
離婚後に、子供の親権を取り戻すことは可能なのでしょうか。また、子供の親権を取り戻すための方法は、父親・母親の話し合いだけで足りるのでしょうか。
離婚後は父親・母親の合意だけで親権者を変えることはできない
この点、離婚の際には父親と母親が協議して合意すれば、親権者を記載した離婚届を提出するだけで親権者を定めることができるため、離婚後も父親と母親が話し合って合意すれば良い、と認識している人が少なくありません。
ですが、離婚後に親権者変更することが必要な場合でも、父親と母親の合意だけでは、親権者を変えることは認められません。
離婚後に親権者を変更するには、家庭裁判所で行われる親権者変更調停という手続きを経る必要があります(民法第819条6項)。これは、離婚時に一度決めた親権者を離婚後に簡単に変更してしまうことを認めると、子どもの福祉の安定に悪影響を与えると考えられているためです。
民法第819条6項
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
たとえ離婚協議書に「子供が10歳になったら親権者を父親から母親に変更する」などと記載していたとしても、子供が10歳になった時にこの離婚協議書の合意だけでは親権者変更をすることはできません。
法律は、親権者が頻繁に変わることが子どもの生活環境や心理に大きな負担を与えると考え、親権の安定を重視しているのです。
子を認知した父親を親権者に指定するのは父母の合意でOK
なお、もともと子供の父親と母親が婚姻していない場合に、子供を認知した父親を親権者に指定するための手続きは、家庭裁判所を介す必要はありません。子供を認知した父親と母親が合意し、市区役所に親権者指定届を届出ることで、親権者を父親に指定することができます(民法第819条4項)。
民法第819条4項
父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
また、離婚後に生まれた子供について、父親を親権者に指定する場合も、父母の合意によって父親を親権者に指定することが可能です(民法第819条3項)。
民法第819条3項
子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
このように、親権者変更の手続きと、親権者指定の手続きは明確に区別されているため、注意してください。
親権者変更の方法と流れ
それでは、離婚後の親権者変更の手続き方法である親権者変更調停の申し立て手続きについて、詳しく見ていきたいと思います。
家庭裁判所で親権者変更調停を申し立てる手続き方法・要件
親権者変更調停を申し立てるためには、家庭裁判所に対して親権者変更の調停申し立て手続きを行う必要があります。
親権者変更の手続きを開始するためには、家庭裁判所に対して親権者変更調停の申立書を提出します。この申立書には、親権者変更を求める理由や、現在の親権者の状況、子供の生活状況などを詳細に記載します。また、申立書には、本記事で後述する必要書類を添付します。
親権者変更調停を申し立てる家庭裁判所は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。もっとも、父母の間で「親権者変更調停は母親の住所地の家庭裁判所で行おう」と取り決めておくことも可能です。
親権者変更調停の要件
親権者変更調停の要件は、「親権者を変えることが子供の最善の利益に適うものであること」です。
家庭裁判所は、親権者変更が子供にとってどのような影響を及ぼすかを慎重に判断します。親権者変更を申し立てる側は、現在の親権者では子供の生活や成長に重大な支障があることを具体的に証明する必要があります。
親権者変更を申し立てる理由も重要です。一般的には、親権者の生活状況の大きな変化や健康問題、子供の成長に伴う環境の変化などが挙げられます。
例えば、親権者である母親が重病を患い、長期間の治療や入院が必要となる場合や、親権者である父親が仕事の都合で海外に長期間赴任することになり、子供と一緒に生活できなくなる場合などです。このように、子供の監護態様について、離婚時の合意と異なる事情が生じた場合など、親権者を決めるに当たって前提とされた事情に変更があることを理由として主張することも考えられます。
また、親権者変更を申し立てる際には、申立人が親権者変更後の具体的な生活プランを示すことも重要です。例えば、変更後に子供の生活環境がどのように改善されるか、子供の教育や医療がどのように確保されるかなどを明確に説明する必要があります。
実際の裁判例(千葉家裁市川出張所平成30年 1月31日)において、「民法819条6項は,『子の利益のため必要があると認めるとき』に親権者の変更を認める旨規定しており,・・・親権者変更の必要性は,親権者を指定した経緯,その後の事情の変更の有無程度と共に,当事者双方の監護能力,監護の安定性,未成年者の状況及びその他諸般の事情を具体的に考慮して,最終的には,未成年者の利益及び福祉の観点から決せられるべきである。なお,監護の安定性は,現在の監護の状況のみならず,出生から現在に至るまでの全体から検討するのが相当である。」と判示されており、親権者を変えることが子供の最善の利益に適うものであるかどうかを重視していることがわかります。
相手方が行方不明の場合
ところで、離婚後に相手が引っ越したり、連絡先が変わったりするなどして、相手方と連絡が取れず、行方が分からなくなってしまうような場合もあるでしょう。
このような場合には、当事者である父母が家庭裁判所で話し合う「調停」の手続き方法を取ることができません。
そのため、親権者変更調停を申し立てるのではなく、親権者変更の審判を申し立てることになるでしょう。
調停の流れと必要書類(申立書・戸籍謄本等)
親権者変更調停の流れ
親権者変更調停の流れは、家庭裁判所に親権者変更調停の申立書と必要書類を提出することから始まります。申立書を提出すると、家庭裁判所で調停期日が決まり、その後、申立人と相手方の双方に呼出状が届きます。
調停期日には、申立人と相手方が家庭裁判所に出席し、調停委員を介して話し合いを行います。申立人は、調停委員に対して、親権者変更の理由を具体的に説明することになります。そして、調停委員は相手方からも話を聞くので、相手方の反論や意見も踏まえて議論が進められていくことになります。この際、調停委員は中立の立場で両者の主張を聞き、公正な解決を目指します。
話し合いの中で、親権者変更を求める理由として、例えば親権者である母親が重病で長期入院が必要となるといった事情や、親権者である父親が仕事の都合で海外に長期間赴任することになり、子供と一緒に生活できないといった事情などが考慮されます。これらの事情がある場合には、子供の監護態様について、離婚時の合意と異なる事情が生じたり、親権者を決めるに当たって前提とされた事情に変更があると判断されることがあります。
親権者変更調停では、現在の養育状況や両親の経済力、子供の年齢や性別、就学状況といった事情も判断材料のひとつになります。そのため、家庭裁判所の調査官による調査が行われることもあります。
また、親権を定めるにあたって、子供の意見も尊重される場合があります。たとえば、子供の年齢が15歳以上であれば、子供本人の意見も考慮されますし、15歳未満であっても、子供の意見が考慮されることがあります。
必要書類
親権者変更調停の申し立てに必要な書類は、一般的には次の通りです。
- 親権者変更調停の申立書
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
また、これ以外にも、審理のために家庭裁判所が必要だと判断した場合には、追加で書類を提出しなければなりません。
親権者変更調停にかかる期間・費用
次に、親権者変更調停にかかる期間と費用について説明いたします。
親権者変更調停にかかる期間はどれくらい?
親権者変更調停の進行ペースは、個々のケースによって異なります。
例えば、親権者変更をすることについて、父親と母親があらかじめ合意している場合には、当事者の意見が対立して揉めることもないため、家庭裁判所が書面による簡易的な審理を行い、親権者変更調停が早期に成立する場合が多いです。早ければ、1ヶ月か2ヶ月程度で親権者変更調停が終了することもあります。
一方で、父親と母親の間で親権者変更をすることについて意見が対立しているようなケースでは、複数回に渡って期日が開かれることになります。そうすると、親権者変更調停の申立書を提出してから親権者変更調停が成立するまで、数ヶ月から1年程度の期間を要することがあります。
例えば、親権者を父と定めて離婚した場合に、離婚後に母親が親権者変更をしたいと思ったとしても、親権者である父親が親権者の変更に反対している場合には、親権者変更調停が成立するまで、ある程度長期間を要したり、調停が不成立になる場合があるのです。
このように、親権者変更調停にかかる期間は、申立人と相手方との間で親権者変更についての合意が形成されているか、といった事情・状況に応じて変動するのです。
親権者変更調停の申し立てにかかる費用
親権者変更調停の申し立てにかかる費用は、大きく分けて「収入印紙」と「連絡用の郵便切手」の2つです。
収入印紙については、子供1人につき1200円が必要とされています。
連絡用の郵便切手は、申し立てをする家庭裁判所によって、金額や枚数の組み合わせが異なる場合があるため、親権者変更調停の申し立てをする家庭裁判所に確認してください。
各家庭裁判所のホームページにおいて、親権者変更調停にかかる費用について掲載されていることもありますが、家庭裁判所の担当窓口に電話などで問い合わせて確認することも可能です。
調停不成立の場合は審判に移行します
親権者変更調停が不成立となった場合には、自動的に親権者変更の審判手続きに移行することになります。
親権者変更の審判手続は家庭裁判所で行われ、父親と母親双方の合意がなくても、家庭裁判所の裁判官が親権者変更についての結論を下します。
家庭裁判所から送達される審判書を受け取ってから、14日以内に即時抗告を行わない場合は、審判が確定します(家事事件手続法第86条1項)。
家事事件手続法第86条1項
審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
審判書の内容に不服がある場合には、14日以内に即時抗告を行う必要があることに注意をしましょう。
調停成立後は役所で親権者変更の届出を行います
親権者変更調停が成立したときは、調停調書が交付されます。また、親権者変更の審判の場合は審判書謄本と確定証明書が交付されます。
この親権者変更の手続きによって子供の親権者となった親は、親権者が変更したという旨を、調停成立(もしくは審判確定)した日から10日以内に、市区役所等に届出なければならないとされています(戸籍法第79条、戸籍法第63条1項)。
戸籍法第79条
第63条第1項の規定は、民法第810条第3項ただし書若しくは第4項の協議に代わる審判が確定し、又は親権者変更の裁判が確定した場合において親権者に、親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消しの裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者について準用する。戸籍法第63条1項
認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
親権者変更の届出の書式は、市区町村のホームページや窓口などで入手することが可能です。「親権者変更届」や「親権(管理権)届」などの名称の場合もあります。
親権者変更届のほか、必要に応じて次の書類を添付して提出します。
- 調停調書(親権者変更調停が成立した場合)
- 審判書謄本と確定証明書(親権者変更の審判で確定した場合)
- 父親と母親の戸籍謄本
- 子供の戸籍謄本
- 印鑑
どんな条件を満たせば認められる?親権者変更の理由
さて、親権者変更の調停や審判手続きを行い、その変更請求が認められるためには、①親権者を変えることに合理的な理由があり、②親権者を変えることが子供の福祉に資するものであること、を示す必要があります。
具体的には、次の5つの理由のいずれかに該当する場合は、親権者変更の調停や審判手続きにおいて親権者変更が認められる可能性が高いです。
1.親権者による育児放棄や虐待がある場合
親権者変更の調停や審判で親権者変更が認められる重要なケースの一つに、親権者による育児放棄や虐待がある場合が挙げられます。親権者が子供の世話を怠ったり、精神的・身体的な虐待を行っている場合、子供の安全と福祉が最優先されます。このような状況では、家庭裁判所に親権者変更を申し立て、子供を保護するために迅速な対応が求められます。
育児放棄とは、親権者が子供の基本的な生活の世話や教育を放棄することを指します。
例えば、食事を与えなかったり、清潔な生活環境を提供しなかったりすることが育児放棄に該当します。
また、虐待は身体的な暴力だけでなく、精神的な虐待や無視、言葉の暴力も含まれます。親権者がこのような行為を行っている場合、子供の健全な成長が阻害されるため、親権者変更が必要となります。
親権者変更の手続きでは、育児放棄や虐待の事実を証明するために、証拠資料や証人の証言が重要です。
例えば、医師の診断書や学校の先生からの報告書、近隣住民の証言などが有力な証拠となります。家庭裁判所はこれらの証拠を基に、子供の最善の利益を考慮して親権者変更の判断を行います。
このように、親権者による育児放棄や虐待がある場合は、親権者変更が認められる可能性が高いです。子供の安全と健康を守るために、親権者変更の申し立てを行うことが重要なのです。
2.親権者が病気で養育が難しい場合
親権者が病気で養育が難しいという理由がある場合も、親権者変更の調停や審判で親権者変更が認められる可能性があります。
例えば、親権者である母親が長期にわたる入院や治療が必要な場合、子供の面倒を十分に見ることができなくなります。母親が日常的な養育を続けることができない場合、子供の生活環境が不安定になり、健康や学業にも影響が出る可能性があります。
このような状況では、親権者変更を申立て、他の親や親族が親権を引き継ぐことで、子供の安定した生活環境を確保することが重要です。
また、親権者である父親が精神的な疾患を抱え、子供の健全な育成に支障をきたす場合も親権者変更の理由となります。精神的な疾患により、父親が子供とのコミュニケーションや適切な養育を行うことが困難な場合、家庭裁判所は子供の福祉を第一に考え、親権者変更を検討します。
親権者変更の手続きを進める際には、病気の診断書や医師の意見書などの証拠書類が必要となります。これらの証拠を基に、家庭裁判所は親権者変更の必要性を判断します。
3.養育環境が大きく変わる場合
親権者変更が認められるケースの一つに、養育環境が大きく変わる場合があります。親権者の生活環境や経済状況が大きく変化し、子供の福祉や安全が損なわれる可能性がある場合、家庭裁判所は親権者変更を検討します。親権者変更は、子供の安定した生活環境を維持し、健全な成長を支援するために必要とされます。
例えば、親権者である父親が急に失職し、収入が大幅に減少して子供の生活に必要な費用を賄うことが難しくなった場合、この状況は養育環境の大きな変化とみなされます。子供が必要な教育や医療を受けられない事態になれば、家庭裁判所は親権者変更を検討し、子供の最善の利益を守るために適切な親権者を選定します。
また、親権者である母親が新たなパートナーと同居するようになり、そのパートナーとの関係が子供に悪影響を及ぼす可能性がある場合も、親権者変更が考慮されます。
例えば、新しいパートナーが子供に対して不適切な行動を取る場合や、生活環境が不安定になる場合、子供の安全と福祉を最優先にするために、親権者変更が必要となります。
ここで重要なのは、単なる養育環境の変化では、調停や心配で親権者変更が認められないということです。「子供の福祉や安全が損なわれる可能性がある」養育環境の変化に限られるため、単に「再婚したので子供の親権を譲りたい」、といった養育環境の変化を理由にした親権者変更は、認められないでしょう。
4.親権者が死亡した(行方不明になった)場合
親権者変更が認められるケースの一つに、親権者が死亡した場合、行方不明になった場合があります。
親権者が死亡すると、残された親や適切な保護者が新たに親権者として子供を養育する必要が生じます。親権者変更は子供の安定した生活環境を確保し、将来的な成長と幸福を支援するために重要な手続きです。
なお、親権者が死亡した場合には、まずは「未成年の後見」が開始されます(民法第838条1号)。
民法第838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
そのため、親権者が死亡した(又は行方不明になった)からといって、残った他方の親が自動的に親権者になるわけではない、ということに注意してください。
ですので、親権者が死亡した場合、新たに親権者になろうとする親は、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行い、親権者を変更をした方が子供の福祉に適合した環境となることを主張立証しなければなりません。
親権者である母親が、子供を施設に預けて行方不明になったので、父親が子供の親権を父親に変更することを求めたという裁判例(大阪家裁昭和39年 6月17日)を紹介いたします。裁判所は、「離婚のさい親権者と定められた親が所在不明となり、子に対し親権を行使することができない状態にあるからといつて、それが後見開始原因になるは格別、当然に他方の親に親権者を変更すべき原因になるものとはいえない。親権者の変更は子の福祉、利益のために必要な場合に限定されるのであつて、本件の場合、申立人が上記の如き生活環境にあり、未成年者との関係も上記のとおりである以上、親権者変更を必要とする場合に該当するものとはいえない。申立人において、自己が親権者になることを欲するのであれば、まず未成年者の福祉に適合するような生活環境、父子関係を作るべきである。結局現在のところ未成年者の親権者を相手方から申立人に変更することが、未成年者の利益のため必要あるとは認めることができない。」と判断し、母親が行方不明になったとしても、現在の子供の生活環境が未成年者の福祉に適合するものであれば、当然に父親に親権者が変更されるのではないということを判断しています。
5.子が15歳以上だと子供の意思も尊重されます
子が15歳以上の場合は、親権者変更の手続きにおいて子供の意思も尊重されます。
15歳以上の子供は、自分の生活環境や親との関係についてしっかりとした考えを持っていることが多く、その意見を無視することは子供の福祉に反する可能性があります。
例えば、子供が現在の親権者との関係が悪化している場合や、別居中の親との関係が良好であり、そちらでの生活を希望している場合などが考えられます。
一方で、自身にとって適切な親権者を選ぶ判断能力がない、と考えられるような年齢の子供の場合は、家庭裁判所が子供の最善の利益を第一に考えて、親権者変更を判断します。この場合、子供の年齢や発達段階を考慮し、家庭環境や親の養育能力などの客観的な要素が重視され、幼い子供の意思は15歳以上の子供の意思ほど重視されないことが一般的です。
親権者変更に関するQ&A
Q1.親権者変更はどのような場合に認められますか?
親権者変更が認められるケースには、以下のような状況があります。
- 親権者による育児放棄や虐待がある場合。
- 親権者が病気で養育が難しい場合。
- 養育環境が大きく変わる場合。
- 親権者が死亡した場合。
- 子が15歳以上で、子供の意思が尊重される場合。
Q2.親権者変更の手続きはどのように行われますか?
親権者変更の手続きは、家庭裁判所を通じて行われます。まず、申立書を提出し、必要な書類を揃えます。家庭裁判所は調停期日を開き、裁判官が両親の主張や証拠を基に親権者変更の是非を判断します。必要に応じて、調査官による調査も行われます。調停不成立の場合は審判に移行します。調停や審判を通じて、親権者変更の妥当性が判断されます。
Q3.親権者変更の調停や審判が確定したら、自動的に戸籍上も新しい親権者になっていますか?
親権者変更の調停や審判が確定しても、自動的にその新しい親権者になっているわけではありません。
新たな親権者となった親は、その旨を調停成立・審判確定の日から10日以内に、市区役所等の窓口に届出なければなりません。この親権者変更の届出をすることによって、正式に子供の戸籍にも親権者変更が反映されます。
当法律事務所の弁護士にご相談ください
親権者変更は、子供の最善の利益を守るために非常に重要な手続きです。
親権者による育児放棄や虐待、親権者の病気、養育環境の大きな変化など、さまざまな理由で親権者変更が必要となることがあります。
離婚後に親権者変更の手続きを進める際には、家庭裁判所を通じた調停や審判が必要であり、適切な証拠や書類を揃えることが求められます。
家庭裁判所は、子供の福祉を最優先に考え、親権者変更が子供の安定した生活環境と健全な成長を支えるものであるかどうかを慎重に判断します。そして、親権者変更の調停が不成立となった場合でも、審判によって親権者変更についての決断が下されます。
親権者変更が認められた後は、速やかに役所での届出を行い、法的な手続きを完了させることが重要です。
親権者変更は複雑な手続きであるため、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
法律事務所では、親権者変更に関する相談や手続きのサポートを行っており、弁護士が親権者変更をスムーズに進めるためのアドバイスを提供します。
親権者変更を検討されている方は、まずは当法律事務所にご相談いただければと思います。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。