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内縁の妻の証明|内縁関係や事実婚は住民票の続柄などで証明できる!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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内縁の妻としての関係を証明することは、法的な利益や権利を得るために非常に重要です。
日本では、内縁関係は法的に結婚とは異なるものとされています。内縁関係は、婚姻に似た状態を指しますが、正式な婚姻届けが提出されていない状態であるためです。そこで、夫婦としての法的保護や権利を享受するためには、内縁関係を明確に証明する必要があります。
それでは、内縁の妻や夫であることを証明するためには、どのような書類が必要・有効なのでしょうか。

本記事では、内縁の妻であることの証明方法や、どういった場面で内縁関係を示すことが求められるかなどについて、弁護士が解説していきます。
遺族年金の請求時など、内縁の妻であることを示さなければいけない場面でどのようにすればいいのか、本記事がご参考になりましたら幸いです。

目次

内縁の妻の証明

そもそも、内縁の妻であることを証明しなければならないのは、どういった場合なのでしょうか。主に、次の3つの場合が考えられます。

内縁関係を証明する3つの場合

①内縁関係解消時の財産分与請求、養育費請求、慰謝料請求などをする時

内縁関係が解消された場合、法律婚と同様に財産分与や養育費、慰謝料の請求が生じることがあります。
内縁の妻や夫としてこれらの権利を主張するには、まずその関係が実際に存在したことを証明する必要があります。内縁の妻や夫であることの証明は、公的な書類の確認、共同生活の実態、共有財産の管理方法や状況、周囲から夫婦としてみなされるような状況だったかなど、様々な事情を検討することによって行われます。
これらの証拠を基に、内縁の妻や夫は、内縁関係解消時に財産分与や養育費、慰謝料などの請求を行うことができるのです。

②遺族年金を受け取る場合

通常、遺族年金の受給資格を得るには、被保険者との間に法律婚があったことを証明する必要があります。
しかし、内縁の関係にあった場合でも、その関係が事実上の夫婦関係であったことを証明できれば、遺族年金の受給資格を得ることが可能になる場合があります。
この場合も、共同生活の実態や、共有財産の管理方法や状況、周囲の認識などが重要な証拠となります。

③緊急時の意思決定権や連帯保証人になる場合

他にも、内縁の妻や夫であることを証明する必要性が生じる場面は多く存在します。
例えば、病院での面会権や緊急時の意思決定権を行使する際に、内縁の関係を証明する必要がある場合があります。

保険の受取人として内縁の妻や夫を指定する場合も、内縁関係を証明する必要があります。通常、保険会社は、法律婚にある配偶者を保険金の受取人として認めますが、内縁関係を証明することで、内縁の妻や夫も受取人として認められるようになります。

また、住宅ローンを組む際、連帯保証人として内縁の妻や夫を指定したい場合があります。しかし、法律婚の配偶者でないと認められない場合が多いため、内縁関係を証明しなければなりません。この場合も、共同生活の証拠や共有財産に関する書類などが有効です。

内縁は住民票で証明できる!

内縁の証明書類

内縁の妻であることを証明する方法として、次の13の書類や手段が考えられます。それぞれの内縁の妻の証明方法や書類について、どういった点で内縁の妻の証明になるのか、詳しく解説させていただきます。

  1. 住民票
  2. 賃貸借契約書
  3. 健康保険証
  4. 遺族年金証書
  5. 給与明細書
  6. 自動車保険の契約書
  7. 長期間の同居の実態
  8. 結婚式や披露宴を行ったことを証明するもの
  9. 家計簿
  10. 内縁関係(事実婚)である旨の契約書
  11. 民生委員が作成する内縁関係の証明書
  12. 周囲からの認識や証言
  13. メールやLINEなどの「内縁の妻・夫」を証明する通信内容

①住民票(「内縁の夫」などの続柄)

住民票による内縁関係の証明

 

内縁の妻であることを証明するための必要書類として、最も一般的で有効な書類が住民票です。
通常、住民票には、家族構成員とその続柄(つづきがら)が記載されます。続柄とは、親族としての関係やつながりを表すもので、例えば夫にとっては、配偶者の続柄は「妻」と記載することになります。

内縁の夫婦関係にある場合、住民票の続柄の欄に「内縁の妻」「内縁の夫」という表記がされることがあります。また、法的に結婚をしていない状況で、事実上の夫婦関係があることを示すために「妻(未届)」「夫(未届)」という表記が用いられることもあります。
これらの表記は、共同生活の実態や夫婦としての関係を公的な文書で明示し、内縁関係の存在を強く示唆します。

しかし、その一方で、内縁関係にある男女が、それぞれ別々の世帯主として住民票を持っている場合、続柄の欄に「妻(未届)」「夫(未届)」という記載はできなくなってしまいます。
この場合、内縁の妻や夫であることの証明は、以下にご紹介いたします他の手段や書類に依存することになります。

住民票によって内縁関係を証明する際には、内縁関係の男女の一方が、他方の世帯の一員として住民票の続柄に記載されている場合に、内縁関係が社会的に認知されていることを示す強力な証拠となるのです。

②賃貸借契約書

内縁の妻や夫であることを証明するのための必要書類として、賃貸借契約書も有効です。賃貸借契約書は、共同生活の証拠書類になり得るためです。
賃貸借契約書には、契約者の名義の他に、同居人の氏名と続き柄を表記する欄が設けられています。同居人の続柄に、「内縁の妻」「内縁の夫」といった表記や、「妻(未届)」「夫(未届)」と記載しておくことで、内縁関係の男女が夫婦として共同生活していることを示すことになり、内縁の妻や夫の存在を証明する書類となるのです。

③健康保険証

内縁の妻や夫の健康保険証には、被扶養者の欄があります。
健康保険法第3条7項1号において、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者で、主としてその被保険者により生計を維持する者」は、被扶養者にあたる、と規定されています。

健康保険法第3条7項1号
この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない。
一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの

したがって、内縁関係の相手が被扶養者として記載されている場合、この健康保険証は内縁関係を証明する証拠となるのです。

④遺族年金証書

遺族年金証書は、一定の条件を満たした遺族が、故人の年金の一部または年金の全部を受給する権利を有することを証明する公的な書類です。
この遺族年金証書は、故人が生前に支払った年金保険料に基づいて、その配偶者や子供などの遺族が経済的な支援を受けるために発行されます。

内縁の妻が遺族として遺族年金を受給するためには、内縁の夫が亡くなった後、長期間にわたる同居や生計を共にしていたことなど、特定の条件を満たしているか、証明する必要があります。この遺族年金を受給するための手続きで提出される必要書類や証拠資料が、内縁関係の存在を証明するために、重要な役割を果たすことになります。
そのため、この年金証書自体が、内縁の妻や夫であるということを、社会的、法的に認知されている、という証明となるのです。

このように、遺族年金証書は、内縁関係の証明において重要な役割を果たし、特に故人との長期間にわたる関係や共同生活の証明において、とても重要な意味を持ちます。内縁の妻が遺族として年金を受給することは、その関係が法的に一定の認知と保護を受けていることの強い証拠となるのです。

⑤給与明細書

内縁の妻や夫の給与明細書に「扶養親族の数」について記載があったり、給与明細書に扶養手当や家族手当を支給していることが記載されている場合、内縁関係の存在を示す証拠になります。
内縁の妻や夫に対して、扶養手当や家族手当が支給されていることは、雇用主が内縁関係について認知し、その関係を社会的に認めていることを示すことになるからです。

⑥自動車保険の契約書

自動車保険の契約内容によっては、内縁の妻や夫を被保険者の配偶者として扱ったり、被保険者として名を連ねたりすることがあります。このような場合、保険契約が内縁関係の一部の証拠として機能することがあります。

例えば、内縁の夫が保険契約者で、内縁の妻を配偶者として保険に加入している場合、これは共同生活を送っていることの間接的な証拠となる可能性があります。

また、内縁の妻や夫が共有の自動車を所有し、その保険契約に双方の名が記載されている場合も、共同で財産を管理していることの証拠になり得ます。

ただし、自動車保険の契約内容は、内縁関係の存在を完全には証明しません。そのため、内縁関係の証明には、自動車保険の契約書類に加えて、他の証拠や住民票などの書類を併用することをおすすめいたします。

⑦長期間の同居の実態

内縁関係の証明において、長期間にわたる同居の実態は重要な要素です。
同一の住所での共同生活、共有の家具や家電の使用、共同での日常生活を送ることなどが、内縁の夫婦関係の存在を示す証拠となります。共同生活の継続期間が長ければ長いほど、その証明力は高まります。

⑧結婚式や披露宴を行ったことを証明するもの

結婚式や披露宴を実施した証拠(写真、ビデオ、招待状、領収書など)は、内縁関係における婚姻意思を強く示します。
これらの証拠資料は、内縁関係にある男女が、社会的に夫婦として認識されていること、またはそのように振る舞っていることを示し、内縁関係の社会的な認知を裏付ける重要な証拠となります。

⑨家計簿

共同での家計管理を示す家計簿は、内縁の妻や夫が、生計を共にしていたことを証明するための証拠となります。
家計簿に記載された日常の支出、内縁の妻と夫が共同で買い物をした購入履歴、内縁の妻と夫との共同生活において、経済的に双方どれだけ貢献しているか、といった内容が、内縁の妻や夫の存在を示す証拠となることがあります。

⑩内縁関係の契約書

いわゆる「結婚契約書」にあたります。内縁関係(事実婚)である旨の契約書は、内縁の夫と妻の間で、今後の生活に関する相互の約束事を書面に記したものです。
この契約書には、例えば「内縁の夫が今後の生活費を保障する」という約束や、「内縁の妻が家庭の維持に関する責任を担う」といった内容が記載されることがあります。

また、子供が生まれた場合には双方が認知し、内縁の妻と夫がともに育児に参加する、といった約束も記載されることがあります。

このように、契約書には、内縁の関係における責任と義務を明確にするための具体的な内容が盛り込まれます。加えて、契約書に内縁の妻と夫の署名と印鑑が押されている場合は、内縁の妻と夫双方が合意の下で契約書を作成したことの正当性と有効性も証明されることになります。

⑪民生委員が作る内縁関係の証明書

民生委員は、日本における地域社会の福祉活動を支援するために任命される公的なボランティアです。内縁関係の証明書を作成する業務について、一般的な民生委員の役割ではありませんが、地域によっては地域住民の相談に基づいて、特定の状況や関係性に関する確認書や証明書を作成することがあります。ただし、このような証明書は公式の法的書類とは異なり、その法的な有効性は限定的です。

民生委員が内縁関係の証明書を作成する場合、通常は内縁の夫婦が民生委員に相談を行い、その関係や状況について説明します。民生委員は、関係の実態や両者の生活状況を把握した上で、内縁関係が存在することを確認する書類を作成します。

しかし、地域や個々の民生委員によって対応が異なるため、自身の地域の民生委員が内縁関係の証明書を作成しているかを事前に確認する必要があります。

なお、内縁の妻や夫であることを証明する点においては、民生委員が作成する証明書よりも、住民票、健康保険証、賃貸借契約書などの公的な書類の方が、一般的にはより強い証拠となります。
民生委員による証明書は、他の証拠と併せて補助的に使用されることが多いです。

⑫周囲からの認識や証言

内縁の妻や夫であることを証明する方法として、周囲からの認識や証言も有効です。
友人、家族、近隣住民などからの証言や、周囲の人間が「内縁の妻や夫だと認識していること」は、内縁関係が社会的に認知されていることを示す証拠となります。

⑬メールやLINEなどの通信内容

内縁の妻がメールやLINEなどの通信記録を用いて内縁関係を証明する場合、通信の内容が重要なポイントになります。
具体的には、内縁の夫が内縁の妻と結婚する意思を持っていたことを示す内容が含まれていると、これらの通信記録は証拠としての価値を持ちます。

例えば、内縁の夫がメールやLINEで「共に将来を築きたい」「一緒に生活しよう」といった、結婚に向けた意思を表明していたり、共同生活を計画しているようなやり取りは、内縁関係の存在を証明する証拠になります。

また、将来の計画や約束に関する具体的な話し合いが記録されている場合も、内縁関係の真剣さを裏付けるものとなります。
内縁の夫が自分のブログやSNSなどに、内縁の妻の写真を投稿して「妻です」「嫁と撮りました」などと記載している場合も、内縁関係を証明するための証拠になることがあります。

なお、住民票や賃貸借契約書といったものに比べると、一般的に証拠力は落ちると考えられています。あくまで補助的な手段として想定しておくべきでしょう。

内縁の妻の戸籍は?

戸籍では内縁の妻や夫であることを直接証明することはできません。日本の戸籍制度においては、戸籍に記載される主な内容には、個人の氏名、性別、生年月日、本籍地、親子関係などがあります。また、法律上の婚姻に関する事項、例えば婚姻日や配偶者の情報も記載されます。

しかし、戸籍には内縁関係にある男女の情報は記載されません。
具体的には、内縁の妻と夫の関係は、戸籍には反映されないため、戸籍を見てもその関係性は把握できません。内縁関係は法律婚と異なり、法的な手続きを経て公式に登録されるものではないためです。
そのため、内縁の妻と夫は、それぞれ別々の戸籍に記載されたままとなり、それぞれの戸籍上にも、内縁の妻や夫についての情報が記載されないのです。

内縁の妻の証明に関するQ&A

Q1.内縁の妻であることを証明する書類は何がありますか?

内縁の妻であることの証明に有効な書類や手段は、一般的に次のようなものが考えられます。

  1. 住民票
  2. 賃貸借契約書
  3. 健康保険証
  4. 遺族年金証書
  5. 給与明細書
  6. 民生委員が作成する内縁関係の証明書
  7. 長期間の同居の実態
  8. 結婚式や披露宴を行ったことを証明するもの
  9. 家計簿
  10. 内縁関係(事実婚)である旨の契約書
  11. 自動車保険の契約書
  12. 周囲からの認識
  13. メールやLINEなどの「内縁の妻・夫」を証明する通信内容

Q2.内縁の妻であることを、住民票でどのように証明できるのでしょうか?

住民票には家族構成員とその続柄が記載されます。内縁の関係にある場合、住民票に「内縁の妻」「内縁の夫」として記載されることがあり、これは公的な文書上で事実上の夫婦関係が存在することを示します。
また、「妻(未届)」「夫(未届)」という特別な表記を用いることも可能です。

さらに、内縁の妻と夫が同一の住所に住んでいることを住民票で示すことができます。これは共同生活をしていることの証拠となり、内縁関係が存在する可能性を示唆します。
加えて、一方がもう一方の世帯主として住民票に記載されている場合、これは共同生活をしている強い証拠となり得ます。

Q3.戸籍には内縁の妻の記載はないのでしょうか。

日本の戸籍制度では内縁の妻や夫であることを直接証明することはできません。戸籍に記載される情報には、個人の氏名、性別、生年月日、本籍地、親子関係などが含まれます。また、法律上の婚姻に関する事項、例えば婚姻日や配偶者の情報も記載されるのが一般的です。

しかし、内縁関係にある男女の情報は戸籍に記載されません。内縁の妻と夫の関係は、法律婚と異なり法的な手続きを経て公式に登録されるものではないため、戸籍上にその関係性が反映されることはありません。
結果として、内縁の妻と夫はそれぞれ別々の戸籍に記載されたままとなり、内縁の妻や夫であることに関する情報は戸籍上には現れません。

まとめ

本記事では、内縁の妻や夫であることを、どのような書類や手段を使って証明できるのか、ということについて重点的に解説させていただきました。

法律婚とは異なり、内縁関係は証明することが簡単ではありません。
住民票は証拠力としては強いものの、やはり複数の書類や手段を組み合わせて証明するべきですし、そのためにどういった書類や資料を用意すべきなのか、きちんと確認する必要があります。
このような、内縁の妻・夫の証明に関するご相談やお悩みがありましたら、弁護士にお問合せください。内縁関係の証明について、弁護士が法的観点から、ご相談者様と一緒に検討いたします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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