共同親権|共同親権とはいつから?メリットやデメリット、何が変わるのかも徹底解説!
これまでの日本では、親が離婚すると父親か母親のどちらか一方だけが、子の親権者となる制度でした。ですが、これでは親権者にならなかった親が面会交流をさせてもらえない問題が生じたり、養育費の未払いや子の連れ去りといったトラブルも生じたりと、子の親権をめぐってさまざまな問題が発生していたのです。
そこで2026年4月1日より、「共同親権」の制度が導入されました。
これまでの単独親権とは大きく異なる真新しい制度ですので、どういった手続きが必要なのか、何が変わるのかなど、ご存知ない方もいらっしゃるかと思います。そこでこの記事では、共同親権について弁護士が詳しく解説させていただきます。基本的な制度の概要に加えて、共同親権のメリットやデメリット、既に離婚している親は共同親権にすることができるのか、といった点についてもわかりやすく触れていきます。
この記事が、共同親権を理解するにあたって少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
共同親権
1.共同親権とは
共同親権とはどういう制度なのか、これまでの「単独親権」と比較しながら確認していきましょう。
1-1.共同親権とは何?
そもそも「親権」とは、未成年の子どもの養育・監護(身上監護権)と財産の管理(財産管理権)を合わせたものを意味します。そして、婚姻中は父母双方が子どもの親権者となり、共同で親権を行使します(民法第818条2項)。
(親権)
民法第818条 親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない。
2 父母の婚姻中はその双方を親権者とする。
そして、民法改正によって導入された離婚後の「共同親権」とは、離婚後も婚姻中のように、父母双方が子どもの親権を持つことです。
これまでは、日本では夫婦が離婚した場合、父か母どちらかを親権者として定めることが法律で定められていました(民法第819条)。これが従来の「単独親権」です。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
単独親権では、親権者となった親が子に関する全ての決定権を有していました。非親権者となった親は、離婚後は面会交流で子と接するか、監護権を得て監護親として関わる程度に限られていました。
ですが、2026年4月1日施行の改正民法によって、「父母の双方または一方」を親権者と定めることに変わったのです(民法第819条1項)。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
したがって、これまで通り「夫婦のどちらか一方だけが親権を持つ」こともできますが、「夫婦の両方が共同で子の親権を持つ」こともできるようになり、親権に関する選択肢が増えることになりました。
なお、離婚すると自動的に共同親権になるわけではありません。通常は夫婦で話し合って、単独親権にするか共同親権にするかを決めることになるでしょう。
さて、共同親権は、離婚後も父母が対等な立場で子の養育責任を果たすことを目的とした制度ですから、子に関する重要的な事項は原則として父母の共同の意思決定を要することになります。一方で、共同の意思決定を重視しすぎるあまり、実際の子の生活に支障が出ないよう、「日常の行為」や「急迫の事情」については親権の単独行使が認められています(民法第824条の2)。
(親権の行使方法等)
民法第824条の2 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。
一 その一方のみが親権者であるとき。
二 他の一方が親権を行うことができないとき。
三 子の利益のため急迫の事情があるとき。
2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。
3 特定の事項に係る親権の行使(第一項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。
父母双方の合意が必要な事項
- 進学先の決定
- 転居
- 生命に関わる医療行為
- 相続した土地等多額の財産管理
単独で意思決定できる事項
- 子の食事
- 日常的な買い物等
- 通常の予防接種等
- 緊急手術への同意
- DV等からの避難
- 期限の差し迫った入学手続き等
なお、親権の共同行使といっても、子のための契約の締結等の親権行使の際に、父母双方の署名・押印が必須とされているわけではありません。
共同親権にある父母の一方が他方に無断で子の代理権を行使した場合、その行為は無権代理となり、原則としてその行為の効果は子に帰属しません。ただし、共同親権にある父母の一方が、父母の「共同の名義」で子を代理した場合に、相手方が「他方親の同意がないことについて知らない(善意)」のであれば、取引の相手方である第三者を保護するため、その行為は有効となります。ただし、相手方が「悪意」(同意がないことを知っている)の場合は無効となります(民法第825条)。
(父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
民法第825条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
1-2.日本における共同親権
日本における親権制度は、明治民法下の父権的な制度から、今日までの「離婚後の単独親権」という制度を経て、令和6年の改正により離婚後も共同親権を選択できる「選択的共同親権」制度へと変化しました。
一方で、諸外国では以下のような状況になっています。
法務省民事局による令和2年時点の調査(G20を含む24ヶ国)によれば、離婚後単独親権のみとするのはインドとトルコで、米国(ニューヨーク州等)、カナダ(ケベック州)、英国、ドイツ、フランス、スペイン、韓国、中国、タイなどその他の多くの国では共同親権が認められています。イタリアやドイツ、フランスなどは、裁判所の判断がない限り原則的に共同親権となり、スペイン等は父母の協議により単独親権が可能となるようです。
2.共同親権の手続き
それでは次に、共同親権の手続きについて見てみましょう。
2-1協議離婚では離婚届に記入
どういった場合に離婚後も共同親権にできるかというと、原則として父母の合意による場合です(民法第819条1項)。離婚協議で父母が話し合って共同親権にすることで合意が成立すれば、問題ありません。そして、離婚届に必要事項を記載して提出することで手続きは完了します。
離婚届の様式は、この民法改正にともない変更され、次の記載事項が追加されることになりました。
- 未成年の子があるときは、親子交流、監護の分掌及び養育費の分担についての各取決めの有無
- 協議離婚について、離婚当事者が親権者の定めをしたときは、離婚後も共同で親権を行使すること又は単独で親権を行使することの意味を理解し、真意に基づいて合意した旨
なお、自治体によっては旧式の離婚届に加え、「父母双方が親権を行う子」という記入欄を設けた別紙を提出することでも認められているようです。
参考:離婚届(離婚するとき)(長野市)
ところで、民法改正前は、離婚届の親権者欄を必ず記入しなければ、離婚届を提出しても受理してもらえませんでした。ですが、民法改正後は親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てがされていれば、離婚時に親権者を記入していない離婚届であっても受理されることとなりました(民法第765条1項2号)。
(離婚の届出の受理)
民法第765条1項 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないこと及び夫婦間に成年に達しない子がある場合には次の各号のいずれかに該当することを認めた後でなければ、受理することができない。
一 親権者の定めがされていること。
二 親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。
2-2.裁判所で手続き
話し合いで合意できない場合は、裁判所の判断を仰ぐことになります。裁判所は、単独親権や共同親権、どれが最も子の利益になるか、という点で判断を下します(民法第819条2項・同条7項)。
民法第819条2項 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
民法第819条7項 裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
「子の利益」に関しては、過去に父母からどのように養育されていたか、という実績にとどまらず、子の将来の健やかな成育に適した条件も考慮されることになります。監護能力、監護に対する意欲、精神的・経済的家庭環境や、子の年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性といった、さまざまな事情を判断して親権者を決めるのです。
そのため、共同親権を望む父親と、自身が親権者になることを望む母親で争いとなった場合には、裁判所は以上のような事情を総合的に考慮し、「母親を親権者に指定する・父親を親権者に指定する・共同親権とする」のいずれかで結論することになります。
このように、調停、審判、判決などの裁判上の手続きによって離婚が成立した場合、判決確定日等から10日以内に、調書謄本や判決書謄本、確定証明書を添えて離婚届を提出する必要があります。
共同親権はいつから?
1.民法改正と共同親権
日本においては、明治民法(1898年)では家制度が採られ、原則として父が親権者であり、離婚後も父が親権者となるのが原則でした。1947年の戦後の民法改正によって家制度や戸主権が廃止され、婚姻中は父母が共同して親権を行うことになったものの、離婚後の親権については、離婚後に父母が協力することは「普通には考えられない」として、父母のいずれか一方を親権者とする単独親権制が採られてきたのです。
ですが、単独親権には問題点もありました。一方の親と子を関わらせたくない他方親が親権を得ることで、一方の親と子の関係を断ち切らせたり、非同居親に合わせようとしなかったりと、非親権者と子の親子の繋がりを断つようなことも少なくなかったのです。
非親権者が子を取り戻そうとして連れ去る事件も発生し、両親が子どもを奪い合って紛争となるケースも見受けられました。
また、子どもを監護しない親は日常的に子と接する機会が減少することで、親としての自覚が薄れてしまい、これが養育費の未払いといったトラブルに発展することも少なくありませんでした。
このような問題点を解消し、離婚後も「子の利益」を第一に親権を行使できるようにと、共同親権の導入が検討されるようになりました。
以上のような背景から、共同親権を導入する「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」は、内閣による閣議決定を経て国会に提出され、2024年5月24日に公布され、2026年4月1日をもって施行に至ったのです。
2.なぜ共同親権が反対されていたの?
共同親権の導入に対しては、主に虐待やDV、父母間の意思決定が停滞するリスク、「子の利益」が損なわれるリスク等を理由とした反対意見も見受けられました。
家庭内での暴力には、身体的暴力だけでなく、精神的、経済的、性的DV、子の面前で家族に暴力を振るう面前DV等、さまざまなDVの実態があります。こうした家庭では、親権者について離婚時に冷静・対等に話し合うことは難しく、共同親権を認めることで、子どもを守れなくなってしまう、という懸念があったのです。既存の民法には親権喪失(民法第834条)や親権停止(民法第834条の2)といった親権を喪失させる制度もありますが、実際に適用されるケースは限定的でした。
また、共同親権では、子の監護・教育に関する重要事項は父母の共同の意思決定に基づき行うこと、が原則となっています。ですが、離婚後の父母が別居している場合、日常的な監護は一方の親が行うことになります。非監護親が親権行使を名目に監護者の決定を妨害したり、不当な干渉を行ったりすることで、子の成育環境が不安定になるのでは、という意見も見られました。特に、医療行為等の親権者の同意を必要とする場面で、父母の共同での意思決定が滞ってしまうと、かえって子の利益を害することになる、という懸念もありました。
こういった反対意見も踏まえ、子の利益を害すると認められる場合には、裁判所は父母のどちらかの単独親権にしなければならない、という決まりを作り(民法第819条7項)、選択的な共同親権が導入されることとなったのです。
3.共同親権で何が変わるのか
それでは、共同親権を選択することで、具体的にどういった変化が見られるのでしょうか。
3-1.戸籍はどうなるか
親権の帰属と子の戸籍は連動していません。
そのため、父母が離婚し、一方が親権者となった場合や共同親権となった場合でも、子は当然に親権者の戸籍に入るわけではなく、手続をしない限り従前の戸籍(通常は父を筆頭者とする戸籍)に残ったままとなります。子の戸籍を他方の親の戸籍へ移動させるには、家庭裁判所で氏の変更許可を得る必要があります。
3-2.共同親権と監護権の関係
本記事でご説明したとおり、親権は大きく「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分かれます。そして、従来の単独親権の制度下では、実際に子と同居して監護養育する監護者と親権者を別々にする、というケースもありました。例えば子が幼い場合に、父親が親権を持つものの、子が15歳になるまでは母親のもとで暮らす(母親が監護権を持つ)、といった運用も少なくなかったのです。
さて、法改正により共同親権を選択できるようになりましたが、「共同親権」は「共同監護(父母が常に共に行動して子を共同で監護すること)」を必ずしも意味するものではありません。共同親権の場合も実際の監護・養育を円滑にするために、父母の一方を「監護者」と定めることができます。
あるいは、監護の分担について定めることも可能です。これを「監護の分掌」といい、改正民法に以下のとおり定められています(民法第766条1項)。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
「子どもの教育に関する決定は監護親に一任するが、医療行為と住む場所については必ず父母が話し合って決める」といった、親権の行使の内容で分担することも考えられますし、「近距離にある父母それぞれの家で1週間ずつ生活する」などと監護を分担することも考えられます。
3-3.別居になったらどちらと暮らすか
離婚した夫婦が同居を続けるケースもありますが、一般的には別居となります。この際に、子どもはどちらと暮らすべきなのでしょうか。
「共同親権」というからには、例えば月曜日~水曜日は父親と、木曜日~土曜日は母親と過ごす、など公平にする必要があるのではないか、と思われるかもしれません。ですが、共同親権であっても、前述のとおり父母は子どもの監護を分担することができます。そのため共同親権の場合でも、子は父母どちらかと生活することになります。
普段の生活を共にしない親権者(非監護親)については、面会交流(親子交流)で子どもと関わっていくことになるでしょう。
3-4.認知した子の親権
内縁の夫婦や婚姻届を出していない父母の間に生まれた子は、非嫡出子(嫡出でない子)として扱われ、原則として母の単独親権に服します。そして従来は、父親が認知しても父親が自動で親権者になることはなく、母の単独親権のままでした。
ですが、今回の民法改正により、父親が認知をした子どもについても、父母の話し合いまたは家庭裁判所の判断により、父母の双方を親権者とすることができるようになりました(民法第819条4項・同条5項)。
民法第819条4項 父が認知した子に対する親権は、母が行う。ただし、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
民法第819条5項 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
4.既に離婚済みの親は共同親権を拒否できる?
法改正前に既に離婚が成立し、父母どちらか一方だけが親権者となっている場合、今からでも共同親権にすることはできるのでしょうか。あるいは、共同親権を拒否することは可能なのでしょうか。
まず、今回の法改正によって、既に離婚済みの夫婦の子について自動的に共同親権になるわけではありません。共同親権にしたい場合は、家庭裁判所に共同親権への変更を申立て、認められる必要があります。
この点に関し、どういった場合に共同親権への変更が認められるかは、法務省の解説に以下のように書かれています。
どのような場合に共同親権への変更が認められるかはケースバイケースですが、例えば、養育費の支払義務を負う親が、本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由なく怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられます。また、虐待やDVのおそれがあるときや、父母が共同して親権を行うことが困難であるときは、共同親権への変更は認められません。
引用:父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました~親権・養育費・親子交流などに関する民法等改正の解説~(法務省民事局)P.5より
家庭裁判所に申し立てたからといって、必ず許可されるわけではありません。一方で、他方の親が共同親権への変更を拒否している場合に、裁判所が「他方が拒否しているので共同親権への変更は認めない。」といった判断をすることもありません。
裁判所が重視するのは、「父母が共同親権を望んでいるか、拒否しているか」ではなく、「子の利益となるのは父母のどちら、あるいは双方が親権を持つ場合か」といった点です。虐待やDVのおそれといった事情がある場合には、共同親権にすることで子の利益を害することになると判断し、共同親権への変更を認めず、単独親権を維持する(申立てを棄却する)ことになるでしょう。
共同親権のメリット・デメリット
次に、共同親権のメリットとデメリットを見ていきましょう。
1.共同親権のメリット
共同親権にすることで、主に5つのメリットが考えられます。
1-1.離婚後も父母双方が子育てに関われる
共同親権では、離婚後であっても父母双方が親として子どもの日常的な養育に関わり続けることができます。一方の親だけに負担が偏るのではなく、役割を分担しながら子どもを支えることができるため、父母それぞれの負担も軽減でき、子どもにとっても父母と安心して接することができるでしょう。
また、日常的な関わりを通じて、親子関係を継続的に築いていける点も大きなメリットといえるでしょう。日頃から子の成長を側で見守り関与できることで、たとえ普段同居していない親でも親子関係の希薄化を防ぐことが期待できます。
1-2.離婚時の親権争いを回避できる
従来は、どちらか一方が親権者になる必要があったため、離婚時に激しい争いが生じることも少なくありませんでした。共同親権を選択できることで、「どちらが親権を取るか」という対立を避けやすくなり、話し合いを円滑に進めやすくなります。
また、こうした争いを回避することで円満離婚が期待できます。子は離婚協議中に親の争う姿を見ずにすむため、子の精神的な負担も軽減でき、子どもへの影響を抑えることにもつながります。
1-3.養育費の支払いが確保されやすくなる
共同親権では、離婚後も父母双方が子どもの養育に責任を持つという意識(親権者意識)が明確になります。
そのため、非同居親の「子の養育に関わっていく」という意識が強まり、養育費を支払っていくモチベーションが維持されることが期待できるでしょう。子どもの生活を経済的に安定させるという観点からも、共同親権は重要な選択肢なのです。
1-4.面会交流(親子交流)が実施されやすくなる
単独親権では、親権者が非親権者と子を会わせない、面会交流の内容が制限的、といった問題が少なくありませんでした。
この点、共同親権では父母双方が法的に子の親権者ですので、双方が責任感を持って非同居親との面会交流を実現することが期待できます。
面会交流が促進・強化されることによって、良好な親子関係を維持することが期待できるでしょう。
1-5.子の人生の重大な決断に関与できる
進学や医療、転居など、子どもの人生に大きな影響を与える重要な判断について、双方の親が関与できる点も大きなメリットです。一方の親だけで決めるのではなく、複数の視点から検討することで、より適切な判断につながり、結果として子の利益となる可能性が高いです。
これまでは「一方の親が決断してから、事後報告で知った」など、子の人生の重大な決断に関与できなかった非同居親も、親権者として積極的に関わっていくことになります。
2.共同親権のデメリット
一方で、共同親権には次のようなデメリットも存在します。
2-1.DV・モラハラ被害が継続するおそれがある
共同親権では、離婚後も子どもに関する重要な事項について父母間で連絡や協議を行う必要があります。そのため、過去にDVやモラハラがあった場合でも、完全に関係を断つことが難しく、相手との接触が継続することになります。
また、形式的には「話し合い」であっても、実質的には一方の意見が押し付けられるような関係になりやすく、被害の長期化につながる可能性も否定できません。
裁判所で共同親権から単独親権へ変更することを認めてもらいたい場合も、DVやモラハラの証拠がなければ立証できないため、子の利益を害するとはいえないと、親権の変更が認められない可能性もあるのです。
そのため、安全確保の観点からは、共同親権の選択が適切かどうかを慎重に検討する必要があります。
2-2.意思決定に時間がかかる
緊急の手術や期限が差し迫っている進学手続きなどは、共同親権でも父母どちらかの単独で決断できますが、生命に関わるような医療行為や進学先の選択といった重要事項については双方の合意が必要となるため、父母間で意見が対立すると、意思決定に時間がかかってしまいます。その結果、かえって子の不利益となる可能性もあるのです。
なお、父母の意見が対立した場合は家庭裁判所の手続きによって、その特定の事項に関しての親権の行使者を指定することも可能となりました(民法第824条の2第3項)。
(親権の行使方法等)
民法第824条の2第3項 特定の事項に係る親権の行使(第一項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。
緊急性のない事項についての意思決定とはいえ、実際に時間がかかってしまうことは避けられません。父母が子育てに積極的に関与できる点はメリットですが、こうした面ではデメリットとなりかねないのです。
2-3.子どもの負担が増す可能性がある
父母双方が親権を持つことで、子どもが両親との関係を維持しやすくなる一方、意見の対立がある場合には、その板挟みになる可能性があります。
また、「今週は父と生活し、来週は母と生活する」などと父母の家を行き来することで、生活環境や過ごし方が安定せず、移動や頻繁な環境変化が子にとって負担となることも考えられます。
2-4.居住地の変更が制限される可能性がある
共同親権では、子どもの生活環境に大きな影響を与える「居住地の変更」についても、父母双方の合意が必要になります。
特に、監護の分掌によって子が父母の家を行き来する機会が多かったり、面会交流の頻度が多かったりする場合には、子の負担も考え父母が近距離に住むことも考えられます。こうした場合、仕事の都合で遠方へ引っ越すことが難しくなり、居住地の変更とキャリアの形成が制限される可能性があります。
また、県外の実家を頼りたい、と思っても、他方親の同意が得られなければ難しいでしょう。
2-5.共同親権と単独親権をめぐる争いが生じる
共同親権という選択肢が新たに加わったことで、離婚時の争点が増える可能性があります。
従来は単独親権だったため、「父母のどちらが親権者になるか」が主な争点でしたが、今後は「共同親権にするか、それとも単独親権にするか」という点でも意見が対立することが考えられます。この点で意見がまとまらないと、結果的に争いが長引き、調停や審判に発展してしまうおそれがあります。
共同親権の親が再婚したら
ところで、元配偶者との子について共同親権を持つ親が再婚した場合は、どのようになるのでしょうか。
1.再婚しても原則は共同親権が継続
わかりやすく、父A、母B、二人の間の子をCとしましょう。
父Aと母Bが離婚し、子Cについて共同親権を持つことになりました。その後、父Aが別の女性Dと再婚したとします。この場合、ただ再婚しただけであれば、子Cの実の親である父Aと母Bが引き続き共同親権を持つことになります。
2.養子縁組に注意
ですが、再婚した共同親権者の再婚相手が子と養子縁組をした場合は、再婚相手が子の共同親権者となるため、実親は共同親権者ではなくなってしまうことになります。婚姻した夫婦は、子について共同で親権を持つことになるという原則のためです。
上の例でいいますと、父Aの再婚相手の女性Dが子Cと養子縁組した場合、実母Bは共同親権を失い、養母Dが父Aとともに子Cの共同親権者となるのです。
なお、子が15歳未満である場合には、養子縁組について共同親権者双方の同意が必要となります(民法第797条1項)。子Cが仮に12歳であれば、実母Bが養子縁組に反対することも考えられるでしょう。
(十五歳未満の者を養子とする縁組)
民法第797条 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
3 第一項の縁組をすることが子の利益のため特に必要であるにもかかわらず、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが縁組の同意をしないときは、家庭裁判所は、養子となる者の法定代理人の請求により、その同意に代わる許可を与えることができる。同項の縁組をすることが子の利益のため特に必要であるにもかかわらず、養子となる者の父母で親権を停止されているものが縁組の同意をしないときも、同様とする。
4 第一項の承諾に係る親権の行使について第八百二十四条の二第三項に規定する請求を受けた家庭裁判所は、第一項の縁組をすることが子の利益のため特に必要であると認めるときに限り、同条第三項の規定による審判をすることができる。
養子縁組について共同親権者間で意見が対立した場合、再婚した方の共同親権者は「特定の事項(養子縁組の代諾)に係る親権行使者の指定」の審判を家庭裁判所に申し立てることが考えられます(民法第797条4項)。
ただし、この場合もこれまでにご説明したとおり、裁判所は「養子縁組を認めることが子の利益のために特に必要があると認める」ときに限り、養子縁組にかかる単独での親権行使を認めることになるでしょう。
共同親権のご相談は弁護士に
さて、2026年4月1日から始まった「共同親権」の制度ですが、まだ実感がないという方もいらっしゃるかもしれません。
共同親権は、離婚後の子育てや生活に大きな影響を与える重要な制度です。親権を共同にするか単独にするかによって、子どもの進学や医療、転居などの意思決定の進め方が変わります。父母双方が関与できるメリットがある一方で、関係性によっては対立が長期化したり、判断に時間がかかったりするおそれもあります。
共同親権にするか、単独親権にするか、離婚時にはさまざまな事情を検討して話し合うことが重要です。
ですが、共同親権と単独親権のいずれを選択すべきかは、一概に判断できるものではありません。判断に迷われた場合は、弁護士にご相談いただくことで、現状を整理しながら、離婚後のトラブルを防ぐための適切な取り決めを検討することができます。
初回無料相談などを活用し、法律の専門家である弁護士と話し、検討事項や自身の主張を整理していただくことをおすすめいたします。
共同親権に関するQ&A
Q1.共同親権とはどういう制度ですか?
A:共同親権とは、離婚後も父母の双方が親権者となり、子どもの養育や重要な事項の決定に共同で関わる制度です。これまでのように一方のみが親権者となる単独親権とは異なり、離婚後も両親が子どもに対する責任と関与を分担しながら子育てを行うことが想定されています。
Q2.共同親権になると子の養育に関して全て両親の合意が必要になりますか?
A:いいえ、全ての事項について必ずしも両親の合意が必要になるわけではありません。日常的な生活に関する事項については、実際に子どもと生活している親が判断できるとされています。一方で、進学や医療、居住地の変更など、子どもの将来に大きな影響を与える重要な事項については、父母双方の合意が必要とされています。
Q3.離婚したら必ず共同親権になってしまいますか?
A:いいえ、必ず共同親権になるわけではありません。離婚時には、父母の協議や家庭裁判所の判断によって、共同親権と単独親権のいずれかが定められます。父母の関係性や子どもの生活状況などを踏まえ、子どもの利益にとってどちらが適切かが個別に判断されることになります。
まとめ
本記事では、共同親権について弁護士が詳しく解説させていただきました。
共同親権は、離婚後も父母双方が子どもの養育に関わることができる新しい制度であり、親子関係を維持しやすくなるというメリットがある一方で、父母間の関係性によっては意思決定が難しくなったり、トラブルが生じたりするおそれもあります。
そのため、共同親権が適しているかどうかは一律に判断できるものではなく、家庭ごとの事情や子どもの生活環境を踏まえて慎重に検討することが重要です。特に、養育費や親子交流、生活上の重要な判断の進め方については、離婚時にしっかりと取り決めておくことで、より適切に共同親権の利点を享受することができるでしょう。
共同親権にするか単独親権にするかでお悩みの方や、具体的な取り決めについて不安がある方は、早めに弁護士へご相談ください。
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この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

