離婚届の必要書類【完全版】離婚届と一緒に出す書類は?提出に必要なものは?
法律上、夫婦でなくなるためには、市区町村役場に離婚届を提出しなければなりません。
ところで、離婚届を提出する際に、他にも必要書類があることをご存知でしょうか。離婚届を提出する際に、他の必要書類が不足していたから再度離婚届を提出しに行かなければならない、というような事態は避けたいですよね。
本記事では、離婚届と一緒に出す必要書類や、協議離婚・調停離婚など、離婚の種類に応じて提出を求められる必要書類について、ご説明いたします。
また、必要書類である戸籍謄本の取り寄せ方についても、あわせて解説いたします。
離婚届を一度で不備なく提出することができるよう、本記事をご参考にしていただければ幸いです。
目次
離婚届の必要書類
離婚には、夫婦間の話し合いで離婚が成立する協議離婚、家庭裁判所での手続きを経る調停離婚と裁判離婚の、計3種類の離婚方法があります。3種類の離婚方法の中でも、最も主流なのが「協議離婚」です。
厚生労働省の「平成30年人口動態統計」によると、平成30年の全国の離婚件数は20万8333件でしたが、この件数の87%に当たる18万1998件の夫婦が協議によって離婚しています。
つまり、日本では9割の夫婦が協議離婚によって離婚していることになります。
そこで、本記事では、協議離婚による離婚を前提に、離婚届を提出する際の必要書類について、ご説明させていただきます。
離婚に必要な書類は?
離婚に必要な書類として、「離婚届」を思い浮かべる方は多いと思います。
ですが、協議離婚の際には、離婚届のみでは足りず、「戸籍謄本」も必要になります。
「戸籍謄本」という言葉は、市区町村役場での手続きや、各種契約手続きに際して、何かと耳にすることもある言葉かと思います。
まずは、離婚届の必要書類である「戸籍謄本」とはどういった書類なのかを、ご説明させていただきます。
戸籍謄本
「戸籍(戸籍制度)」とは、日本国籍の人について、親子・兄弟であることや、夫婦であること、生まれた日や亡くなった日などの、身分関係が記録されたものです。
「戸籍謄本」は、この身分関係について、当事者や第三者に証明する必要があるときに使われる書類なのです。
そして、戸籍謄本のことを、「戸籍全部事項証明」ともいいます。
昔は、戸籍は紙によって保管されていたものでしたが、戸籍法の改正によって、戸籍の内容を電子情報(コンピューター)で保管するようになったため、戸籍全部事項証明という名称が使われるようになりました。
「戸籍謄本と戸籍全部事項証明はどういう違いがあるのですか?」と聞かれることがありますが、戸籍謄本と戸籍全部事項証明は同じものです。
戸籍謄本と戸籍抄本は何が違うの?
さて、離婚届を出すために戸籍謄本を市区町村役場から取得しようとして、戸籍謄本等の交付申請書(申請書の名称は市区町村によって異なります)を見ると、戸籍謄本以外にとてもよく似た言葉が目につくと思います。
戸籍謄本と混乱されがちな、「戸籍抄本」です。
この2つの書類を間違えてしまうと、せっかく離婚届を提出しに市区町村役場の窓口へ行ったのに、必要書類に不備があって離婚届を受け付けてもらえなかった、という事態になりかねませんので、ぜひ本記事で2つの戸籍の違いを覚えていただきましょう。
まずは、戸籍謄本の「謄本」についてです。
「謄本」とは、元となる本(原本)の内容を、全て書き写して作成した文書のことを意味します。つまり、戸籍謄本とは、その人の戸籍に関する「全ての項目」について、市区町村が保管している原本から書き写したもの、という意味になります。
これに対して「抄本」とは、原本の一部だけを書き写した文書をいいますので、戸籍抄本とは、戸籍の原本に記載されている人のうち、一部の人についてのみ証明する戸籍なのです。
例えば、夫婦と子ども2人の4人家族で、父親の分だけが記載された戸籍が必要になったら、父親についての「戸籍抄本」を交付申請することになります。なお、戸籍抄本のことを「戸籍個人事項証明書」ともいいます。
離婚届を提出する際の必要書類は「戸籍謄本」ですので、市区町村に交付申請するときには間違いのないよう、注意してくださいね。
戸籍謄本の提出を必要としないケースもあります
ところで、戸籍謄本の提出が必要ではないケースが1つあります。それは、離婚届を本籍地の市区町村に提出する場合です。
本籍地ではない、現住所地の市区町村などで離婚届を提出する際には、必要書類として戸籍謄本の提出が求められていますが、本籍地の市区町村に離婚届を提出する場合は、戸籍謄本を一緒に出す必要はないとされています。
現住所のある市区町村と、本籍地の市区町村が近いのであれば、本籍地の市区町村役場で離婚届を提出することで、戸籍謄本を準備する手間と費用を省略することができます。
ですので、離婚届を提出する前に、本籍地の市区町村に提出するかどうか考え、準備を進めていきましょう。
戸籍謄本の取り寄せ方
それでは、一般的な戸籍謄本の取り寄せ方について、その流れをご説明させていただきます。
戸籍謄本の取り寄せ方には、以下の4つの方法があります。そのいずれの場合でも共通して、本籍地のある市区町村役場に対して交付申請します。
①本人が窓口で請求する方法
本籍地のある市区町村役場の窓口へ向かいます。自治体によっては、平日の役所の開庁時間に限らず、土日祝日でも戸籍等証明書を発行できる、サービスカウンターなどが設けられています。
申請書(戸籍謄本等交付請求書、など名称は市区町村により異なります)をあらかじめ市区町村役場のホームページからダウンロードして記入しておくか、窓口で受け取って記入します。申請書に記入する内容は難しいものはありません。窓口に出向いた請求者本人の氏名・住所・生年月日、本籍地、筆頭者の氏名などを記入し、必要な証明書の欄にチェックを入れ、欲しい通数を記入します。申請書には、請求の理由を書くことになっていますので、「離婚届に添付するため」といったように書きましょう。
申請書を記入できたら、窓口で担当者に申請します。この際に、本人確認がありますので、マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなどを持参してください。
発行には手数料がかかります。手数料は、全国統一で1通450円となっています。
手数料については、市区町村役場のホームページにも記載がありますし、窓口で直接確認することもできます。
この方法でしたら、当日その場ですぐに戸籍謄本を発行してもらえるため、次の郵送で取り寄せる方法よりも、時間や費用がかからずに済みます。
②郵送で取り寄せる方法
郵送請求の場合、通常は次のものを用意します。
- 申請書
- 発行手数料(定額小為替)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)の写し
- 請求者の氏名・住所を記入し郵便切手を貼った返信用封筒
申請書の記入内容は、窓口で交付請求する場合とおおむね変わりません。市区町村役場のホームページから戸籍謄本の郵送請求書をダウンロードできる市区町村も多いので、一度も役所へ行かずに戸籍謄本の申請が可能です。
窓口へ出向く必要がないため、役所に行く暇がない、という方には便利です。その一方で、定額小為替の購入手数料 や、往復の郵便切手代などの費用がかかります。返信用封筒や本人確認書類のコピーなどを用意しなければなりません。
定額小為替や切手については、郵便局で購入することができます。
戸籍謄本の郵送請求の流れとしては、まず、戸籍謄本の郵送請求書をご記入いただいた後、返信用の封筒などをご準備いただき、お近くの郵便局で定額小為替と切手を購入して発送するということになるでしょう。
また、申請から戸籍謄本を受け取るまでに1週間ほどかかりますので、戸籍謄本を郵送で請求する場合は、時間に余裕を持って申請しましょう。
急ぎで戸籍謄本が必要という場合には、郵送での請求はおすすめできません。
③コンビニで発行する方法
市区町村によっては、戸籍謄本をコンビニエンスストアで発行することも可能です。
マイナンバーカード・住民基本台帳カードを用意し、コンビニエンスストアのマルチコピー機で発行します。市区町村によっては、役所の窓口で戸籍謄本を請求するよりも、発行手数料が安くなる場合があるようです。
戸籍謄本をコンビニエンスストアで取得できる市区町村については、こちらのサイトで調べることができます。証明書の交付についても、詳細な手順が掲載されています。
<参考:コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付>
全ての市区町村で導入されている方法ではありませんので、あらかじめ本籍地のある市区町村がコンビニ交付を導入しているか、確認してください。
戸籍謄本をコンビニエンスストアで発行できる場合には、すぐに取得することができますので、コンビニ交付をおすすめします。
④代理人に請求してもらう方法
戸籍謄本の請求者が委任した代理人が交付申請することもできます。この代理人による申請も、窓口での手続きと、郵送による請求が可能です。
おおまかな申請方法は本人が請求する場合と同じです。戸籍謄本の申請書に加え、代理人の本人確認書類と、委任状などが必要になります。
委任状については、市区町村によって記載内容や形式が定められている場合がありますので、ホームページなどでご確認ください。
なお、離婚問題について弁護士に依頼されている場合は、弁護士が戸籍の交付申請を行うことが多いです(職務上請求)。
離婚協議が終わって離婚届を提出する段階になったら、戸籍謄本の請求について、ご依頼されている弁護士にご確認されると良いでしょう。
<参考:大阪府大阪市 戸籍謄本の取り寄せ方>
離婚届と一緒に出す書類
婚姻によって、それまでの姓から夫の姓に変わる女性は少なくありません。そして、離婚することによっても、婚姻中に名乗っていた姓から、再び姓が変わることになります。離婚届を提出すると、旧姓に戻ることになるのです。
しかしながら、様々な本人確認書類や名義などを、旧姓に戻す手続きをしなければならないのは煩雑で、非常に手間がかかります。夫の姓を名乗っていた期間が長ければ長いほど、周囲とも婚姻期間中の姓で関わっているでしょうから、今さら旧姓に戻すのは・・・と旧姓に戻ることに対して抵抗のある方も少なくないでしょう。
そこで、旧姓に戻したくないという方には、離婚届と同時に「婚氏続称届」を提出することをおすすめいたします。
離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)
日本の戸籍制度は、夫婦別姓を認めていませんので、男女が婚姻する際、夫または妻の姓のどちらかを夫婦の姓として決めなければなりません(民法第750条)。このように、婚姻によって改められた姓のことを、婚氏といいます。
一方で民法は、離婚と婚氏について「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」と定めています(民法第767条第1項)。
離婚によって夫婦関係が解消されると、この規定により、婚姻によって姓を改めた側が、原則として旧姓に戻るのです。
もし離婚後も婚氏を使い続けたい場合は、離婚の日から3ヶ月以内に、本籍地・住所地・所在地のいずれかの市町村に届出をすることにより、婚氏を称することができます(民法第767条第2項、戸籍法第77条の2)。
この届出を「婚氏続称届」といいます。これは、離婚届と同時に提出することができる書類です。
つまり、離婚届が受理された日から3か月以内であれば、婚氏続称届を提出することができ、離婚後も婚氏を使い続けることができるのです。
ただ、離婚届の提出と、婚氏続称届の提出とで時間が空いてしまいますと、うっかり婚氏続称届を提出し忘れてしまった・・・ということがあるかもしれません。旧姓に戻したくないとお考えの方は、離婚届と一緒に出す書類として、婚氏続称届を準備しておくことをおすすめいたします。
なお、婚氏続称の届出を出したものの、旧姓に戻したくなった場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります(戸籍法第107条第1項)。家庭裁判所での手続きは何かと煩雑ですし、必ず許可されるとも限りませんので、姓については余裕を持って決めましょう。
婚氏続称届の届出方法
届出に必要なものは、婚氏続称の届出書と、戸籍謄本です。
離婚届と同時に提出する場合は、離婚届と婚氏続称届の2つの届出に対して、戸籍謄本が1通あれば問題ありません。
なお、婚氏続称届の手続きの場合も、本籍地の市区町村役場に届け出るときには戸籍謄本は必要ありません。
婚氏続称の届出書は、市区町村役場の窓口や、ホームページからダウンロードすることができます。どの市区町村の書式であっても使えますが、宛先欄に提出先以外の市区町村名があらかじめ記載されている場合などは、提出先の市区町村名に訂正して使ってください。
用紙サイズが異なったりすると、受理してもらえないことがあるため、A4サイズの用紙に鮮明に印刷しましょう。
必要事項を記入しましたら、市区町村役場の窓口に、離婚届と一緒に提出します。市区町村によっては、郵送での提出も受け付けておりますので、ホームページなどでご確認ください。
こちらの画像は、婚氏続称届の記入例となります。届出をされる方は、ご参考にしてください。
<引用:札幌市 婚氏続称届>
離婚届の提出に必要なもの
本人確認書類
離婚届を市区町村役場に提出する際には、届け出る人の本人確認ができるものを持参してください。運転免許証など、官公署が発行した顔写真付きの証明書が、本人確認のできるものとして認められています。
詳細は市区町村のホームページなどにありますが、例示しますと次の通りです。
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 住民基本台帳カード(顔写真付き)
- 在留カード・特別永住者証明書等
- 公務員の身分証明書(顔写真付き)
健康保険証や年金手帳などによっても本人確認を行えますが、顔写真がない証明書などは、複数の提示が必要になります。
また、離婚届は夫婦本人だけでなく、代理人などが提出することも可能です。この場合も、代理人本人の本人確認書類が必要となります。
なお、詳細は後述しますが、裁判による離婚(判決・調停・審判・和解による離婚)の場合には、本人確認書類の持参は必要ありません。
協議離婚・調停離婚などケース別の必要書類
さて、離婚届の一般的な必要書類は前述の通りとなりますが、離婚の方法によっては、さらに必要となる書類があります。そこで、離婚届を提出する際の必要書類について、離婚の種類別にまとめました。
1.協議離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の市区町村に離婚届を提出する場合)
- 本人確認書類
2.調停離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 調停調書(謄本)
3.審判離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 審判書(謄本)
- 確定証明書
4.裁判離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 判決書(謄本)
- 確定証明書
5.和解による離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 和解調書(謄本)
6.認諾離婚の場合に必要な書類
- 離婚届
- 認諾調書(謄本)
確定証明書とは
審判や裁判は、判決を言い渡された後も、確定するまでの一定期間は、当事者が不服を申し立てることができます。ですので、審判や裁判が「確定」し、判決などが覆らないことを証明する必要があります。この証明をするための書類を「確定証明書」といいます。審判や判決が確定した後、裁判所から確定証明書を発行してもらった上で、離婚届と一緒に提出することになります。
離婚届の必要書類に関するQ&A
Q1.離婚届の必要書類は何ですか?
A:離婚届の必要書類は戸籍謄本です。ただし、離婚届を本籍地の市区町村に提出する場合は、戸籍謄本を提出する必要はありません。つまり、本籍地以外の市区町村において、離婚届を提出する場合にのみ戸籍謄本が必要となります。
なお、協議離婚以外の場合には戸籍謄本以外の必要書類がありますので、詳細は本記事をご一読ください。
Q2.戸籍謄本以外に離婚届と一緒に出す書類はありますか?
A:あります。離婚によって旧姓に戻る方で、離婚後も婚氏(婚姻中に名乗っていた姓)を使いたい場合は、「婚氏続称届」という届出書を離婚届と一緒に提出します。離婚届を提出後に婚氏続称届を出すことも可能ですが、その場合いったん旧姓に戻ることになってしまうため、離婚届と同時に届け出ることをおすすめいたします。
Q3.離婚届の提出時に必要なものはありますか?
A:離婚届の提出時には、まず「本人確認書類」が必要です。具体的には、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、顔写真付きの公的な証明書が一般的です。これらは、窓口で本人確認を行う際に提示が求められるため、必ず持参してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
離婚の手続きというと、面倒な申請などが必要なのではないか、と身構えてしまいがちです。
ですが、離婚届を提出する際の準備や手続きは、それほど難しくありません。離婚届と必要書類を提出する市区町村が本籍地であれば、必要書類である戸籍謄本はそもそも用意する必要もありません。
協議離婚以外の場合も、調書・判決の謄本や確定証明書といった必要書類を揃えることは難しくありません。
本記事をご参考にしていただき、離婚届の提出準備を進めていただければと思います。
また、既に離婚問題を弁護士にご依頼されている方や、弁護士へ依頼しようかお悩みの方は、離婚届の必要書類や一緒に出す書類について、お気軽に弁護士にご相談ください。
離婚届や必要書類に関しても、弁護士が丁寧にサポートさせていただきます。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。