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離婚裁判とは?離婚訴訟の流れを訴状の準備から判決まで全て解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

夫婦間で協議をして双方が納得して合意に至れば、スムーズに離婚することができます。ですが、話し合いがこじれてしまい、協議や調停では双方が合意できなかった場合、最終的な方法として、裁判で解決するしかありません。

裁判によって離婚するためには、法律に定められた離婚事由が必要であることはもちろんのこと、そのことを証拠により証明しなければならないなど、専門的な知見が必要になります。

本記事では、離婚裁判に関する基本的な知識や、手続きの流れ、有利に裁判を進めるためのポイントなどについて、弁護士が詳しく解説させていただきます。

裁判によって離婚したいと検討している方にとって、この記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。

目次

離婚裁判とは

調停不成立の時に離婚を請求する方法

離婚裁判とは、夫婦間での協議によっては離婚についての合意が得られず、家庭裁判所における離婚調停でも問題の解決に至らなかった場合に、離婚を請求するための方法です。

具体的には、一方の配偶者が裁判所に訴訟を提起して、裁判所が両者の主張や証拠を審理した上で、離婚の是非を判断します。

離婚裁判では、財産分与や親権、慰謝料などが問題も争点になることが多く、調停を経ている以上、協議離婚に比べて時間や費用がかかることが一般的です。

しかし、調停が不成立になった場合には、離婚を実現するためには、基本的に離婚裁判手続きが必要となります。

訴訟と協議・調停との違いは何?

離婚裁判は、協議離婚や離婚調停と異なり、夫婦間の合意が得られない場合に最終的に用いられる方法です。協議離婚は夫婦が話し合いによって離婚に合意し、離婚届を提出することで成立します。この方法は、裁判所を通さず、夫婦で進める手続きであり、比較的簡単でスムーズな離婚方法です。

一方、離婚調停は、夫婦間で離婚に関する合意ができない場合に家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員の仲介で話し合いを進める方法です。離婚条件について双方が納得できる解決策を探し、合意に達すれば調停離婚が成立します。合意に至らない場合は調停不成立となり、裁判に移行することもあります。

離婚裁判は、調停不成立の時に離婚を請求するための方法であり、民法に定められた離婚理由が認められる場合にのみ、離婚が認められます。裁判離婚では、附帯処分の申立てをすることができ、財産分与や子供の親権、養育費などについても争うことができます。附帯処分の申立ては、離婚等の訴え提起と同時に行われることが通常ですが、事実審の口頭弁論終結時まで行うことができます。

まとめますと、協議離婚は夫婦の合意に基づく簡単な方法であり、離婚調停は裁判所の仲介で合意を目指す方法、離婚裁判は調停が不成立になった場合に原則として選択される手段です。


離婚裁判が認められるための「法律上の理由」5つ

協議や調停で離婚できない場合の最終手段として、裁判という方法が取られることになりますが、「離婚したい」と思えば誰でも離婚裁判をできる、というわけではありません。

離婚訴訟の提起が認められるためには、次の2つの条件を満たすことが必要になるからです。

  • 必要な条件①調停手続きを経ていること。
  • 必要な条件②法律上定められた離婚理由(法定離婚事由)があること。

条件1.調停手続きを経ていること

離婚裁判は、協議離婚や調停離婚で合意が得られなかった場合の離婚を請求する方法とされています。そのため、「離婚したい」と思ってもいきなり離婚裁判を起こすことはできず、家庭裁判所での調停手続きを経ることが必要となります。これを、「調停前置主義」といいます(家事事件手続法第257条1項)。

(調停前置主義)
家事事件手続法第257条1項
第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。

離婚などの夫婦間の問題は、離婚成立するにしろ関係修復するにしろ、手続き後も当事者の関係が続くことが多いため、なるべく当事者の話し合いによって合意による解決を目指すべきである、と考えられているからです。

ですので、調停での解決が困難と判断され調停不成立となった場合に、離婚裁判に移行することができます。

条件2.法律上定められた離婚理由(法定離婚事由)があること

2つ目の離婚裁判に必要な条件は、法律上定められた離婚理由(法定離婚事由)があることです。裁判で離婚したい場合、話し合いで合意さえできれば離婚が成立する協議や調停とは異なり、法律で定められた離婚の理由が必要となるのです(民法第770条1項)。

(裁判上の離婚)
民法第770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

たとえば、配偶者の不倫が理由で離婚を請求したい場合は、上記の民法に定められた離婚理由のうち「配偶者に不貞な行為があったとき(民法第770条1項1号)」を原因とした離婚が認められるか、が問題となります。

あるいは、配偶者が勝手に家を出て行ってしまい、同居を呼び掛けても何年にも渡って返事をくれず、一方的に同居を拒否されている場合は、そうした事実関係が「配偶者から悪意で遺棄されたとき(民法第770条1項2号)」に該当するかが問題となるでしょう。

もっとも、最近では、悪意の遺棄が離婚原因と認定される例は少ないと言われています。

裁判例で悪意の遺棄が認められた事案は次のようなものです。

被告である夫が半身不随で日常生活もままならない原告である妻を、そのような不自由な生活、境遇にあることを知りながら自宅に置去りにして、正当な理由もないまま長期間別居を続け、その間原告に生活費を全く送金していないかったという事案です(浦和地判昭和60年11月29日)。

同裁判例では、被告の前記行為は民法770条1項2号の「配偶者を悪意で遺棄したとき。」に該当すると判示されています。

また、離婚を考えるようになる数年前から配偶者とは別居状態にあり、既に婚姻関係は修復できないほど破綻している、というようなケースでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(民法第770条1項5号)」に該当すると認められた場合、離婚できる可能性があります。

ただし、法定離婚事由があるからといって、必ず裁判で離婚が認められるわけではありません。実際の裁判では、離婚原因のほかにも、結婚に至った経緯や、夫婦の関係が悪化した背景、婚姻生活の実態や、今後夫婦の関係が改善される見込みはあるのか、といった具体的な事情を総合的に考慮して、離婚が認められるかどうかの判断が下されることになります。

裁判で争う主な内容(親権・お金など)

裁判で争われる内容は、「離婚する・しない」だけではありません。財産分与や慰謝料、養育費といった離婚条件の具体的な内容についても、裁判で争われることになります。

たとえば、財産分与においては、夫婦が共有していた資産や財産の分け方、特に大きな価値を持つ不動産や株式などの扱いについて、双方の主張が対立することがあります。

また、慰謝料に関しては、不貞行為により夫婦関係が破綻したといえるかについて争点となりえます。金額についても争点となりえますが、不貞が原因で離婚した場合には200万円から300万円ほどになります。

親権についても争われることはあります。ただ、一般的な傾向として、10歳頃までの子どもの場合には、育児をしている時間が多い方が親権者とされる傾向にあり、10歳を超えてくる年齢の子どもの場合は、子供の意思が尊重される傾向にあります。

さらに、子どもが複数いる場合には、原則としてきょうだいがバラバラにはならない傾向があります。

離婚訴訟の流れ(訴状の準備から判決まで)

それでは、離婚裁判の手続きの流れと、離婚裁判の提起に必要な書類について、ご説明いたします。家庭裁判所のHPにも案内はありますが、そちらよりももっと詳しく解説いたします。

手続きの流れ・期間

 

手続きの流れ・期間

 

1.離婚裁判の提起

まず、裁判所に離婚訴訟を提起するためには、訴状を準備します。訴状には、請求の趣旨や離婚を求める理由を記載します。また附帯処分の申立てを行う場合には、慰謝料、財産分与、養育費などについても根拠を示して記載します。それに加えて、必要な証拠資料を添付します。訴状の準備が整ったら、これを家庭裁判所に提出します。

提出先は、原則として夫もしくは妻の住所地を管轄する家庭裁判所ですが、住所地を管轄する家庭裁判所と離婚調停を行った家庭裁判所が違う場合は、離婚調停を行った家庭裁判所で引き続き離婚裁判も行われることになる場合もあります。

訴状や証拠資料の提出は、直接裁判所に持参するか、郵送で提出することも可能です。

2.期日の指定

裁判所は訴訟を受理した後、裁判期日を指定し、当事者双方に通知します。この時、離婚裁判を起こされた側である相手方(被告)に対しては、期日指定通知書だけでなく、訴状等も送達されることになります。

3.相手方が答弁書を提出する

離婚裁判の相手方である被告は、受け取った訴状の内容を確認し、訴状の内容を認めたり反論したりするための「答弁書」を作成します。

答弁書には、請求の趣旨に対する答弁、認否及び被告の主張を記載します。

一般的には、指定された期日の1~2週間前までに答弁書を提出するよう求められますが、期日までに答弁書を準備するのが難しい場合は、離婚裁判で争う意思がある旨を簡単に明記しておくだけでも大丈夫です。

被告が提出した答弁書は、そのコピーが原告にも送られることになります。

4.期日が開かれる

裁判期日には、当事者双方が出廷し、それぞれの主張と立証を行います(口頭弁論)。口頭弁論は基本的に公開の法廷で行われ、本人が主張立証を行いますが、離婚裁判を弁護士に依頼している場合は、弁護士が依頼者の代理人として、主張や立証を行うこともあります。

弁護士を立てている場合には、基本的には、依頼者は裁判に出廷する必要はありませんので、弁護士のみが出頭することが通常です。

期日は複数回開かれ、数ヶ月で終結することもあれば、1年以上の時間がかかることもあります。この離婚裁判の手続きの中で、さらに書面や追加の証拠を提出し、争点を整理していきます。

なお、2回目以降の期日は、非公開の小さな部屋で開かれる「弁論準備手続」に進むこともあります。

この段階では、裁判所から和解の提案がなされることもあります。特に、離婚すること自体には夫婦双方が合意しており、離婚条件の一部について争いがあるような場合、その争っている内容について合意に至れば、判決によらずとも夫婦の合意で終結が期待できるため、和解案が提示されることが少なくありません。

当事者双方が裁判所の和解案に合意すれば、和解が成立し、離婚が成立します。

和解が成立しない場合は、裁判の期日が続行されます。離婚の可否や慰謝料の有無、慰謝料額などについて、裁判所が判断します。離婚を認める判決が出れば、裁判による離婚が成立することとなります。

5.証拠調べ手続き(当事者尋問)

争点整理が終了すると、証拠調べ手続きとして当事者や証人に対する尋問が行われる場合があります。

尋問とは、当事者や関係者である証人が法廷で証言をすることによって、その証言した内容を証拠とする手続きをいいます。

もっとも、実際の離婚裁判では、証人に対する尋問は多くなく、当事者尋問が行われることが一般的です。

裁判は通常公開の法廷で行われますが、当事者等の尋問の際は、非公開となることがあります(人事訴訟法22条)。

 
第二十二条 人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

誰が誰にどの順序で尋問を行うかは決まっており、通常次の流れで進みます。

  1. 原告側の弁護士が原告に尋問する(主尋問)。
  2. 被告側の弁護士が原告に尋問する(反対尋問)。
  3. 裁判官が原告に尋問する(補充尋問)。
  4. 被告側の弁護士が被告に尋問する(主尋問)。
  5. 原告側の弁護士が被告に尋問する(反対尋問)。
  6. 裁判官が被告に尋問する(補充尋問)。

この際、当事者が代理人弁護士をつけていない場合は、本人が尋問を行うことになるため、たとえば原告に対する主尋問は、原告側の弁護士ではなく裁判官が行い、相手方に対する反対尋問は自分で行うことになります。

6.判決が言い渡される

証拠調べや口頭弁論によって当事者双方からの主張や証拠が出尽くし、裁判官が十分に事実認定をできるようになったら、いよいよ判決が言い渡されることになります。

なお、判決の内容に不満がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内でしたら、控訴を提起することができます(民事訴訟法第285条)。控訴を行うと、高等裁判所で再度審理が行われることになります。

(控訴期間)
民事訴訟法第285条 控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

7.離婚届を提出する

裁判で離婚が成立したからといって、その場で法律上も夫婦でなくなるわけではありません。離婚届を提出しなければ、戸籍上は夫婦のままなので、離婚届を提出する必要があります。

離婚を認める判決が確定したら、10日以内に離婚届とあわせて判決謄本と確定証明書を添えて、市区町村役場に提出します(戸籍法第77条1項、戸籍法第63条)。これにより、戸籍上も正式に離婚が成立し、法律上の夫婦ではなくなります。

戸籍法第77条1項 第63条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。

戸籍法第63条 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。

2 訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判にかかる期間は、ケースによって大きく異なりますが、1年から2年程度でしょう。特に、高裁などにいく場合には、長い期間を要することになります。

あくまで一般論ではありますが、弁護士が入った場合には、早期解決が見込まれるといってよいでしょう。離婚裁判の前に調停を行っていることから、弁護士であれば、裁判になる前から、争点や結論を見通した上で、問題となりうる点や裁判所が求めていることについて先回りして早い段階から主張することができるからです。その分、効率的に裁判が進んでいく可能性が高いのです。特に、判決までいかずに、和解でまとめられるとなれば、半年もかからずに離婚できることもあります。

逆に言うと、弁護士がついていない場合には、調停の段階で争点が適切に整理されないまま調停が不成立になっていることが多く、離婚裁判の段階でも争点整理に相当の時間を要し、その結果、裁判が長引くことがあります。

ですから、早期解決を望まれる方は、費用をかけてでも弁護士に依頼することをお勧めいたします。詳しくはこちらの記事で解説しておりますので、ぜひご覧ください。

必要書類(訴状、戸籍謄本等)

離婚裁判を提起する際の主な必要書類は次の通りです。

  • 訴状
  • 夫婦の戸籍謄本(原本とコピー)
  • 年金分割のための情報通知書(原本とコピー)
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 証拠書類等

それぞれについて、簡単に解説させていただきます。

訴状

訴状を2部作成します。訴状の書式や記載例は、裁判所のホームページからダウンロードして入手することが可能です。
離婚訴訟事件の訴状(裁判所)

まず、訴状の1ページ目には、原告と被告の住所氏名や本籍等を記入します。裁判所から送達される書類の送達先を、勤務先や実家などの住所と異なる場所にしたい場合は、送達場所の届出欄にその場所を記入します。

次に、2ページ目は「請求及び申立ての趣旨」や「請求の原因等」について記入します。「請求及び申立ての趣旨」には、夫婦の間の子どもについて、親権者を原告と被告のどちらと定めるのか、被告に対しいくらの慰謝料を請求するのか、といった請求内容について簡単に記入します。「請求の原因等」には、離婚裁判の前に離婚調停をしたかの確認と、法定離婚事由に該当する離婚の原因を記入します。

「請求及び申立ての趣旨」や「請求の原因等」の記載欄は、自分で記入する欄は子どもの名前や年齢、請求する慰謝料の金額といった事柄くらいで、ほとんどが□にチェックを入れるだけで作成できます。

そして次に、「請求の原因」について、離婚裁判を起こすまでのいきさつを具体的に記入します。この記載事項については、自分の言葉で記入しなければならないため、裁判所の記載例を参考にしながら書くと良いでしょう。

もっとも、事案によっては、裁判所のホームページに掲載されているチェック欄付きの訴状に従って訴状を作成するよりも、一から訴状を作成した方が裁判所にどのような事案かわかってもらいやすい場合があります。その場合には、請求の趣旨、請求の原因や関連事実を書いていくことになります。

このほかにも、不動産で財産分与を請求する場合には、登記事項証明書に書かれている内容を参考に、物件目録を作成します。

以上のように、離婚裁判で請求する内容に応じて、訴状の内容も異なるため、離婚裁判の準備は弁護士に相談するのがおすすめです。

夫婦の戸籍謄本(原本とコピー)

夫婦の戸籍謄本を訴状と一緒に提出します。戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で交付申請します。窓口で申請すれば、その場で交付してもらえますし、役所に行く時間がなければ郵送で申請することも可能です。

交付申請には費用がかかります。費用は全国統一で、1通450円です。

年金分割のための情報通知書(原本とコピー)

離婚裁判で年金分割における按分割合(分割割合)に関する処分の申立てをする場合は、「年金分割のための情報通知書」も提出する必要があります。

年金分割のための情報通知書は、年金分割の具体的な範囲や分割対象期間など、年金分割に必要な情報が記載されている書類です。年金事務所に交付申請をして入手することが可能です。

なお、年金分割のための情報通知書を入手するためには、戸籍謄本をはじめとした以下の書類が必要になります。

  • 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカード)
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本)
  • 事実婚関係の期間の情報通知書等の請求の場合、その事実を証明する書類(住民票)

離婚裁判で自分が請求する内容に応じて、どの書類が必要になり、その書類を入手するためには何が必要なのか、余裕を持って整理しておくと安心です。

登記事項証明書(登記簿謄本)

離婚裁判において、不動産で財産分与を請求する場合には、登記事項証明書を訴状と一緒に提出する必要があります。

登記事項証明書とは、土地や建物について、所有者や構造、大きさなどを記載した証明書です。

登記事項証明書の入手方法は、法務局の窓口で交付申請しその場で受け取る方法と、オンライン申請して窓口もしくは郵送で受け取る方法があります。全国どこの法務局でも交付申請を行えますので、自宅や会社の最寄りの法務局で手軽に交付申請することが可能です。

証拠書類等

上記のほかに、源泉徴収票や預金通帳など、証拠とする書類のコピーを2部作成します。

なお、提出する書類のコピーの数は、被告の数に応じて変わります。たとえば、配偶者の不倫が原因で離婚請求と慰謝料請求を行う場合に不倫相手も訴える際は、不倫相手の数に応じた分もコピーを追加して提出しなければなりません。

費用

離婚裁判の費用として、収入印紙と郵便切手が必要になります。

収入印紙

離婚裁判を起こす際の費用として、収入印紙が必要です。離婚することだけを請求する場合、財産権上の請求でない請求なので、訴額が160万円とされており(民訴費4条2項前段)、収入印紙は1万3000円となります。

離婚を請求するほかに、慰謝料や財産分与などを請求する場合、その請求金額に応じてさらに収入印紙が必要です。なお、請求金額と収入印紙については、こちらの裁判所の手数料額早見表が参考になります。
手数料額早見表(裁判所)

このように、費用の金額は請求する内容によって異なりますので、事前に訴状を提出する家庭裁判所に費用について確認することをおすすめいたします。

郵便切手

裁判所から書類を送達する際の費用として、郵便切手も必要です。通常、郵便切手の総額は数千円程度ですが、その総額や郵便切手の組み合わせなどは裁判所により異なりますので、事前に訴状を提出する家庭裁判所で郵便切手について確認してください。

その他の費用

戸籍謄本や住民票の写しなどを入手するための手数料や、申立てに必要な書類を準備するための費用、家庭裁判所に出向く際の交通費といった費用もかかります。

また、弁護士に離婚裁判を依頼する場合は、上記の費用に加えて弁護士費用も発生します。

裁判を有利に進めるためのポイント

離婚裁判は、その請求内容や争点によって、離婚が認められるまでに1年程度かかってしまいます。時間も手間もお金もかかるのでしたら、なるべく有利に離婚裁判を進めていきたいところです。

そこで、離婚裁判を有利に進めるためのポイントについて見ていきましょう。詳しくは下記の記事で解説しておりますので、ぜひこちらもご覧ください。

離婚原因の有無等を証明する証拠と和解も視野に入れた進行が重要です

離婚裁判においては、とにかく書面が重要です。原告も被告も、離婚原因についての主張や、それを裏付けるための証拠は、全て書面で家庭裁判所に提出します。そのため、訴状や答弁書、準備書面といった提出書類と、その主張内容を裏付ける証拠を、いかに的確に示すことができるかが、有利に離婚裁判を進めるための重要なポイントとなります。

訴状や準備書面においては、離婚請求に関連する事実を要領よく的確に主張することが重要なポイントです。離婚の理由や請求内容、争点となる事実などを明確に記述し、自分の立場をしっかりと伝えることが求められます。この際、不要な情報や余計なことは書面に記載する必要はありません。

離婚請求に直接関係しない事実や詳細すぎる背景情報は、裁判所の判断に影響しないことが多いため、書面の内容がかえって複雑になり、読み手を混乱させる可能性があります。そのため、必要な情報だけを選んで、伝わりやすい文章で書くことが大切です。

書面は離婚裁判において自分の主張を伝えるための重要な書類ですので、わかりやすさと簡潔さを心がけ、自分の要求を的確に表現しましょう。

そして、こうした主張内容を裏付けるための証拠が特に重要なポイントとなります。

離婚裁判において、証拠は極めて重要な役割を果たします。裁判官は、当事者から提出された証拠をもとに事実認定を行うため、離婚の原因となった事実を客観的に証明するための証拠が不可欠です。

たとえ配偶者の不貞行為があったと主張しても、それを裏付ける証拠がなければ、不貞行為があったことは事実として認められません。

また、証拠の厳選も非常に重要です。証拠を集めて提出する際には、どの証拠が重要で、自分の主張を裏付けるのに有利に働き、相手の主張が誤りであることを証明できるか、しっかり検討しなければなりません。

離婚原因の有無を証明する証拠の一例を挙げますと、次のようなものが離婚裁判において有効な証拠だとされています。

不貞行為の証拠

  • 写真(性行為やラブホテルへの入退場の様子を撮影した写真)
  • 音声・映像記録(不倫相手との通話や共に旅行している様子の動画)
  • クレジットカードや領収書(ラブホテルの領収書や利用履歴)
  • メール・メッセージのやり取り(LINEやメールでの肉体関係を示唆するやり取りを含む)
  • SNSやブログの投稿(不貞関係を匂わせる内容の投稿)
  • GPS追跡記録(ラブホテルや宿泊施設、不貞相手の家にいることを示す記録)
  • 住民票のコピー(不貞相手と同棲状態にあることを示す内容)
  • 妊娠・中絶に関する記録(配偶者以外の人物との性関係による妊娠を証明するもの)
  • 探偵や興信所の報告書(不貞行為についての詳細な調査報告書)

DVの証拠

  • 医療記録(病院やクリニックでの治療記録や診断書)
  • 傷の写真(暴力による傷跡を撮影した写真)
  • 録音記録(暴力や脅迫の場面を録音した音声データや録画データ)
  • 第三者の証言(DVを目撃した人物の証言や陳述書)

悪意の遺棄の証拠

  • 経済的援助の打ち切りを証明する記録(給与明細、通帳など、生活費の支給が停止したことを証明するもの)
  • 別居の記録(別居の開始時期や理由が分かる日記やメモ)
  • 住民票・賃貸契約書(別居後の住所が分かる住民票や賃貸契約書)
  • メール・メッセージのやり取り(別居後に連絡が断絶したことを示すメールやLINEの履歴)

もっとも、上記のとおり、最近の裁判例では、悪意の遺棄を認定するものは少ないですから、これを主張の要にするのは避けるのが無難です。

以上のような証拠を収集・整理しておき、十分に準備して離婚裁判に臨みましょう。

また、離婚裁判では感情的にならず冷静に対応し、必要な情報を適切に開示することも大切なポイントです。

また、離婚裁判では判決による終結ではなく、和解による終結も視野に入れるのもポイントとなります。和解による離婚は、判決を待つ時間がかからないことが大きなメリットです。離婚裁判が長引くと、婚姻費用の負担が大きくなるので、その点も考慮して和解で解決させる方もいます。

和解離婚であれば、離婚裁判の終結を待たず早期に離婚が成立するため、「離婚条件は多少譲ってでも、とにかく離婚したい」というケースでおすすめです。

なお、和解離婚の場合、家庭裁判所が和解調書を作成します。この和解調書には判決と同様の法的効力があるので、相手方が合意内容を守らない場合には、強制執行を申し立てることができます。

Q&A

Q1.離婚裁判の流れを教えてください。

離婚裁判の流れは、まず訴状を準備して家庭裁判所に提出することから始まります。訴状には離婚請求の原因や請求内容を明記し、必要な証拠資料を添付します。

訴状を受理した裁判所は、離婚裁判の期日を指定して当事者に通知します。相手方は訴状の内容を確認したら答弁書を提出し、離婚裁判期日には双方が出廷して主張と立証を行います。途中で和解案が提示されることもありますが、和解離婚が成立しない場合は裁判期日が続行され、最後に家庭裁判所から判決が言い渡されます。

なお、離婚裁判で離婚が認められることになった場合も、判決が確定してから10日以内に、市区町村役場に離婚届を提出しなければなりません。

Q2.離婚裁判を起こすのに必要な書類は何がありますか?

離婚裁判を提起する際の主な必要書類は次の通りです。

  • 訴状
  • 夫婦の戸籍謄本(原本とコピー)
  • 年金分割のための情報通知書(原本とコピー)
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 証拠書類等

Q3.離婚裁判を有利に進めるためのポイントはありますか?

離婚裁判では、請求内容や事実関係を裏付けるための証拠が重要です。離婚裁判を有利に進めるためにも、適切な証拠を収集・整理して、家庭裁判所に提出しましょう。

ご自身が強く主張したいと感じている点と法的な観点から主張すべき点が異なりうることは意識すると良いでしょう。

当法律事務所の弁護士にご相談ください

離婚裁判の手続きを自分ひとりで進めることは、なかなか難しいものがあります。離婚裁判の訴状や準備書面の作成や、当事者尋問の準備など、高度な法的知識が求められる場面が多く、知らず知らずのうちに的外れな主張や相手に有利な主張を行っている可能性もないわけではありません。

そのため、離婚裁判を提起したい場合や、離婚裁判を起こされてしまった場合には、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

離婚裁判の手続きを弁護士に依頼することには、さまざまなメリットがあります。

まず、弁護士は離婚裁判をはじめとし、離婚問題に関する法的な専門知識を持っており、法律的な観点から適切なアドバイスを提供することができますし、進捗も適切に共有できます。ご依頼者様は、離婚裁判の手続きを理解した上で、進捗の共有がされるので、何が起きているか理解しやすいと思われます。

さらに、離婚裁判では、証拠資料や書面の提出が重要となるため、証拠を厳選して、的確な主張をする能力が必要であるので、弁護士に依頼することを強くおすすめいたします。

また、弁護士に依頼することで、離婚裁判にかかる精神的・時間的な負担を大幅に軽減することができます。離婚裁判は長期にわたることが多く、精神的なストレスが大きくなりがちです。弁護士が代理人として離婚裁判に出頭するので、ご依頼者様は基本的に裁判所に毎回行く必要はありません。

当法律事務所、弁護士法人あおい法律事務所の弁護士は、離婚裁判や離婚調停、離婚協議についてのご相談を、これまでに数多くお受けしてまいりました。豊富な解決実績から得た離婚問題に関するノウハウを活用し、ご依頼者様の立場に寄り添って、迅速な解決を目指しております。

離婚裁判や離婚問題のお悩みがありましたら、ぜひ当法律事務所の弁護士にご相談いただくことをご検討いただければと思います。

当法律事務所では、初回の法律相談は無料とさせていただいておりますので、お気軽にお問合せください。法律相談のご予約は、お電話とWeb予約フォームから受け付けております。また、対面でのご相談だけでなく、お電話でのご相談も可能です。

複雑な離婚裁判のお悩みは、お一人で抱え込まず、ぜひ弁護士にお任せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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