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離婚届と同時にできる手続き|住民票そのままはNG!世帯分離なども解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚をする場合には、離婚届の提出だけでなく、戸籍や住民票の異動、名義変更など、短期間で済ませなければならない手続きが多く、何から手をつければいいのか混乱している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

お仕事などで、なかなか日中は役所に行けない方もいらっしゃることでしょう。離婚届と同時にできる手続きは、なるべく一度に効率よく行いたいですよね。

そこで、離婚に伴ってしなければならない手続きのうち、市区町村役場で離婚届と同時にできる手続きについて、本記事ではご説明いたします。

本記事でご紹介する、離婚届と同時にできる手続きについて把握しておき、効率よく離婚手続きを進めていただければと思います。

目次

離婚届と同時にできる手続き

離婚届と同時にできる手続きはさまざまありますが、中でも下の8つの手続きは、離婚届を提出する窓口で、離婚届と同時にできる手続きです。

  1. 住民票の異動(世帯分離)
  2. 住民票の異動(転出届)
  3. 住民票の異動(転居届)
  4. 住民票の異動(世帯主変更届)
  5. 離婚の際に称していた氏を称する届
  6. 新しい戸籍の作成
  7. 印鑑登録
  8. マイナンバーカードの変更手続き

そして、次の5つの手続きは窓口こそ違いますが、離婚届の提出と同じ日に、役所で行うことのできる手続きです。

  1. 国民健康保険への加入
  2. 国民年金への加入
  3. 児童扶養手当
  4. ひとり親世帯の医療費助成
  5. 親世帯の住宅手当

本記事では、これらの13種類の手続きについて、順にご説明させていただきます。

申請期限に注意して進めましょう

なお、これらの手続きは、離婚日や引っ越しをした日等を基準に、申請期限が定められています。

後述する通り、申請期限を過ぎてしまうと、過料を支払わなければならないこともあるため、申請期限には十分注意して手続きを進めてください。

離婚して住民票をそのままにするのはNG!

離婚したら住所変更を!

さて、住民票の異動に関する手続きについてご説明する前に、そもそも住民票を異動する必要があるのかという点について簡単に解説します。

離婚後に引っ越しをする方から「住民票を変更して、元配偶者に引っ越し先の住所がバレてしまうのが不安」というお悩みをお聞きすることがあります。

それでは、なぜ離婚後に住民票を変更すると、元夫や元妻に引っ越し先の住所がバレてしまう可能性があるのでしょうか。

それは、戸籍謄本や戸籍の附票に、離婚後の引っ越し先の住所が記録されることになってしまうからです。

戸籍謄本や戸籍の附票は、その戸籍に記載されている人と、その配偶者や親子であれば取得することが可能です。

これには除籍と記載されている人も含みますので、元夫の現在の戸籍に除籍者として記載されている元妻は、元夫の戸籍謄本や戸籍の附票を取得し、転居履歴や住所を知ることができるのです。

また、子どもがいる場合、離婚しても子どもの親であることは変わりませんので、子どもが記載されている元配偶者の戸籍謄本や戸籍の附票を取得することが可能です。

こういったことから、戸籍謄本や戸籍の附票から離婚後の住所がバレてしまうのが嫌で、住民票をそのままにしておきたい、というお悩みをお聞きすることは少なくありません。

しかし、住民票の変更については、法律で「変更のあった日から14日以内に届け出ること」と定められています(住民基本台帳法23条)。

住民基本台帳法第23条 転居(一の市町村の区域内において住所を変更することをいう。以下この条において同じ。)をした者は、転居をした日から14日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。

一 氏名
二 住所
三 転居をした年月日
四 従前の住所
五 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄

そして、正当な理由なく住民票を引っ越し前の住所のままにしていると、5万円以下の過料が課せられてしまう可能性があるのです(住民基本台帳法第52条第2項)。

住民基本台帳法第52条第2項 正当な理由がなくて第22条から第24条まで、第25条又は第30条の46から第30条の48までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。

住民票の異動は、離婚届と同時にできる簡単な手続きですので、事前に届出書を準備しておき、離婚届と同時に行ってしまいましょう。

離婚届と同時にできる手続き

①世帯分離

世帯分離とは、同じ住所で生計を一緒にしている世帯の人を、同じ住所の中で別世帯にする手続きのことをいいます。

離婚後も、元夫と元妻が同じ住所に住み続ける場合は、この世帯分離の手続きをしなければなりません。離婚届と同時にできる手続きですので、世帯分離の届出も一緒に行ってしまいましょう。

世帯分離をする最大のメリットは、夫と妻の世帯が別になることで、世帯としての収入が低くなることにより、保険料などが低額になることです。

国民健康保険料や介護保険料は、世帯の所得によって支払わなければいけない保険料が決まります。ですので、世帯の所得が低くなることで、保険料も低くなるのです。

また、世帯の所得が減ることで、それまでは所得制限によって受けられなかった公的助成金などの支援を受けられるようになる可能性があります。

一方で、世帯分離すると、分離した家族の扶養控除を受けられなくなり、所得税が大きくなる可能性があるなどのデメリットもあります。

世帯分離の届出は、住民登録されている市区町村役場で行います。市区町村によっては、平日の役所の開庁時間以外に、時間外窓口や市民センターなどでも受け付けています。

世帯分離の届出ができる人は、世帯分離をする本人、世帯主、同一世帯の人か、委任を受けた代理人です。

届出に必要なものは、住民異動届と、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類です。

住民異動届をご記入の際は、市区町村のホームページにある記載例などをご参考にしてください。ちなみに、こちらの参考画像は、熊本市の住民異動届の世帯分離の場合の記載例になります。

 

<引用:熊本市 世帯変更届(世帯合併・世帯分離など)

 

世帯分離しても元の世帯に戻すことができる

なお、世帯分離をした後、元の同一世帯に戻したくなった場合、元の世帯に戻すことは可能です。

この手続きは、「世帯合併届」を提出することによって行います。
世帯合併の場合も、住民異動届に必要事項を記入し、本人確認書類を窓口へ持参して行います。

世帯分離も世帯合併も、住民基本台帳法上の「世帯変更届」に当たるため、変更があった日から14日以内に行ってください(住民基本台帳法第25条)。

住民基本台帳法第25条 第22条第1項及び第23条の場合を除くほか、その属する世帯又はその世帯主に変更があった者(政令で定める者を除く。)は、その変更があった日から14日以内に、その氏名、変更があった事項及び変更があった年月日を市町村長に届け出なければならない。

②転出届

離婚届と同時にできる手続きの二つ目は、転出届です。

転出届をしなければならないのは、現在住んでいる市区町村とは別の市区町村へ引っ越しするケースです。

A市内での引っ越しでしたら、転出ではなく転居になるため、転出届を提出する必要はありませんが、A市からB市へ引っ越す場合は、A市を転出してB市に転入することになるため、転出届を提出する必要があるのです。

転出届については、住民基本台帳法で次の通り定められています。

住民基本台帳法第24条 転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない。

転出届の届出期限については、引っ越しをする14日前から受け付けが可能とされています。「あらかじめ」とありますが、引っ越し後の提出でも構いません。

ただし、後述の「転入届」の提出との関係から、引っ越しの前後14日以内に必ず転出届を届け出する必要があります。引っ越しの前後は慌ただしくなりますから、離婚届の提出と同時に転出届の提出も効率よく行ってしまいましょう。

転出届に必要なものは、住民異動届と本人確認書類です。その他にも、国民健康保険証や印鑑登録証などが必要になる場合がありますので、事前に役所のホームページなどで確認しておきましょう。

ご参考までに、こちらは東大阪市の住民異動届の転出の場合の記載例になります。

 


<引用:東大阪市 住民異動届(転出の場合)

なお、引っ越し先の市区町村では、引っ越しの日(転居した日)から14日以内に「転入届」を提出しなければならないと規定されています(住民基本台帳法第22条)。もしこの期限を守らなければ、5万円以下の過料を科せられる場合があります。

転入届の手続きには、転出届を提出した際に交付してもらえる「転出証明書」が必要となりますので、離婚届と同時に転出届を提出し、転出証明書を受け取ったらなくさないように気を付けてください。

 

たとえば、夫と妻が同居しており、妻が離婚によって別の市区町村に引っ越す場合には、「離婚届」と「転出届」を現住所の市区町村役場に提出します。

そして、発行された「転出証明書」、本人確認書類及び印鑑等を持ち、引っ越し先の市区町村役場に「転入届」を提出します。

なお、離婚前に妻が夫と別居をしており、既に妻が他の市区町村に引っ越している場合には、その引っ越しの日から14日以上経過してから離婚届を提出するのであれば、先に転出届を提出する必要があります。

③転居届

住民票の異動の一つ「転居届」も、離婚届と同時にできる手続きです。

離婚に伴い、住民登録をしている住所と同じ市区町村内で引っ越しをした場合は、引っ越した日から14日以内に、住民票の異動を届け出る必要があります(住民基本台帳法第23条)なお、引っ越し前に届け出ることはできません。

転居届に必要なものは、住民異動届と本人確認書類です。

住民異動届の転居の場合の届出書は、こちらの東大阪市の記載例をご参考にしてください。

 


<引用:東大阪市 住民異動届(転居の場合)

 

④世帯主変更届

世帯変更届の一種である「世帯主変更」の手続きも、離婚届と同時にできる手続きの一つです。

それでは、世帯主の変更が必要なケースというのは、どういう場合なのでしょうか。

夫が世帯主の夫婦を例にしてみましょう。

夫婦が離婚することになり、夫が現在の住所に残り、妻が引っ越すことになりました。この場合、世帯主である夫はそのまま世帯に残るため、世帯主は夫のままで変更はありません。

しかし、夫婦の離婚に伴い、妻が現在の住所に残って、世帯主である夫が引っ越すことになった場合は、世帯主がいなくなることになってしまいます。

このように、現在の世帯から世帯主がいなくなってしまった場合に、残された元夫・元妻は、世帯主変更の手続きを行わなければならないのです。

世帯主の変更の具体的な届出方法ですが、前述の転居届や世帯分離などとほぼ同じです。

住民異動届の書式に必要事項を記入し、本人確認書類を持参します。

なお、世帯主変更届も、変更があった日から14日以内に行わなければいけません(住民基本台帳法第25条)。

住民基本台帳法第25条 第22条第1項及び第23条の場合を除くほか、その属する世帯又はその世帯主に変更があった者(政令で定める者を除く。)は、その変更があった日から14日以内に、その氏名、変更があった事項及び変更があった年月日を市町村長に届け出なければならない。

 

なお、上記1から4までの住民票の異動(世帯分離、転出届、転居届、世帯変更)に関しては、提出する住民異動届(世帯変更届)の書式が共通しており、市区町村役場の窓口でもらえます。ご参考までに、こちらは東大阪市の住民異動届出書のダウンロードページとなります。<参考:東大阪市 住民異動届書

 

続いて、離婚届と同時にできる手続きの内、住民票の異動以外の手続きについてご説明いたします。

⑤離婚の際に称していた氏を称する届

姓に関しても、離婚届と同時にできる手続きがあります。「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」の手続きです。

それでは、「離婚の際に称していた氏を称する届」についてご説明する前に、まずは婚氏について簡単にご説明いたします。

婚姻によって改められた姓のことを、婚氏といいます。日本では、次の民法の規定の通り、結婚したときに相手方配偶者の氏になった者は、離婚によって結婚前の氏に戻るのが原則です。

民法第767条1項 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

しかし、旧姓に戻るとなると、様々な名義変更の申請をしなければならないので、離婚後も婚氏をそのまま使いたい、という方が少なくありません。

そこで、「離婚の際に称していた氏を称する届」(戸籍法第77条の2)を提出することで、旧姓に戻らず婚氏をそのまま使い続けることができるのです(民法第767条第2項)。

戸籍法第77条の2 民法第767条第2項(同法第771条において準用する場合を含む。)の規定によって離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

民法第767条第2項 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

「離婚の際に称していた氏を称する届」の書き方については、こちらの画像をご参考ください。

 


<引用:大阪市 離婚の際に称していた氏を称する届

サンプルの通り、氏名や住所、本籍を記入するだけで、印鑑も不要です。

本籍地以外の市区町村の役所に提出する場合は、戸籍謄本を添付することが必要です。

なお、離婚の日から3ヶ月が過ぎてしまいますと、氏の変更は家庭裁判所での手続きを経る必要があるため、離婚後の氏については事前によくご検討ください。

⑥新しい戸籍の作成

新しい戸籍の作成も、離婚届と同時にできる手続きです。

離婚によって相手方配偶者の戸籍から抜ける人は、「婚姻前の氏で自分を筆頭者とする新しい戸籍」を作ることができます。

婚姻前の氏で自分を筆頭者とする新しい戸籍を作ることを、「新戸籍を編製する申出」などと言います。新戸籍を編製する場合は、婚氏の場合のような届出は必要ありません。

こちらの画像は、離婚届の記入例サンプルになります。

 


<引用:伊豆の国市 離婚届

画像の例のように、離婚によって妻が旧姓に戻り、実家の戸籍ではなく自分を筆頭者とした新しい戸籍をつくる場合、「妻」と「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れます。

そして、「婚姻前の氏にもどる者」の本籍ですから、この場合は妻の本籍を記入します。現住所や、離婚後の住所(実家など)を書かないように、注意してください。

そして、婚姻前の氏で妻の名前を記入します。

なお、実家の親の戸籍など、もどる戸籍があってももどらずに、自分で新しい戸籍をつくった場合は、「分籍」となります。

戸籍を分けるだけなので、親兄弟などとの親族関係はそれまでと変わりませんが、一度分籍すると、その後に氏を同じくしたまま親の戸籍へもどることはできません。

この場合、親の戸籍へ戻るには「子の氏の変更許可申立」という、家庭裁判所での手続きが必要となります。

⑦印鑑登録

さて、続いてご紹介する離婚届と同時にできる手続きは、印鑑登録です。

印鑑登録をしている方が離婚するとき、場合によっては印鑑登録の変更手続きや、新しい印鑑登録の手続きをする必要があります。

印鑑登録の変更や新しい印鑑登録が必要な人は、主に次のような人です。

  • 離婚によって旧姓にもどるなど、印鑑登録している氏が変わってしまう人。
  • 印鑑登録をしている市区町村から別の市区町村へ引っ越しをした人。

 

一方で、次の通り、印鑑登録の変更が必要のない人もいます。

  • 印鑑登録をしている市区町村から引っ越さず、氏も離婚によって変わらない人。
  • 氏ではなく名前で印鑑登録しており、離婚後も印鑑登録をしている市区町村から引っ越さない人。

さて、印鑑登録の変更手続きは、①現在の印鑑登録を廃止し、②新しく印鑑登録の手続きをすることによって行います。個々のケースによっては、①の印鑑登録の廃止手続きが不要な場合もありますので、印鑑登録をしている市区町村のホームページなどで事前に確認しておきましょう。

①の印鑑登録の廃止手続きは、役所に備え付けの印鑑登録廃止申請書と印鑑登録証、登録している印鑑、本人確認書類等を窓口に持参して行います。

②の印鑑登録の手続きは、役所に備え付けの印鑑登録申請書と、登録しようとしている印鑑、本人確認書類等を窓口に持参して行います。

印鑑登録廃止申請書と、印鑑登録申請書の書式は、こちらの東大阪市のサンプルをご参考ください。

 

<引用:東大阪市 印鑑登録廃止届書 印鑑登録申請書

なお、印鑑登録をしている市区町村から別の市区町村へと引っ越す場合には、自動的にその市区町村での印鑑登録が失効してしまいます。登録している印鑑が名前であっても、または離婚によって氏が変わらない場合でも、引っ越し先の市区町村で、新たに印鑑登録をしてください。

⑧マイナンバーカード

離婚届と同時にできる手続きの八つ目は、マイナンバーカードの変更手続きになります。

離婚することによって、戸籍上の氏名や住所が変更になる場合、マイナンバーカードの氏名や住所等の変更手続きをしなければなりません。

手続きは簡単で、離婚届の提出の際に、窓口にマイナンバーカードと、運転免許証やパスポートといった本人確認書類を持参するだけです。

また、マイナンバーカードの変更手続きの際に、マイナンバーカード交付時に本人が指定した暗証番号(数字4桁)が必要な場合があります。

暗証番号の入力を連続して間違えると、ロックがかかってしまい、マイナンバーカードの読み取りができなくなってしまいます。ロックの解除には市区町村役場での解除の手続きが必要となってしまいますので気を付けてください。

なお、離婚届と同時に、「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出する場合は、離婚によって氏名が変わらないため、マイナンバーカードの氏名変更手続きをする必要はありません。

⑨国民健康保険

1.元配偶者の会社の健康保険に入っていた場合

元配偶者の会社の健康保険に加入していた場合は、離婚によって加入資格を失うことになります。国民健康保険の加入手続きが必要になるため、役所の健康保険課で加入手続きを行いましょう。

加入手続きは、運転免許証などの本人確認書類と、健康保険資格喪失証明書、金融機関のキャッシュカード等を窓口に持参して行います。

資格喪失証明書は、元配偶者の会社で発行してもらうもので、元配偶者が勤務先に資格喪失の手続きをした後に勤務先より発行されます。

国民健康保険の加入が遅れると、元配偶者の会社の健康保険を抜けてから国民健康保険に加入するまでの期間にかかった医療費が、一時的に全額自己負担になってしまいます。

国民健康保険の加入後に役所で還付の手続きを行うことになりますが、離婚前後の出費はなるべく抑えたいところです。

国民健康保険はとても大事な手続きですから、忘れずに行ってください。

2.加入中の国民健康保険を継続する場合

婚姻期間中も国民健康保険に加入していて、離婚後も継続する場合は、世帯や氏名等の変更手続きを行うことになります。

役所に国民健康保険証と本人確認書類を持参して手続きを行ってください。

3.国民健康保険に加入していて、別の市区町村へ引っ越す場合

現在住民登録している住所とは別の市区町村へ引っ越す場合は、現在の市区町村での国民健康保険の脱退手続きをした上で、引っ越し先の市区町村で国民健康保険の加入手続きを行います。

離婚届の提出と同時に、国民健康保険の脱退手続きを行ってしまいましょう。

国民健康保険証と本人確認書類を役所へ持参して手続きを行います。

なお、国民健康保険に関する一部の手続きは、マイナンバーカードを使えばオンラインで申請することが可能になりました。詳細は市区町村のホームページでご確認ください。

⑩国民年金

元配偶者の厚生年金に加入していて、離婚後に会社の厚生年金に加入する予定の無い場合は、国民年金に加入する手続きを行う必要があります。

窓口は役所の国民年金係などになります。手続きに必要なものは、年金手帳(または、基礎年金番号通知書)、脱退連絡票、運転免許証などの本人確認書類です。

また、婚姻中も国民年金に加入していて、氏名や住所が変わった場合は、年金手帳の住所や氏名を変更する必要があるため、年金手帳を窓口へ持参しましょう。

⑪児童扶養手当

さて、離婚後に子どもを養育する方は、子どもに関する公的扶助や助成金の申請を忘れずに行いましょう。

児童扶養手当は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)がいるひとり親家庭に対して年6回、金銭が支給される制度です。

申請手続きは、現住所の市区町村に対して認定請求書を提出することによって行います。審査の結果、認定されれば、申請月の翌月分から支給となります。

申請に必要な書類は次の通りです。

  • 請求者と対象となる児童の戸籍謄本(抄本)
  • 請求者の名義の預金通帳
  • 請求者の本人確認書類
  • 請求者のマイナンバーカード

なお、前年の所得金額によっては所得制限にかかります。所得額の計算には一定の控除がありますので、児童扶養手当の受給をお考えの方は、市区町村の窓口に事前にご相談されると良いでしょう。

⑫ひとり親家庭等医療費助成

市区町村によって詳細は異なりますが、助成対象となるのは、医療保険の対象となる医療費や薬剤費等です。

国民健康保険や健康保険など各種医療保険の自己負担相当額から、自己負担分を差し引いた一部負担金額(住民税非課税世帯は、医療保険の自己負担分)を助成します。

 


<引用:一部負担金額の割合

通常、以下のものを揃え、市区町村役場の担当窓口で申請手続きを行います。

  • 申請者と子どもの健康保険証
  • 申請者と子どもの戸籍謄本
  • 現在の年度の住民税課税(非課税)証明書
  • 申請者の本人確認書類

申請が完了し対象者として認定されますと、このような医療証が交付されます。

 

福岡市医療証

 

<引用:福岡市 ひとり親家庭等医療 医療証

この医療証と健康保険証を病院や薬局の窓口で提示することで、助成を受けることができるようになるのです。

⑬住宅手当

住宅手当の内容は、引越し費用など一時的(一回限り)な金銭的援助や、家賃の一部補助など、自治体によって異なります。

市区町村が独自に行っている制度のため、実施していない自治体も少なくありません。名称も異なりますので、居住地・居住予定地で家賃等の助成制度があるか、事前に調べておきましょう。

離婚届と同時にできる手続きに関するQ&A

Q1.離婚届と同時にできる手続きの内、同じ窓口で行えるものは何がありますか?

同じ窓口で、離婚届と同時にできる手続きは次の通りです。

  1. 住民票の異動(転出届)
  2. 住民票の異動(転居届)
  3. 住民票の異動(世帯分離)
  4. 住民票の異動(世帯主変更届)
  5. 離婚の際に称していた氏を称する届
  6. 新しい戸籍の作成
  7. 印鑑登録
  8. マイナンバーカードの変更手続き

Q2.離婚届と同時にできる手続きの内、違う窓口で行う手続きは何がありますか?

離婚届の提出先とは別の窓口で、離婚届の提出ついでに行うことのできる手続きは次の通りです。

  1. 国民健康保険への加入
  2. 国民年金への加入
  3. 児童扶養手当
  4. ひとり親世帯の医療費助成
  5. 住宅手当

Q3.離婚後、住民票をそのままにしても良いですか?

離婚後は住民票を変更しましょう。

住民基本台帳法によって、引っ越しなど住民票に記載している事項に変更があった場合、14日以内に届け出なければ、5万円以下の過料を課される可能性があります(住民基本台帳法第23条・同法第52条第2項)。

まとめ

本記事では、離婚届と同時にできる手続きについてご説明させていただきました。

離婚届と同時にできる手続きは、ほとんどの場合、本人確認書類と届出書で済みますし、その他の必要書類等も入手に特別な手間がかかるものはほぼありません。

離婚前後は役所以外でもしなければならない手続きが多く、日常生活を送りながらこなしていくのは大変です。

今回解説させていただいた離婚届と同時にできる手続きは、事前に必要なものを把握しておけば、一度の来庁で済ませることができます。

離婚届と同時にできる手続きを効率よく行い、スムーズに離婚手続きを進めていきましょう。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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