父親が親権を離婚で獲得するための条件や有利なケースを弁護士が解説
離婚時にはさまざまな離婚条件について取り決められますが、未成熟の子供がいる夫婦にとっては、夫婦のどちらが親権を獲得するのか、というのは重要な問題です。
特に、父親が親権を獲得することについては、一般的に困難とされることが多いです。しかし、子供の親権を勝ち取るための条件を満たせば、父親が獲得することも決して不可能ではありません。
そこでこの記事では、離婚時に父親が親権を勝ち取ることはできるのか、といった点に注目して、弁護士が詳しく解説させていただきます。
子供の親権を獲得する父親の割合は、実際どのくらいなのか、なぜ母親が有利とされているのか、といった基本的な知識に加え、父親が親権争いで有利になるためのポイントや条件について、具体的に弁護士が解説いたします。
この記事が、少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
離婚時の子供の親権争いで父親が不利なのはなぜ?
離婚時の子供の親権争いにおいて、父親が不利で母親が有利、というイメージを持っている人は少なくありません。なぜ子供の親権については、父親が不利で母親が有利と考えられているのでしょうか。その理由と実態を見ていきましょう。
親権争いにおいて母親が有利で父親が不利な理由
なぜ親権争いでは母親が有利で父親が不利なのでしょうか。父親が親権の獲得において不利な理由については、次のような理由が考えられます。
離婚に際して父親が子供の親権を獲得することは、多くの場合、母親よりも難しいとされています。これは、主に離婚前の家庭内で、母親の用意奥実績が評価されるためです。例えば、母親が日常的に子供の世話や育児を担当しているケースでは、その実績が裁判所で重視され、母親が親権を持つ方が子供の生活が安定すると判断されることが多いのです。
例えば、父親がフルタイムで働いているケースでは、子供と過ごす時間を確保しづらいため、父親が親権を獲得する上で不利な理由となります。裁判所は、子供と親が一緒に過ごす時間の質と量を重視します。父親が長時間労働や夜勤をしている場合、子供との時間が限られ、その結果、親権を勝ち取るのが難しくなります。
また、子供の生活環境の継続性も重要な要素です。裁判所は、子供が現在の生活環境で安定していることを重視し、頻繁な転居や環境の変化が少ない方が望ましいと考えます。父親が単身赴任や転勤の多い仕事をしている場合、子供に安定した生活環境を提供するのが難しく、これも親権取得に不利な要因となります。
子供の意思も親権の決定に大きな影響を及ぼします。親権者の決定に際して、裁判所は子供の最善の利益を考慮し、子供の意思を尊重する傾向があります。特に子供がある程度の年齢に達している場合、その意見が強く考慮されます。
多くのケースで、子供は母親との生活に馴染んでいるため、母親を選びがちです。このため、父親が親権を獲得するのが難しくなります。
さらに、子供が幼いケースでは、は特に母親が優先されやすいです。幼い子供は母親との結びつきが強いとみなされることが多く、母親が親権を持つ方が子供にとって最善と判断されます。特に、乳幼児期は母親が授乳や日常のケアを主に担っているケースが多いため、母親が親権を持つ方が自然とみなされることが多いのです。
こうした理由から、親権争いでは母親が有利で父親が不利となることが多いのです。
父親が親権を取れる割合はどれくらい?難しいの?
ところで、実際に父親が子供の親権を勝ち取るケースはどれくらいあるのでしょうか。その割合については、厚生労働省の「令和4年 人口動態統計」が参考になります。
【子供が1人の場合の親権者の割合(%)】
年 |
総数 |
夫が親権(%) |
妻が親権(%) |
2010 |
67,908 |
13.4 |
86.6 |
2011 |
62,988 |
13 |
87 |
2012 |
64,011 |
12.8 |
87.2 |
2013 |
62,500 |
13 |
87 |
2014 |
59,345 |
12.8 |
87.2 |
2015 |
60,767 |
12.9 |
87.1 |
2016 |
58,029 |
13 |
87 |
2017 |
57,166 |
12.8 |
87.2 |
2018 |
55,682 |
13 |
87 |
2019 |
55,251 |
13.2 |
86.8 |
2020 |
51,406 |
13.1 |
86.9 |
2021 |
48,979 |
12.9 |
87.1 |
2022 |
45,551 |
12 |
88 |
この表からも分かる通り、母親が子供の親権を獲得するケースが非常に多く、どの年も8割以上が母親で、父親が親権を獲得するケースは、割合としては1~2割にとどまっています。
父親が親権を勝ち取るための条件
それでは、父親が親権争いにおいて、子供の親権を勝ち取るための条件について詳しく見ていきましょう。
1.父親と暮らすことが子供の利益となるか
離婚に際して父親が親権を獲得するためには、父親と暮らすことが子供の最善の利益になることを証明する必要があります。
父親が安定した生活環境を提供できるかが重要です。定職に就いて経済的に安定していることは、子供の生活費や教育費を適切に賄うために不可欠です。また、父親が子供と強い信頼関係を築き、日常的に情緒的なサポートを提供していることも大切です。例えば、学校行事への参加や病院への付き添いなど、父親が積極的に関与していることを示す必要があります。
さらに、父親が母親との協力関係を維持し、子供の福祉を最優先に考えていることも重要です。離婚後も母親と円滑にコミュニケーションを取り、子供の生活や育児に関する情報を共有することで、子供に最適な環境を提供できることを示します。
これらの要素を具体的に示すことで、父親が親権を獲得するための重要な条件を満たしていることを証明することができます。
2.兄弟姉妹不分離の原則
離婚に際して父親が親権を獲得するためには、兄弟姉妹不分離の原則が重要な考慮点となります。親権争いでは、裁判所は子供たちが一緒に育つことが最善の利益となると考えることが多いため、兄弟姉妹を分けずに育てる方針が尊重されます。
そのため、父親が兄弟姉妹全員を一緒に養育することができることを示すことが、親権を獲得する上で有利に働きます。
もっとも、兄弟姉妹を同じ親権者が監護する、というのは絶対的な条件ではありません。協議離婚で話し合って、例えば長男は父親が監護し、幼い次男は母親が監護する、といったように取り決めることも考えられます。
また、子供自身の意思が尊重されるケースもあります。
3.安定した生活環境を維持できるか
親権を勝ち取るためには、親権者が子供にとって安定した生活環境を維持できるかが非常に重要です。離婚によって子供の生活環境が大きく変わることは、子供にとって大きなストレスとなります。そのため、裁判所や離婚調停委員は、子供の生活状況が極端に変わらないようにすることを重視します。
まず、親権者が定職に就いており、経済的に安定していることが求められます。安定した収入があることで、子供の生活費や教育費、医療費などを適切に賄うことができます。これにより、子供が経済的な不安を感じることなく、安心して成長できる環境を提供できます。
次に、住居の安定も重要です。親権者が安全で快適な住環境を提供できることが求められます。特に、子供が同じ学校に通い続けられることや、友人関係を維持できることが重要です。新しい住居に移る場合でも、子供がスムーズに新しい環境に適応できるようなサポートが必要です。
また、親権者が子供の日常生活に積極的に関与していることも重要です。子供の学校行事に参加したり、日常の宿題を手伝ったりすることで、子供との信頼関係を築いていることを示す必要があります。これにより、子供が親権者と一緒に生活することが、情緒的な安定にもつながることを証明します。
さらに、親権者が子供の健康と福祉を最優先に考えていることも重要です。子供が健康で安全に過ごせる環境を提供し、必要な医療ケアを受けさせることができることを示す必要があります。これには、定期的な健康診断や、必要な医療措置を確実に受けさせることが含まれます。
最後に、親権者が子供の教育環境を維持できることも大切です。子供が同じ学校に通い続けられることや、必要な教育サポートを受けられることを示すことで、親権者が子供の学習環境を安定させることができます。これにより、子供の学業成績や社会適応力が維持されることが期待されます。
このように、親権を勝ち取るためには、親権者が子供にとって安定した生活環境を維持できることを具体的に示すことが不可欠です。経済的、住居的、教育的な安定を提供し、子供が安心して生活できる環境を整えることが、親権獲得のための重要な条件となります。
4.子供の意思・年齢
離婚に際して親権を勝ち取るための重要な要素の一つに、子供の意思と年齢があります。裁判所は子供の最善の利益を考慮し、子供の意思を尊重する傾向があります。
まず、子供が15歳以上の場合、家庭裁判所は必ず子供の意思を確認します。この年齢の子供は、自分の希望や意見を明確に表現できるため、その意思は親権の決定において重要な要素となります。子供がどちらの親と一緒に暮らしたいか、その理由を詳しく聞き取ることで、裁判所は子供の最善の利益を判断します。
次に、10歳程度以上の子供についても、家庭裁判所の調査官が意見を徴収する場合があります。この年齢の子供は、大人との意思疎通に問題がなく、自己の考えを理解しやすいとされます。調査官は子供の生活状況や親への思いを詳細に聞き取り、親権の決定に反映させます。
また、もっと小さい年齢の子供でも、親への思いを弁護士がヒアリングし、家庭裁判所へ証拠として提出することがあります。例えば、5歳や6歳の子供でも、自分の気持ちや希望を簡単な言葉で表現することができる場合があります。弁護士はこれを聞き取り、子供の意思を尊重するために、裁判所に提出します。
子供の意思は、子供がどの親と過ごすことで最も幸福で安定した生活を送れるかを判断するための重要な要素です。子供の意思を尊重することで、親権争いが子供の最善の利益に基づいて決定されるようになります。
父親が親権争いを有利に進めるためのポイント
親権争いが離婚調停や離婚裁判までもつれこんだ場合に、父親が親権争いで有利になるためには、どういったポイントに注意すればいいのでしょうか。
ポイント1.養育実績
離婚調停や裁判で父親が親権を獲得するためには、いくつかの重要なポイントがあります。その中でも特に重要なのが「監護・養育の実績」です。
父親が離婚に際して親権を獲得するためには、具体的な養育実績を示すことが重要です。親権争いでは、父親がどれだけ子供の養育に関与してきたかを証明することが求められます。
父親が日常生活で子供の世話をしてきた具体例を示す必要があります。例えば、食事の準備や学校への送り迎え、宿題の手伝い、寝かしつけなど、日々の育児活動を証明することが求められます。これにより、父親が子供の日常生活に深く関わってきたことを示すことができます。
また、父親が子供の情緒面でもどれだけサポートしてきたかを示すことが大切です。親子の信頼関係を築くために一緒に過ごした時間や、特別な活動を通じて深めた絆を具体的に説明することで、父親が子供にとって重要な存在であることを証明します。
さらに、父親が教育や健康管理など、子供の成長に必要な面でどれだけ関与してきたかも示す必要があります。学校行事への参加や病院への付き添い、家庭学習のサポートなど、子供の全般的な生活において父親が積極的に関与してきたことを具体的に示すことで、父親の育児実績を証明します。
これらの養育実績を証明するためには、具体的な証拠が欠かせません。子供の学校の先生や保育士からの証言、家族や友人からの推薦状などが有力な証拠となります。また、日常の育児に関する記録や家庭内での役割分担を示す書類も重要です。これらの証拠を提出することで、父親が子供の生活において重要な役割を果たしていることを裁判所に示すことができます。
さらに、父親が今後も継続して子供の養育を行う意思と能力を持っていることを示すことが求められます。離婚後の生活設計や育児計画を具体的に説明し、仕事と育児の両立を図るための具体的な方法を示すことで、父親が子供の最善の利益を最優先に考えていることを証明します。
このように、父親が親権を獲得するためには、過去の養育実績を具体的かつ明確に示すことが不可欠です。裁判所は、父親がこれまでどれだけ子供の生活に積極的に関与してきたかを重視し、それに基づいて親権を決定します。したがって、父親がこれまでの養育実績をしっかりと示すことが、親権を獲得するための重要なポイントとなるのです。
ポイント2.離婚後に養育する時間を持てるか
離婚に際して父親が親権を獲得するためには、離婚後に子供をしっかりと養育する時間を持てるかどうかも、重要なポイントとなります。裁判所は親権の決定において、子供の安定した生活を確保できるかどうかを重視します。そのため、父親がどれだけ子供との時間を確保できるかを具体的に示すことが求められます。
まず、父親が仕事のスケジュールを調整し、子供との時間を確保する計画を明示することが必要です。例えば、フレックスタイム制度を利用したり、リモートワークを取り入れるなど、柔軟な勤務形態を取り入れることで、子供の養育に十分な時間を割けることを示します。具体的な勤務時間の調整方法や、子供との日々の生活スケジュールを提示することが効果的です。
次に、父親が日常的な育児の具体的な計画を持っていることを示すことも重要です。子供の学校への送迎、食事の準備、宿題のサポート、就寝前のケアなど、具体的な日常の養育活動をどのように行うかを詳細に説明します。これにより、父親が離婚後も子供の生活を支え、安定した環境を提供できることを証明します。
また、父親が子供の課外活動や特別なイベントに参加する意欲を示すことも大切です。子供の学校行事やスポーツ活動、趣味のクラブ活動などに積極的に関与し、子供との関係を深める計画を立てることが重要です。これにより、父親が子供の全般的な生活において重要な役割を果たす意思と能力があることを示します。
さらに、父親がサポートネットワークを確立していることもアピールポイントとなります。例えば、近隣に住む家族や友人、育児サポートサービスなどを利用して、緊急時や仕事が忙しい時にも子供の世話が滞らないようにする計画を示すことが有効です。これにより、父親が一人で全てをこなすのではなく、周囲の助けを得ながら子供の養育を続ける体制を整えていることを証明できます。
このように、父親が離婚後に子供をしっかりと養育する時間を持てるかを具体的に示すことは、親権を獲得するための重要なポイントです。裁判所は子供の最善の利益を最優先に考えるため、父親が子供に安定した生活を提供できるかどうかを重視します。したがって、父親が具体的な養育計画を持ち、実行する能力があることを証明することが、親権を獲得するために不可欠です。
ポイント3.離婚後の生活・経済状況
離婚後に父親が親権を獲得するためには、生活と経済状況の安定を維持できることが重要です。親権争いでは、裁判所は子供の最善の利益を最優先に考え、安定した環境を提供できる親を選びます。そのため、父親が離婚後に経済的な安定を保ち、子供に安心して生活できる環境を提供できることを示す必要があります。
まず、父親が定職に就いていることや、安定した収入源を持っていることが重要です。父親が長期間働いている職場での勤務実績や、将来的にも安定した収入を得られる職業に従事していることを証明することが求められます。給与明細や雇用契約書などの具体的な証拠を提示することで、経済的な安定性を示すことができます。
次に、父親が子供に対して十分な生活費を提供できることも重要です。離婚後に子供の養育費や教育費、医療費などをきちんと支払う能力があることを示す必要があります。家計の収支計画を立て、具体的な支出と収入のバランスを示すことで、父親が子供の経済的なニーズを満たせることを証明します。
さらに、父親が住居の安定を確保していることも大切です。父親が子供と一緒に住むための安全で快適な住環境を提供できることを示す必要があります。家の購入や賃貸契約書、住居の写真などを提出し、子供が安心して過ごせる住環境を整えていることを証明します。また、子供が転校せずに済むように、現在の学校区内に住む計画を立てることも重要です。
父親が子供に対して安定した生活を提供するためのサポート体制を整えていることも示す必要があります。例えば、親戚や友人、地域のサポートグループなど、子供の養育を支援してくれる人々やサービスを利用する計画を示します。これにより、父親が一人で全てを負担するのではなく、周囲のサポートを受けながら子供を養育する体制を整えていることが示されます。
このように、父親が離婚後に生活と経済状況の安定を維持できることを具体的に示すことは、親権を獲得するための重要なポイントです。裁判所は、父親が子供に安定した生活を提供できるかどうかを重視します。したがって、父親が経済的に安定し、安全で快適な住環境を提供し、子供の生活をサポートするための体制を整えていることを証明することが、親権を獲得するために不可欠です。
ポイント4.父親が健康であること
父親が離婚に際して親権を獲得するためには、父親自身が健康であることが重要です。親権争いにおいて、裁判所は子供の最善の利益を最優先に考えます。父親が健康であり、安定した養育環境を提供できることが親権獲得のカギとなります。
まず、父親が身体的に健康であることが必要です。健康な体は子供の世話や日常の育児活動を継続的に行うために不可欠です。父親が定期的に健康診断を受けていること、特定の持病がなく、育児に支障をきたすことのない健康状態であることを示すことが重要です。健康診断書や医師の証明書など、具体的な証拠を提出することで、父親が健康であることを証明することができます。
また、父親が健康なライフスタイルを維持していることもポイントとなります。バランスの取れた食事や定期的な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を持っていることを示すことで、父親が子供に良い影響を与えることができることを証明します。これには、日常の生活習慣や健康維持のための具体的な取り組みを説明することが含まれます。
父親が健康であることを証明するためには、家族や友人からの証言も有効です。周囲の人々が父親の健康状態やライフスタイルについて証言することで、父親が子供にとって信頼できる養育者であることを示すことができます。また、健康に関する具体的なエピソードや日常の習慣を記録した日記なども証拠として提出することができます。
このように、父親が健康であることを具体的に示すことは、親権を獲得するための重要な要素です。裁判所は、父親が子供に安定した養育環境を提供できるかどうかを重視します。したがって、父親が身体的にも精神的にも健康であり、健康的なライフスタイルを維持していることを証明することが、親権を獲得するために不可欠です。
「親権は父親で、監護権者の母親と暮らす」という方法も検討しましょう
離婚に際して親権を巡る争いは非常に複雑であり、特に父親が親権を獲得するためにはさまざまな戦略を考慮する必要があります。その中でも、「親権は父親で、監護権者の母親と暮らす」という方法も検討する価値があります。これは、子供の最善の利益を守るための一つの有効な手段です。
まず、親権と監護権の違いを理解することが重要です。親権とは、子供の法律上の監督権限や財産管理を含む広範な権利を指します。一方、監護権とは、日常生活における子供の世話や教育を担当する権利です。父親が親権を持ちながら、監護権者が母親となることで、子供の生活の安定性と父親の法的権利を両立させることが可能です。
例えば、離婚後も子供が母親と一緒に生活することで、子供にとっての環境の変化を最小限に抑えることができます。母親が子供の学校や友人関係を継続的に維持できる環境を提供することができるため、子供の精神的な安定にも寄与します。その一方で、父親が親権を持つことで、重要な決定権や子供の将来に対する責任を果たすことができます。
このような方法を実現するためには、離婚調停や離婚裁判での合意が必要です。父親が親権を持ちながら、監護権者が母親であることに同意する場合、双方が子供の最善の利益を最優先に考え、協力する姿勢を示すことが重要です。具体的な養育計画や子供の生活に関する取り決めを詳細に策定することで、裁判所の理解と支持を得やすくなります。
さらに、この方法を選択する際には、父親と母親の間でのコミュニケーションが不可欠です。定期的な面会や連絡を通じて、子供の成長や生活状況について情報を共有し、協力して育児を行うことが求められます。父親が親権を持つことで、子供に対する法的な責任と権利を維持しつつ、母親が日常的な監護を行うことで、子供にとって最適な環境を提供することが可能となります。
このように、「親権は父親で、監護権者の母親と暮らす」という方法は、離婚後の親権争いにおいて有効な選択肢の一つです。父親が親権を獲得しつつ、母親が監護権者となることで、子供の生活の安定と両親の協力関係を維持することができます。
父親の親権獲得が難しい場合に、母親に対して監護権を譲ることで、親権は父親が持つ、といったことができるので、検討してみてはいかがでしょうか。
父親が親権者の場合に養育費はどうなるの?
離婚に際して親権を巡る争いは複雑な問題ですが、父親が親権を獲得した場合の養育費についても考慮する必要があります。親権を持つ父親が子供の養育費をどのように負担するか、また母親がどのように関与するかを明確にすることが重要です。
まず、父親が親権を獲得し、子供の監護権を持つ場合、一般的には母親が養育費を支払う義務を負います。養育費は、子供の生活費や教育費、医療費などを含むものであり、子供の健全な成長を支えるために必要な費用です。父親が親権を持つ場合でも、母親は子供の生活を支援するための経済的な責任を負います。
養育費の具体的な額は、離婚調停や裁判所の判断に基づいて決定されます。父親と母親の収入や生活状況、子供の年齢や生活費の必要性などが考慮されます。例えば、父親の収入が安定しており、子供の生活費を十分に賄える場合でも、母親が一定の養育費を支払うことが求められることがあります。これにより、子供が両親の経済的支援を受けながら成長できるようになります。
養育費の取り決めを確実に履行するためには、書面での合意が重要です。離婚調停や裁判所の判決を通じて正式に養育費の取り決めを行うことで、父親と母親の双方が責任を果たすことが求められます。また、養育費の支払いに関する問題が発生した場合、法的なサポートを受けることができるようにするための準備も必要です。
このように、父親が親権を獲得した場合でも、養育費の問題は重要な要素となります。母親が養育費を支払うことや、その具体的な額や支払い方法について明確に取り決めることで、子供の生活を安定させ、健全な成長を支えることができます。
父親が親権の獲得で有利になる4つのケース
さて、一般的に母親が獲得しやすいといわれる親権ですが、次のようなケースでは、父親が親権を獲得する可能性が高くなります。
ケース1.母親が親権を求めなかった場合
離婚時に父親が親権争いで有利になるケースの一つが、母親が親権を求めない場合です。母親が親権を求めない理由はさまざまですが、これにより父親が親権を獲得する可能性が高まります。
母親が親権を求めない場合、そもそも親権争いが発生しないため、父親が親権を獲得する可能性が高まります。
また、母親が親権を求めない理由として、経済的な事情や生活環境の変化が考えられます。例えば、母親が仕事の都合で子供の面倒を十分に見られない場合や、新しい住居が子供にとって適切でない場合などです。こうした理由により、母親が親権を放棄することがあるのです。
なお、母親が親権を求めなくても、父親が子供に対して安定した生活環境を提供できることが重要です。父親が経済的に安定しており、子供の生活費や教育費を適切に賄うことができなければなりません。また、父親が子供の学校や日常生活に積極的に関与し、子供との信頼関係を築いていることを証明することも重要です。
このように、母親が親権を求めないケースは、父親が親権を獲得するのに有利な状況となります。
ケース2.母親が育児放棄している
離婚時に父親が親権争いで有利になるケースの一つに、母親が育児放棄している場合があります。母親が育児を放棄している状況は、裁判所が親権を決定する際に非常に重要な要素となります。
育児放棄とは、子供の世話や教育、基本的な生活の支援を怠ることを指します。例えば、母親が子供の食事を提供せず、適切な住環境を確保しない場合や、学校に行かせない場合などが育児放棄のケースです。
裁判所は、子供が安定した生活環境で成長できることを最優先に考えるため、母親が育児放棄をしている場合、父親が親権を持つことで子供に適切なケアと安定を提供できるかどうかを判断します。
ですので、父親としては育児放棄の証拠を収集し、裁判所に提出することが重要です。母親が子供の世話を放棄している具体的な状況を示す記録や、学校の先生や近隣の住民、家族や友人からの証言も有力な証拠となります。これらの証拠を通じて、母親が育児放棄をしており、父親が親権者として適していることを主張します。
加えて、父親が育児に対する強い意思と能力を持っていることも重要です。父親が仕事と育児を両立させるための具体的な計画を持ち、子供に対して安定した生活環境を提供できることを証明する必要があります。
このように、母親が育児放棄をしているケースでは、父親が親権を獲得するために有利な状況となります。裁判所は、育児放棄の態様を考慮して親権者を決定します。父親が安定した生活環境を提供し、子供の福祉を最優先に考えていることを示すことで、父親が親権を獲得する可能性が高まります。
ケース3.母親が子供を虐待している
離婚時に父親が親権争いで有利になるケースとして、母親が子供を虐待している場合があります。
虐待には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト(無視・放置)などが含まれますが、母親が子供を虐待している場合、父親が親権を持つことが子供の最善の利益と判断され、父親が親権を獲得できる可能性が高くなります。
父親が親権を主張する際には、母親の虐待を証明する具体的な証拠が必要です。例えば、医療記録や学校からの報告、近隣住民や家族からの証言などが有力な証拠となります。また、子供自身の証言も重要です。虐待の証拠を適切に収集し、裁判所に提出することが求められます。
さらに、母親が子供を虐待していることを証明するためには、専門家の意見も重要です。心理学者や医師などの専門家の診断書や意見書を提出することで、虐待の実態を裁判所に明確に示すことができます。
そして、父親が親権を持つことが子供にとって最も安全であることを示しましょう。父親が経済的に安定しており、子供の生活費や教育費を適切に賄うことができることを示すことが重要です。また、父親が子供に対して情緒的なサポートを提供し、安心して生活できる環境を整えていることも大切です。
離婚調停や離婚裁判において、可能であれば弁護士に依頼し、親権争いを有利に進めましょう。
以上の通り、母親が子供を虐待しているケースでは、父親が親権を獲得する可能性が高まります。裁判所は、子供の最善の利益を重視しますので、父親が親権者として適切であるということを示して、親権争いを父親に有利に進めるようにしましょう。
ケース4.子供が希望している
子供が父親と暮らすことを希望しているケースでも、父親が親権を獲得しやすいです。
子供が親権者として父親を希望しているケースでは、子供の年齢によっては父親に有利に働きます。
子供の意思は年齢によってその重視される度合いが変わります。
子供が15歳以上の場合、裁判所は子供の意思を確認し、その意見を尊重するため、父親が親権を獲得しやすいでしょう。一方で、10歳前後の子供の場合でも、家庭裁判所の調査官が意見を聴取し、子供の意思を可能な限り尊重します。
ですが、乳幼児から10歳未満の子供の場合、意思能力が乏しいとみなされることが多く、子供の意思以外の判断基準が重視される傾向があり、父親が親権を取れる可能性が低いと考えられています。
親権者を決める3つの方法
実際に子供の親権者を決める方法としては、協議離婚、離婚調停、離婚裁判の3つの主な方法があります。
1.協議離婚で交渉を重ねる
協議離婚のケースでは、父親と母親が親権について直接交渉し、合意を目指します。親権を巡る協議では、子供の最善の利益を考慮し、双方が納得できる解決策を見つけることが重要です。
父親が協議離婚で親権を獲得したい場合、父親自身が子供にとって適切な親権者であることを示す必要があります。具体的には、父親が経済的に安定していることや、父親が子供に安定した生活環境を提供できることなどが挙げられます。
協議離婚では、弁護士に協議を依頼するのも一つの方法です。弁護士は、法的な観点から父親の主張をサポートし、依頼者である父親に有利な条件となるよう、協議を進めていきます。協議離婚で父親を親権者とすることについて合意が得られれば、裁判手続きを経ずに離婚が成立し、父親を親権者として子供の親権問題も解決します。
協議離婚で交渉を重ねることは、親権を決めるための第一の方法です。冷静かつ具体的な話し合いを重ね、子供の最善の利益を最優先に考えることで、父親が親権を獲得する可能性も高まるでしょう。
2.離婚調停
協議離婚で父親が親権を得られなかった場合、離婚調停によって親権を争います。離婚調停では、裁判所の調停委員が間に入り、父親と母親の意見を調整し、親権についての合意を目指します。
離婚調停では、父親と母親がそれぞれの主張を述べます。調停委員は、子供の最善の利益を考慮しながら、親権をどちらが持つべきかを検討します。
父親が親権を獲得するためには、離婚調停の場で自身の立場を明確にし、子供に適切な養育環境を提供できることを示す必要があります。例えば、父親が経済的に安定しており、子供の生活費や養育費を負担できることを証明することが重要です。
離婚調停は、協議離婚と違って父親と母親が直接顔を合わせることはありません。ですが、裁判所で行われる手続きなので、やや煩雑で手間もかかります。ですので、離婚調停で父親が親権を得ようとする場合は、事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
3.離婚裁判
離婚裁判は、協議離婚や離婚調停で、父親が親権を獲得できなかった場合の最終手段です。離婚裁判では、裁判所が親権をどちらが持つべきかを法的に判断します。
父親が親権を獲得するためには、裁判所に対して具体的な証拠を提出する必要があります。例えば、父親が経済的に安定しており、子供の生活費や養育費を適切に負担できることを示すことが重要です。また、父親の養育実績や子供との関わり方も考慮されます。
離婚裁判では、子供の意思も重要な要素です。特に、子供が15歳以上であれば、その意思が尊重される傾向があります。裁判所は、子供の最善の利益を最優先に考え、親権者を決定します。
離婚裁判において父親が親権を獲得するためには、弁護士のサポートが不可欠です。弁護士は、父親の立場を法的に強化し、父親にとって有利になるよう、裁判手続きに対処します。適切な証拠を収集し、父親が親権を持つことが子供にとって最善であることを、効果的に主張することが期待できます。
離婚裁判は、親権を決めるための最後の方法であり、父親が離婚時に親権を獲得する最大のチャンスです。しっかりと裁判の準備を整え、父親が親権者としてふさわしいことを示すことで、父親が親権を獲得する可能性が高まるでしょう。
Q&A
Q1.父親は親権争いで不利ですか?親権を父親が取れる割合はどれくらいあるの?
一般的に、親権争いでは父親が不利で母親が有利と考えられています。実際に、父親が親権を取れる割合は1~2割程という統計が出ています。
Q2.離婚調停や離婚裁判で父親が親権を獲得するために重要なポイントは?
父親が親権を獲得するためには、次のポイントを満たしているかが特に重要になってきます。
- 安定した収入を持ち経済的に安定している。
- 養育実績がある。
- 安全で快適な住環境を提供できる。
- 日常的に子供と過ごす時間を確保できる。
- 父親自身が健康であり子供の世話を適切に行えること。
Q3.子供が父親と暮らしたいと希望する場合、親権は父親に決まりますか?
子供の年齢によっては、父親と暮らしたいという子供の意思が尊重される場合があります。子供が十分な判断能力を有しているとみなされる15歳以上である場合には、特に子供の意思が尊重される傾向があります。
当法律事務所の弁護士にご相談ください
この記事では、離婚時の親権問題について、父親が親権を獲得できる割合や、父親が親権を獲得する際に考慮される条件、父親が親権を得るために重視すべきポイントなどについて、弁護士が解説させていただきました。
父親が親権を獲得するためには、安定した収入を持ち経済的に安定していること、具体的な養育実績を示すこと、安全で快適な住環境を提供できること、日常的に子供と過ごす時間を確保し育児に積極的に関与していること、子供の意思を尊重すること、そして父親自身が健康であることが重要です。
これらのポイントをしっかりと押さえることで、父親が親権を獲得する可能性が高まります。
当事務所では、父親の親権獲得のお悩みやご相談もお受けしております。弁護士による法律相談は、初回無料となっておりますので、お気軽にご利用ください。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。