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夫源病とは|妻の体調不良や病気の原因は夫がストレスになるから?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫源病(ふげんびょう)という言葉をご存知でしょうか?

この言葉は、夫からの精神的なストレスが原因で、妻が体調不良や様々な病気に悩まされている状態を指します。

近年、日本では働く女性が増え、家庭内での役割分担や、夫婦間のコミュニケーションの問題が複雑化する中で、この「夫源病」について少しずつ注目されるようになっています。

では、どういう夫の言動や性格が妻にとってストレスの原因となり、夫源病を引き起こすことにつながるのでしょうか。

この記事では、夫源病の具体的な症状や、夫源病を引き起こす原因、そしてその対処法について詳しく解説していきます。また、本記事には夫源病を引き起こす夫の特徴のチェックシートと、夫源病になりやすい妻の特徴のチェックシートを掲載しております。心身が不調だと感じた時、夫源病ではないかと考えるきっかけとして、チェックしてみていただければと思います。

本記事がご参考になりましたら幸いです。

目次

夫源病(ふげんびょう)とはどういう意味?

それでは夫源病について見ていきましょう。

夫源病(ふげんびょう)とは、「”夫”が根”源”の”病”気」の名の通り、夫の言動が原因で妻が強いストレスを感じた結果、体調不良などを引き起こすことになる疾病概念のことです。疾病概念なので、医学的な病名ではありません。

夫源病と類似の概念に、主人在宅ストレス症候群(夫が在宅勤務や自宅待機になったことによって妻がストレスを受けること)があります。また、夫の言動ではなく、妻の言動が原因で夫が体調不良などになる疾病概念を「妻源病」といいます。

原因は夫から受けるストレス

 

原因は夫から受けるストレス

 

夫源病を引き起こす原因とされているのは、妻が夫の言動などから受けるストレスです。

もちろん、夫婦といえど元々は価値観の違う他人ですから、性格や物の考え方について合う・合わないがあるでしょう。そうした夫婦間のズレの多くは、日常生活でコミュニケーションを取る中で解決していきますが、時にはストレスとして蓄積され、心身に不調を及ぼすことにもつながります。

このような、妻を夫源病にするほどのストレスは、夫のどういった言動から生じるのか、主なものを簡単にご紹介します。

夫源病を引き起こす夫の特徴はモラハラと似ています

夫源病を引き起こす夫には、モラハラ夫の特徴が見られます。モラハラ夫の言葉や行動・態度には、一般的に「罪悪感を持たずに他人に責任を押し付け、強い者には弱く弱い者には強い態度をとる」といった特徴が見られます。

そのため、夫源病を引き起こす夫の言動に関しても、そのような特徴が見られるのです。具体的には、夫源病の原因となる夫には次のような言動があります。

「俺は仕事してるんだから」

夫に家事や育児のフォローを頼むと、「俺は仕事してるんだから、そんなことくらい自分でやれよ」と言われ、手伝ってもらえないという状況が日常化しています。そのため、妻は家庭内のことを一人で抱え込むことになり、心身の疲労感や夫への失望感・不満がストレスとなってしまいます。

妻と他人を比較する

妻の努力を評価せず、常に不満を表に出しながら、「他の人はできてるのに、なんで君はできないの?」などと、ことあるごとに他人と比較してきます。

妻が休んだり遊んだりすることに否定的

「今日一日何してたの?」と詰問し、妻が家事・育児以外に時間を割いているとしつこく責めます。妻は自分の時間を持つことに対して罪悪感を覚え、夫に詰問されないように一日を過ごすようになってしまいます。

自分の苦労を強調し、妻を軽視する

夫が「俺の仕事が一番大変なんだから」と自分の苦労を強調する一方で、妻の努力を軽視します。

経済的に支配しようとする

妻が専業主婦である場合は特に、夫は「誰が稼いでると思ってるんだ」などと言い、生活費を盾にして妻の行動を支配しようとしてきます。そのため、妻が家事や育児によって夫をフォローしてくれている、という考えがありません。また、収入のない妻は離婚できないからと、より妻に対して支配的になります。

妻のミスを執拗に責める

夫は妻の過去のミスを何度も何度も指摘し、「また同じことをするのか」と非難します。これにより、妻は過去の失敗から逃れることができず、自分に自信が持てなくなります。また、夫のこのような態度は、妻が新しいことに挑戦するのをためらわせることにもなります。

妻の性格を否定・非難する

夫は妻の性格や行動を否定し、「いつもそんなにネガティブなのはお前だけだ」などと言って、妻を責め立てます。これにより、妻は自分の性格にコンプレックスを抱き、夫の前で自分を偽り、夫婦関係においても「夫の望む通りの妻であるように」と無理をするようになります。

妻の趣味や交友関係を制限する

夫は妻が自分の時間を楽しむことを許さず、「家族のためにもっと時間を使うべきだ」と言って、妻の趣味や交友関係に口出しします。その結果、妻は自分の時間を持つことに罪悪感を感じ、夫の許可なく行動することができなくなります。

妻に一方的に責任を押し付ける

夫は家庭内で何か問題が起きると、すぐに「これはお前のせいだ」と言って、一方的に妻に責任を押し付けます。このような態度により、妻は自分がすべての問題の原因であると感じ、絶えずプレッシャーと罪悪感に苛まれるようになります。さらに、夫が自分の責任を認めないことで、妻は夫との間で公平な関係を築くことができず、不満と不信感が募ることになります。

夫源病になりやすい妻の特徴

夫源病を引き起こす夫には、モラハラ夫のような特徴が見られますが、一方で妻についても、夫源病になりやすい妻の特徴というものがあると考えられています。

夫源病になりやすい妻の特徴としては、妻本人の性格や気質と、妻が置かれている環境があります。

自己肯定感が低い

自己肯定感が低い妻は、自分の価値や能力を疑いやすく、夫の批判や非難を受け入れやすい傾向があります。これにより、夫の否定的な言動に過剰に反応し、自己否定や自信喪失を引き起こしやすくなります。自分の価値を認めることができず、常に自己評価が低い状態に陥りやすいです。

コミュニケーション能力が低い

コミュニケーション能力が低い妻は、夫との意見の相違や誤解を解消することが難しく、それがストレスとなって夫源病を引き起こす可能性があります。意見をうまく伝えられず、夫との間で感情的なすれ違いが生じやすくなります。

適応能力が低い

環境の変化やストレスに対して適応能力が低い妻は、夫との関係においてもストレスを感じやすく、夫源病を引き起こしやすいと考えられます。新しい状況に対応するのが苦手で、夫の要求や期待に応えることが難しいです。

依存的な性格

依存的な性格の妻は、夫に対して過度に依存し、夫の言動に左右されやすくなります。これにより、夫のネガティブな言動が直接的なストレスとなり、夫源病を引き起こす可能性があります。自分の意思や判断よりも、夫の意向を優先してしまう傾向があります。

夫からのサポートが不足している

夫からのサポートを十分に受けられていない妻は、孤立感や不安感が高まり、夫源病を引き起こすリスクが高まります。感情的なつながりや共感を求めても、夫からの理解や支援が得られない場合、孤独感が増大します。

自己主張が苦手

自己主張が苦手な妻は、夫との間で自分の意見を十分に伝えられず、不満が蓄積しやすくなります。これにより、夫源病を引き起こす可能性があります。自分のニーズや感情を抑え込むことで、内面的なストレスが高まります。

家庭内での役割に不満を抱いている

家庭内での役割に不満を抱いている妻は、その不満がストレスとなり、夫源病を引き起こすリスクが高まります。自分の役割に価値を見出せず、家庭生活における自分の位置づけに疑問を感じ、夫への不満となり夫源病のリスクが高まることがあります。

社会的支援が不足している

社会的支援を十分に受けられていない妻は、孤立感やストレスが増加し、夫源病を引き起こす可能性があります。友人や家族からの理解や助けが得られないことで、孤独感が強まります。

柔軟性の欠如

固定化された考え方や行動パターンに囚われがちな性格だと、夫の行動や意見に対して柔軟に対応することが難しく、夫の考え方や行動との齟齬によるストレスが、夫源病を引き起こす可能性があります。

症状チェックシート

さて、夫源病の原因となる夫の言動の特徴と、夫源病になりやすい妻の特徴や生活環境についてご説明いたしました。

次に、夫源病の妻にはどういった症状があらわれるのかについて、チェックシートでチェックしていきましょう。

なお、下記のチェックシートの症状があるからといって、必ずしも夫源病であるとは限りません。夫以外が原因のストレスで心身に異変をきたし、下記の症状が出ている場合もあります。あくまで参考程度にご自身の症状をチェックしていただき、不安があればカウンセラーや医師などの適切な専門家にご相談ください。

頭痛、うつ、めまい、動悸・・・症状から夫源病の可能性をチェック

□ 頭痛が頻繁に起こる

□ うつ症状(気分の落ち込み、興味喪失、やる気の低下)が見られる

□ めまいやふらつきを感じることがある

□ 動悸や不整脈が起こることがある

□ 睡眠障害(不眠や過眠)が見られる

□ 食欲不振や過食が見られる

□ 不安感やイライラが強い

□ 集中力の低下や物忘れが増えた

□ 疲労感や倦怠感が強い

□ 体のこわばりや筋肉痛がある

□ 性欲の減退が見られる

□ 夫と一緒にいると症状が悪化する

□ 社交活動への興味や意欲が低下する

□ 胃腸の不調(胃痛、胃もたれ、下痢、便秘など)が見られる

□ 自己価値感の低下や自己嫌悪を感じることがある

□ 涙もろくなったり、感情の起伏が激しくなる

□ 家事や育児に対するモチベーションが低下する

□ 夫とのコミュニケーションを避けたくなる

□ 無力感や絶望感を抱くことがある

□ 外見に対する関心が薄れる

□ 夜間の汗をかきやすくなる

□ 症状が長期間にわたって続く

□夫が不在の時には体調が良好であることが多い

【対処方法】夫のことがストレスで病気にならないための対策

夫源病の自覚がある場合でも、夫との離婚までは考えていない場合もあるでしょう。まだ症状は軽いし、できるなら何か対策して、夫とやり直したい・・・と考えている妻もいるかもしれません。

夫源病の妻が夫と婚姻生活を続けるために取り得る対処方法はあるのでしょうか。

対策1.ストレス解消できる趣味などをする

日々の生活の中で溜まったストレスを解消することは、心身の健康を維持するために非常に重要です。運動、読書、音楽鑑賞、絵画、手芸など、自分が興味を持てる趣味を見つけて、定期的に時間を確保して取り組みましょう。

趣味に没頭することで、夫の存在から意識を離し、リフレッシュ効果を得られます。

対策2.夫と話し合う

夫源病の原因となる夫の言動を改善するためには、夫婦間でしっかりと話し合うことが重要です。具体的な言動がどのような影響を与えているのかを、冷静かつ丁寧に伝えましょう。

夫が問題意識を持ち、改善しようと努力してくれるかどうかが、今後の関係性を左右する重要なポイントとなるでしょう。

対策3.夫と別居する

夫との距離を置くことで、ストレスを軽減し、心身を回復させることができます。一時的に別居することで、互いの存在の大切さに気づき、関係改善につながる場合もあります。

また、別居は離婚を意味するものではありませんが、離婚も選択肢の一つとして視野に入れておくことも大切です。

別居する際には、後々法的問題とならないよう、あらかじめ弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

これらの対処方法を試してみても、夫源病が改善されない場合は、専門医に相談することをおすすめします。医師によるカウンセリングや治療を受けることで、症状の改善や心のケアを受けることができます。

夫源病は決して妻だけの問題ではありません。夫婦で協力し、問題解決に取り組むことが大切です。

離婚を考えた時の注意点

離婚するための方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがありますが、協議離婚で夫源病を理由に離婚できなかった場合、家庭裁判所での調停か裁判で離婚請求をすることになります。

調停や裁判での離婚となった場合に、重要なのは「夫源病が原因で離婚したい」ことを主張することです。具体的には、夫のモラハラのような言動によって、妻の心身の健康が害され、婚姻関係が破綻したか、あるいは婚姻を継続することがもはや不可能だと認められるのであれば、夫源病を理由として離婚できる可能性があります。

そのためには、妻が夫源病になるほどの、夫からの暴言などを記録した証拠がたいへん重要になってきます。

調停や裁判では、夫源病による心身の被害を証明する必要があります。以下の証拠を可能な限り収集しましょう。

  • 夫の言動やその影響を記録した日記やメモ
  • うつ病などの医師による診断書
  • カウンセリングの受診記録や相談履歴
  • 夫の暴言や行動を録音・録画したデータなど
  • 夫の言動を目撃した人の証言
  • 暴言や罵倒などがあったことを示す夫とのSNSのやり取り

また、夫源病の原因となっているストレス源である夫と離婚の交渉をするのは、さらにストレスとなります。二人きりで離婚の話し合いをすると、余計に威圧的な言動を取られてストレスが増大し、症状が悪化してしまう恐れもあります。

ですので、夫源病を理由に離婚を検討した時には、事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

Q&A

Q1.夫源病とはどのような病気ですか?

夫源病とは、夫との関係に起因するストレスが原因で、妻が心身の不調を感じる状態を指します。

Q2.夫源病の症状とは?

夫源病の症状は多岐にわたります。心理的な症状としては、うつ症状、不安感、イライラ、不眠、身体的な症状としては、頭痛、めまい、動悸、全身の倦怠感、疲労感が見られることがあります。また、社交活動への興味や意欲の低下、家事や育児に対するモチベーションの低下、夫とのコミュニケーションを避ける傾向が現れることもあります。これらの症状は個人差があり、一部の症状だけでなく、複数の症状が同時に現れることもあります。

Q3.夫源病にならないための対策とは?

夫源病にならないための対策として、まずはストレスを解消するために趣味に没頭することが効果的です。運動や読書、音楽鑑賞など、心をリフレッシュさせる活動を見つけ、定期的に楽しむことが重要です。また、夫と冷静かつ丁寧に話し合い、夫婦関係の改善を図ることが望ましいです。さらに、状況に応じて別居し、物理的に距離を置いてストレスを軽減させるのも一つの方法として考えられます。

夫婦間のストレスについてのお悩みは弁護士にご相談ください

本記事では、夫源病とは何か、という基本的な事柄について弁護士が解説させていただきました。

夫源病は、夫の言動によるストレスが原因で、妻が頭痛や動悸などの体調不良になったり、より深刻になるとうつ病の症状を発症するものです。

夫源病は家庭環境や夫・妻の本来の性格なども影響しています。また、夫が意図して妻を傷つけようとしていなくても、その言葉や行動や態度で妻を苦しめてしまっている場合も少なくありません。

このような夫婦関係のストレスでのお悩みがありましたら、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。離婚や別居などを検討した際に、問題なくスムーズに離婚手続きや別居を進めていけるよう、弁護士が適切にフォローいたします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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