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離婚後に苗字を変えない人の割合は多い?少ない?理由も弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫婦が分かれる際にはさまざまな手続きが発生しますが、婚姻時に姓を変えた人にとっては、離婚後に苗字を変えるか変えないか、というのも重要な問題です。
離婚後に姓を変更しない人の割合は、どれくらいなのでしょうか。

本記事では、離婚後に苗字を変えない人の割合のデータをもとに、なぜ苗字を変えないのか、あるいは旧姓に戻すのかといった理由について、簡単に解説していきます。

目次

離婚後に苗字を変えない人の割合は?

婚姻時に夫の姓を選ぶ夫婦の割合

日本では、結婚の際に夫婦は夫か妻のどちらかの姓を選ばなければならないと、法律によって決められています(民法第750条)。

(夫婦の氏)
民法第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

これに関し、厚生労働省の「人口動態統計」を見ると、令和4年(2022年)には、婚姻した504930組の夫婦のうち、478199組の夫婦が夫の姓を選択しました。

婚姻件数(総数) 夫の氏 妻の氏
504,930 478,199 26,731

参考:人口動態統計(令和4年)「婚姻件数(当該年に結婚生活に入り届け出たもの再掲),都道府県(特別区-指定都市再掲)・夫の氏-妻の氏別

婚姻時に姓を変えるのはほとんどが女性で、婚姻した夫婦の約95%が夫婦の姓として夫の姓を選択しているということが分かります。

離婚後に苗字を変えない人・変える人の割合

離婚した夫婦のうち、苗字を変える人の割合と変えない人の割合は、どのようになっているのか気になるところですが、残念ながらこちらについては、人口動態統計のような公的なデータがありません。

ですが、民間でのアンケート結果などによると、離婚後に苗字を変えない人よりは、苗字を変える(旧姓に戻す)人の方が多いと考えられています。

苗字を変えない人の理由は何?

さて、苗字を変えない人の割合は約35%でした。それでは何が理由で、離婚後に苗字を変えないのでしょうか。
離婚後に苗字を変えない主な理由は、7つあります。

  • 子供の生活に影響を与えたくない
  • 苗字の変更手続きが煩雑
  • 離婚の事実を周囲に知られたくない
  • 婚姻時の苗字に愛着がある
  • 職業上の名前の認知度を維持したい
  • 法的・財務的な書類での一貫性を保つため
  • 社会的な立場や関係性を考慮

苗字を変えない理由1.子供の生活に影響を与えたくない

離婚後、子供が父親の戸籍に入る場合、母親が苗字を変えると、子供の戸籍上の苗字と母親の苗字が異なることになります。この場合、子供が学校や保育園などの手続きをする際に、戸籍謄本や住民票などの提出が必要となり、手続きが煩雑になります。また、子供が友達や先生に自分の苗字と母親の苗字が異なることを知られると、いじめや差別を受ける可能性もあります。そのため、子供の生活に影響を与えたくないという理由で、苗字を変えない人もいます。

苗字を変えない理由2.苗字の変更手続きが煩雑

苗字を変更する場合、まずは戸籍の変更手続きを行います。戸籍の変更手続きが完了したら、免許証や保険証などの各種証明書の変更手続きが必要となります。その他、銀行口座やクレジットカードなどの変更手続きも必要となります。

これらの手続きには、本人確認書類や戸籍謄本などの書類が必要となるため、手間がかかり、すべて完了させるには、少なくとも数週間から数ヶ月はかかってしまうこともあります。また、変更手続きの際に、手数料が発生する場合もあります。そのため、手続きが面倒だという理由で、苗字を変えない人もいます。

苗字を変えない理由3.離婚の事実を周囲に知られたくない

離婚後、苗字を変えると、周囲に離婚したことが知られてしまう可能性があります。特に、職場や学校などの身近な環境で離婚したことが知られると、プライバシーが侵害されるなどのデメリットがあると考える人もいます。
そのため、離婚の事実を周囲に知られたくないという理由で、苗字を変えない人もいます。

苗字を変えない理由4.婚姻時の苗字に愛着がある

婚姻時に名乗っていた苗字は、結婚生活を送る中で、自分自身との結びつきがあるものとなることがあります。そのため、離婚後もその苗字を名乗り続けることで、結婚生活の思い出を大切にしたいと考える人もいます。
また、婚姻時の苗字が、自分の親の苗字である場合も多いです。そのため、親の苗字に愛着があり、その苗字をこれからも名乗りたいという人もいます。

苗字を変えない理由5.職業上の名前の認知度を維持したい

職業上、自分の名前で活動している場合、苗字を変えると、顧客や取引先などから、名前が変わった理由を問われるなどのトラブルにつながる可能性があります。そのため、職業上の名前の認知度を維持したいという理由で、苗字を変えない人もいます。

苗字を変えない理由6.法的・財務的な書類での一貫性を保つため

離婚後も、不動産や金融資産などの所有権や債務などの権利義務は、旧姓で取得した書類に基づいて行われることが多いです。そのため、法的・財務的な書類での一貫性を保つため、苗字を変えない人もいます。

苗字を変えない理由7.社会的な立場や関係性を考慮

離婚後も、親族や友人など、社会的な立場や関係性において、旧姓を名乗るほうが円滑にコミュニケーションが取れる場合もあります。
例えば、親族や友人との関係が良好で、旧姓で呼び合っている場合、苗字を変えると、呼び方に違和感を与えてしまう可能性があります。また、地域や職場などのコミュニティにおいて、旧姓で知られている場合、苗字を変えると、周囲から浮いてしまう可能性もあります。
そのため、社会的な立場や関係性を考慮して、苗字を変えない人もいます。

旧姓に戻す場合の理由は何?

それでは、離婚後に苗字を変える(旧姓に戻す)人は、何が理由で苗字を変えるのでしょうか。
離婚後に苗字を変える主な理由は何かといいますと、次の通りです。

  • 新しいスタートを切りたい、心機一転したい
  • 元配偶者との関係を断ち切りたい
  • 実家や家族の苗字に戻るため
  • 再婚を考慮している
  • 旧姓に戻さなければならないと思っていた
  • 子供が成人していて影響がない

離婚後に旧姓に戻す理由1.新しいスタートを切りたい、心機一転したい

離婚は、人生の大きな転機となる出来事です。そのため、離婚後は、新しいスタートを切りたい、心機一転したいという気持ちから、旧姓に戻す人が多くいます。
旧姓に戻すことで、結婚生活の過去を断ち切り、新たな自分として生き始めたいという思いを表現することができます。また、旧姓に戻すことで、周囲から「離婚した」という印象を与え、新しい出会いを求めるきっかけにもなります。

離婚後に旧姓に戻す理由2.元配偶者との関係を断ち切りたい

離婚後も、元配偶者との関係を断ち切ることができない場合、旧姓に戻すことで、元配偶者との関係を断ち切りたいと考える人もいるでしょう。
元配偶者との結びつきを象徴する苗字を変更することで、過去の関係から精神的に解放されたり、感情を整理することが期待できます。

離婚後に旧姓に戻す理由3.実家や家族の苗字に戻るため

離婚後も、実家や家族との関係を大切にしたいと考える人もいるでしょう。そのため、実家や家族の苗字に戻りたいという理由で、旧姓に戻す人もいるのです。
また、実家の墓などを承継するために、離婚を機に旧姓に戻る人もいます。

離婚後に旧姓に戻す理由4.再婚を考慮している

離婚後に旧姓に戻すことで、前の結婚と新しい関係を明確に区別できます。また、新しいパートナーとの結婚時に、前の結婚からの苗字ではなく、自分の出生時の苗字で結婚することが可能になります。これは、新しい関係を始める際の心理的な清算や、前の結婚からの完全な切り離しを意味し、新たなスタートを切る上での心理的な準備になります。

離婚後に旧姓に戻す理由5.旧姓に戻さなければならないと思っていた

意図して離婚後に苗字を変えるケースの他に、意図せず旧姓に戻すケースもあります。婚姻の際に苗字を変えたのだから、離婚の時に苗字を戻すものだと思っていた、という人も少なくありません。

離婚後に旧姓に戻す理由6.子供が成人していて影響がない

子供が成人していたり、既に結婚していて別の世帯になっていたりする場合、親の苗字変更が子供の日常生活や法的手続きに影響を及ぼす可能性が低くなります。そのため、親は自分の苗字を変更することによる子供への影響を心配する必要がなく、苗字を変えることになります。

離婚後、子供の姓名はどうする?

 

離婚後、子供の姓名はどうする?

 

離婚しても苗字を変えない人は、子供の姓名について、以下のような考えを持っていると考えられます。

子供の苗字は、結婚時の苗字のままとする

子供の苗字を変更すると、学校や保育園などの手続きが煩雑になるため、手続きの負担を避けたいと考え、苗字を変えないことを選択する人は少なくありません。
また、子供の姓名は、子供自身のアイデンティティの一部であるため、苗字の変更を避けたいと考えて、変えない人も多いようです。
具体的には、以下の理由が挙げられます。

  • 子供の姓名を変更すると、子供の戸籍や各種証明書の記載が変更になるため、手続きが煩雑になる。
  • 子供が友達や先生に苗字が変わったことを知られると、いじめや差別を受ける可能性がある。
  • 子供が苗字が変わったことで、自分のアイデンティティに混乱をきたす可能性がある。

子供の苗字は、親と共に変更する

親が離婚後に旧姓に戻る際、子供の苗字も変更する選択をするケースがあります。新しい家庭の環境や再婚の可能性を考慮して、苗字を変えることを決定することが多いです。
具体的には、以下のような理由が考えられます。

  • 再婚して新しい家族を形成する場合、家族全員が同じ苗字を持つことで一体感を持たせることができる。
  • 子供がまだ小さく、苗字の変更による影響が少ない場合、新しいスタートとして苗字を変更する。
  • 法的な手続きや将来的な家族構成の変化を考慮し、苗字の統一を図る。
  • 子供が進学するタイミングに合わせて離婚することで、苗字を変更しても影響が少なくて済む。

本人に選択させる

また、子供の意思を尊重し、子供がどちらの苗字を希望するかを選択させるという考えもあります。
子供がどちらの苗字を希望するかは、父親と母親のどちらと生活を共にしたいかという希望と密接に関係しているため、子供の意見を尊重することも大切です。

Q&A

Q1.離婚後に苗字を変えない人の理由は何があるの?

社会制度や手続きの面での煩雑さ、子供に与える影響などさまざまな事情を考慮して、離婚後に苗字を変えないことを選択することになります。具体的には、次の7つの理由が考えられます。

  • 子供の生活に影響を与えたくない
  • 苗字の変更手続きが煩雑
  • 離婚の事実を周囲に知られたくない
  • 婚姻時の苗字に愛着がある
  • 職業上の名前の認知度を維持したい
  • 法的・財務的な書類での一貫性を保つため
  • 社会的な立場や関係性を考慮

Q2.離婚しても苗字を変えない人は、子供の姓名はどう考えているの?

離婚しても苗字を変えない人は、子供の姓名に関して様々な側面を考慮します。子供が学校や社会で不便や混乱を経験しないように、親子の苗字を同じに保つことを選ぶことがあります。
また、子供がすでに特定の苗字で社会に慣れ親しんでいる場合、その苗字を変えることで生じる可能性のある心理的な影響や社会的な調整の必要性を避けたいと考えることもあります。
特に、子供が敏感な年齢である場合や、親子関係において苗字が重要な役割を果たしている場合、苗字を変えない選択がなされることがあります。

姓のお悩みは弁護士にご相談ください

この記事では、離婚後に苗字を変えない人の割合と、その理由について詳しく見てまいりました。
アンケート調査によると、離婚経験者の中で苗字を変えない人の割合は約35%でした。この割合が高いか低いかは、個人の主観となるでしょうが、離婚した女性の3割以上と考えると、決してこの割合は少なくない数字ではないでしょうか。
そして、離婚後の苗字を変えるか変えないかの理由は、多岐にわたっています。選択の背景には、子供への影響、社会的な立場、または離婚にともなう手続きの煩雑さなど、さまざまな個別の事情があります。

離婚後の苗字を変えるか変えないか、という選択は、決して簡単ではないでしょう。もし離婚後の苗字についてのお悩みがありましたら、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
当法律事務所には初回無料相談がありますので、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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