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親権者とは?意味や条件、監護権との違いを弁護士がわかりやすく解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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親権者とは、子どもの成長や福祉において中心的な役割を担う存在です。

法律上、親権者は未成年の子どもの監護、教育、財産管理、法的代理を行う責任と権限を持ちます。この役割は親権と呼ばれ、特に離婚や別居において重要な争点となります。

この記事では、親権者とはどういう意味か、親権者とはどういった条件を満たせばなれるのかについて詳しく解説し、さらに監護者や法定代理人、保護者、後見人などとの違いについても、わかりやすく触れていきます。

本記事を通して、親権者の役割やその条件、親権とはどういった権利や義務を生じさせるのか、といったことについて、ご理解いただければ幸いです。

目次

親権者とはどういう意味?そもそも親権とは?

親権者とは子どもが成人(18歳)になるまで養育する「親権を行う者」のこと

それでは、親権者とはどういう人を意味するのか、わかりやすくご説明させていただきます。

ところで、そもそも、親権とはどういう意味の権利なのか、正確な内容をご存知でしょうか。

親権とは

親権とは、子どもを養育するために、子どもの父親や母親に認められる権利・義務のことを意味しています。

親権の具体的な内容については、この記事で後述いたしますが、法務省によれば、親権とは「子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限であり義務である。親権は子どもの利益のために行使すること」とされています。

わかりやすく言うと、親権とは「未成年の子どもが不利益を被らないように教育・監護し、子どもの財産も管理する」権利となります。

そして親権者とは、そういった親権を行う者のことをいいます。

なお、子どもと血の繋がりがあれば必ず親権者になるというものではありません。

この点については後述しますが、例えば、未婚の女性が子どもを出産した場合、女性は子どもの親権者になりますが、未婚の父親は認知しなければ法律上の親ではないため、当然に子どもの親権者とはならないのです。

それでは、親権者とはどういった条件を満たせばなれるのか、具体的に見ていきましょう。

親権者とは法律上どう規定されている?わかりやすく解説

 

親権者とは法律上どう規定されている?わかりやすく解説

 

親権者とはどういう人がなれるの?

親権者とは、子どもを養育し、その福祉を守るための法的な権利と責任を持つ者を指します。そして、この親権者になれる人は、一般的には子どもの父母ですが、父母が婚姻していない場合や、離婚・死別している場合、養子縁組をしている場合などによっては異なります。

そこで、親権者とはどういう人がなれるのか、ケースごとに見ていきましょう。

婚姻中は両親が共同で親権を持つ(民法第818条3項)

民法第818条3項によれば、婚姻中は夫と妻が共同で子どもの親権を行うことが規定されています。

民法第818条3項
親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

この規定により、両親が法律上結婚している間は、夫婦の両方が親権者となり共同で親権を行うことになります。

ということは、両親が法律上結婚していない場合は、夫婦は当然に子どもの親権者になるわけではない、ということです。

両親が婚姻していない場合に子どもの親権者がどうなるか、といったことについては、民法に各ケースごとに規定されています。

夫婦が未婚の場合

未婚の夫婦の場合、生まれた子どもは非嫡出子となるため、出産した母親との親子関係は生じても、父親との親子関係は発生しません。そのため、この場合の子どもの親権者とは母親になります。

そして、未婚の妻との子どもと夫に親子関係があることを認めるための認知の手続きがありますが、認知の手続きをして法律上「親子関係」が生じても、父親が親権者になるわけではない、という点に注意が必要です。

認知の手続きをしても当然に父親も親権者になるわけではなく、母親が単独で親権を行う状態は変わりません。父親が子どもの親権者になるためには、母親と話し合い、父親を親権者と定めなければなりません(民法第818条4項)。

民法第818条4項
父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

養子縁組の場合

実父母が子どもを養子に出し、子どもと養父母が養子縁組をした場合には、実父母ではなく養父母が子の親権者となります(民法第818条2項)。

民法第818条2項
子が養子であるときは、養親の親権に服する。

養子縁組が解消されると、養父母は子の親権者ではなくなり、実父母が子の親権者に戻ることになります。

父母が未成年の場合

子どもの父母が未成年である場合は、一般的には子どもの祖父母が親権者となります。成年に達しない子は父母の親権に服するということが規定されており(民法第818条1項)、そもそも子どもの父母が祖父母の親権に服することになるため、未成年の父母の子についても、祖父母が親権を行うことになるからです(民法第833条)。

民法第818条1項
成年に達しない子は、父母の親権に服する。

民法第833条
親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。

父母が離婚・死亡すると父親か母親のどちらかが親権を持つ

父母が離婚した場合

子の父母が離婚した場合には、親権者とは父親か母親のどちらか単独になります(民法第819条1項~同3項)。

民法第819条
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

通常は話し合いで父親と母親のどちらが子の親権者になるかを決め、離婚届に親権者について記入して届出を行います。子どもが複数いる場合は、長男は父親が、二男は母親が親権を行う、という取り決めをする場合もあります。

父母のどちらかが死亡した場合

父母のどちらかが死亡した場合は、その父母が婚姻中か離婚しているかによって、子の親権者が異なります。

父母が婚姻中に父親か母親が死亡した場合は、生存している親が単独で子の親権者となります。

父母が離婚していて親権者が死亡した場合は、生存している他方の親が当然に親権者となるのではなく、後見(こうけん)が開始されることになります(民法第838条1号)。

民法第838条
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。

後見とは、後見される人(被後見人)の身の回りの世話をしたり、財産管理をしたりすることで、後見を行う人を後見人といいます。

なお、父母のどちらかが死亡した場合だけでなく、婚姻中の父母のどちらもが死亡した場合にも、子の親権者がいなくなるため、後見が開始されることになります。

親権がないとどうなる?

親権者とは子どもの身の回りの世話や財産管理を行う人のことです。そのため、離婚時に親権者にならなかった場合、親権がないと子どもに関して何も関わることができないのか、と心配になるかもしれません。

ですが、親権がない親でも、子どもと関わり続けることは可能です。

例えば、離婚後に親権を持たない親でも、面会交流権を通じて子どもと定期的に会うことが認められています。面会交流権は、親権者ではない親が子どもと定期的に会う権利であり、これにより親子関係を維持することができます。

円満な離婚であれば、親権者と話し合い、子どもの学校の行事には子の父母が一緒に参加する、といった関わり方をすることもできるでしょう。

また、親権者ではない親が監護者になることで、子どもに関する権利を持つことも可能です。

親権の内容は、①子どもの身の回りの世話をする身上監護権、②子ども名義の預貯金などを管理する財産管理権、③子の代理人として契約締結を行うなどの法定代理権、の3つに大別することができます。

このうち、②と③を親権者が行い、①身上監護権については親権者ではない監護者が行う、とすることも可能です。財産管理等はできませんが、親権者でなくても子どもと一緒に生活することができます。

以上の通り、子の親権がない場合でも、子に関する権利が全て失われてしまうわけではありません。

親権者としての子どもに対する権利・義務

さて、親権者とは、子どもについてどのような権利や義務を有するのでしょうか。

1.身上監護権(民法第820条)

身上監護権とは、親権者が子どもの利益のために監護・教育を行う権利と義務を指します。これについては民法第820条に規定されており、親権者は子どもが成人するまでの間、その生活や教育に関する全ての面で責任を持つことが求められます。

(監護及び教育の権利義務)
民法第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

この身上監護権に含まれる具体的な権利は、次の通りです。

まず、居所指定権(民法第821条)があります。親権者は子どもの居住場所を決定する権利を持ちます。これにより、親権者は子どもがどこで生活するかを適切に管理し、安定した生活環境を提供することができます。

(子の人格の尊重等)
民法第821条 親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。

次に、懲戒権(民法第822条)があります。親権者は子どもの行動を指導し、必要に応じて懲戒を行う権利を持ちます。ただし、懲戒は子どもの福祉を考慮した範囲内で行われなければならず、虐待や過度な罰を与えることは認められていません。懲戒権は子どもの健全な成長を促進するためのものであり、親権者はその行使に際して慎重であるべきです。

(居所の指定)
民法第822条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

さらに、職業許可権(民法第823条)も含まれます。親権者は子どもが職業に就くことを許可する権利を持ちます。未成年者が労働する場合、親権者の許可が必要とされるため、親権者は子どもの労働環境や仕事内容が適切であるかを判断し、子どもが過酷な労働環境に置かれることを防ぎます。

(職業の許可)
民法第823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

2.財産管理・代理権(同意権・取消権)(民法第824条)

財産管理権とは、親権者が子どもの財産を適切に管理し、その利益を守るための権利と義務を持つことを指します。これは民法第824条に規定されており、親権者は子どもの財産を保護し、健全に運用する責任を負います。

民法第824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

財産管理・運用・処分する権利

親権者は子どもの財産について、管理・運用・処分をする権利を有しています。

まず、親権者は子どもの財産を管理し、その収益を子どものために使用する権利を有します。

例えば、子どもが遺産や贈与を受けた場合、親権者がその財産を適切に管理し、子どもの生活費や教育費として使用することができます。この管理には、子どもの銀行口座の管理や、不動産の賃貸借契約の締結などが含まれます。

次に、親権者は子どもの財産を保全するための措置を講じる義務を持ちます。これには、財産の評価や必要に応じた売却、再投資などが含まれます。親権者は子どもの財産が無駄に減少しないよう注意を払い、適切な運用を行う必要があります。

法定代理権(同意見・取消権)

そして、民法第824条に「その財産に関する法律行為についてその子を代表する」と規定されている通り、子どもの財産についての法定代理権を有しています。

未成年者の法定代理人は、代理人として自ら法律行為を行うことができるだけでなく、未成年者が行う法律行為に対して同意を与える権利も持っています。さらに、同意を得ずに行われた法律行為を取り消すことができる権限もあります。

親権者とは、身上監護権、財産管理権や法定代理権を用いて、子どもを養育してその福祉を守る存在なのです。

保護者や監護者との違いは何?

さて、親権者と似た言葉に、「保護者」や「監護者」、「法定代理人」などといった言葉があります。特に保護者という言葉は親権者とほぼ同義で使われることが多いですが、こうした言葉と親権者とはどういった違いがあるのでしょうか。

親権者と法定代理人の違い

まず、親権者とは、民法第818条に基づいて、未成年の子どもに対して監護、教育、財産管理、法的代理など多岐にわたる権利と義務を持つ者です。親権者の役割は包括的であり、子どもの生活全般を支え、その健全な成長と発展を促すために、日常生活から重要な法的決定に至るまで幅広い責任を負います。

一方、法定代理人とは、特定の法律行為において未成年者や成年被後見人などの判断能力が不十分な者を代理する役割を持つ者を指します。法定代理人は、その法律行為に関してのみ代理権を持ち、その範囲で未成年者の利益を守るための行動を取ります。法定代理人の主な役割は、契約の締結や財産の管理、法的手続きの代行などです。

法定代理人は、親権者とは異なり、未成年の子ども以外の人についても代理権を有します。成年被後見人、被保佐人、被補助人などの制限行為能力者の代理人として、法律行為を行うことになります。

そのため、親権者とは、未成年者の法定代理人であり、法定代理人の一部である、といえるでしょう。

親権者と監護者の違い

この記事で解説させていただいた通り、親権者とは子どもの身上監護権と財産管理権を有しています。このうち、財産管理は親権者が行い、実際に子どもの身の回りの世話をして養育する身上監護権は非親権者が行うことがあります。

このように身上監護権を有する者を、監護者といいます。

例えば、離婚して子どもの親権を得た親が他県に引っ越す場合に、子どもが学校を卒業するまでは引越しについていきたくない、と考えた場合に、学校卒業までは親権者と暮らさずに、そのまま監護者と一緒に元の住所で生活する、といったケースが考えられます。

親権者と保護者の違い

子どもの親という意味で、親権者のことを日常的には「保護者」と表現することが多いですが、「保護者」は必ずしも子どもの親権者だけを意味する言葉ではありません。

例えば、教師や施設職員、組織なども、保護者としての役割を果たしますし、子どもだけでなく、弱者を世話したり看護したりする人のことも保護者という場合があります。

このように、保護者の範囲は非常に幅広く、親権者とは保護者の一部といえるのです。

親権者と後見人の違い

後見人とは、未成年の子どもの後見をする未成年後見人や、認知症や精神障害などにより正しい判断ができない人を後見する成年後見人のことをいいます。

また、例えば子どもを出産した母親は自動的に子の親権者となりますが、後見人は、家庭裁判所での手続きを経て選任されるものなので、自動的に誰かの後見人になる、というわけではありません。

親権者と扶養者の違い

親権者と似た言葉に「扶養者」という言葉もあります。

扶養については、民法第877条以下に規定されていますが、親権者とは未成年の子どもについて親権を行う者であることに対し、扶養者とは互いの生活を保障し扶養する義務のある一定範囲の親族等のことを意味しています。

民法第877条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

したがって、親権者とは子どもについての扶養義務を有する者をいいますが、扶養者は親権者だけに限られず、兄弟姉妹なども扶養者に含まれることになるのです。

【Q&A】親権者とは

Q1.親権者とはどういう人ですか?

親権者とは、子どもを養育し、その福祉を守るために法的な権利と責任を持つ者を指します。一般的には、親権者とは子どもの父母であり、子どもの成長と発展を支援するために必要な監護や教育、財産管理、法的代理を行う役割を担います。

Q2.親権者とはどういった権利を有しているのですか?

親権者とは、子どもを養育しその福祉を守るために法的な権利と責任を持つ者であり、具体的には、身上監護権、財産管理権、法定代理権(同意権・取消権)の3つの権利を有しています。

Q3.未婚の母の子が父親に認知してもらったら、父親も子の親権者になるのでしょうか?

未婚の母の子が父親に認知されても、父親が自動的に子の親権者になるわけではありません。認知によって父親は子どもの法的な親となりますが、親権を持つには別途、家庭裁判所の判断や父母の協議によって親権者として定められる必要があります。

当法律事務所の弁護士にご相談ください

この記事では、親権者とはどういった権利を有する者か、親権者には誰がなれるのか、といったことについて弁護士が解説させていただきました。

親権者とは、子どもを養育し、その福祉を守るために法的な権利と責任を持つ者を指します。親権者は、子どもの生活全般を管理する包括的な権利と義務を有し、具体的には身上監護権、財産管理権、法定代理権(同意権・取消権)を持っています。

子どもの親権については、特に離婚時に争われることが多い法的問題ですので、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

弁護士法人あおい法律事務所では、法律相談は初回無料となっております。法律相談のご予約は、お電話や当ホームページの予約フォームからも受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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