離婚調停の弁護士費用を解説!相場はいくら?調停取り下げや不成立の場合は?
離婚調停は、夫婦間の問題を話し合いによって解決するための場ですが、親権や養育費、財産分与など、重要な内容が議題となるため、冷静かつ慎重な対応が求められます。しかし、調停の進め方や必要な準備について十分な知識を持たないまま臨むと、思わぬ不利益を被ることもあります。こうした不安を解消するため、弁護士に依頼を検討する方も多いでしょう。
ですが、一般的には「弁護士費用は高額」というイメージがあるため、依頼したくても諦めてしまう、というケースも少なくはないかと思います。
そこでこの記事では、離婚調停の弁護士費用について、具体的にどういった費用がかかるのか、相場の金額はいくらなのかについて、弁護士がご説明させていただきます。
弁護士への依頼を検討する際に、本記事がご参考になりましたら幸いです。
目次
離婚調停の弁護士費用
さて、「弁護士費用」といっても、「弁護士費用」という費目の一つの費用があるわけではなく、一般的には次の費目をまとめて「弁護士費用」といいます。
- 相談料
- 着手金
- 実費
- 日当
- 交通費
- 報酬金
弁護士費用は通常、その弁護士や法律事務所それぞれに独自の料金体系があるため、交通費や日当も実費に含めていたり、相談料が無料となっていたりと、その内容はさまざまです。
ですが、基本的には大きな差はなく、相場の金額に近いことがほとんどです。
本記事では、離婚調停の弁護士費用の一般的な相場についてご説明させていただきます。
それでは、離婚調停を弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用について、具体的に見ていきましょう。
離婚調停の弁護士費用の相場
離婚調停の弁護士費用
前述した以下の6つの費用について、詳しく解説いたします。
- 相談料
- 着手金
- 実費
- 日当
- 交通費
- 報酬金
①相談料
相談料、もしくは法律相談料といいますが、これは弁護士に離婚調停を依頼しない場合でも、発生する可能性のある費用です。
弁護士に依頼するにあたって、通常は最初に法律相談を行います(初回相談)。この弁護士との法律相談では、相手方とどういった争いがあるのか、離婚調停をして最終的にどうなりたいか、弁護士に依頼することで気になる点はあるかなど、さまざまな事を話し合います。
初回の法律相談については、30分もしくは1時間と相談時間が決められていることが多いです。そして、30分もしくは1時間あたり、5千円~1万円程度が相場とされています。
また、法律事務所によっては、初回の法律相談料を無料としている場合もあります。ただし、無料相談の場合でも時間制限や相談内容に制約がある場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。
そして、初回の法律相談が無料の場合も、依頼前に2回目の法律相談をした場合は、2回目の法律相談には5千円~1万円程度の相談料がかかることもあります。
なお、正式に弁護士と委任契約を結んだ後に打合せなどを行う場合は、依頼内容に都度の相談も含まれていることが多いため、別途相談料として徴収されることはほとんどありません。
したがって、弁護士に依頼する前に法律相談を行う場合、法律相談料は無料か、有料の場合も5千円~1万円程度が相場となります。
②着手金
着手金とは、弁護士に正式に離婚調停の依頼をする際に支払う費用を指します。この着手金は、弁護士が案件に着手し、調停手続きや準備を進めるための基本的な報酬として位置付けられています。
離婚調停を弁護士に依頼する場合、着手金の相場は20万円~30万円程度です。
支払った着手金は、依頼内容がどのような結果に終わったとしても返金されないのが一般的です。着手金を支払って委任契約を締結した場合、どのような結果で終わったにせよ、離婚調停を進めるにあたっての準備で、さまざまな手間や費用が発生しているからです。
ですが、支払った直後で、まだ具体的な手続きや準備を行っていないうちに委任契約を解除した場合は、着手金の全額もしくは一部が返金される可能性もあります。
着手金の取り扱いについても、実際に依頼する法律事務所で、あらかじめきちんと確認しておくことが重要です。
③実費
実費とは、弁護士が離婚調停を進める過程で発生する、手続きに直接発生する費用のことです。実費は弁護士の報酬とは別に必要となる費用で、具体的には以下のようなものが実費として発生します。
- 裁判所への申立てに必要な印紙代(1件につき1,200円)
- 郵送費(数百円~数千円程度)
- 戸籍謄本の取得費用(1通450円程度)
- 住民票の取得費用(1通300円程度)
- 不動産の固定資産評価証明書の取得費用(1件につき数百円程度)
これらの費用は自治体や案件の内容によって異なりますが、離婚調停の実費としては、数千円から数万円程度が一般的です。特に、相手方の住所が不明で戸籍の附票を取り寄せる必要がある場合や、不動産の分与に関連して評価証明書を取得する場合には、実費が増えることもあります。
実費の取り扱いについても、法律事務所ごとに異なるため、事前に必要な費用の見積もりを確認しておくことが重要です。依頼後に追加の実費が発生する可能性もあるため、不明な点があればその都度弁護士に相談するよう心掛けると安心です。
④日当
日当とは、弁護士が事件の処理にあたって、事務所所在地を離れて移動し、時間的に拘束される場合に発生する費用を指します。この費用には、裁判所への出廷や遠方への出張に伴う時間的な負担が考慮されています。日当には主に、裁判所に出向く際に支払われる「出廷日当」と、事務所所在地から遠く離れた地域へ出張する際に発生する「出張日当」が含まれます。
例えば、離婚調停が行われる「管轄裁判所」は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、夫婦が合意で定めた家庭裁判所と決められています(家事事件手続法第245条1項)。
(管轄等)
家事事件手続法第245条1項 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
ですので、通常は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚調停を申し立て、弁護士がそこに出向くことになります。
自分が訪れやすい最寄りの法律事務所に依頼することが一般的ですので、離婚調停中も夫婦が同じ管轄の住所地に居住している場合は、出廷する家庭裁判所も法律事務所から向かいやすい場所となるため、日当が発生するほど遠方ではありません。
ですが、離婚調停前に別居を始めて、相手方が実家のある他県に住んでいるような場合には、遠方への出廷が必要となるため、出廷日当が発生する可能性があるのです。
また、例えば、依頼者が遠方に居住しており、そこで打合せを行う必要がある場合や、依頼者の住所地の公証役場で遺産分割協議書や財産分与契約書を作成・署名する場合、あるいは、不動産の名義変更手続きのために法務局へ赴く場合なども、弁護士が依頼者の住居地へ赴く際に出張日当が発生することがあります。
日当の金額は拘束時間に応じて異なり、半日(往復で2時間超4時間以内)では3万円~5万円程度、1日(往復で4時間超)の場合は5万円~10万円程度が相場となります。
なお、日当はあくまで弁護士の拘束時間に対して発生する費用なので、宿泊費や交通費は別途請求される場合もあります。
⑤交通費
弁護士が離婚調停に関連する手続きのために長距離移動する場合は、交通費も発生します。
交通費に関しては、例えば「新幹線を利用する場合はグリーン車料金とする。」や、移動手段として「タクシー代を含む。」などと委任契約書に具体的に書かれていることもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
なお、交通費という費目で請求せずに、実費として請求する法律事務所も多いです。
⑥報酬金
報酬金とは、依頼した案件が終結した際に弁護士に支払う費用を指します。弁護士の活動によって依頼者が得た利益に基づいて発生するため、「成功報酬」ともいわれます。
成功報酬の金額は、あらかじめ〇〇円と決められている定額制に、経済的利益に基づく〇〇%を加えた金額を支払う、とされていることが一般的です。
ここでいう「経済的利益」とは、離婚調停を通じて依頼者が実際に得た利益を指します。例えば、相手方の不倫について慰謝料300万円を獲得した場合、この300万円が経済的利益になります。反対に、相手方から慰謝料500万円を請求されていて、最終的な慰謝料の金額が300万円になった場合は、減額できた200万円が経済的利益となります。
また、請求内容が「離婚の合意」や「親権」といった、金銭的請求以外の内容もあります。この場合の経済的利益の考え方は複雑ですので、事前に確認しておくことが重要です。
なお、弁護士法人あおい法律事務所では、こうした非金銭的請求について次の通り定めています(あくまで一例になります)。
- 離婚調停で離婚が成立した場合には金44万円。
- 親権を取得した場合には金11万円(子供が複数いる場合には、全員の親権を取得した場合に限る)。
- 面会交流の条件に争いが生じて、月一回程度の面会交流が成立した場合、金11万円。
そして、このように定めた上で、報酬金の上限額を規定している場合もあります。
当法律事務所では、「離婚調停サポートプラン」もご用意しております。依頼前に明確な料金体系が分かるため、安心してご相談いただけるかと思います。
離婚調停を取り下げた場合の弁護士費用
離婚調停を依頼した後に調停を取り下げた場合、弁護士費用がどのように扱われるかは、契約時に取り決めた内容や調停の進行状況によって異なります。
まず、着手金は、弁護士が案件に着手した段階で発生する費用であり、通常は返金されないのが一般的です。ただし、依頼後すぐに離婚調停を取り下げるなど、具体的な準備がほとんど進んでいない段階での取り下げであれば、一部が返金される場合もあります。返金の可否や金額については契約内容に基づくため、事前に確認が必要です。
また、離婚調停に向けた準備や申立てのためにかかった実費、例えば裁判所への申立てに必要な印紙代や郵送費などは、すでに支出されている場合、返金されません。
なお、成功報酬は、離婚調停が依頼者の目的を達成した場合に発生する費用であるため、離婚調停を取り下げた場合には支払う必要はありません。
離婚調停を取り下げる際には、契約内容を確認し、発生している費用の内訳を弁護士に問い合わせることが重要です。
離婚調停が不成立の場合の弁護士費用
申立人にとっての「成功」は「離婚成立」なので、離婚調停が不成立となった場合は「成功しなかった」ということになります。そのため、離婚調停が不成立の場合、基本的に成功報酬金は発生しません。
ただし、着手金は、弁護士が案件に着手した時点で発生する費用であり、離婚調停の結果にかかわらず返金されないのが一般的ですし、既に発生した実費は支払う必要があります。
また、離婚調停不成立後に離婚裁判を検討する場合には、新たな費用が発生する可能性があるため、弁護士と十分に相談することが大切です。
離婚調停が長引くと弁護士費用は増える?
離婚調停が長引くと、弁護士費用が増加する可能性があります。離婚調停の回数や期間が延びることで、追加の費用が発生する項目があるためです。
例えば、弁護士が離婚調停期日に出廷するために遠方の家庭裁判所へ行く場合、日当や交通費が発生します。離婚調停が長引いて期日の回数が増える場合、日当や交通費の総額も増加します。
また、離婚調停が長引き、その後離婚裁判になった場合、離婚裁判を依頼するために着手金なども追加で発生することになります。
このように、離婚調停が長引くと、結果として弁護士費用は増えることが多いです。
離婚調停の弁護士費用に困ったら法テラスへ
離婚調停を弁護士に依頼したいけれど、費用の負担が大きい、とお悩みの場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用も検討してみてください。
法テラスは、経済的に余裕がない方でも法的な支援を受けられるよう、民事法律扶助制度を提供しています。
民事法律扶助制度では、離婚問題に関する悩みを無料で法律相談することができ、弁護士費用等の立替えなどを行っています。
ただし、利用するには収入や資産が法テラスの基準を満たす必要があります。申請の手続きには時間がかかる場合もあるため、離婚調停を検討し始めた段階で早めに相談することをおすすめします。
制度の利用条件や手続きについては、法テラスの公式サイトで最新情報を確認することができます。
参考:法テラス(日本司法支援センター)
離婚調停の弁護士費用に関するQ&A
Q1.離婚調停の弁護士費用の相場はどのくらいですか?
離婚調停を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の相場は、一般的に50万円~110万円程度となっています。その内、着手金が20万円~30万円程度です。成功報酬は、調停で得られた成果や経済的利益によって異なり、具体的な金額は弁護士との契約内容に基づきますので、事前に確認してください。
Q2.弁護士費用は一括払いでしか支払えませんか?
多くの法律事務所では原則として一括払いですが、分割払いで対応してもらえることもあります。依頼前に支払い方法について弁護士に相談しましょう。
Q3.離婚調停が不成立だった場合でも費用は支払う必要がありますか?
離婚調停が不成立の場合でも、着手金や実費は支払う必要があります。一方、成功報酬は調停が依頼者にとって成功とみなされる結果が得られなかった場合には発生しません。
まとめ
この記事では、離婚調停を弁護士に依頼する場合の費用について、主な項目とその内容を詳しく説明しました。弁護士費用には、相談料、着手金、実費、日当、交通費、成功報酬などが含まれ、それぞれの金額や支払い条件は法律事務所ごとに異なります。また、離婚調停の進行状況や結果によって、発生する費用が変動することもあります。
弁護士費用は、決して安いとはいえませんが、その費用に見合うメリットを享受できることも確かです。費用面で不安を感じる場合には、法テラスの民事法律扶助制度を利用する選択肢もありますので、条件を確認してみると良いでしょう。
離婚調停の手続きや費用について不明点がある場合や、依頼を迷っている方は、まずは法律事務所に相談してみてください。
当法律事務所では、離婚に関する法律相談について、初回無料とさせていただいております。弁護士費用についても事前にご説明させていただきますので、お気軽に初回相談をご予約ください。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。