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面会交流を拒否できる?離婚後に会わせない正当な理由を弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚後の面会交流は、子どもの福祉と両親の権利を尊重するために重要な役割を果たします。しかし、実際にはさまざまな理由から、元夫や元妻に子どもを会わせたくない、面会を拒否したい、と考える親も少なくありません。

そこで、この記事では、面会交流を拒否することの可否に注目し、弁護士が詳しく解説させていただきます。

離婚後の面会交流を求められた場合に拒否することができるのか、法律上の面会交流権の規定について触れながら、そのリスクについて解説いたします。

また、面会交流を拒否できる場合については、その正当な理由について、具体的に解説させていただきます。

さらに、離婚後の面会交流を拒否したい場合に、どのような方法があるのか、といった点についても詳しく見ていきたいと思います。

この記事の解説が、少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

離婚後に相手を子どもに会わせないのは違法?

「面会交流」は子どものための権利のひとつ

さて、面会交流というのは、離婚した後、子どもが別居している他方の親と交流することをいいます。実際に対面して交流すること以外にも、電話やメールで連絡を取ったり、プレゼントを贈ったりすることも面会交流の内容に含まれます。

この面会交流権については、民法第766条に「協議離婚をするときは、子どもの利益を最も優先して、面会交流することについて話し合って取り決めなければならない」と規定されています。また、離婚調停や離婚裁判などの裁判所で行う離婚手続きによる場合も、面会交流について取り決めるよう規定されています(民法第771条)。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

(協議上の離婚の規定の準用)

民法第771条 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

面会交流は子どもの健全な発育のために重要な役割を果たし、親子の関係を維持するためにも必要とされています。夫婦が離婚したとしても、子どもにとっては同居していない親も「親」であるからです。

面会交流を通じて親子の絆を保つことは、子どもの心理的・感情的な安定に寄与し、離婚後に子どもと別居している親もまた、子どもの成長に関与し続ける権利を有することになるのです。

こうした趣旨から、面会交流権は親の権利というよりは、子どもの権利として認められているものといえるでしょう。面会交流は、子と別居している親が子どもと関わり続けるための手段でもありますが、あくまで子どもの福祉を第一に考えたものであることが重要です。

そのため、例えば離婚後に妻が「元夫に子どもを会わせたくない」と思っていても、むやみに面会交流を拒否してはなりません。

子を養育している親の感情だけで、面会交流を拒否してしまうと、場合によっては面会交流の拒否が違法と判断されてしまうこともあります。

具体的には、面会交流を拒否することには次のようなリスクがあります。

拒否し続けるリスク1.履行勧告される

面会交流を拒否し続けると、家庭裁判所から履行勧告を受ける可能性があります。

履行勧告とは、調停で取り決めた約束について「きちんと守りなさい」と裁判所から勧告の連絡を受けることです。面会交流について取り決めたのに、子どもと同居する親が面会交流を拒否する場合、裁判所は同居親に対して面会交流を適切に実施するように勧告の書類を送付したり、直接電話連絡を入れたりします。

この履行勧告に強制力はありませんが、履行勧告を無視すると、さらなる法的手続きが取られることがあります。

拒否し続けるリスク2.間接強制・慰謝料請求される

面会交流を拒否し続ける場合、もう一方の親から間接強制や慰謝料の請求を受ける可能性があります。間接強制とは、金銭的な制裁を通じて面会交流の実行を強制する手続きです。

面会交流を強制するといっても、実際に子どもを強引に別居している親に会わせることはできません。そのため「直接強制」ではなく、面会交流の約束が果たされない場合に、制裁金を支払わせるという形で、間接的に面会交流を強制するのです。

間接強制することにより、面会交流を拒否するたびに、5万円~10万円ほどの制裁金を支払わなければならなくなる上、この制裁金を支払わない場合は給料などを差し押さえられてしまう可能性もあるのです。

また、面会交流を拒否することが違法であると認められると、面会交流を拒否することで相手方に精神的な苦痛を与えたとして、慰謝料を請求されることもあります。

これは、面会交流を拒否したことの制裁金である間接強制とは異なり、面会交流を拒否されたことによる精神的な苦痛に対する損害賠償請求です。

慰謝料は違法な行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償ですから、面会交流の実施有無にかかわらず、慰謝料請求が認められると慰謝料の支払いが義務付けられます。つまり、一度面会交流を拒否してから慰謝料請求され、面会交流を実施したとしても、拒否されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料の支払い義務はなくならないのです。

拒否し続けるリスク3.親権者変更の調停・審判を申し立てられる

面会交流を拒否し続けると、相手方が親権者の変更を求めて、親権者変更調停や審判を申し立てる可能性があります。親権者としての義務を果たさないとみなされると、裁判所は子どもの福祉を最優先に考慮し、親権者の変更を検討することがあります。

親権者の変更は、子どもの生活環境や心理的な安定に大きな影響を与える重大な決定です。このような状況を避けるためにも、親権者は面会交流の義務を誠実に履行することが求められます。

以上の通り、面会交流を拒否することは、違法な行為とみなされることがあり、さまざまな法的リスクを伴います。

親は子どもの最善の利益を第一に考え、適切に面会交流を実施することが重要なのです。

面会交流を拒否したい!対処方法はある?

面会交流を拒否することが違法と判断される法的リスクがあるとはいえ、面会交流を拒否したい場合はあるでしょう。

違法と判断されずに面会交流を拒否するには、どういった対処方法があるのでしょうか。

養育費を支払わない相手でも面会交流を拒絶できない

例えば、子どもと別居する親が養育費を支払わない場合はどうでしょうか。

「養育費を支払ってくれないから、面会交流もさせない」と考えるのは、一見すると対等な交換条件であるかのように思えます。実際、養育費を支払ってもらえないので、面会交流を拒絶している、といった声を耳にすることは少なくありません。

ですが、面会交流と養育費の支払いは、それぞれ独立した権利・義務ですので、片方が履行されていないからといって、もう片方を拒絶することは許されません。

日本の民法では、面会交流は子どもの健全な成長と発育にとって重要なものであり、親の養育費支払い義務とは独立して扱われます。

そのため、たとえ相手が養育費を支払っていない場合でも、面会交流を拒絶することはできません。家庭裁判所も、養育費の未払いが理由で面会交流を拒否することを認めていません。

対処方法1.話し合い

面会交流を拒否したいと考える場合、まず最初に試みるべき対処方法は話し合いです。面会交流は子どものための重要な権利であり、親権者同士の協力が不可欠です。話し合いを通じて、お互いの立場や意見を尊重しつつ、面会交流に関する問題を解決することが重要です。

話し合いを行う際には、冷静さを保ち、感情的にならないように努めることが大切です。具体的な議題としては、面会交流の頻度、時間帯、場所など、実際の運用に関する詳細を取り決めることが含まれます。子どもの福祉を最優先に考え、面会交流が子どもにとって負担にならないように配慮することが求められます。

もし話し合いが難航する場合や意見が対立する場合には、第三者を交えることも効果的です。第三者を交えることで、中立的な立場から意見をもらうことができ、話し合いもスムーズに進めることが期待できます。

また、面会交流の問題について話し合う際には、子どもの意見も尊重することが重要です。子どもの年齢や成熟度に応じて、子どもの気持ちや希望を聞くことで、より適切な解決策を見つけることができるでしょう。

面会交流を拒否する理由が正当であり、子どもの福祉に反する場合でも、まずは話し合いを通じて相手方にその理由を伝え、理解を求めることが大切です。相手方が納得し、双方の合意が得られることで、面会交流の実施方法を柔軟に変更することが可能になります。

対処方法2.家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる

面会交流を拒否する際に、話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。面会交流調停は、裁判所の調停委員が仲介役となり、親同士が合意に達するよう支援する方法です。この方法は、面会交流に関する問題を公平かつ中立的に解決するために有効な手段となります。

なお、面会交流調停は、面会交流を拒否したい場合だけでなく、面会交流を拒否された側が面会交流を求める場合にも用いる方法なので、面会交流を拒否していると、面会交流調停を申し立てられる可能性もあります。

面会交流調停を申し立てるためには、まず家庭裁判所に必要な書類を提出します。この書類には、面会交流を拒否する理由や子どもの状況、親の意見などが記載されます。調停は、裁判所での話し合いを通じて、子どもの最善の利益を守るための面会交流の方法を決定することを目的としています。

調停の過程では、調停委員が親同士の意見を聞き取り、子どもの福祉を最優先に考えた解決策を提案します。調停委員は法律や家庭問題に詳しい専門家であり、面会交流に関する適切なアドバイスを提供します。これにより、親同士が直接対立することなく、冷静に話し合いを進めることができます。

調停の結果、合意が成立すれば、それが正式な取り決めとなり、親はその内容に従う義務があります。もし調停不成立となり合意に至らない場合は、面会交流審判に移行し、家庭裁判所が面会交流の実施の有無や面会方法等を決定することになります。

面会交流調停についての詳細は、こちらの関連記事にて弁護士が詳しく解説しておりますので、ぜひご一読ください。

[面会交流調停|調停の流れ・申立方法や裁判所で聞かれることとは?]

面会交流を拒否できる「正当な理由」のあるケースは何?

 

面会交流を拒否できる「正当な理由」のあるケースは何?

 

さて、面会交流を不当に拒否すると、違法とみなされ慰謝料を請求されたり、親権者変更調停を申し立てられる恐れがあると、本記事で前述いたしました。

ですが、全てのケースで面会交流の拒否が違法とみなされるわけではありません。

以下に、面会交流の拒否が認められる「正当な理由」がある場合について、解説させていただきたいと思います。

正当な理由1.子ども自身が会うことを拒否している場合

子ども自身が会うことを拒否している場合には、面会交流を拒否することが認められる可能性があります。

子どもの福祉に反するかどうかが、面会交流を拒否するかどうかの判断基準となります。

ですので、例えば子どもが面会交流に対して強い心理的ストレスを感じている場合や、面会交流が子どもの心身の健康に悪影響を与えると判断される場合には、子どもの意見が面会交流を拒否する正当な理由となることがあります。

ですが、単に子どもが面会交流を嫌がっているというだけでは、必ずしも面会交流の拒否が認められるわけではありません。

子どもの意見は重要ですが、幼い子どもの場合、その時の気分で「会いたくない」と言っているだけかもしれません。また、「自分が親と会うと、親権者が嫌がるから」などと親権者の気持ちを察して、本当は面会交流をしたいのに「会いたくない」と言ってしまうケースもあるからです。

そのため、判断能力がまだ十分ではないとみなされる幼い子どもについては、「会いたくない」という子どもの意見だけでは面会交流を拒否する理由にはなりませんが、一般的に15歳以上の子どもであれば、その意見が認められて面会交流を拒否する正当な理由になると考えられています。

正当な理由2.相手にモラハラ・DVされる可能性がある場合

相手にモラハラやDV(家庭内暴力)をされる可能性があることも、面会交流を拒否する理由として認められます。

面会交流は子どもの健全な成長と発育のために重要ですが、離婚した相手がDVをする可能性が高いなど、安全が確保されない状況では、面会交流をすることが逆効果になることがあるからです。

モラハラやDVとは、相手が心理的または物理的に子どもや親に対して害を与える行為を指します。精神的DVや肉体的DVなどの行為が過去にあった場合、再発の恐れがあるため、モラハラやDVを理由として面会交流を拒否することが正当と考えられることがあるのです。

例えば、夫が過去に妻や子どもに対して暴力を振るっていた場合、そのリスクが再度高まる可能性があります。このような場合、面会交流を行うことで子どもが再び危険な状況にさらされる可能性があるため、面会交流の拒否が考えられます。

また、モラハラやDVのリスクがある場合、子どもが心理的に不安定になることもあります。面会交流のたびに恐怖や不安を感じるようでは、子どもの心身の健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。こうした場合、「子どもの福祉」という面会交流の趣旨に反するため、面会交流を拒否することが認められる可能性があるのです。

正当な理由3.子どもを連れ去る恐れがある場合

相手が子どもを連れ去る恐れがある場合にも、それを理由として面会交流を拒否することが認められる可能性があります。

例えば、夫が過去に子どもを連れ去ろうとした事例がある場合、再びその恐れがあると考えることができます。このような状況では、面会交流を拒否することが子どもの安全を守るために必要とされます。子どもを連れ去られることで、子どもが安心して生活する環境が失われ、心理的な不安やストレスが増大してしまっては、面会交流が子どもの福祉に資するとはいえないからです。

なお、面会交流の拒否で面会交流調停になった場合、裁判所は基本的に、面会交流を実施する方向で検討する傾向にあります。そのため、例えば裁判所は監視付きの面会交流を提案することがあります。この方法では、第三者の監視のもとで面会交流を行うことで、子どもの安全を確保しつつ、親子関係の維持を図ることが期待できます。

面会交流を拒否することが認められるためには、具体的な証拠と理由をしっかりと準備することが必要です。

正当な理由4.相手が子どもに親権者の悪口を言う

面会交流を拒否できる理由として、子を養育している親や親権者の悪口を言う、という場合が挙げられます。面会交流は子どもの健全な成長と発育にとって重要ですが、相手が面会交流の際に子を養育している親の悪口を言うことで、子どもの心理的な安定が損なわれる場合があります。

例えば、夫が面会交流中に子どもに対して妻の悪口を言うと、子どもは混乱し、子を養育している母親に対する信頼感が揺らぐことがあります。

このような状況は、子どもにとって非常に有害であり、家庭内での安心感や安定感を失わせる原因となります。

また、子どもが子を養育している親の悪口を聞かされることで、感情的なストレスや不安を抱えることになり、日常生活にも悪影響を及ぼす可能性があります。

悪口以外にも、子どもと子を養育する親との信頼関係を損ねるような言動や、子の生活環境を脅かすような言動をする場合も、面会交流が子どもにとって悪影響だと判断され、面会交流の拒否が認められることがあります。

正当な理由5.面会の約束を守らない場合

面会交流の実施にあたっては、面会交流を行う場所や日時、方法、禁止事項などを取り決めます。これらの取り決めは、子どもの福祉を最優先に考慮し、双方の親が合意の上で決定されます。しかし、面会交流の際に約束が守られない場合、面会交流を拒否する正当な理由となることがあります。

面会交流における約束が守られない場合、子どもや子を養育している親にとって大きなストレスや不安を引き起こします。

例えば、夫が面会交流の約束を破り、面会時間を守らなかったり、指定された場所以外に子どもを連れて行ったりする場合、子どもの安全が脅かされる可能性があります。面会交流の約束をした日ではないのに、勝手に子どもに会いにきたり、親権者の知らないところで子どもとこっそり連絡を取ったりすることも、面会交流の約束違反です。

また、面会交流の際に禁止されている行為があれば、面会交流の信頼性が損なわれることになるため、面会交流を拒否できる可能性があります。

相手親が面会交流の約束を守ってくれない場合、子を養育する親としては安心して面会交流を継続することができません。

したがって、子どもや親権者の事情・都合を考慮せずに、勝手に面会交流をするような相手親に対しては、面会交流を拒否することが認められる場合があります。

正当な理由6.子どもに不法行為をさせる・されるリスクがある場合

面会交流の際にその他不法行為をさせる、またはされるリスクがある場合も、面会交流の拒否が認められることがあります。

例えば、夫が面会交流中に子どもに違法な行為をさせようとしたり、子どもが不法行為の被害を受ける可能性がある場合、面会交流を拒否することが正当とされます。

具体的な例としては、夫が子どもに窃盗や詐欺などの犯罪行為を手伝わせる、または夫自身が犯罪行為に関与しており、子どもがその影響を受ける危険がある場合が考えられます。

このようなリスクがある場合、子どもの安全と福祉を守るために、面会交流を拒否することが必要です。

正当な理由7.面会交流の協議・調停・審判が進行中

法的手続きが進行中の場合には、面会交流を拒否することが認められる場合があります。

例えば、夫婦間で面会交流に関する具体的な取り決めがまだ確定していない場合や、面会交流に関する問題が家庭裁判所で審議されている場合、子どもの福祉を最優先に考え、面会交流を拒否することが必要となることがあります。これは、面会交流に関する最適な条件が整うまでの間、子どもの安全と心理的な安定を確保するためです。

面会交流の協議・調停・審判が進行中の場合、親同士が面会交流に関する取り決めをすることが難しいことがあります。例えば、面会交流の頻度や場所、時間などに関して意見が対立している場合、調停や審判を通じて第三者の仲介や法的な判断を仰ぐことが必要となります。

このような状況では、面会交流を拒否することが子どもの最善の利益を守るための適切な対応となることがあります。

また、調停や審判が進行中の場合、家庭裁判所は一時的な措置として面会交流を拒否することがあります。これは、子どもの安全と福祉を確保するための一時的な措置であり、最終的な決定が下されるまでの間、子どもが安定した環境で過ごすことができるようにするためです。

こうした理由以外にも、子どもを養育している親が再婚を考えており、既に再婚相手と子どもが親しくしている場合や、子どもと別居している親が面会交流を拒否している場合なども、子どもの福祉に資するかを考慮した上で、面会交流をしないことが許されるケースもあります。

どういった場合に面会交流の拒否が許されるかは、このようにケースバイケースです。安易に自己判断をせず、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

面会交流を拒否された場合の対処方法

面会交流を拒否された場合、子どもとの関係を維持するために、適切な対処方法を取ることが重要です。以下に、面会交流を拒否された場合の具体的な対処方法を説明します。

話し合い

まず、面会交流を拒否された場合には、相手との話し合いを試みることが大切です。冷静かつ建設的に話し合い、面会交流の重要性や子どもの福祉を最優先に考えることを強調します。相手がなぜ面会交流を拒否しているのか、その理由を理解することで、解決策を見つけやすくなります。話し合いが難航する場合には、第三者の仲介を依頼することも検討してください。

履行勧告を申し立てる

話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に履行勧告を申し立てることができます。履行勧告とは、裁判所が命じた面会交流を実施するように相手方に勧告する手続きです。履行勧告は法的拘束力がないものの、相手に対する強いメッセージとなり、面会交流の実施を促す効果があります。

面会交流調停の申し立て

話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。面会交流調停は、裁判所の調停委員が仲介し、親同士が合意に達するよう支援する手続きです。調停委員は双方の意見を聞き、子どもの福祉を最優先に考えた解決策を提案します。面会交流調停が成立すれば、面会交流の具体的な条件が正式に取り決められることとなります。

審判に移行する

面会交流調停で合意に至らない場合、審判手続きに移行します。審判では、裁判官が面会交流の内容について最終的な決定を下します。裁判官は子どもの福祉を最優先に考え、面会交流の頻度や時間、場所などを具体的に決定します。

間接強制の申し立て

面会交流の調停や審判の結果に従わない場合、間接強制を申し立てることができます。間接強制とは、面会交流の実行を強制するために金銭的な制裁を科す手続きです。面会交流を拒否するたびに一定の金額を支払う義務が生じることで、面会交流の実施を促すことができます。

以上の通り、面会交流を拒否された場合、まずは相手との話し合いを試み、解決策を見つけることが重要です。話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に履行勧告、面会交流調停などを申し立てることで、法的手続きを通じて面会交流を拒否されることを回避できるでしょう。

面会交流を拒否することの正当性に関するQ&A

Q1.面会交流を拒否することは違法になりますか?

面会交流というのは、離婚した後、子どもが別居している他方の親と交流することをいい、民法第766条に「協議離婚をするときは、子どもの利益を最も優先して、面会交流することについて話し合って取り決めなければならない」と規定されています。

面会交流を拒否する理由によっては、面会交流を拒否することが違法な行為とみなされることがあり、慰謝料請求されるなど、さまざまな法的リスクを伴います。

Q2.面会交流を拒否できる正当な理由とは何がありますか?

面会交流を拒否できる正当な理由として、主に次のような理由が挙げられます。

  • 子ども自身が会うことを拒否している場合
  • 相手にモラハラ・DVされる可能性がある場合
  • 子どもを連れ去る恐れがある場合
  • 子どもに養育している親の悪口を言う場合
  • 面会時に面会交流の約束を守らない場合
  • その他不法行為をさせる・されるリスクがある場合
  • 面会交流の協議・調停・審判が進行中の場合

Q3.面会交流を拒否された場合、どのように対処すればよいですか?

面会交流を拒否された場合、まず相手と冷静に話し合い、面会交流の重要性を伝えましょう。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に履行勧告を申し立て、面会交流を実施するよう促します。それでも解決しない場合、面会交流調停を申し立て、調停委員の仲介を受けて合意を目指します。弁護士に相談することで、適切な手続きをサポートしてもらうことも有効です。

当法律事務所の弁護士にご相談ください

面会交流は、子どもの健全な成長と親子関係の維持にとって非常に重要な権利です。しかし、正当な理由がある場合には、面会交流を拒否することが認められます。

子ども自身が会うことを拒否している場合や、相手にモラハラやDVのリスクがある場合、子どもを連れ去る恐れがある場合などが正当な理由となります。また、面会交流の際に約束が守られない場合や、子どもに不法行為をさせる・されるリスクがある場合も、面会交流を拒否することが考えられます。

一方で、面会交流を不当に拒否されてしまうケースもあります。正当な理由もなく面会交流を拒否された場合には、話し合いや家庭裁判所への履行勧告、面会交流調停の申し立て、審判の申し立てなどの手続きがあります。

面会交流を拒否したい・拒否された、ということでお悩みの方は、ぜひ法律の専門家である弁護士にご相談ください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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