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配偶者のうつ病が原因で離婚に悩む人へ〜慰謝料は請求できる?親権や養育費に影響はあるか

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫や妻がうつ病になってしまった。そんなとき、誰もが病気を治してほしい思いで、配偶者のことを一生懸命支えることでしょう。

しかしながら、どんな言葉をかけても相手が塞ぎこんでいたり、引きこもった生活が続いてしまうことがあります。

いくらうつ病が原因であるとわかっていても、そのような状況では離婚を考えてしまうのも仕方がないことです。

ここでは、夫や妻がうつ病であるときに離婚したほうがいいケースや、離婚する場合の条件や方法、離婚に伴い慰謝料を請求することができるのかといった疑問について、詳しく説明していきます。

目次

夫や妻がうつ病のときに離婚したほうがいいケースとは

うつ病の症状とは?

うつ病とは、気分障害の一つであり、抑うつ状態が2週間以上続いた場合に病気と診断されます。

抑うつ状態とは、気分が落ち込んで何もする気になれない、憂鬱である、集中力が落ちて仕事ができない、人に会いたくないなどの精神的な症状です。

抑うつ状態が続くと、不眠や過眠、食欲不振、息苦しさや動機などの身体症状も表れ、日々の生活に様々な支障をきたします。

うつ病の原因は解明されていない

うつ病の原因は解明されていませんが、ストレスや身体的な状態からうつ病を発症する人が多いと言われています。

うつ病は多くの場合、精神科や心療内科で診察・治療が必要になります。医療機関によって治療方法は異なりますが、軽度のうつ病であれば、数か月から1年以内に改善することも多いでしょう。

一方で、うつ病が長期化すると症状も重くなり、抑うつ状態と躁(そう)状態(※極端に調子がよくなって活発になる時期)を繰り返す双極性障害に発展することもあります。

配偶者のうつ病が原因で別居や離婚を考えるときには、配偶者がどのような症状であるのか、今後うつ病が改善する見通しがあるのかをきちんと把握することが大切です。

夫や妻がうつ病のときに別居や離婚を考えたほうがいいケースとは

配偶者がうつ病で症状が長期化している場合や、配偶者に重度のうつ病や双極性障害がある場合は、婚姻生活を継続することがとても大変です。

しかし、一方でうつ病の配偶者を置いて別居や離婚をしても良いのか不安に思うこともたくさんあるでしょう。

配偶者のうつ病が原因で別居や離婚を悩んでいる人でも、まずは、主治医に相談するなどして、うつ病の症状へのケアの仕方やうつ病の配偶者への接し方、離婚や別居を話し合うタイミングなど、専門的なアドバイスをもらいましょう。

それでも、状況が変わらず、薬を飲んでも症状が改善しない場合などは、あなた自身も精神的に疲弊してしまう恐れもあります。

夫婦が共倒れする前に、別居や離婚を考えることも賢明といえるでしょう。ここでは、どのような場合に別居や離婚を考えたほうがよいのか、一緒に考えていきたいと思います。

離婚や別居した方がいいケース①:夫婦がともに離婚を望んでいる場合

共同生活は互いにストレスを感じるものです。

配偶者がうつ病などの精神疾患を患っている場合は、強い苦痛と耐えがたいストレスを感じてしまうことが少なくありません。

そのような場合に、夫婦が互いに心身を休めるために、一旦別居することも選択肢の一つです。うつ病は改善すると安定した時期がくるので、一旦別居した後に、症状が安定して、再び復縁したというケースも少なくありません。

一方で、様々な事情で別居できない場合や、うつ病が長期化して、別居しても症状が改善しない場合などには、離婚を望む気持ちが強くなるでしょう。

うつ病を患う本人も症状が重度になるにつれて、配偶者との生活を継続できる自信がなくなっていきます。

また、うつ病が原因で配偶者に心配や迷惑をかけていると感じ、うつ病を患っている側が、自ら別居や離婚を切り出すこともあります。

そのような状況下化で無理に婚姻生活を続けるとお互いを苦しめることになります。夫婦がお互いの精神的な安定を維持するためにも、別居や離婚を考えることはあるでしょう。

ただし、ここで留意すべき点として、うつ病の配偶者が離婚や別居を求めてきた場合、うつ病によって気分が落ち込み判断能力が低下している可能性もあります。この場合は離婚や別居が本人の真意とはいえない可能性があり、うつ病の症状が回復していくと、「やっぱり離婚したくない」と気持ちが変わるケースがあります。

うつ病の配偶者が別居や離婚を求めてくる場合は、主治医に相談するなどして、相手の状況を見極めることが重要です。

離婚や別居した方がいいケース②:夫や妻のうつ病によって子供に影響が生じている場合

配偶者がうつ病になった家庭の中には、子供がうつ病の親を世話するケースがあります。

家族で一緒にうつ病に向き合うことは大切ですが、子供は子供なりに親がうつ病で大変な状況であることを察して自分の気持ちを押し殺したり、親が自分のせいでうつ病になったのではないかと自分を責めてしまうことがあります。

さらに、子供が一人で悩みや不安を抱えていても、親はうつ病のケアに忙しく、子供の心情に気付かず寄り添ってあげることができないこともあります。

このように、配偶者がうつ病で子供に影響が出てしまう場合は、子供のためにもうつ病の配偶者と別居や離婚をすることも考えられます。

しかし、子供が別居や離婚を望んでいない場合や、別居や離婚をすることで転居や転校を強いられ、子供の生活状況が大きく変わる場合には、別居や離婚について慎重に考えましょう。子供の年齢が高ければ、子供と話し合って、別居や離婚について子供の気持ちを聞き取ることも大事でしょう。

配偶者がうつ病の場合、実際に離婚するかどうかは、主治医など第三者に相談しながら、しっかりと話し合って決めることをおすすめします。

うつ病を理由に離婚することはできるか?離婚できる条件とは

夫や妻がうつ病になった場合に、うつ病の治療をサポートしながら婚姻生活を続けている夫婦はたくさんいます。

しかし、配偶者のうつ病の症状が重度化していたり、治療が長期化して改善する目途が立たないようなケースでは、支えている側の配偶者がうつ病によって、精神的に追い詰められてしまうことも少なくありません。

そのような場合に、うつ病を原因として離婚をすることはできるのでしょうか?

離婚できる条件

夫婦双方が納得している場合はうつ病を原因に離婚することは可能です。

うつ病を原因に離婚する場合の方法はいくつかあります。

①協議離婚の場合

離婚する方法として最も多いものは協議離婚です。

うつ病が理由で離婚したい場合に、まずは夫婦でうつ病や離婚の問題についてきちんと話し合うことになります。

協議離婚であれば、夫婦双方が離婚することに合意していれば、うつ病が原因の場合でも離婚することは可能です。このとき、夫婦に子供がいる場合は、離婚のほかに、親権者や養育費についても話し合いましょう。

もし、うつ病の配偶者が親権を求める場合には、うつ病の症状を踏まえて、うつ病があっても本当に育児をすることができるのか、うつ病によって子供に影響が出ないかなど、慎重に検討する必要があります。

夫婦の話し合いがまとまらない場合は、共通の知人や家族などの第三者に同席してもらう方法もあります。

しかし、離婚や親権について、夫婦の双方が納得しない場合には、協議による離婚は難しいといえます。

②弁護士に依頼して、離婚する場合

夫婦で話し合うほかに、弁護士事務所に相談して、弁護士の仲介で離婚に向けた交渉を行うことが考えられます。

弁護士事務所に依頼すると、弁護士が代わりにうつ病の配偶者に連絡を取り、別居や離婚について交渉を行います。

同時に、親権、養育費、慰謝料などの問題についても、弁護士が交渉を行ってくれます。弁護士が仲介して、うつ病の配偶者が離婚に応じる場合には、協議離婚と同様に、うつ病を理由に離婚することができます。

近年はうつ病を理由に離婚するケースが増加しているため、弁護士の中にはうつ病の知識を有している人が増えています。

弁護士もうつ病の症状を理解しながら、離婚や親権、慰謝料などの問題に関して相手を説得してくれますので、安心して交渉を任せることができます。

しかし、弁護士による交渉を経てもなお、離婚に向けた話し合いがまとまらない場合には、裁判所の調停手続又は訴訟手続を利用することになります。

調停手続を利用する場合は、双方に離婚の意思があり、親権や養育費などの離婚の条件が合意すれば、うつ病を理由に離婚することができる。

協議離婚や弁護士による示談交渉がまとまらない場合は、裁判所の調停手続を申し立てます。

配偶者のうつ病が原因で離婚したい場合、訴訟でなく、まずは「夫婦関係調整調停」を申し立てる必要があります。

調停では、離婚のほか、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料などについて話し合います。調停で離婚する場合は、夫婦の双方に離婚する意思があり、子供がいる場合は親権や養育費、面会交流についての条件が合意すれば、離婚することができます。

ただ、夫婦の一方が離婚に反対していたり、親権や養育費などで主張が対立する場合は、話がまとまるまで調停を継続することになります。

離婚や親権、慰謝料などの問題について有利な主張を行うためには、配偶者のうつ病の状況を正しく裁判所に伝えて、必要な証拠を提出する必要があります。

一人で不安な場合には、専門家である弁護士に手続きを依頼しましょう。

なお、調停では、裁判官1人と調停委員2人が夫婦の話し合いを仲裁します。

調停委員の中には、心理カウンセラーや臨床心理士の資格を持っている人もいるので、配偶者のうつ病の症状についても理解が早いでしょう。

また、家庭裁判所の調査官といって、心理や医療臨床の知識を持つ専門家が同席する場合もあるので、安心して、手続きに臨んでください。

一方で、調停を続けても離婚や親権などの条件について折り合いがつかない場合は、調停は不成立となり、他に離婚する方法を考える必要があります。

離婚訴訟の場合は、離婚事由を満たすことができれば、うつ病を原因として離婚することができます。

調停手続が不成立になり、それでも離婚をしたいと考える場合は、当事者のどちらか一方が、裁判所に対して訴訟を提起します。

これがいわゆる裁判といわれるものです。

裁判で離婚するためには、法的に認められる離婚事由が必要となります。

民法上、離婚事由として以下の5つが明記されています。

 

  1. 配偶者に不貞行為があったとき
  2. 配偶者から悪意の遺棄をされたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

うつ病の配偶者と離婚したい場合は、4つ目の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと」に該当するか否かが鍵となります。

配偶者がうつ病を患っている場合に、必ずしも離婚できるとは限りません。うつ病が原因で離婚する場合には、うつ病が「強度の精神病」であり、「回復の見込みがない」状態であると判断される必要があります。

配偶者のうつ病が強度の精神病であり、回復の見込みがないと判断されるときに離婚が認められる
強度の精神病について、精神病はいくつもの種類があり、症状の程度も様々です。

強度の精神病の一例としては、統合失調症、認知症、双極性障害などがあり、双極性障害にはうつ病も含まれます。

一方、アルコール中毒や薬物依存はこれに該当しないとされています。

うつ病は、強度の精神病として認められるケースも多いですが、うつ病は適切な治療を受ければ治る可能性のある病です。では、どのような場合で「回復の見込みがない」と判断されるのでしょうか。

裁判では、うつ病が回復の見込みがないと立証するために、その証拠が必要になります。

最も有効な証拠としては、精神科医が鑑定した診断書です。診断書には、診断名のほかに、治療期間などを記載することが多いですが、「現時点で回復の見込みがない」などと記載された診断書があれば、それが証拠になります。また、これまでの治療経過がわかる資料などあれば補充証拠となるでしょう。

また、今まで配偶者のうつ病の治療をサポートしてきたが、それでも症状が回復していないことを主張することで、より回復の見込みがないことを伝えることができます。

病院への受診歴がわかる明細書やレシート、看護を行ったことのわかる日記など、うつ病を抱える配偶者のために献身的にサポートしてきたことがわかるものもあるといいでしょう。

しかしながら、これまでの裁判例を見ると、配偶者がうつ病であっても離婚を許容しない事例が少なくありません。これは配偶者がうつ病になったからといって見捨てるわけにはいかないためです。裁判所は、離婚後もうつ病を患った元妻や元夫の生活が保障される場合に離婚を認めています。

例えば、実家が面倒を見る、施設に入所できることが決まっているなど、離婚後の生活がある程度定まっていれば、離婚は認められやすいといえます。

また、うつ病に加えて、配偶者から暴力を振るわれたり、精神的な暴力(モラハラ)を受けたりしている場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。

配偶者からの身体的な暴力やモラハラはDVになります。DVを受けたことを立証することができれば、離婚できる可能性が高まるでしょう。

また、うつ病を抱えた妻や夫が配偶者ではない人と不倫をした場合も「配偶者に不貞行為があったとき」に該当し、離婚や慰謝料請求が認められるでしょう。

うつ病が原因で離婚する場合に親権や養育費、財産分与に影響はあるか?

子供がいる夫婦が離婚するときには、離婚のほかに親権及び養育費を定める必要があります。

では、配偶者がうつ病を患っている場合に、親権者や養育費を決めることに何か影響があるのでしょうか?

親権者を指定するときにうつ病が影響することがある。

離婚の話し合いの中で、うつ病の配偶者が子供の親権を主張してきたらどうすればいいのでしょうか?

特にうつ病が理由で離婚する場合は、たとえうつ病の配偶者が長年子供の世話を行っているとしても親権を任せるのは不安に思います。

そもそも、親権者とは、子供を養育する責任を第一に負う人のことをいいます。

親権者は子供と一緒に生活し、子供に必要な教育を施し、学校や病院の手続きなどを子供の保護者として代わりに契約したりします。

法律上、夫婦の婚姻中は共同親権といって、夫婦がともに子供の親権者となりますが、夫婦が離婚する場合は、夫婦のどちらか一方を親権者に指定する必要があります。親権者を決めるためには、様々なことを考える必要がありますが、配偶者がうつ病である場合は特に慎重な検討が必要です。

うつ病の配偶者が親権を主張する場合に、検討すべきポイント

以下、うつ病の配偶者が親権を主張する場合に、検討すべきポイントをまとめていますので、参考にしてみてください。

 

  • うつ病で家事に支障はないか(家事が同時並行できない、集中力が低下してミスが多い、うつ病の症状が重く、疲労や寝たきりで家事に手が回らないなど)
  • うつ病による育児への影響(無気力になり子供との会話が続かない・遊び相手になれない、子供の宿題が見れない、体調不良から学校や保育園の送迎ができない、学校行事に参加することができないなど)
  • うつ病による経済状況への影響(うつ病で休職や退職になり、収入が不安定になる可能性がある、医療費や通院費によって家計が圧迫される可能性がある、実家や公的な経済的援助が見込めないなど)
  • 今後のうつ病の回復見込み(今後通院や服薬をしてもうつ病の症状が改善する見込みが乏しく、育児や仕事が安定しないなど)

うつ病の配偶者が親権者となる場合は、親権者として、うつ病の状態で子供の世話をすることが現実的に可能であるのかを考えなければいけません。

うつ病といっても症状には軽重あり、育児や仕事には支障がでない軽度のものや、日中は動くことができずに家事もできないほど重度のものもあります。

離婚する時点で配偶者のうつ病が重度であり、育児や家事もままらない状態であれば、親権はもう一方の配偶者が持ち、うつ病の配偶者にはまずはうつ病の治療に専念してもらうことが良いでしょう。

夫や妻がうつ病であると養育費がもらえなかったり、減額されることがある。

夫婦が離婚した場合、親権者となった側は、相手から養育費を受け取ることができます。

養育費とは、子供が成人するまでに必要な生活費のことであり、養育費は親としての義務であるため、離婚した元配偶者がうつ病であったとしても、基本的には養育費を支払う必要があります。

一方で、養育費の金額については、夫婦それぞれの収入や経済状況を踏まえて計算することになります。収入が多いほうが養育費を支払う額は高くなるのは当然です。

一方で、収入が少ない又は無職で無収入の場合はどうなるのでしょうか。

通常は、無職で収入がない場合でも、働く能力があると判断された場合には、一般的な平均賃金をもとに養育費が算定されます。

しかし、うつ病が原因で退職をしたり、就職活動ができない場合には、働ける能力がないものと判断され、養育費を請求することができないケースがあります。また、うつ病が原因で時短勤務になったり、一時的に休職している場合には、養育費が減額されることもあります。

夫や妻がうつ病でも基本的に財産分与には影響しません。

財産分与とは、夫婦が婚姻してから共同して作り上げた財産を離婚に伴い分与することです。

一般的な分与方法としては、婚姻後の財産をすべて2分の1ずつ分与するやり方です。

配偶者がうつ病であっても、基本的に影響はなく、共同財産はすべて半分ずつ受け取ることになります。

一方で、財産分与も話し合いによって双方が納得すれば、分与の割合を変えることができます。

たとえば、離婚後にうつ病のため入院する必要があるなど、うつ病の医療費にお金がかかる場合には、その点を配慮して、多めに分与するケースもあります。

財産分与の方法については、個々の事情によっても変わってきますので、より詳細を知りたい場合には弁護士に相談するとよいでしょう。

うつ病を理由に離婚した場合に慰謝料を請求することはできるか

うつ病を理由として離婚する場合、うつ病を抱えている夫や妻に対して、慰謝料を請求することができるのか気になりますよね。

結論としては、うつ病を抱えている相手に対して、慰謝料が認められるケースは少ないでしょう。

うつ病を患った夫や妻と一緒に暮らすには、様々な苦労があると思います。

しかし、うつ病を患った本人も、自らが望んでうつ病になったわけではありません。

そのため、うつ病によって離婚に至ったとしても、うつ病を抱えている本人にその責任を負わせるわけにはいかないのです。そのような考えから、うつ病を理由に慰謝料を請求しても認められないことがほとんどです。

一方で、うつ病を抱えている夫や妻が、配偶者に対して暴力を振るったり、不倫をした場合には、暴力や不倫を理由に慰謝料を請求することができます。

ただし、相手が暴力や不倫を認めない場合は、慰謝料の支払いを拒否されることがあるでしょう。慰謝料をきちんと支払ってもらうためには、暴力や不倫の証拠があると有利です。夫婦で慰謝料の話し合いがまとまらない場合でも証拠があれば、裁判などで有利に働きます。

なお、慰謝料の相場として、暴力が原因で離婚に至った場合の慰謝料は、おおよそ50万円から300万円、不倫が原因で離婚する場合の慰謝料は、200万円から300万円ほどとなっています。

ただ、うつ病を患った夫や妻は、仕事も安定せずに収入が満足に得られないケースが多いので、慰謝料請求をしても支払ってもらえるかはわかりません。慰謝料請求が認められるのは、DVや不倫があり、かつ相手に経済力がある場合でしょう。

どのようなケースで慰謝料を請求することができるのか、また慰謝料を請求するための証拠の集め方が具体的な交渉方法など、自分で準備するには難しそうだと感じられた場合は、ぜひ一度弁護士事務所に相談してみてください。

配偶者がうつ病かもしれないと思ったら?まずは病院に相談を

配偶者の状態に異変を感じたら、まずは病院に受診しましょう。

はじめは何となく気分が落ち込んでおり、不眠や頭痛などの体調不良から始まることも少なくありません。内科に行って薬を飲んでも治らなかったり、精神的に不安定な状況が続くような場合には、精神科や心療内科に相談してみてください。

精神科や心療内科に行くのは抵抗がある方も少なくないでしょう。

しかし、近年は10人に1人がうつ病であると言われており、うつ病は誰がいつなってもおかしくない病気です。うつ病は早期ケアが肝心ですし、適切なケアを受けることで不安やつらさを和らげることができます。

つらい生活が続くと、別居や離婚を考えてしまいがちですが、夫婦が力を合わせて、うつ病と向き合うことで、うつ病が回復し、安定した生活を取り戻せることも多いものです。互いに無理はせず、ゆっくりとでよいので、医師や周囲に相談しながら、治療を続けていきましょう。

夫や妻がうつ病の場合は離婚したほうがいい?Q&A

夫や妻がうつ病の場合に離婚したほうがいいのはどのようなケースでしょうか。

夫婦がともに離婚を望んでいる場合や夫や妻のうつ病によって子供に影響が生じている場合は、離婚を考えてみてもいいでしょう。

しかし、すぐに離婚の結論を出すのではなく、うつ病の症状を見ながら主治医の意見なども参考にして、きちんと話し合うことが大切です。

夫や妻がうつ病の場合に離婚することはできるのでしょうか。

協議離婚や調停離婚の場合は、夫婦が互いに離婚の意思を有し、離婚の条件に合意すれば離婚することができます。

一方で、離婚裁判の場合は、夫や妻のうつ病が「強度の精神病であり、回復の見込みがない」ことを証明することができれば、離婚が認められます。

夫や妻のうつ病を理由に離婚した場合、慰謝料を請求することはできますか。

うつ病を理由に離婚した場合、うつ病を患っている夫や妻に対して慰謝料を請求することは難しいでしょう。

一方、うつ病のほかに、身体的または精神的な暴力を受けた、不倫されたなどの事情がある場合には、それらを理由として慰謝料を請求することができます。この場合、慰謝料の相場はおおよそ50万円から300万円ほどになるでしょう。

最後に

夫や妻がうつ病を患っていると、病気である本人はもちろん、生活を共にする家族も一緒に病院へ連れて行ったり、細かなところで相手を気遣う生活を強いられたりと、たくさんのつらい思いを抱えてしまいます。

うつ病は本来、半年から1年ほどの治療で症状に改善が見られるものですが、全体の30%ほどは症状が長期化する可能性があると言われています。

現在の医療では、うつ病の原因やメカニズムについてはっきりとは解明されていないため、即効薬はありません。症状が回復したかと思えば、また悪化したりと、うつ病を抱える本人もそれに付き添う家族も、うつ病に振り回されてしまい、別居や離婚を考えることもあるでしょう。

お互いが無理をせずに、日々の生活の中で休息を取ったり、一度別居してみたりしながら、それでもどうしても離婚したいときには、主治医や弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士事務所では、別居のお手伝いから、離婚に伴う親権や慰謝料などの問題についてまとめて相談にのります。

特に親権や養育費、慰謝料については、相手との話し合いがまとまらない場合、裁判所の手続を利用することになります。

裁判所では、法律に基づいた手続きが必要であり、法律の専門家である弁護士があなたの味方をしてくれることはとても心強いものです。夫や妻がうつ病で離婚に悩まれている場合には、まずは一度、弁護士事務所に相談してみてください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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