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離婚調停とは?手続きの流れや申立てのやり方などを分かりやすく解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

協議離婚の話し合いがスムーズに進まなかったとき、次に取り得る手段として考えられるのが離婚調停です。

離婚調停は、裁判所で第三者を介して行われる話し合いによる離婚手続きです。

離婚調停の申立て手続きの方法や進め方、離婚までの全体的な流れや、申し立てをするために必要な書類などについて、具体的に説明させていただきます。

また、なるべく有利な条件で離婚するために、離婚調停に向けてどのような準備が必要かなどについても解説いたします。

本記事が、離婚調停手続きを検討されている方にとって、ご参考となりましたら幸いです。

目次

離婚調停とは?分かりやすく解説

離婚調停とは夫婦関係調整調停のこと

離婚調停とは、離婚に向けて夫婦の合意を形成することを目的として行われる家庭裁判所の手続のことをいいます。

離婚調停と一般的には言われていますが、事件名は「夫婦関係調整調停」と言います。

夫婦関係調整調停は、離婚する・しない、離婚する場合は財産分与、慰謝料といった離婚条件などについて、家庭裁判所で話し合う手続きです。そのため、夫婦関係調整調停では、「離婚する」ことを話し合うだけでなく、「夫婦関係を修復して離婚を回避したい」「夫婦の別居状態を解消してやり直したい」など、夫婦関係を修復するための話し合いも行われます。

夫婦関係調整調停の中でも、特に離婚に向けて話し合う調停が「離婚調停」と呼ばれ、夫婦関係の修復をする夫婦関係調整調停が「円満調停」と呼ばれることが一般的です。

(裁判所)夫婦関係調整(円満)調停

離婚調停の関係者

離婚調停は家庭裁判所で行われる離婚手続きですから、当然、当事者である夫婦以外にも関わることになる者がいます。

当事者である夫婦が離婚調停の中で最も関わることが多いのが、「調停委員」でしょう。

調停委員とは、「弁護士となる資格を有する者、家事に関する紛争の解決に有益な専門的知識経験を有する者、又は社会生活のうえで豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い原則として年齢40年以上70年未満の者の中から、最高裁判所が任命した者」をいいます。

離婚調停での調停委員は男女1人ずつであることが通常です。

調停員は、当事者にジェンダーに対して偏見を有しているような印象を与えないように注意を払いながら職務を行っています。例えば、調停委員が「男なんだから仕事をするべき」であったり「女は家庭にいるべき」というバイアスのかかった価値観を押し付けないように心がけています。あくまでも当事者の価値観を尊重しながら、調停を進行させます。

離婚調停の中で、子どもの親権や面会交流について争いがあるときなどには、調停委員だけでなく、「家庭裁判所調査官」も関与することになります。

夫婦や親子等の身分関係に関する紛争であることから、当事者の意思に全て委ねるということが必ずしも適切ではないと考えられていることから、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の専門知識を有する家庭裁判所調査官が配置されているのです(裁判所法61条の2、家事法58条、59条など)。

家庭裁判所調査官は、調停期日に立ち会って、家庭の事情を調査し、当事者の自主的解決を手助けするなど。調整的な役割を果たすなどしています。

裁判官も、家庭裁判所調査官の意見を尊重しながら調停を進行していくので、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

家庭裁判所調査官の詳しい職務の内容は、こちらをご覧ください。

また、調停の関与者には裁判所書記官もいます。

家事事件を担当している書記官は、家事事件の手続案内や事件に関する記録、その他書類の作成と保管、記録の謄本等や各種証明書の交付と送達などを行っています。

裁判所書記官の詳しい職務内容はこちらをご覧ください。

このように、調停委員などの第三者が介在することによって、夫婦の直接的な対立がおさえられ、客観的な視点からスムーズに離婚の話し合いを進めることが期待できるのが、離婚調停という手続きなのです。

離婚裁判や協議離婚との違いは?

離婚するための方法には、離婚調停以外にも離婚裁判や離婚協議といった方法があります。また、協議離婚は日本で最も一般的な離婚するための方法です。

この2つの離婚方法と、離婚調停にはどういった違いがあるのでしょうか。

離婚裁判との違い

離婚調停と離婚裁判の最大の違いは、「話し合うことで当事者の双方が合意することで解決する」か、「裁判所によって一方的に判断がなされることで解決する」か、という点になります。

夫婦の一方が離婚に反対していても、裁判所が離婚することを認めたら、「夫と妻は離婚する」という判決が出てしまうのです。

離婚調停は家庭裁判所で行われる手続きですが、そもそも調停は裁判による紛争解決ではなく、ADR(裁判外紛争解決手段)の一種となります。そのため、離婚裁判のように「離婚しろ」と当事者の意思を無視して結論を出すことができません。

当事者である夫婦が離婚条件に納得しなくても判決によって離婚が成立する離婚裁判とは異なり、夫婦の双方が合意することで離婚が成立するのが離婚調停なのです。

協議離婚との違い

離婚調停も協議離婚も、「話し合い」による離婚手続きですが、離婚調停は家庭裁判所で第三者を介して話し合いを行う方法です。

一方、協議離婚は夫婦が直接話し合うことで離婚する手続きです。協議離婚は家庭裁判所を介さないため、申立費用はありません。また、基本的には場所を選ばずに協議することができます。

これに対して、離婚調停の場合には、平日の昼間に調停期日が行われるなど、話し合いの日時や場も制限されます。

協議離婚は、夫婦が任意のタイミング・場所で話し合うことができるため、離婚調停よりも柔軟性の高い離婚手段といえます。

離婚調停で話し合う内容

離婚調停においては、離婚するか・しないかといったことに加え、さまざまな離婚条件に関しても話し合われます。

一般的に離婚調停で話し合われる内容としては、次のようなものがあります。

  • 離婚するか、離婚しないかについて協議します。
  • 財産分与に関しては、夫婦が共有している家、車、貯金、株式などの財産や、住宅ローンや借金などの負債をどのように分割するかについて話し合います。
  • 夫や妻の不貞やDVといった離婚原因について、慰謝料が発生する場合、適切な金額はいくらか、慰謝料の支払い方法はどのようにするか、といった詳細な内容についても取り決めます。
  • 年金分割をするか、年金分割をする場合の割合はどうするか協議します。
  • 子どもの親権を夫と妻のどちらが持つかを検討します。
  • 非親権者は親権者に対し、養育費をいくら支払うか。支払い方法や、いつまで支払うか、といった具体的な内容についても話し合います。
  • 非親権者に対して、子どもと面会交流する場合の条件や頻度についても、なるべく明確な内容の取り決めとなるよう話し合います。

このように、単に離婚をするか、離婚しないかといったこと以外にも、離婚調停ではさまざまな離婚条件の内容について具体的に話し合いがされるのです。

離婚調停の手続きの流れ

 

離婚調停による離婚の流れ・進め方

 

それでは次に、離婚調停によって離婚する場合の流れや進め方について、簡単に解説させていただきます。

1.離婚調停を申し立てる

離婚調停の申立ての必要書類を作成・用意します。未成年の子どもの有無や、離婚と同時に申し立てるもの(財産分与や婚姻費用等)があるかによって、離婚調停の申立てに必要な書類は異なります。

離婚調停の申立てに必要な書類については、本記事で後述いたしますのでご一読ください。

家庭裁判所のホームページには、離婚調停を申し立てる人への説明や、離婚調停の書式、書式の記載例も掲載されていることが多いので、事前に確認して準備するようにしましょう。

申立てに必要な書類を揃えたら、自分用の控えとして必ずコピーをとっておくようにしてください。

離婚調停申立書の準備ができたら、管轄の家庭裁判所に申し立てを行います。

なお、静岡家庭裁判所本庁の家事事件の申立てに関するお問い合わせ窓口は、1階の家事事件受付係(訟廷事務室)です。

2.期日の調整

申立書を提出してから、通常は1~2週間ほどすると、申立人に対して家庭裁判所から初回期日についての連絡があります。ほとんどの場合、申立てから約1~2ヶ月以内に離婚調停の初回期日が開かれ、平日の午前もしくは午後に行われます。

基本的に、初回期日は相手方の予定を確認することなく指定されます。

どうしても都合のつかない曜日がある場合や、相手方の都合を知っている場合は、離婚調停申し立て時に提出する「進行に関する照会回答書」にその旨をあらかじめ記載しておきましょう。

3.離婚調停の期日

離婚調停の期日当日は、時間に余裕を持って指定の家庭裁判所へ向かいましょう。

家庭裁判所に着いたら、まず家事調停の出席者の受付窓口で受付を行います。通常、受付は書記官室で行われますが、裁判所の規模によって、家庭裁判所と地方裁判所、簡易裁判所が同じ建物である裁判所や、書記官室が1室だけの裁判所もあれば、さらに細かく係ごとに書記官室が分かれている場合もあります。調停期日通知書や案内状をよく確認しておきましょう。

受付を済ませたら、職員の指示に従い、申立人は申立人用の待合室で、相手方は相手方用の待合室で待機します。待合室は複数あり、他の家事調停事件の期日も開かれているため、裁判所の案内図等を確認し、間違いないように注意しましょう。裁判所としては、当事者同士が待合室などで鉢合わせないように細心の注意を払っていますから、裁判所の指示のあった待合室で待機するようにしましょう。

調停委員に呼ばれたら調停室に入室し、調停委員と話をします。弁護士に委任している場合は、このとき弁護士も調停室に同席することができます。また、代理人弁護士が出席すれば、本人が出席する必要はないとしている家庭裁判所も多いので、事前に代理人弁護士に確認しておくと良いでしょう。

申立人と相手方がそれぞれ調停委員との話し合いをし、進めていきます。一方が調停室にいる間、他方は待合室で待機しているため、直接相手と顔を合わせることはありません。離婚調停の期日の1回の話し合いは30分程度で、申立人と相手方がそれぞれ2回ずつ調停委員と話し合う、という進行が一般的です。

その期日で結論が出ない場合は、次回期日の日程を調整し、その日の期日は終了となります。なお、次回期日以降は、原則として裁判所から呼出状(期日通知書)等は届きません。

4.離婚調停の終了

離婚すること、離婚条件の内容について合意できた場合は、離婚調停が成立となり、「調停調書」が作成されます。

離婚調停が成立となる最後の期日では、裁判官の面前で当事者双方の最終意思や合意内容の確認を行うため、申立人と相手方が同時に調停室に入ることになります。その際、裁判所書記官が立ち合い、その内容を書面(調停調書)にする、という流れになっています。

なお、離婚調停が成立したからといって、法律上も離婚したことにはなりません。

離婚調停が成立したら、調停成立した日から10日以内に、離婚調停で指定された側が市区町村役場に対して、家庭裁判所で発行してもらえる調停調書の謄本と、離婚届を提出しなければ、戸籍上離婚したことにならないため、注意してください。

なお、離婚後の氏の変更や旧姓について気になる方は当法律事務所のこちらの記事をご覧ください。

離婚調停の申立てのやり方と必要書類

それでは、離婚調停の具体的な申し立て方法について見ていきましょう。

家庭裁判所の管轄の確認

まず、申立てを行う管轄などを確認します。

離婚調停を申し立てることができる申立人は、夫もしくは妻です。そして、離婚調停を申し立てる申立先は「管轄」の裁判所になります。

「管轄」とは、その事件をどの裁判所が担当するか、ということです。

離婚調停は家事調停事件なので、原則は相手方の住所地の家庭裁判所が管轄となりますが、当事者の双方が合意している場合は、相手の住所地以外の家庭裁判所を指定して管轄とすることができます(家事事件手続法第245条1項)。

(管轄等)
家事事件手続法第245条1項 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。

したがって、基本的には離婚調停の相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が離婚調停の申立先となります。

なお、管轄ではない家庭裁判所に申し立てられた場合、申立てを受けた家庭裁判所は、管轄のある家庭裁判所に事件を移送することとなります。ただし、ケースによっては移送せず、離婚調停の申立てがされた家庭裁判所がそのまま事件を処理することになります(自庁処理)。

必要書類(申立書・戸籍謄本・収入印紙・郵便切手など)や費用を準備する

管轄の家庭裁判所を確認したら、申立書や戸籍謄本といった必要書類を準備します。申立書の書式や記載例は、裁判所のホームページからダウンロードして入手することができます。必要書類について分からないことがあれば、管轄の家庭裁判所に確認しておくと安心です。

夫婦の間に未成年の子どもがいる場合や、年金分割を請求する場合など、その夫婦のケースに応じて必要書類が異なりますが、一般的には離婚調停の必要書類は以下の通りです。申立書の書式はこちらからダウンロードすることができます。

離婚調停の申立書

離婚調停の申立書の原本及びその写し1通を準備します。離婚調停の申立書には、申立人や相手方の住所氏名のほか、離婚を求めるか関係の修復を求めるか、といった申立ての趣旨や、申立ての動機(離婚理由)について記入します。

事情説明書

仕事や収入、同居家族の有無や住所・財産の状況、夫婦が不和となったいきさつや申立て理由などを記載します。

子についての事情説明書

申立人と相手方との間に未成年の子どもがいる場合に提出が必要です。現在の子どもの監護状況や、同居・別居・面会交流の有無などを記載します。

戸籍謄本

夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を添付します。3ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。市役所等で取得することができます。

連絡先等の届出書

裁判所から送付(送達)される書類について、住所や受取人の氏名等を記載します。

非開示の希望に関する申出書

相手方からDV被害を受けており、住所や電話番号など一部の情報を非開示にしたい場合に作成します。なお、申出書を提出すると必ず非開示になるわけではないので注意してください。

進行に関する照会回答書

期日の調整など、裁判所が調停を進めるために参考にする書類です。相手方との話し合いの状況や、期日の希望日などについて記載します。

年金分割のための情報通知書

離婚とともに「年金分割における按分割合(分割割合)」に関する調停を求める場合に提出します。

その他

必要に応じて、収入や財産に関する資料などを提出します。

また、離婚調停の申立てには、原則として次の通りの費用が必要となります。

収入印紙

申立て手数料として、1200円分(収入印紙の組み合わせは自由です)の収入印紙が必要です。申立て時に1200円分の収入印紙を用意すればよく、その後期日が3回、5回、と何度開かれても、その都度用意する必要はありません。

ただし、離婚調停を申し立てるほかに、たとえば婚姻費用分担調停などのほかの調停も申し立てる場合は、その分の収入印紙の費用も必要になります。

郵便切手

各家庭裁判所ごとに異なります。必要な郵便切手の額と枚数も指定されているので、事前に管轄の家庭裁判所のホームページ等で確認しましょう。

調停調書謄本の取得費用

離婚調停が成立したら、離婚調停の調停調書謄本を取得して、離婚届とあわせて市区町村役場に提出しなければなりません。その調停調書謄本を取得するための費用として、1000円程度の交付手数料が必要です。

その他の費用

戸籍謄本や住民票の写し、課税証明書などを入手するための手数料や、申立てに必要な書類を準備するための費用、家庭裁判所に出向く際の交通費といった費用もかかります。

なお、離婚調停手続きについて弁護士に依頼する場合は、上記の費用のほかに、弁護士費用もかかることになります。弁護士費用については、弁護士に初回相談をする際に、いくら必要になるのか、大体の目安の金額を確認しておくと良いでしょう。

管轄の家庭裁判所に申し立てる

離婚調停の申立書や必要な書類、費用を準備できたら、いよいよ家庭裁判所に申し立てを行います。離婚調停の申立ては、家庭裁判所の窓口に持参するか、郵送によって行います。基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになるため、遠方の場合は郵送することになるでしょう。

離婚調停申立書を家庭裁判所に提出し、書類に不備等なく受理されますと、事件番号が付与されます。事件番号というのは、基本的には、「令和●年(家●)第●号」というものです。家庭裁判所に問合せをする場合には、事件番号を伝えるとスムーズに担当に引き継がれます。

離婚調停に限らず、裁判所は事件を受け付けると、事件の種類ごとに事件番号を付与します。これによって膨大な数の事件の中から事件を特定し、事務手続きを進めていくわけです。

離婚調停は家事事件調停なので、家事事件記録符号規程により、符号は「家イ」となります。

したがって、令和6年に静岡家庭裁判所に離婚調停を申し立て受理されると、「静岡家庭裁判所令和6年(家イ)第〇〇〇号」という事件番号になるのです。
こうして事件番号が付与され、第1回期日を知らせる「調停期日通知書」が郵便で送付され、離婚調停が始まることになります。

離婚調停が上手くいく方法

さて、離婚調停をできるだけ自分に有利に進めるためには、事前にしっかり準備しておくことと、離婚調停期日での振る舞いが重要です。
以下に、離婚調停を有利に進めるためのポイントについて、詳しく解説していきます。

事前にしっかり準備しておくことが重要なポイントです

①証拠の確保

調停は話し合いなので、裁判ほどの証拠の応酬は想定されませんが、自分の主張を裏付ける証拠があるのと無いのとでは、調停委員の理解が違います。

離婚の理由が性格の不一致や価値観の違いである場合を除き、DVやモラハラ、浪費などは、実際にその事実があったかを、第三者である調停委員に理解してもらえなければ、自分の主張を通すことが難しくなるでしょう。

調停委員や相手を説得する材料として、なるべく証拠を用意するようにしてください。相手方の主張が間違えている場合にも、証拠を示して反論する方が説得的なのです。

なお、DVに関する記事は、こちらにあります。

DVの証拠に関する解説については、こちらに当法律事務所の記事がありますので、ぜひご覧ください。

②自分の主張を簡潔かつ具体的にまとめておく

離婚したいと思った理由、別居までの経緯、別居後から調停申立てまでのやり取りなど、時系列に沿って具体的にまとめておきましょう。

離婚条件に関しても、自分の希望を明確にしておくことで、調停委員が理解しやすくなり、スムーズな話し合いを期待できます。

具体的にとはいっても、つらつらとただ書き連ねるのはよくありません。必要な情報、重要な出来事やポイントを中心に、調停委員が読みやすいメリハリのあるい文章になるように心掛けてください。調停委員と話す時間は、1回30分が目安です。30分の中で必要な事を伝えきれるように準備しておきましょう。

とはいっても、当事者が重要だと考えることが法的には重要ではないことは相応にあり、そのようなことに調停の場面でこだわっても、調停が長引いて、結局解決に至らないこともありえます。

したがって、調停は弁護士に依頼することをお勧めしています。

③相手の財産状況を把握する

婚姻費用や養育費は金額の基準となる算定表があり、慰謝料も相場がありますが、財産分与は各家庭によって大きく異なるため、対象となる財産をきちんと把握しておく必要があります。

自分が知らない株式や小切手といった有価証券、預貯金があったと後から判明して揉めないためにも、調停前に調べておきましょう。

④離婚条件に固執しすぎない

自分の希望通りの条件で離婚したいとほとんどの申立人は考えていることでしょう。

しかし、あまりにも自分が希望する離婚条件に固執してしまうと、調停の成立が難しくなってきます。

たとえば離婚慰謝料の金額だけが相手方と合意できず、調停不成立で終わってしまったら、せっかく他の条件は全て合意できていたのに、慰謝料ひとつで離婚自体ができなくなり、たいへん勿体ないです。

調停不成立となれば離婚裁判に進むしかなくなり、さらに時間と費用がかかってしまいます。

ポイントは、あらかじめ、相手方に反対された場合に自分が妥協・譲歩できるラインを想定しておくことです。調停の中で柔軟に対応していきましょう。

ただ、法的に見て譲る必要のある点と譲る必要のない点もあることから、弁護士に相談するなどして後悔しないようにしましょう。

⑤裁判官、調停委員の心証を損ねる話し方や態度を取らない

裁判官も調停委員も、公正中立とはいえ人間です。身だしなみや、話し合い中の態度や話し方、期日に遅れない、といった社会人としてのマナーは、最終的な結果に影響しませんが、必要です。

きちんとした服装、時間を守る、遅れるようならあらかじめ連絡する、丁寧な話し方をする、といった最低限のマナーを守り、調停委員に好印象を持ってもらえるよう、心掛けましょう。

離婚したくない場合は特に言動・マナーに気を付けましょう

離婚調停を申し立てた側だけでなく、申し立てられた側も、なるべく自分の意見を離婚調停で認めてもらえるよう、真摯な態度で向き合わなければなりません。

突然離婚を突き付けられて、裁判所から調停申立書が送られてくるのですから、動揺することでしょう。

しかし、離婚調停ではとにかく感情的にならないことが大事です。そのためには、自分の主張を離婚調停の期日までにしっかりまとめておくことが重要です。

離婚調停の申立書を受領すると、答弁書(意見書)を提出するよう、裁判所からの指示があります。投げやりになったり、いい加減な気持ちで書いたりせず、相手の主張に冷静に向き合い、自分はどう考えているか、何を希望しているのかを簡潔に記入しましょう。

そして、離婚調停の期日においては、冷静さを保つことです。感情的にならず、客観的な事実に基づいて話し合いを進めることが重要です。

簡単なマナーを守ること、横柄な態度で乱暴な話し方をしないこと、汚れたシャツやサンダルで出席しないこと、といった最低限のマナーや身だしなみについては、言うまでもありません。社会人としての基本的な礼儀は尽くしましょう。

また、自分の意見や感情を正確に伝えるためには、事前に話す内容を整理し、必要に応じてメモを取ることも有効です。離婚を望まない場合、その理由や夫婦関係を改善するための具体的な提案を用意しておくと、調停委員に対して自分の立場を明確に示すことができます。

さらに、離婚調停中には、申立人の主張をよく聞き、理解しようと努めることも大切です。これにより、相手との溝を埋め、夫婦関係を修復するための解決策が見つかる可能性があります。

また、調停委員の質問には、正直かつ明確に答えることが求められます。誤解を避け、信頼を築くためにも、ただ抵抗して調停委員と敵対的になるのではなく、実直に対応して調停委員を味方につけましょう。そうすれば、あるいは相手に対して調停委員が「やり直してみる気持ちはありませんか」と働きかけてくれるかもしれません。

もし夫や妻から離婚調停を申し立てられたら?

離婚調停を起こされそうだ、と思って備えている人は、なかなかいないのではないでしょうか。大抵の場合、配偶者から離婚調停を申し立てられたことを、裁判所からの離婚調停期日の連絡を受け取ったときに知ることになると思います。

そんなときに一番大事なのは、早急に弁護士に相談して、冷静になることです。

(1)裁判所からの郵送物を確認する

裁判所から郵便物を受け取ることは滅多にないため、まるで自分が何か悪い事をしてしまったかのような気持ちになり、不安からどうしても落ち着けず、書面の中身が頭に入ってこない、という人も多いでしょう。

ですが、調停は「どちらが悪い、どちらが正しい」と白黒つける場ではありません。あくまで家庭裁判所を場とした「話し合い」ですので、離婚調停を申し立てられても落ち着いて対応しましょう。

それでは、必ず確認すべき事項を順にご説明します。

①申立人(相手方)が弁護士に委任しているか

書面の右上に「夫婦関係等調整調停申立書 事件名(離婚)」といった表題があるものが、調停申立書(写し)です。

相手(調停申立人)が弁護士に委任している場合は、申立人の記名押印欄が、相手の名前ではなく弁護士の名前と押印になります。

相手方が弁護士を立てている場合には、弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。

②申立ての趣旨

調停申立書の2頁目を見ると、上部が「申立ての趣旨」欄、その下が「申立ての理由」欄になっているかと思います。

申立ての趣旨は、相手が調停に期待する項目です。夫婦(もしくは内縁)関係を円満に調整したいのか、あるいは離婚・関係の解消を希望しているのか。離婚や内縁関係解消を希望している場合は、附随的な項目として、親権者や養育費、財産分与などの項目に相手の要望が記載されます。

なお、金額の「相当額」にチェックが入っている場合は、相手が請求金額を決めかねているケースや、裁判所で用いられている算定表の数字で構わないと考えているケースなどがあるため、具体的な金額は調停の中で明らかになっていきます。

「相当額」にチェックが入っていたら、裁判所のホームページに掲載されている算定表を事前に確認し、自分が支払うとしたらいくらになるか、想定しておくと良いでしょう。

③申立ての理由

「申立ての理由」の上段は、同居日と別居日が記載されています。離婚に伴う財産分与では、同居を始めた日から別居を始めた日までの財産が分与の対象になるため、記載内容に間違いがないか確認しておきましょう。

下段は、申立ての動機になります。相手(申立人)がなぜ離婚を請求しているか、その理由が簡単に記載されています。もっとも、申立の動機欄には、例えば、「性格があわない」というようにきわめて簡素な選択肢が挙げられているだけですから、通常は、離婚の動機を詳細に知ることはできず、調停に出頭しなければわからないことが多いです。

④期日通知書

離婚調停の初回期日の日時及び場所が記載された通知書です。基本的に、初回の期日の日時変更は難しいので、自分のスケジュールを調整するようにしましょう。

期日通知書などの連絡書面の書式は裁判所によっても異なるため、一概には言えませんが、期日通知書の下部に当日の持ち物や注意点が記載されてあったり、答弁書などの書面を提出するよう指示があったりします。

見落としのないように気を付けましょう。

(2)答弁書等を作成する

調停申立書や期日通知書の確認を終えたら、答弁書など、裁判所に提出する書類を作成していきます。前述した通り、期日通知書や連絡書に提出するよう記載されていますので、指示に従い用意しましょう。

主に、次の書類を準備することになります。

  • 進行に関する照会回答書
  • 答弁書(意見書)
  • 事情説明書
  • 連絡先等の届出書

進行に関する照会回答書には、出席できない日や曜日、時間を記入します。第1回目の期日に出席する場合は、記入する必要はありません。

「裁判所への要望」を記入する欄がある場合は、離婚条件などの「中身」についてではなく、調停の「進め方」についての要望を書きましょう。たとえば、相手からの暴力を受ける恐れがあるため、集合時間をずらしてほしい、待合室を離してほしい、などといった事が「進め方」についての要望です。

答弁書とは、調停申立書の内容に対して、自分の意見を伝える書類です。裁判所の書式によっては、答弁書とも、意見書とも言います。

親権者や財産分与、養育費などについて、支払う意思があるのか、反対に申立人に支払いを求めたいか等、項目ごとチェックを入れ、あるいは自分の考えを記入します。

答弁書の記入において最も重要なのは、離婚についての意見です。離婚したくない、離婚するかは迷っている、というようなときは、「離婚したい。」と回答してはいけません。離婚したい、と回答すると、離婚することについては夫婦の双方が合意しているため、調停では離婚条件を詰めるだけの話し合いになってしまいます。

もちろん、話し合いの中で意見は変わっていくので、答弁書の内容に拘束されることはありませんが、その後調停が進行する中で不利な要素とならないよう、分からないことは「分からない」、考えがまとまっていなければ「検討中」と回答しましょう。

事情説明書については、項目に従って該当するものにチェックを入れていけば大丈夫です。相手(申立人)と自分(相手方)の生活・就業状況や資産について、具体的に記入しましょう。

未成年の子どもがいる場合には、子についての事情説明書の提出も求められることと思います。子どもの監護状況や、面会交流といった子どもに関する内容を記載します。

もっとも、事案によっては、裁判所から郵送される答弁書等にチェックを入れるだけでは、裁判所に事案が的確に伝わらないこともあります。その場合には、答弁書を一から作成することをおすすめします。その場合には、弁護士に答弁書の作成依頼をすると良いでしょう。

連絡先等の届出書には、裁判所から今後連絡を受ける場合の電話番号や住所等を記載します。

進行に関する照会回答書と同様、事務連絡書類となるので、この書類には、離婚の経緯等について記載する必要はありません。

全ての書面の準備が終わったら、裁判所に提出する前にコピーを取り、自分の手元に控えておきましょう。期日当日に控えを持参し、見ながら話し合いを進めることで、主張がぶれたり、何を話すべきか分からなくなったりすることなく、調停委員と話せます。

離婚相談は家庭裁判所ではなく弁護士へ

家庭裁判所は離婚相談を受けてくれる場所ではありません。家庭裁判所は、調停という話し合いの場を設けてくれますが、どのように調停を進めるべきかとか、離婚条件などについて、アドバイスしてくれるわけではないのです。

そのような離婚相談は、家庭裁判所ではなく、弁護士に相談することになります。

離婚調停は、離婚裁判をする前に行わなければならないものですから、申立書や答弁書等の書面作成の場面ではもちろん、調停の場面においても、常に離婚裁判を見据えた対応をしなければなりません。

しかし、調停では、調停委員から様々な質問をされることから、場面場面に応じて、臨機応変に先を見据えた対応をすることは難しいと思われます。

例えば、自分としては、有利になると思っての発言だとしても、法的に見た場合には不利な発言をしていることもあり得るのです。

以上のように、調停は単なる話し合いではないことから、基本的には、なるべく早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

弁護士に離婚調停を依頼することで、上記でご説明した書類の準備や、相手方が提出した書類の検討、期日当日の対応などを、全て代理人である弁護士に任せることもできます。

離婚調停に関するQ&A

Q1.離婚調停とはどういった離婚方法ですか?

離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員が夫婦それぞれと話し合い、離婚することや離婚条件についての合意を形成する手続です。夫婦の話し合いが前提となるため、離婚に合意できない場合は調停不成立となり、裁判所が「離婚しなさい」と命じることはありません。

Q2.離婚調停の流れについて教えてください

離婚調停の流れは、以下の通りです。

まず、離婚を希望する一方が家庭裁判所に離婚調停を申し立て、申立書と必要な書類(戸籍謄本、住民票など)を提出します。

家庭裁判所が申立人と相手方に対し、調停期日の通知書を送ります。指定した調停期日が開かれ、離婚に関する問題(親権、養育費、財産分与など)について、調停委員を通して話し合いが行われます。

夫婦の双方が合意に達すれば、離婚調停成立となり、調停調書が作成されます。一方、合意に至らない場合は、離婚調停不成立となり、場合によっては離婚裁判を提起することがあります。

Q3.離婚調停にかかる期間はどのくらいですか?

離婚調停の期間は、ケースによって異なりますが、一般的には数ヶ月から半年程度かかることが多いです。離婚調停の話し合いがスムーズに進めば、第1回期日や第2回期日で早期に終了することもありますが、複雑な問題が絡む場合は、より長期間を要することもあります。

この点、弁護士に依頼すると、裁判所が求めるものや争点となりうる点について先回りして事前準備をすることができるので、早期解決が見込まれます。

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本記事では、離婚調停の手続きの流れや必要書類など、離婚調停の全般的な情報について弁護士が解説いたしました。

離婚調停は、夫婦が裁判所の仲介のもとで話し合いを行い、離婚に関する合意を目指す手続きです。

自分で申し立てることもできますが、法的問題に対して適切に対応し、離婚調停の話し合いを有利に進めていくためには、法律の専門家である弁護士にご相談いただくのがおすすめです。

離婚調停をご検討されている方は、ぜひ当法律事務所にお問合せください。

当法律事務所では、離婚調停に関する豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、ご依頼者様の状況に合わせて適切なサポートを提供いたします。

初回無料の法律相談のご予約は、電話及びWEB予約にて受け付けております。対面でのご相談のほか、電話でのご相談も可能ですので、どうぞお気軽にお問合せください。

 

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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