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公正証書の費用|公証役場の公証人手数料を解説!誰が払うの?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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私たちの日常生活においては、さまざまな契約や取引が行われています。その中で、特に重要な契約や取引に際して、その内容や意思表示の正確さ、公平性を保証するために「公正証書」が用いられることがあります。
たとえば、遺言や債務の免除、不動産の売買、そして離婚条件についてなど、公正証書が必要となる場面は少なくありません。

ところで、離婚公正証書を作成する際に、どれくらいの費用が必要となるか、ご存知でしょうか。公正証書を誰が作成するのかということについては、「弁護士が作成するものでしょうか。」というご質問をいただくことも少なくありません。

離婚公正証書は、公証人によって作成されるものであり、その内容が正確であること、当事者の意思が明確に表れていることが証明されるため、その作成には一定の費用が発生します。また、公正証書の種類や内容、分量などによっても費用は変動します。そのため、公証役場を利用することは誰でも可能なのですが、その場合には費用の負担が伴います。

この記事では、公正証書の費用について詳しく解説します。公正証書を作成する際の具体的な費用について、実用的な情報をご提供いたします。
ぜひ最後までお読みください。

目次

公正証書の費用

協議離婚では、夫婦双方が合意した離婚条件の内容を明確に示すために、離婚公正証書が作成されることが一般的です。通常、離婚公正証書を作成するには、離婚公正証書の案文として、離婚協議書を活用することになるかと思います。
まず離婚協議を行って離婚条件に合意し、離婚協議書を作成したら、公証役場で離婚協議書を離婚公正証書にしてもらう流れが一般的です。

ところで、公証事務を行う公証役場とは、どういった場所かご存知でしょうか。

公証役場とは

公証役場は、各地にある法務局の管轄する機関であり、全国各所に約300箇所あります。また、それぞれの公証役場には、公正証書を作成する公証人が配置されています。公証役場には、公証人のほか、公証役場で事務を取り扱う書記がいますが、各公証役場に配置される公証人等の人数は、公証役場の規模によっても異なります。公証役場は平日(一般に9時~17時まで)のみ開庁しています。正確な開庁時間等につきましては、お近くの公証役場のサイトなどで確認することをおすすめいたします。また、「公証役場と市役所は同じでしょうか。」と質問されることもありますが、公証役場は市役所とは全く異なった機関です。

公証役場は、公証人が、私人間や法人などの法律関係・権利義務関係を明確化するために、さまざまな公証事務を行う場です。
公証事務の中でも一般的に利用されているのは、公正証書の作成と、私文書の認証です。

公正証書とは、離婚や遺言といった法律行為に関する文書を、公証人が作成し、その内容や本人の意思を確認し、署名・捺印させて公印を押すことで、法的に有効な文書であることを保証するものです。
離婚においては、離婚公正証書(離婚給付等契約公正証書)の作成で利用されることが多いです。

また、私文書の認証も、離婚手続きで利用されることがあります。私文書の認証とは、公証人ではなく本人が作成した私文書について、公証人が私文書の内容や本人の意思を確認し、本人が署名押印して公印を押すことで、その私文書が真正であることを保証するものです。
離婚においては、年金分割の按分割合について合意した際などに、年金分割の合意を示す文書として利用されます。

裁判所と違い、公証役場には管轄がないため、住所地にこだわらず、たとえば会社の最寄りの公証役場を利用することも可能です。
公証役場の所在地は、日本公証人連合会のホームページで確認できますので、ご利用される際には事前にチェックしておきましょう。
公証役場一覧(日本公証人連合会)

 

離婚協議書は、離婚条件について夫婦が話し合って自分たちで作成することもあるため、その場合には、特段の費用は必要ありませんが、離婚協議書を離婚公正証書にする場合は、公証役場で公証人が作業を行うため、費用が発生することになります。

これに関しては、公証人手数料令という政令(憲法や法律を実施するために内閣が制定する命令)に、次の通り定められています。

(趣旨)
公証人手数料令第1条 公証人(公証人の職務を行う法務事務官を含む。以下同じ。)が受ける手数料、送達に要する料金、登記手数料、日当及び旅費については、この政令の定めるところによる。

(法律行為に係る証書の作成の手数料の原則)
公証人手数料令第9条 法律行為に係る証書の作成についての手数料の額は、この政令に特別の定めがある場合を除き、別表の中欄に掲げる法律行為の目的の価額の区分に応じ、同表の下欄に定めるとおりとする。

公証人手数料令第9条に「法律行為の目的の価格の区分に応じ」とあるように、公証人手数料の金額は、離婚公正証書に記載する取り決めの詳細や、取り決められる金額に基づいて計算されることになります。
「法律行為の目的の価格」とは、たとえば養育費の金額や、財産分与の金額などです。これらの金額の合計額に基づいて、手数料が算出されます。

したがって、「離婚公正証書を作成する費用はいくらか」というのは、離婚公正証書に記載する取り決めの内容を定めてからでなければ分かりません。つまり、取り決めの内容次第で、費用は異なるということになるのです。
とはいえ、相場としては、おおむね3万円から5万円程度の公証人手数料がかかることが一般的です。財産分与の金額が大きかったり、慰謝料が高額だったり、金銭の発生する取り決めが多いと、手数料が増加していきます。

なお、離婚公正証書についての詳細や、離婚協議書を離婚公正証書にするための手続きとその流れなどについては、当事務所の関連記事をご一読ください。ご参考になりましたら幸いです。


それでは、具体的にどういった費用がかかるのか、見ていきましょう。

公証役場の手数料

公正証書の作成費用

①離婚協議書を公正証書にする費用

上述の通り、作成手数料は、公正証書に記載する内容や目的の価額によって異なります。基本的には、政令(公証人手数料令)で定められた基本手数料に、証書の枚数や遺言加算などに応じて費用が加算されることになります。

離婚公正証書の場合の基本手数料がいくらになるのかは、離婚条件の合意内容にある金額の合計額を算出してから、日本公証人連合会に掲載されている表「法律行為に関する証書作成の基本手数料」と照らし合わせることで確認できます。本記事の後半にも、表を掲載してありますので、ご覧ください。

公証役場によっては、公証人手数料の計算ツールをホームページ上で提供しているところもありますので、利用してみてはいかがでしょう。

②日当・旅費

高齢者や病人など、公証役場に出向くのが難しいという場合には、公証人に出張してもらうことが可能です。その際には、公証人の日当や旅費が必要となります(公証人手数料令第43条)。

(日当及び旅費)
公証人手数料令第43条 公証人は、その職務を執行するために出張したときは、次に掲げる日当及び旅費を受けることができる。
①日当 一日につき2万円。ただし、4時間以内のときは、1万円
②旅費 交通に要する実費の額及び宿泊を要する場合にあっては、国家公務員等の旅費に関する法律第21条第1項の規定により一般職の職員の給与に関する法律第6条第1項第11号に規定する指定職俸給表の適用を受ける職員に支給される宿泊料に相当する額

基本的に、公正証書は、公証人が執務している公証役場で作成されることが一般的です。

ただし、公正証書の作成を依頼する側が、高齢、病気などの理由によって、公証役場へ出向けないこともあります。このような場合は、公証人が出張して、法定の手続きによって公正証書を作成します。ただし、出張による公正証書の作成は、移動を伴うため、公証人の執務時間を長く要します。そのため、公正証書の作成にかかる公証人手数料は、出張加算などによって、公証役場で作成する場合より高くなるでしょう。

③証書代

公正証書の原本や、謄本・正本を交付してもらうときなどには、枚数1枚につき250円の用紙代が必要とされています(公証人手数料令第40条)。
ただし、原本は4枚までは無料です。

(正本等の交付)
公証人手数料令第40条 証書の正本若しくは謄本、証書の附属書類の謄本又は定款若しくはその附属書類の謄本の交付についての手数料の額は、一枚について250円とする。

④送達手数料

公証役場から公正証書を相手方に送付してもらう場合などにかかる手数料として、送達手数料が必要となります。
謄本や正本の送達は、1400円です(公証人手数料令第39条1項)。また、送達証明の場合は250円の手数料がかかります。

(送達)
公証人手数料令第39条
1 債務名義の正本若しくは謄本又は民事執行法第29条後段の執行文及び文書の謄本の送達についての手数料の額は、1400とする。
2 公証人が送達するべき書類を発送した後、その書類が公証人の責めに帰すべき事由によらないで送達されないときも、公証人は、前項の手数料を受けることができる。
3 第一項の送達に関する証明についての手数料の額は、250円とする。

⑤証書の内容を変更する場合

離婚公正証書の内容を変更する場合には、新たに離婚公正証書を作成することになりますので、そのための手数料がかかります。新しい離婚公正証書の作成手数料や、謄本・正本などの交付料金などが必要となります。

また、古い公正証書を無効にするためには、古い公正証書に関して無効宣言や抹消申請といった手続きが必要になります。この場合も、手数料や収入印紙代などが必要とされています。

⑥証書の作成をキャンセルする場合

公証役場では、公正証書の作成について申し込みを受け付けた時点から、事務手続きが進行して費用が発生することになります。
したがって、公正証書の作成を申し込んでから、公正証書の作成をキャンセルした場合でも、公証人手数料を支払わなければなりません(公証人手数料令第33条)。

(執務の中止等による手数料)
公証人手数料令第33条
公証人が証書の作成に係る事務の取扱いに着手した後、嘱託人の請求によりこれをやめたとき、又は嘱託人その他の列席者の責めに帰すべき事由によりこれを完了することができないときは、公証人は、当該事務の取扱いに要した時間に従い、第26条の規定の例により算定した額(法律行為でない事実について第30十条の規定の適用がある場合にあっては、同条の規定による加算額を含む。)の手数料を受けることができる。ただし、当該証書の作成が完了した場合についての手数料の額を超えて受けることができない。

⑦印紙代

金銭消費貸借契約、土地の賃貸借契約、土地の売買契約、信託契約等の場合には、公正証書に印紙税法による印紙の貼付が必要とされています。
離婚公正証書の作成の他に、別途、これらの公正証書の作成が発生する場合は、収入印紙代も見込んでおきましょう。

相談料は無料

公証役場では、公正証書の作成等について、相談を受け付けています。この公証事務に関する相談は無料です。

公証人手数料【表】

離婚条件が決まったら、離婚公正証書の目的の価格の合計額を算出しましょう。
そして、その合計金額と、以下の「法律行為に係る証書作成の手数料」(公証人手数料令第9条・別表)を照らし合わせると、作成手数料が分かります。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

(日本公証人連合会ホームページ[日本公証人連合会]より引用)

なお、表の手数料に、公正証書の枚数による手数料の加算がありますので注意してください(公証人手数料令第25条)。

(証書の枚数による加算)
公証人手数料令第25条
法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円を加算する。

公証人手数料の計算例

それでは、実際にいくらになるのか、次のケースでおおまかな費用を算出してみましょう。

  1. 夫婦の間に小学生の子どもが2人いる。1人につき、月3万円の養育費を10年間支払う。
  2. 預貯金1200万円について、妻は600万円を財産分与として受領する。預貯金の他に財産分与は無い。
  3. 夫は妻に対し、慰謝料200万円を支払う義務がある。
  4. 公正証書の枚数は6枚になった。

この内容で離婚公正証書を作成する場合の費用は、次のように算出します。

  • 養育費:3万円×2人×12ヶ月×10年=720万円
  • 財産分与:600万円
  • 慰謝料:200万円

目的の価格:720万円+600万円+200万円=1520万円
上記表に照らすと、目的の価格が「1000万円を超え3000万円以下」であるので、公証人手数料は2万3000円となります。

そして、公正証書の枚数は4枚を超えているため、6枚-4枚=2枚分の手数料の加算が発生します。
250円×2枚=500円

これに、謄本・正本の交付費用や、1通1400円の送達代などがかかりますので、合計で3、4万円程の費用となります。

公正証書の費用は誰が払うの?

公証人手数料の費用は、公正証書の正本・謄本を交付してもらい、受領する際に公証役場の窓口で支払います。
支払いは、現金もしくはクレジットカードとなっています。

ほとんどの場合、費用は数万円で済みますが、不動産の所有権移転登記などの手続きもある場合、登録免許税など、離婚公正証書以外の手続きの費用がかかるため、支払いを躊躇するケースも想定されます。

離婚公正証書の作成費用を、夫婦のどちらが負担するかは、離婚公正証書を作成する前に話し合って決めておくと良いでしょう。
一般的には、夫婦が公証人手数料を折半し、2分の1ずつ支払うことで合意するケースが多いです。折半でしたら、夫婦の双方が平等に費用を負担するため、費用負担の面で争いになることも少なく済みます。もちろん、2分の1ではなく、夫婦間での合意に基づき、収入や財産の差を考慮して、支払いの割合を夫7:妻3などと変動させることもあります。

あるいは、夫婦間での特定の合意や事情により、一方の当事者が費用の全額を支払うこともあるでしょう。経済的に余裕がある方が全額を負担するケースや、離婚公正証書を作成しようと提案した側が支払うケースなどがあります。
また、相手が元々離婚することに反対していた場合などは、離婚公正証書の作成にも消極的であることが多いため、離婚したい側が離婚公正証書の作成費用を負担することで、協議を進めていけるケースもあります。

なお、離婚公正証書の作成費用の分担についても公正証書内に記載する場合もありますが、財産分与や養育費などに比べて金額が少ないため、そこまで一般的ではありません。

公正証書の費用に関するQ&A

Q1.離婚公正証書を作成する際の費用は一律ですか?

いいえ、離婚公正証書の費用は一律ではありません。
公正証書の作成にかかる費用は、文書の内容、公証人の手数料、取り決める事項など、さまざまな要因によって変動します。また、弁護士に代理人として、公正証書作成の手続きを依頼するかによっても、最終的な費用は変わってきます。
具体的な費用を知るためには、予め公証役場や法律事務所に問い合わせることが最も確実です。

Q2.離婚公正証書を作成しない場合の離婚と、作成する場合の離婚の費用は大きく異なるのでしょうか?

離婚公正証書の作成には確かに費用が発生しますので、その点で費用は異なります。
しかし、公正証書を作成することで将来的に生じるかもしれないトラブルや誤解を避けることができ、長期的にみると、コストや時間を節約できる可能性が高まります。
初期の費用がかかるかわりに、後々の安心を手に入れるという視点からも考慮してみるとよいでしょう。

Q3.財産分与や養育費の取り決めが複雑な場合、費用は高くなるのでしょうか?

財産分与や養育費の取り決めが複雑になると、公正証書の作成にかかる時間や手間が増えることが考えられます。
そのため、費用が高くなる可能性があります。
具体的にどれくらいの費用がかかるかは、取り決める内容の詳細や公証人の料金体系によりますので、事前の相談や見積もりを取ることをおすすめします。

まとめ

離婚は、人生の中で大きな決断の一つと言えるでしょう。その際、双方の合意のもと離婚する場合、離婚公正証書を作成することが考えられます。
この離婚公正証書は、双方の離婚の意思が明確に示され、公証人によってその内容の正確さが保証されるものとなります。

本記事で取り上げたように、離婚公正証書の費用はいくつかの要因によって変わり得ます。具体的には、文書の内容や公証人の手数料、さらには関連する財産分割や子供の養育費などの取り決めの複雑さが費用に影響を与えることがあります。
離婚に関する手続きは感情的な側面も強いため、費用の面では特に透明性が求められることになるでしょう。

離婚公正証書にかかる費用は、事前に公証役場に問い合わせることで確認できますので、不明瞭な点がある場合は、公証役場のホームページや窓口で確認しておきましょう。
公証役場や法律事務所に直接問い合わせて確認することで、予期せぬコストの発生を防ぐことができます。

離婚公正証書の作成は、将来的なトラブルを避けるための重要な手段となり得ます。この文書を適切に活用することで、両者の意思が明確に示されるとともに、双方が納得のいく形での離婚手続きを進めることが期待されます。
本記事が、離婚公正証書に関する費用やその意義についての理解の一助となれば幸いです。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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