熟年離婚と年金|年金分割や遺族年金はどうなる?【弁護士が解説】

近年は熟年離婚の件数が増加しており、多くの中高年が新生活のスタートを切る選択をしています。熟年離婚にあたって、「年金分割」の手続について気になる方もいるかもしれません。
年金は、老後の生活を支えるための重要な資産です。
将来的に受け取ることが予定されている年金を、離婚後にどのように分割・取得するのでしょうか。
年金の分割方法や取得権に関する正確な知識がないと、後々の生活に少なくない影響を及ぼす可能性があります。
特に、長年専業主婦をして厚生年金の受給対象でない方など、国民年金のみで老後の生活を乗り切ることに不安を感じている方も多いのではないのでしょうか。
本記事では、熟年離婚時の年金分割について解説させていただきます。ご参考になれば幸いです。
目次
熟年離婚と年金
熟年離婚をすると、その後の生活設計について慎重に考えていかなければいけません。
熟年離婚する場合には、転職や就職が年齢的に難しいことも多いです。そのため、離婚後は年金をもとに生活しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
特に、夫の扶養に入っていた専業主婦の方にとっては、夫の年金をどれくらいもらえるのかは気がかりかと思います。
そこで、以下では熟年離婚における年金分割について、詳しく見ていきます。
まずは、年金制度の基本について簡単に確認しておきましょう。
年金制度の基本
日本の年金制度は、大きく分けて①国民年金、②厚生年金、③私的年金の3つから成り立っています。
①の国民年金とは、学生を含む20歳から60歳未満の人が、必ず加入する公的年金です。一定期間保険料を納めることで、65歳になると「老齢基礎年金」を受け取ることができます。
被保険者は、「第1号被保険者(自営業など)」「第2号被保険者(会社員など)」「第3号被保険者(第2号に扶養される配偶者)」の3つに分かれています。
たとえば、共働きをしている妻は第2号被保険者となり、専業主婦は第3号被保険者ということになります。
②の厚生年金とは、会社員や公務員などが、勤務先を通じて加入する公的年金です。
厚生年金には国民年金も含まれているため、厚生年金に加入すると、国民年金にも加入していることになります。そのため、国民年金よりも手厚い保障が受けられるのが特徴です。
後で詳しく解説しますが、年金分割の対象となる年金は、この②の厚生年金になります。
熟年離婚後、年金分割制度の対象となるのは、第2号被保険者と第3号被保険者です。
③の私的年金とは、公的な年金だけでは不安な部分を補うために、企業や個人が自主的に積み立てる年金制度です。
確定給付企業年金や確定拠出年金(企業型)といった企業が導入しているものや、「iDeCo」に代表される個人型確定拠出年金などがあります。
年金分割とは
そして、年金分割とは、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。
前述の通り、厚生年金は国民年金よりも保障の手厚い年金です。
婚姻期間中に家事や育児によって一方を支えてきた他方が、厚生年金に加入していなかったというだけで、厚生年金に加入していた一方と年金受給額に差が生じてしまうのは、あまりにも不公平です。
そこで、2004年(平成16年)に、年金の支給についての不公平を解消することを目的とし、年金分割の制度が導入されたのです。
年金分割の対象となるのは、「婚姻期間中に納めた厚生年金の年金保険料に対応する分」であることに注意が必要です。つまり、すべての年金が年金分割の対象になるわけではありません。「国民年金」や、「厚生年金基金」、「国民年金基金」などは、年金分割の対象外です。
仮に、妻が専業主婦であったとしても、夫が自営業で国民年金加入者であったり、夫の勤務先で厚生年金に加入していなかったりする場合には、年金分割できる年金がないということになります。
熟年離婚の年金分割はどうなる?
それでは、熟年離婚の年金分割は具体的にどうなるのでしょうか。
気になるのは、「何をどのように分けることになるのか」かと思います。
まず押さえておきたいのは、分割の対象になるのは厚生年金に関する記録だけ、という点です。
会社員や公務員として働いた人は、給与に応じて厚生年金の保険料を納めています。
このとき、保険料額の算定の基礎に使われるのが「標準報酬」です。標準報酬とは、厚生年金における保険料額や年金額の算定の基礎となるもので、報酬月額及び賞与額を基に仮定的に設けられた額のことをいいます。
標準報酬が高額であるほど、それに応じて厚生年金保険料も高くなり、その分、将来もらえる厚生年金が高くなる仕組みです。
そして、熟年離婚の場合は、婚姻期間中の夫婦の「標準報酬」を合計し、最大0.5ずつで分け合うことになります。
ここで注意しておきたいのが、「年金分割とは夫がもらう年金を妻に分ける制度ではない」ということです。
年金分割という言葉だけを見ると、将来受け取る年金そのものを半分にするイメージが生まれがちですが、分割するのは受け取る年金そのものではなく、働いていた期間の「標準報酬」です。
そして、年金分割は「夫の年金を妻に分ける制度」ではありません。
あくまで、婚姻期間中に支払ってきた厚生年金の記録を基準にしています。一般的には夫の収入が高いケースが多いため、結果として「夫の年金の記録を妻に分ける」ことが多くなっていますが、制度としては男女どちらか一方に固定されているわけではありません。
そのため、たとえば妻の方が収入が多い場合には、妻の標準報酬の一部を夫が受け取ることになるのです。
また、厚生年金であっても、結婚する前に納めた分は、年金分割の対象からは除かれます。
以上のとおり、年金全体の半分を妻が受け取る、という制度ではないので、注意してください。
熟年離婚の年金分割
熟年離婚の年金分割のやり方
熟年離婚した場合には、婚姻期間中に納めた厚生年金保険料の納付記録を夫婦で分割します。この年金分割の分割方法には、「合意分割」と「3号分割」という2つの方法があります。
どちらの場合も、年金分割をするには原則として離婚した翌日から2年以内に請求しなければなりません。
手続きは、「年金分割のための情報通知書」を請求し、年金事務所で所定の手続きを進めていくのが基本的なやり方です。
細かい点は合意分割と3号分割とで異なるため、以下で確認しておきましょう。
合意分割
合意分割とは、平成19年4月1日以降に離婚等をした場合に、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦双方で分割することができる制度です。
ただし、合意分割制度に基づく年金分割を請求するためには、当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めていなければなりません。
合意がまとまらない場合には、当事者の申立により、家庭裁判所が按分割合を定めることができます。
この按分割合ですが、特別の事情がない限り、平等にすべきと考えられています。
たとえば、裁判例(東京家判令和5年3月16日)においては、次のように判示されています。
「年金分割のための情報通知書記載の情報に係る年金分割の按分割合は、特別の事情がない限り0.5と定めるべきであるところ、本件において、特別の事情は認められないから、按分割合は0.5とするのが相当である。」
ここで気になるのは、按分割合が0.5ではなくなる「特別の事情」です。
「特別な事情があったから按分割合を0.5より少なくすべきだ」と主張される理由として多いのは、配偶者の不倫や、長期間の別居が挙げられます。
ですが、こうした理由があったからとはいって、それが直ちに「特別の事情」になるとは限りません。
たとえば以下の裁判例のとおり、熟年離婚の前に夫婦が別居していた期間があっても、按分割合は0.5が原則とされています。
裁判例(東京家審平成20年10月22日)においては、婚姻期間30年のうち13年間別居していた夫婦について、「別居後も、当事者双方の負担能力にかんがみ相手方が申立人を扶助すべき関係にあり、この間、申立人が相手方に対し扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は見当たらないから、別居期間中に関しても、相手方の収入によって当事者双方の老後等のための所得保障が同等に形成されるべきであったというべきでる。」として、按分割合が0.5と判断されました。
年金分割という制度が、法政策上の老後保障であることからしても、配偶者の不倫や長期間の別居という事情があるというだけでは、按分割合を平等にすべきと考えられているのです。
さて、合意分割による年金分割を行うためには、原則として、公正証書、請求すべき按分割合を定めた確定した審判、調停調書、確定した判決または和解調書の謄本又は抄本が必要となります。公正証書には、夫婦間での年金分割についての合意、および分割の具体的な割合についての合意の内容を記載しなければなりません。
年金分割の合意に関する公正証書を取得した後、所定の手続きを経て、年金分割を実施することができます。
3号分割
3号分割とは、夫婦の一方が厚生年金保険及び各共済年金に加入し、他の一方がその被扶養配偶者として3号被保険者と認定されていた期間(ただし平成20年4月1日以降の部分に限ります。)があるときに、その期間について、被扶養配偶者から厚生労働大臣等に対する年金分割請求により、当然に2分の1の割合で年金を分割する制度です。
裁判例(東京高決令和4年10月20日判タ1515号57頁)でも、3号分割について次のように説明されています。
「老齢厚生年金は、その性質及び機能上、夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的意義を有しており、離婚時年金分割制度との関係においては、婚姻期間中の保険料納付は、互いの協力により、それぞれの老後等のための所得保障を同等に形成していくという意味合いを有しているものと評価することができる。この趣旨は、夫婦の一方が被扶養配偶者である場合における年金分割(いわゆる3号分割)について、『被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識の下に』、当然に2分の1の割合で分割されるとされていること(厚生年金保険法78条の13、78条の14)にも現れて」いる。
つまり、婚姻期間中の一方の保険料納付について、当然被扶養配偶者と共同して負担したものであるという考え方が前提としてあり、3号分割は、夫婦双方の老後等のための所得保障としての老齢厚生年金を平等に分割する制度といえます。
3号分割は、専業主婦(主夫)など一方の配偶者の扶養に入っていた方を対象とする制度であり、年金分割請求は、扶養に入っていた方だけですることができます。
なお、この制度は、平成20年4月1日以降の婚姻期間にしか適用されないため、注意が必要です。
夫婦の一方が3号分割を請求する場合には、双方の合意は不要で、年金事務所で手続をすれば足ります。
3号分割の場合の按分割合は、50:50(2分の1)となります。
厚生年金額は標準報酬額に基づいて計算されるため、年金分割により、標準報酬額が多い方から少ない方へ移動することになります。
つまり、専業主婦は夫から標準報酬額を移されることで、厚生年金額が増えます。逆に、夫は標準報酬額を減らされることで、厚生年金額が減ることになります。
合意分割と3号分割の両方適用される場合も
以上のとおり、基本的には合意分割と3号分割の2種類の方法に分けられる年金分割ですが、これら両方が適用される場合もあります。
たとえば、20年間の婚姻期間を経て、夫婦が離婚したとしましょう。夫は婚姻期間中、継続して厚生年金に加入していました。妻は結婚してから5年間は働いて厚生年金に加入しており、その後離婚するまでの15年間は専業主婦であったような場合です。
この場合、妻が厚生年金に加入していた5年間については、「合意分割」となります。そして、専業主婦になってからの15年間については「3号分割」によって年金分割することとなるのです。
このように、ケースによっては年金分割の方法を併用する場合もあるため、正しく理解しておくことが大切です。
年金分割の詳細や、具体的な手続きについては、こちらの関連記事をご一読ください。
熟年離婚の年金分割はいくらもらえる?
一般的に、年金分割を受ける側が受け取る年金の金額は、おおむね3万円とされています。
受給する金額については、主に次の具体的な内容によって左右されます。
- 年金分割の方法(合意分割、3号分割)
- 按分割合(原則50:50)
- 標準報酬(婚姻期間中に支払った厚生年金保険料の納付記録)
- 実際に年金を受給開始する年齢
- 年金の種類や加入していた期間
たとえば、平均的な収入を前提に婚姻期間中30年間厚生年金に加入していた男性の場合、その半分をもらう妻でも、受給額は3万円程度となります。
もちろん、この金額は一般的な平均金額ですので、3万円より少ない金額の場合もあれば、さらに高額になる場合もあります。
なお、熟年離婚時に年金を分割しなかったとしても、前の夫が亡くなった際には遺族年金の受給が可能です。ただし、遺族年金の受給には特定の条件があるため、必ず受給できるというものでもありません。
自分がいくら受け取れるのか、より正確な金額を知るためには、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を交付申請する必要があります。
年金分割のための情報通知書には、婚姻期間や分割の対象となる期間、対象期間の標準報酬総額(標準報酬月額と標準賞与額の合計)、按分割合などが記載されているため、自身の状況に応じたより具体的な金額の予想を立てることが可能です。
50歳以上であれば年金見込額が分かる?
老齢年金の受給資格をすでに満たしている50歳以上の方であれば、「年金分割をした場合に将来どれくらいの年金になるのか」を試算した「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」を受け取ることができます。
熟年離婚後の生活設計を考える上で役立つ資料となりますので、事前に確認しておくことをおすすめいたします。
見込額のお知らせを申請する場合は、情報提供請求書の該当欄に、年金見込額の照会を希望する旨を記入して申し込みます。
60歳未満で離婚するなら厚生年金への加入も検討しましょう
なお、60歳未満で離婚するのであれば、会社勤めとなることで、厚生年金へ加入できる可能性があります。配偶者の厚生年金を分割できるか心配、年金分割しても金額が少ない、と不安な場合は、転職・就職を検討しておきましょう。
そうすると、老後には自分名義の国民年金に加えて、自分名義の厚生年金を受け取ることができます。
もっとも、その場合であっても、ご自身の厚生年金額もさほど高額にはならないのが通常です。
また、専業主婦であった妻が厚生年金に加入することは、妻だけでなく夫にとってもメリットとなることがあります。
妻が厚生年金の加入者になると、妻は3号被保険者ではなくなります。すると、それ以降から離婚成立までの夫の厚生年金については、3号分割の対象ではなくなるのです。
3号分割でなくなれば、当然に2分の1が妻の権利となることがなくなり、合意分割となるため按分割合について夫婦で話し合いをする余地が生まれます。
熟年離婚の話が出ているが、離婚が成立するまでは時間がかかりそう、といった場合には、相手にも厚生年金に加入してもらうことが、夫婦双方の老後のメリットとなることもあるのです。
また、年金分割だけでは心もとない場合には、離婚にあたって、財産分与請求を検討することも一つの方法です。こちらの関連記事も合わせてご覧ください。
70代で熟年離婚して年金はもらえる?
熟年離婚ですから、離婚時には夫婦のどちらか、あるいは両方が、既に年金を受給している70代であることも考えられるでしょう。
たとえば、老齢厚生年金は65歳が受給開始年齢です。この受給開始年齢である65歳を超えて、既に受給している場合にも、年金分割は行えます。
手続きの方法や必要書類などは、一般的な年金分割の手続きと同様です。請求期限も原則として、離婚等をした日の翌日から2年以内とされていますし、分割の対象となるのも、婚姻期間中の保険料納付記録であることに違いはありません。
既に年金を受給しているからといって、分割請求自体に大きな相違点はないのです。
なお、分割後の新しい年金額に関しては、翌月から支給が開始されます。受給開始年齢である65歳を超えているため、すぐに受け取れるようになるからです。
熟年離婚と遺族年金
もし熟年離婚後に元配偶者が亡くなった場合、遺族年金はどうなるのでしょうか。
遺族年金とは、亡くなった方の家族がもらえるお金のことです。この遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金という、2つの種類があります。
熟年離婚した後、前の配偶者からの遺族年金をもらえるかどうかは、受給する側の状況や受給資格によって変わります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に入っていた人の家族が受け取ることができるお金です。
遺族基礎年金の場合、熟年離婚した後の元夫や元妻は、基本的にこの年金をもらうことはできません。
ただし、離婚した夫婦の間に子どもがいる場合、その子どもは年金をもらえることが考えられます。
具体的な受給要件は、次の通りです。
生計を支えているか
- 亡くなった人と一緒に住んでいた、または、住んでいなくてもお金を仕送りしていた。
- 亡くなった人の健康保険の扶養親族として登録されていた。
- 前の年の収入が850万円未満であること又は所得が655万5000円未満であること。
令和7年4月分からの遺族基礎年金の年金額は、子が受け取るときは、次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。
831,700円+2人目以降の子の加算額
・1人目および2人目の子の加算額 各239,300円
・3人目以降の子の加算額 各79,800円
もらえる家族の範囲
- 亡くなった人の子がいる配偶者や、子ども。なお、「子ども」とは、18歳の年度の3月31日まで、または、20歳未満で障害がある(障害年金の1級や2級)人を指します。
- 配偶者がいる場合、配偶者が年金を受給します。配偶者がいない場合、子どもが受給資格を持つことになります。
保険料の支払いに関する条件
- 国民年金の被保険者である間に死亡したとき亡くなった日に国民年金の加入者であること。
- 20歳から亡くなるまでの間に、全期間の3分の1以上で保険料を滞納していないこと。ただし、保険料を払わなくても良い期間は、払ったとみなされます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に入っていた人の家族が受け取ることができるお金です。
遺族厚生年金の場合、離婚後に子どもの養育費をもらっていたなら、その関係が続いているとみなされ、年金をもらえる可能性があります。子どもがいない妻でも、この年金をもらうことができます。
具体的な受給要件は、次の通りです。
生計を支えているか
- 亡くなった人と一緒に住んでいる、または、住んでいなくても養育費や生活費などを支払っている場合。
もらえる家族の範囲
- 亡くなった人の「子のある配偶者」、「子」、「子のない配偶者」、「父母」、「孫」、「祖父母」の中から、優先順位の高い人が対象となります。
- 「子」とは、18歳の年度の3月31日までの方、または、20歳未満で障害がある(障害年金の1級や2級)方を指します。
保険料の支払いに関する条件
次のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族基礎年金が支給されます。
- 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
※死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む) が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
- 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
- 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
※保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます。
このように、状況や条件によって、遺族年金をもらえるかどうかが変わってくるのです。
熟年離婚後の遺族年金についての不安やお悩みは、法律の専門家である弁護士にご相談ください。熟年離婚の手続きにともなう諸々の法的問題も踏まえて、お力になれることと思います。
熟年離婚と年金に関するQ&A
Q1.熟年離婚をした場合、年金はどのように影響を受けますか?
A:熟年離婚をした場合、「年金分割制度」が適用されることが多いです。これは、夫婦が結婚していた期間中に積み立てた年金を、原則として半分ずつに分ける制度です。
たとえば、夫が長く働いて多くの年金を積み立てていたのに対し、妻が家庭を守る役割を担っていた場合でも、離婚によりその年金は半分ずつに分けられることになります。
ただし、具体的な分割方法や金額は、年金事務所での手続きや相談を通じて確認することができます。この制度の詳細や自身の状況に合わせたアドバイスを受けるためにも、早めの相談がおすすめです
Q2.熟年離婚後、再婚すると年金にどのような影響が出ますか?
A:熟年離婚後に再婚すると、前の配偶者との年金分割の権利や取り決めはそのまま維持されます。
しかし、新しい配偶者との間で新たな年金の積み立てや分割の権利が発生することも考えられます。
さらに、再婚によって特定の年金制度、特に「遺族年金」に影響が出ることもあります。たとえば、前の配偶者からの遺族年金を受け取っている場合、再婚するとその受給資格が失われる可能性があります。
再婚を考えている方は、年金に関する変動や影響をしっかりと把握し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
Q3.配偶者が亡くなった場合、遺族年金を受け取ることはできますか?
A:熟年離婚後も、特定の条件を満たしていれば遺族年金の受給資格が残ることがあります。
たとえば、離婚時に18歳未満の子供がいた場合や、離婚後5年以内に前の配偶者が亡くなった場合など、一定の条件下で遺族年金の受給資格が認められます。
しかし、全ての熟年離婚者が遺族年金を受け取れるわけではありません。具体的な条件や手続きについては、年金事務所に相談することが最も確実です。
まとめ
熟年離婚は、近年増加傾向にあり、多くの夫婦が新たな生活のスタートを切る中で、経済的な安定が気になるポイントとして「年金」が挙げられます。
本記事では、熟年離婚をした際の年金に関する情報について、詳しく解説させていただきました。
熟年離婚をすると、通常は公的年金の「年金分割制度」を利用することが考えられます。これは、夫婦が結婚していた期間中に積み立てた年金を、原則として半分ずつに分ける制度です。
具体的な分割方法や金額については、年金事務所での手続きや相談を通じて確認しながら進めていきましょう。
また、熟年離婚後に再婚すると、前の配偶者との年金分割の権利や取り決めはそのまま維持されます。
しかし、新しい配偶者との間で新たな年金の積み立てや分割の権利が発生することも考えられます。
遺族年金については、熟年離婚後も、特定の条件を満たしていれば、受給資格が残ることがあります。その条件についても、本記事でご説明させていただきましたので、ぜひご一読ください。
離婚後の生活を安定させるためにも、早めの情報収集と計画をおすすめします。
本記事が、熟年離婚と年金制度についての理解に役立つものとなれましたら幸いです。
この記事を書いた人

雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。



