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年金分割の必要書類【完全版】離婚の3号分割などの手続きの必要書類を解説!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚時の手続きは多岐にわたり、その中でも「年金分割」は特に注意が必要な領域となります。

年金は、私達の将来を支える大切な資産であり、その分割に関する正確な情報を持つことは、極めて重要です。

しかし、いざ手続きを進めようとすると、「年金分割のための必要書類は何か」「必要書類をどこで、どのように入手できるのか」という、煩雑な問題に直面することになります。

また、年金分割する場合、どのくらいの割合の年金をもらえるのかなど分からないこともあるかと思います。

この記事では、「年金分割の必要書類」に焦点を当て、それぞれの詳細や入手方法について、弁護士が徹底的に解説いたします。

年金分割の必要書類について、正確な知識をあらかじめ持っておくことで、離婚後の年金分割の手続きをスムーズに進められることでしょう。
不安や疑問を解消し、安心して必要書類の準備や入手を進めるための第一歩として、ぜひこの記事をご参照ください。

目次

年金分割の必要書類

年金分割の手続きは煩雑ですが、必要書類の用意はそこまで難しいことはありません。

本記事では、年金分割の必要書類とその入手方法についてご説明いたしますが、まずは年金分割の「3号分割」と「合意分割」で必要とされている書類を見てみましょう。

年金分割の必要書類(3号分割)

  • 標準報酬改定請求書
  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)
  • 請求日前1ヶ月以内に交付された、夫婦の生存を証明できる書類
  • 事実婚関係の期間の情報通知書等の請求の場合、その事実を証明する書類(住民票)

年金分割の必要書類(合意分割)

  • 標準報酬改定請求書
  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)
  • 請求日前1ヶ月以内に交付された、夫婦の生存を証明できる書類
  • 事実婚関係の期間の情報通知書等の請求の場合、その事実を証明する書類(住民票)
  • 年金分割の割合を明らかにすることができる書類(公正証書の謄本または抄録謄本、公証人の認証を受けた私署証書、審判書や判決書の謄本または抄本および確定証明書、調停調書の謄本または抄本、合意書など)

年金分割のための情報通知書【重要】

さて、年金分割の手続きの必要書類は上記の通りとなりますが、これらの必要書類を揃える前に、年金分割の按分割合を決めるために必要な情報が記載された「年金分割のための情報通知書」を入手しておく必要があります。

年金分割のための情報通知書

年金分割手続きの直接的な必要書類ではありませんが、標準報酬改定請求書の記入などに必要ですので、まず情報通知書を交付請求しましょう。

情報通知書は、離婚前と離婚後のどちらのタイミングでも請求できます。
離婚前に請求すると、情報通知書の請求から離婚日までの期間が1年以内なら有効、と有効期限が生じます。一方、離婚後に請求する場合は、情報通知書に有効期限はありません。

情報通知書は、年金事務所に申請して入手します。

まずは、「年金分割のための情報提供請求書」を記入しましょう。

年金分割のための情報提供請求書

請求書の書式は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができますし、年金事務所の窓口で取得することもできます。
年金分割のための情報提供請求書には、夫婦双方の情報(基礎年金番号、生年月日、氏名、住所)、婚姻期間に関する情報などを記載します。

年金分割のための情報提供請求書を準備できたら、次の書類を添えて年金事務所へ提出します。

  • 年金手帳、基礎年金番号通知書など
  • 夫婦の婚姻期間を証明する書類(戸籍謄本等)
  • 事実婚関係を証明する書類(住民票)
お住まいの近くの年金事務所がどこにあるのか分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その場合には、まず、日本年金機構のホームページなどを参照し、年金事務所管轄区域をご確認ください。
事前に、お近くの年金事務所にお電話していただくと、取得の手続きがスムーズに進むでしょう。
請求から交付まで1ヶ月程かかる場合もありますので、離婚後すぐのタイミングで請求することをおすすめいたします。

なお、年金事務所の窓口で申請や相談をする際には、本人確認書類の提示を求められることがあります。マイナンバーカードや運転免許証、旅券(パスポート)などの本人確認書類を持参するようにしましょう。

離婚年金分割の必要書類

それでは、前述した必要書類について、その詳細と入手方法をご説明いたします。

(1)標準報酬改定請求書

年金分割手続きの際に、年金事務所に提出する必要書類です。こちらの書式は、年金事務所のホームページからダウンロードして入手できます。

標準報酬改定請求書をダウンロードしたら、以下のような項目を記入します。通常、分割を受ける方と分割する方の両方について、記載項目を記入して、提出する必要があります。

  • 氏名、生年月日、性別、住所、連絡先
  • 年金番号
  • 請求の種類(合意分割、3号分割)
  • 分割割合(按分割合)
  • 厚生年金基金の名称
  • 婚姻期間等
  • 年金分割の対象期間に含めない期間
  • 標準報酬改定請求(年金分割請求)を行う旨の意思確認の署名

(2)公正証書、合意書

合意分割の場合の必要書類です。3号分割の場合は、按分割合が50:50(2分の1)とされているため、この書類は必要ありませんが、合意分割の場合は、夫婦双方が年金分割することに合意していることと、任意で決めた按分割合を、公正証書や合意書といった形で示す必要があります。

なお、合意分割の場合は、話し合いの結果、夫婦双方が合意するのであれば、按分割合を50:50(2分の1)ではなく、40:60などにすることも可能です。ただし、通常は50:50で定められることが多く、裁判所の手続きで定める場合も同様といえます。

①公正証書の謄本または抄録謄本

合意分割の必要書類の一つ、公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書です。この場合、公正証書によって、「年金分割の請求を行うこと」と、「年金分割の按分割合を定めることについて合意していること」が証明されます。

公正証書は、公証人の面前で当事者が合意して作成される公文書なので、証拠力は非常に強力です。そのため、信頼性が高く、年金事務所での書類審査もスムーズに行われます。

公正証書の作成のためには、通常、公証役場に出向く必要があり、作成のための話し合いなどを含めても、数日から数週間かかる場合もあります。

また、作成には手数料が数万円ほど必要です。

なお、「謄本」とは、原本である公正証書を完全に複写した文書ですので、公正証書と同じ法的拘束力を有します。
一方、「抄録謄本」は、原本からの部分的な抜粋を記したもので、必要な部分についてのみ、要点がシンプルにまとめられています。そのため、この「抄録謄本」には法的な効果はありません。

②公証人の認証を受けた私署証書

「公証人の認証を受けた私署証書」とは、私人が作成した文書に公証人が認証(私文書の成立の真正の証明)を与えたものです。公証人の認証があることによって、その文書が適切な手続きで成立したことが証明されます。

年金分割の合意について、夫婦で私文書を作成した場合、公証人の認証を受けることによって、合意の内容が真実であることが推定され、法的効力を有することになります。

なお、こちらも公正証書の作成と同様、公証役場での手続きが必要となります。事前に最寄りの公証役場のホームページなどで、手続きの流れや、必要書類について確認しておきましょう。

③合意書

話し合いによって合意しても、公正証書や私署証書を用意しない・できない場合は、年金分割の合意書を作成しましょう。

合意書の書式は、日本年金機構のホームページから入手できます。
当事者が年金分割することに同意した旨と、その按分割合について記入し、夫婦の両方が署名してください。

④審判書や判決書、調停調書や和解調書

夫婦が話し合いによって合意したのではなく、裁判所の手続きによって年金分割の按分割合を決めた場合は、その旨が記載された書類が必要です。
必要書類については、経た手続きによって異なります。各手続ごとの必要書類を説明します。

  • 調停調書(調停によって按分割合について合意した場合)
  • 和解調書(和解の場合)
  • 審判書と確定証明書(審判によって按分割合が決定した場合)
  • 判決書と確定証明書(裁判によって按分割合が決定した場合)

審判書と判決書の場合に添付する「確定証明書」とは、「裁判所の許可や却下の判決などが確定したことを示す書類」です。

審判や判決が確定した際には、その裁判所の決定に対する不服申し立てができなくなります。
年金事務所での年金分割手続きに確定証明書が必要になるのは、按分割合などについての審判や判決が、不服申し立てなどによって変わることがないということを保証するためです。

確定証明書は、審判や判決をした裁判所に対し、手数料(1通につき収入印紙150円)を貼付した確定証明申請書を提出して交付請求します。申請書は裁判所のホームページからダウンロードでき、裁判所の窓口だけでなく、郵送によっても申請手続きを行えます。

申請から交付まで2週間程度かかりますので、早めに交付請求しておくと良いでしょう。

(3)戸籍謄本(婚姻期間を確認できる書類)

必要書類の3つ目は、個人の身分関係を記載した公文書である戸籍です。
戸籍謄本は、戸籍に記載されている全員の身分事項を証明する戸籍の写しです。
戸籍抄本も戸籍の写しですが、戸籍に記載されている人のうち、特定の個人の身分事項のみを証明するものです。

戸籍謄本と戸籍抄本は、本籍地の市区町村役場で請求することができます。
窓口で請求すると、その場で即日交付されます。準備に時間的な余裕がある方や、窓口へ行くことができない方は、郵送やオンラインで交付請求が可能です。

また、最近は、マイナンバーカードを活用すれば、コンビニなどで手軽に戸籍謄本を取得できるようにもなっています。コンビニ以外にも、対応しているマルチコピー機が置いてあれば、スーパーや郵便局などでも利用できることがあります。ただし、地域によっては窓口以外では対応していないこともあるため、市区町村のホームページを参照するなど、事前の確認が必要です。

なお、年金分割を請求する日から1ヶ月以内に作成された戸籍謄本・戸籍抄本でなければいけませんので、戸籍謄本・戸籍抄本の交付請求のタイミングには注意してください。
戸籍謄本と戸籍抄本の交付には手数料がかかるため、事前に請求先の自治体のホームページなどで金額を確認しておきましょう。

(4)基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類

続いての必要書類は、基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類です。

請求書に基礎年金番号を記入するときは、請求者の基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類が必要になります。

また、請求書にマイナンバーを記入するときは、マイナンバーカード等が必要になります。

例としては、次の3つのうちからいずれかの書類を確認することになります。

①基礎年金番号通知書

基礎年金番号通知書とは、国民年金の被保険者である(又は被保険者であった)ことを証明する書類です。

令和4年4月1日以降、新たに年金制度に加入する人に対して、年金手帳の代わりとして発行されるようになりました。年金手帳を紛失した場合などにも、再発行を希望すれば、基礎年金番号通知書が発行されます。

基礎年金番号通知書に記載されている項目は、次の通りです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 基礎年金番号
  • 性別
  • 交付年月日

基礎年金番号通知書の入手方法ですが、令和4年4月1日以降、新たに年金制度に加入する人には、自動的に交付されます。

基礎年金番号通知書や年金手帳を紛失した場合は、基礎年金番号通知書を年金事務所で再発行することで入手できます。窓口申請の他に、日本年金機構のホームページ上でオンライン申請が可能です。

②年金手帳

年金手帳とは、公的年金制度の加入者に対して、令和4年4月以前に交付されていた、年金に関する情報が記載された手帳です。

年金手帳には、以下の情報が記載されています。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 住所
  • 基礎年金番号
  • 国民年金、厚生年金、共済年金の加入記録
  • 保険料納付状況
  • 年金の受給権者としての資格

なお、令和4年4月1日以降、新たに年金制度に加入する人に対しては、年金手帳ではなく基礎年金番号通知書が発行されることになりました。

年金手帳は廃止されましたが、年金事務所での手続き等では引き続き利用することができますので、現在年金手帳をお持ちの方は、紛失しないよう大切に保管しておかれることをおすすめします。

③マイナンバーカード

マイナンバーカードとは、個人番号(マイナンバー)が記載された、顔写真付きのICカードです。市区町村役場などでの公的な手続きで、運転免許証と並び本人確認書類の一つとして一般的になっています。

現在では、日本の人口の約7割の人が、マイナンバーカードを所持しているそうです。

マイナンバーカードの交付申請は、住民票がある市区町村役場等で行います。
交付申請は、オンラインでも可能ですが、出来上がったマイナンバーカードを受領する際は、原則として、窓口に行く必要があります。

 

(5)夫婦の生存を証明できる書類

夫婦の生存を証明できる書類も、必要書類の一つです。戸籍謄本・戸籍抄本や、住民票の写しがこれに該当します。

年金分割の手続き前に、当事者の一方が死亡した場合、年金分割の請求が認められるのは、死亡日から1ヶ月以内に限られています。
死亡日から1ヶ月以内の請求か、戸籍謄本等に記載された死亡日によって確認します。

なお、前述の婚姻期間等を確認するための戸籍謄本等に加えて、もう1通同じものを用意する必要はありません。

(6)住民票

婚姻届を提出している場合は、婚姻関係を戸籍謄本等によって確認できますが、事実婚の場合は婚姻届を提出していないため、戸籍謄本等からは事実婚の関係にあることが、第三者には分かりません。

そこで、事実婚の場合の必要書類として住民票を用いることになります。

住民票は、下記の内容が記載されていれば、事実婚の夫婦として同居していたことを証明するための書類として利用することが可能です。

  • 住所が同じ。
  • 世帯主が同じ。
  • 続柄が「夫(未届)」、「妻(未届)」と記載されている。

なお、住民票の記載内容によっては、事実婚関係が認められないこともあります。
住民票の場合も、年金分割を請求する日から1ヶ月以内に作成されたものを提出してください。

住民票は、住民票のある市区町村役場で入手することができます。
窓口での交付申請の他にも、郵送やコンビニエンスストアでの交付申請が可能です。

お住まいの市区町村の役所に行き、窓口で、「事実婚にしたいので、妻(未届)または夫(未届)にしたい。」旨を伝えれば、続柄の変更手続きが可能です。

その際、独身であることを確認するために、戸籍謄本等の提出を求められる場合がありますので、必要な書類について事前に確認しておきましよう。

年金分割の必要書類に関するQ&A

Q1.年金分割の際に必要な基本的な書類は何ですか?

年金分割の際には、以下の基本的な書類が必要です。

  • 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにする書類
  • 婚姻期間を明らかにする戸籍謄本や戸籍抄本
  • 請求者の生存を証明する書類

Q2.婚姻期間を証明するための戸籍謄本や戸籍抄本は、どこで取得できますか?

婚姻期間を証明する戸籍謄本や戸籍抄本は、住民登録をしている市区町村の役場や、出張所の戸籍課で請求・取得することができます。

近年は電子申請もできるようになりましたので、請求先の市区町村役場のホームページなどで請求方法を確認しましょう。

Q3.年金分割のための情報提供請求書などの書式は、どこで手に入れられますか?

「年金分割のための情報提供請求書」などの書式は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

まとめ

年金分割は、離婚時に夫婦間で公的年金を分ける手続きですが、その際には正確な書類の提出が求められます。
本記事では、「年金分割 必要書類」に関する詳細と、その入手方法について解説しました。

まず、基礎的な必要書類としては、基礎年金番号またはマイナンバーを明示する書類、婚姻期間を証明する戸籍謄本や戸籍抄本、そして請求者の生存を証明する書類が挙げられます。特に、婚姻期間を証明する書類は、離婚時の正確な期間を示すために不可欠です。
これらの書類は、住所地の市区町村役場から入手可能です。

また、年金分割のための情報提供請求書といった交付申請書式は、日本年金機構の公式ホームページからダウンロードできるため、手続きを進める前に必ず確認しておくことをおすすめします。

年金分割の手続きは、将来の生活を左右する重要なものです。そのため、必要書類の準備や提出には十分な注意が必要です。

本記事が、少しでも年金分割請求のためのご参考となれば幸いです。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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