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離婚時の年金分割|離婚後の年金分割の手続きを解説!いつからもらえる?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚にあたって、将来受け取ることのできる年金が増える可能性があることはご存知でしょうか。

そのためには、年金分割という手続が必要になります。

本記事では、離婚と年金分割に関する基本的な知識から、手続きの方法などを詳しく解説していきます。

離婚を考えている方、またはすでに手続きを進めている方にとって、年金分割の正確な知識は必須です。
本記事が、そのご理解の一助となれば幸いです。

目次

離婚と年金分割

1.離婚後の年金分割とは厚生年金の分割制度

離婚の年金分割制度とは、夫婦が離婚する際に、婚姻期間中に納付した、厚生年金保険料の記録を分割する制度です。

どういうことかというと、夫や妻が離婚前に納めてきた厚生年金や基礎年金の保険料記録が、按分割合に基づき分割されるのです。その結果、将来受け取ることのできる年金額が増える可能性があるのです。

この年金分割制度は、2007年(平成19年)4月1日から施行されました。

婚姻生活中の夫婦双方の労働や家庭での役割を公平に評価し、婚姻期間中の夫婦共同で築いたものを離婚後の年金受給額に適切に反映させるようにする目的で年金分割制度が施行されたと言っても良いでしょう。

特に、専業主婦や短時間労働者など、厚生年金の加入期間や納付額が少ない場合には、年金分割を行うことによって、将来受け取ることのできる年金受給額が増える可能性があります。

ただし、年金分割を行うためには、特定の手続きが必要となります。離婚時には、この制度の存在や手続き方法をしっかりと理解し、適切な対応を心がけることが重要です。

2.離婚後年金分割はいつからもらえる?

離婚後に年金分割を行ったとしても、すぐに年金を受け取ることはできません。年金を受給するには、一定の条件を満たす必要があります。

まず、年金を受け取るためには、受給資格期間受給開始年齢の2つの条件を満たす必要があります。
受給資格期間とは、公的年金制度に加入し、保険料を納めた期間のことを指します。この期間が短いと、年金の受給資格が得られない場合があります。

受給開始年齢は、年金を受け取ることができるようになる年齢です。これは年金の種類によって異なります。

たとえば、老齢厚生年金の場合、受給開始年齢は原則として65歳と定められています。そのため、50歳で離婚した後、年金分割を行ったとしても、その年金を受け取ることができるのは、65歳になってからとなります。

一方で、65歳を超えて既に年金を受給している場合に年金分割を行ったときには、分割後の新しい年金額に関しては、翌月から支給が開始されます。

このように、年金分割を行った後の年金受給には、特定の条件や手続きが必要となるため、離婚後いつから年金を受給できるのか、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

3.分割の対象期間は婚姻期間

年金分割の対象となる期間は、夫婦の婚姻期間とされています。この「婚姻期間」とは、離婚した夫婦が結婚した日から、離婚した日までの期間を指します。

年金分割の対象期間

そのため、婚姻期間が長いほど、分割できる年金の金額は多くなります。

なお、結婚から離婚した日までの期間ですから、離婚を前提として別居をしていた期間も、離婚届を提出していない限りは「婚姻期間」に含まれることになります。

4.年金分割は「合意分割」と「3号分割」

年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」という2つの主要な方法が存在します。

①合意分割

合意分割」は、夫婦間で年金を分割する方法です。

夫婦が話し合いを通じて、どのような割合で年金を分割するかを決定します。もっとも、話合いがまとまらない場合には、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。

たとえば、按分割合を2分の1とした場合で、夫婦の婚姻期間中の厚生年金の標準報酬の合計金額が、夫800万円、妻200万円の、合計1000万円である場合、元々の割合は夫と妻とで80:20ですが、話し合いによって50:50とすることで、夫500万円、妻500万円となります。

なお、年金分割の請求には期限があり、離婚した日の翌日から2年以内にしなければなりません。

合意分割では、夫婦双方の意向や状況を考慮して、最も適切な分割方法を選択することが期待できます。

②3号分割

一方、「3号分割」は、特定の条件を満たす配偶者が請求できる分割方法です。

具体的には、会社員や公務員などの被保険者に扶養されていた配偶者が、国民年金の第3号被保険者として資格を持つ場合に該当します。

この3号分割の特徴は、夫婦の合意が不要である点です。つまり、一方の配偶者が分割を希望すれば、もう一方の意向に関わらず、分割手続きが進行されることとなります。

なお、按分割合は50:50(2分の1)です。
合意分割の場合と同様、3号分割の場合にも請求期限があり、離婚した日の翌日から2年以内に、手続きを行う必要があります。

請求期限を過ぎてしまった場合どうなるのか、といった点については、本記事で後述しておりますので、ぜひご覧ください。

5.年金分割の期限切れに注意!

離婚後に年金分割請求ができるのは、離婚が成立した日の翌日から起算して2年以内とされています。この2年という請求期限を過ぎてしまうと、基本的には年金の請求はできなくなってしまいますので、注意してください。

例外的に、次の状況のいずれかに該当する場合は、その日の翌日から起算して、6ヶ月を過ぎるまででしたら、年金分割を行えます。

  • 離婚後2年が経過する前に、年金分割の按分割合に関する審判を申し立てており、元々の請求期限を過ぎた後、あるいは元々の請求期限の6ヶ月前までに審判が確定したとき。
  • 離婚して2年が経過する前に、年金分割の按分割合に関する調停を申し立てており、元々の請求期限を過ぎた後、または元々の請求期限の6ヶ月前までに調停が成立したとき。
  • 按分割合に関しての附帯処分を求める申し立てをし、判決が確定したり、和解が成立したとき。

上記の特例の場合も、無制限に認められるわけではなく、元々の請求期限の6ヶ月前に審判や調停が成立している必要があるなど、期限が設けられています。

また、離婚後に年金分割の相手である元配偶者が死亡した場合には、請求期限の原則である2年ではなく、「死亡日から1ヶ月以内」と非常に短い期限になります。

得られるはずだった年金を受給しそこねてしまうことのないよう、離婚前に年金分割については十分に確認しておきましょう。

 

以上が、離婚時の年金分割制度のご説明となります。年金分割制度の詳細は、こちらの関連記事をぜひご覧ください。

離婚年金分割の手続き

合意分割でも3号分割の場合でも、まずはじめに共通して行うのが、「年金分割のための情報通知書」の入手です。

日本年金機構のホームページから、「年金分割のための情報提供請求書」の書式をダウンロードし、必要事項を記入します。下記の必要書類を揃えて、年金事務所に提出しましょう。

  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)ただし、請求日から6か月以内に交付され、婚姻日及び離婚日が確認できるもの
  • 事実婚関係の場合には、事実婚であることを証明できる書類(住民票等)

数週間から1ヶ月ほどで、「年金分割のための情報通知書」が送付されます。

情報通知書を入手したら、年金事務所での手続きを行います。

合意分割と3号分割とで異なる点は、合意分割の場合には、按分割合と年金分割をすることについての合意を示す書類が必要である、という点です。
「年金分割をすること」と「請求する按分割合について合意している」旨を記載した合意書や公正証書を準備しておきましょう。

まずは、標準報酬改定請求書の書式を日本年金機構のホームページから入手しましょう。必要事項を記入したら、年金分割の方法ごとに必要書類を添付して、年金事務所に提出します。

合意分割の場合の必要書類

  • 標準報酬改定請求書
  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)
  • 請求日前1ヶ月以内に交付された、夫婦の生存を証明できる書類(戸籍謄本(全部事項証明書)、戸籍抄本(個人事項証明書)または住民票のいずれかの書類)
  • 事実婚関係の期間の情報通知書等の請求の場合、その事実を証明する書類(住民票)
  • 年金分割の割合を明らかにすることができる書類(公正証書、年金分割の合意書等)
  • 裁判所による手続により年金分割の割合を定めたときは、審判書または調停調書

 

3号分割の場合の必要書類

  • 標準報酬改定請求書
  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)
  • 請求日前1ヶ月以内に交付された、夫婦の生存を証明できる書類
  • 事実婚関係の期間の情報通知書等の請求の場合、その事実を証明する書類(住民票)

不明点は年金事務所で相談・確認しましょう

書類の書き方や内容に分からない点があれば、年金事務所の窓口で相談できます。
年金事務所は、日本年金機構が管理している正式な地域の窓口です。年金の受取資格、加入の手続き、納付の方法など、多岐にわたる年金に関する相談や手続きができます。

年金事務所以外にも、「街角の年金相談センター」という窓口が設けられており、特に年金受給に関する専門的な情報提供やサポートを行っています。

年金に関する手続きや疑問点は複雑なことも多いため、これらの窓口を上手く利用し、安心して手続きを進めることをおすすめいたします。

なお、手続きの必要書類の詳細や入手方法については、関連記事をご一読ください。

 

離婚年金分割に関するQ&A

Q1.離婚した場合、年金は自動的に分割されるのでしょうか?

離婚した場合でも、年金は自動的には分割されません。年金分割をしたい場合は、年金分割の申請手続きを行う必要があります。

Q2.年金分割の申請に期限はありますか?

年金分割の申請手続きは、離婚後2年以内に行う必要があります。この期間を過ぎると、年金分割ができなくなってしまいます。ですので、離婚後はなるべく早めに手続きを行いましょう。

ただし、特別な事情がある場合には例外も考えられるため、具体的な状況に応じて専門家や年金事務所に相談することをおすすめします。

Q3.離婚年金分割の際には、夫の年金が分割されるのですか?

年金分割は、夫婦それぞれの加入している公的年金(基礎年金、厚生年金など)が対象となりますので、必ず夫の年金が分割されるわけではありません。

たとえば、フルタイムで仕事をしている夫が厚生年金に加入していて、専業主婦の妻が基礎年金だけに加入している場合は、夫の厚生年金と妻の基礎年金が分割対象として考慮されます。離婚の際、両者の年金の権利が算出され、その結果を基に分割手続きが進められます。

まとめ

財産分与や養育費などと並び、年金分割も離婚後の生活を左右する重要な要素の一つなのです。

本記事でご説明した通り、年金分割制度は、夫婦が離婚する際に、婚姻期間中に積み上げた厚生年金についての権利を分割するものです。この制度の導入により、離婚後も双方が公平に年金を受け取ることが可能となりました。

しかし、請求には2年の期限があり、請求期間を経過してしまったり、書類に不備があったりすると、年金分割することができない可能性があります。

弁護士や専門家に依頼することで、手続きをミスなく行うことができるだけでなく、按分割合についての協議も全て任せることができます。

適切な年金分割の手続きを行うことで、離婚後の生活における経済的な安定を得ることが期待できます。
この記事が、その一助となることを願っています。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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