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離婚で不利になる言葉|話し合いで気をつけること・言ってはいけない一言は何?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚の話し合いは、双方が感情的になりやすく、つい不用意な言葉を口にしてしまいがちです。しかし、不用意な発言は、その後の離婚条件に大きな影響を及ぼす可能性があります。自分としてはその場の勢いで口にしたちょっとした言葉が話し合いの記録に残ることで、思わぬ不利益を被るケースも少なくありません。

そこでこの記事では、協議離婚の場合を中心として、相手方との交渉の際に避けるべき言葉や表現、態度などを具体的にご紹介いたします。そして、そうした言葉や態度がなぜ自身の立場を不利にするのか、離婚手続きにどのような影響を与えるのかについても解説させていただきます。

また、離婚の話し合いの中で注意すべきポイントや、相手を刺激せず冷静に対話を進めるためのコツについてもお伝えいたします。

円満でスムーズな離婚を実現するためには、話し合いの際の言葉選びにも注意が必要です。離婚協議で不用意な発言をすることのないよう、本記事をご参考にしていただければと思います。

目次

離婚で不利になる言葉

それではさっそく、離婚の手続きを進めていく上で不利になる言葉について、見ていきましょう。

離婚で不利になること

脅迫めいた言動

離婚協議において、相手を威圧するような言葉や脅迫めいた表現は、非常に不利になる可能性があります。具体的には、次のような言動が脅迫めいたものとして問題視されることがあります。

  • 「親権を渡さなければ、二度と子どもに会わせない。」
  • 「預貯金全て譲ると約束しない限り、離婚には絶対に応じない。」
  • 「離婚を拒否するなら、職場や友人に全て暴露する。」
  • 「自分の要求を聞かないと、子どもや両親に迷惑がかかることになるぞ。」
  • 「離婚できずに裁判になれば、そちらが不利になる証拠を全て出す。」
  • 話し合いで机を叩いて威圧する。
  • 大声で怒鳴りつける、大きな物音を出す。
  • 近距離でにらみつける。
  • 殴る真似、蹴る真似など、暴力的なジェスチャーを見せる。

こうした発言や態度は、相手を脅す脅迫や恐喝行為とみなされる可能性があります。相手に要求を拒否された腹いせに、不倫したことを相手の会社で言いふらす、といった行為も、名誉棄損に該当する恐れがあります。

また、こうした発言を相手が録音・記録していた場合、調停や裁判などの公的な場で、不利な証拠として利用されることがあります。離婚に際して不利になるばかりか、反対に慰謝料を請求される可能性もあるでしょう。

いずれも法律に違反する可能性のある行為ですから、こうした言動は絶対に取らないように注意してください。

自身の有責性を伺わせる発言

離婚協議の場で、自らの有責性を示唆する発言をしてしまうと、離婚条件の交渉や慰謝料、親権争いなどで不利になる可能性があります。自分の過去の行動を軽い気持ちで認めたり、冗談や自己弁護のつもりで語ったりすると、相手方に有利な証拠として記録される危険性があるのです。

具体的な例としては、次のようなものがあります。

  • 「確かに浮気はしたけど、たいしたことじゃない。」 
  • 「一回だけの浮気くらい許されるべきだ。」 
  • 「浮気相手とは本気じゃなくて、遊びだった。」 
  • 「不倫をしたが、そっちにも原因がある。」 
  • 「暴力を振るったのは一度だけだから問題ない。」 
  • 「感情的になって、つい子どもを怒鳴ってしまったことはある。」 
  • 「お酒を飲むとつい暴言を吐いてしまうこともあったが、本心じゃない。」

本人からすると、弁解や軽い気持ちで、特に意識せず発言しているかもしれませんが、自身の過失を明確に認める発言として、調停や裁判において有責性が問われる可能性があります。もし有責配偶者であると判断された場合、有責配偶者からの離婚請求ができないばかりか、相手から慰謝料を請求される恐れがあり、離婚において非常に不利な立場に置かれることになってしまいます。

離婚前に別居している場合も、婚姻費用の請求に影響が及ぶことがあります。

こうした不利な状況を回避するためにも、自身に有責性があることをほのめかすような発言はしないように気をつけましょう。

離婚の話し合いで気をつけること

次に、実際の離婚の話し合いで気をつけることについて、見てみましょう。

 

離婚の話し合いで気をつけること

 

(1)相手の人格否定・悪口

  • 「あなたのような人間には子どもを任せられない。」 
  • 「本当に何をやらせても役に立たない人だ。」
  • 「一緒にいた時間が無駄だった。あなたのせいで人生が台無しだ。」
  • 「本当に馬鹿で話にならない。」
  • 「顔も見たくないくらい嫌いだから、さっさと離婚届に書いて出て行ってくれ。」

離婚の話し合いでは、感情的な対立から、つい上記のような相手の人格を否定する言葉を使ってしまうことや、悪口を言ってしまうことがあります。しかし、こうした発言は対立を悪化させるだけでなく、自身の立場を著しく不利にしてしまう可能性があります。

相手の人格を否定する発言や悪口は、相手の反発を余計に招くことにもなりますし、相手に精神的苦痛を与える行為として、調停や裁判になった場合に問題視されることがあります。こうした発言の態様によっては、相手が精神的苦痛から体調不良になることもあり、悪質なものはモラハラとして認定される可能性もあります。

感情的になりそうな場合は一度距離を置き、冷静になってから話し合いを再開するなどの工夫も必要です。相手を言葉や態度によって攻撃せず、事実に基づいて冷静に話し合いを進めることが重要です。

(2)憶測や勢いによる発言

  • 「きっと浮気しているに違いない。」
  • 「どうせ財産を隠しているんだろう。」
  • 「親権を取っても子どもをちゃんと育てられないに決まっている。」
  • 「裁判になっても絶対にこちらが勝つから、やるだけ無駄に決まっている。」

話合い中、感情が昂ったり不安になったりするあまり、つい憶測や根拠のない推測に基づいた発言をしてしまうことがあります。こうした発言は、具体的な証拠や事実に基づいていないため、相手からの感情的な反発を招き、対立感情を悪化させてしまいかねません。

特に、憶測や勢い任せの発言は、相手の反感を買うだけでなく、調停や裁判に進んだ際に、「この人は嘘ばかり言う」といった心証を形成しやすく、自身の主張が信用されづらくなってしまうリスクもあります。感情に任せて言葉を発することは控え、具体的な証拠や客観的な情報に基づいて、冷静に話し合いを進めることが大切です。

(3)メールやSNS、手紙でのやり取りに注意

離婚協議において、メールやSNS、手紙といった書面やオンラインでのやり取りは、記録が明確に残るため特に注意が必要です。口頭での発言は、録音などしない限り記録に残らないものですが、メールやSNS、手紙などは記録が残ります。SNSなどのシステムによっては、送信後に取り消しができないこともありますし、削除したメッセージを復元できる可能性がないとは言い切れません。

そのため、こうした通信記録に残された言葉は、後々調停や裁判において証拠として利用される可能性が高いです。

怒りや悲しみから、相手に感情的な言葉を送ってしまいそうな場合は、勢いに任せてメッセージを送信する前に、一度立ち止まりましょう。冷静になってから内容を見直し、第三者が見ても問題がないか、よく考えることが重要です。

また、書面やオンラインでのやり取りは双方の感情やリアクションが見えないため、誤解が生じやすいです。明確かつ客観的な事実のみを記載し、相手を非難する言葉や挑発的な表現は避けるよう心がけましょう。必要であれば専門家や信頼できる第三者に内容をチェックしてもらうことも、トラブルを避けるための有効な方法です。

離婚で不利にならないために

さて、離婚で後々不利にならないためには、話し合いで気を付けたいポイントがいくつかあります。

離婚交渉のテクニック

①不用意に合意しない

離婚交渉の場では、早く終わらせたい、面倒な問題を避けたいという気持ちから、急いで合意してしまいがちです。しかし、その場の勢いや感情で即答してしまうと、後から不利な条件や納得できない合意内容であると気づくことがあります。

相手から提示された条件を十分に理解しないまま合意してしまうと、その後の生活や経済面で予想外の負担が生じる可能性があるため、交渉時には焦らず、不用意に合意しないことが重要です。

特に、離婚では離婚協議書や離婚公正証書などの書面を作成するため、一度合意すると後から覆すことが難しくなります。

相手から提案された内容をしっかり検討し、必要ならば法律の専門家である弁護士などに相談してから判断するようにしましょう。

②感情的にならない

お互いに対する不満や、過去のトラブル・夫婦喧嘩などが影響し、当事者だけでの話し合いはお互い感情的になりやすいです。

しかし、怒りや悲しみに任せて相手に感情的な言葉をぶつけてしまうと、ますます冷静な話し合いが難しくなり、さらに交渉がこじれてしまいます。本来の目的である「双方が納得できる解決」から遠ざかり、不必要な対立や争いを生むことにもなりかねません。

話し合いでは、落ち着いて事実や客観的な情報に基づいて交渉を進めることが重要です。もし当事者だけでの話し合いが難しい場合は、弁護士に代理交渉を依頼することも検討してみましょう。

③相手を批判・非難しない

離婚交渉の場で相手と対峙すると、相手への批判や非難がつい口に出てしまうことがありますが、それは交渉を円滑に進めるためには逆効果です。

批判や非難は相手のプライドを傷つけることになります。結果として、相手がますます防御的あるいは攻撃的な態度になってしまい、冷静に話し合いを進めていくことができなくなってしまう可能性があるでしょう。

相手の過去の行動や態度に問題があったとしても、そのことを責めるのではなく、現在と将来の問題解決に焦点を当て、具体的で建設的な話し合いを進めることが必要です。

【文例】不利になる言葉の適切な言い換え

相手に対する苛立ちや不満から、強い言葉をぶつけたくなった時には、勢いで発言せず、落ち着いて言葉を言い換えてみてください。離婚の話し合いで不利になる言葉も、下記の通り言い換えてみると、離婚協議を進めていく意思を前向きに伝えることができるでしょう。

× あなたみたいな人に子どもは任せられない。

〇 子どもの親権や養育環境について具体的に話し合いたい。あなたは仕事が忙しくて残業や休日出勤もあるので、現実的に子どもとの時間を取れる私が子どもを養育した方が良いと思っている。

× どうせ隠し財産があるんだろう。

〇 財産状況についてお互いが納得できるよう、きちんと確認させてほしい。

× もう二度と顔を見たくない。

〇 感情的にならないよう、一定の距離を保ちながら協議したい。

× 二度と連絡してくるな。 

〇 離婚後のやり取りは必要な連絡事項だけに絞り、お互いにとって負担にならない連絡方法を決めておきたい。

× とにかく離婚したいから、後はそちらで好きにやって。

〇 離婚したいと思っている。離婚の条件について、まずはそちらの希望を聞かせてほしい。

以上のように、感情的に発言すると不利になってしまう言葉も、冷静になって話し合いを促すような言葉に変えれば、相手の反感を買うことなく離婚協議ができるでしょう。

この言い換えを参考に、後々不利にならないよう、離婚手続きを進めていただければと思います。

 

感情的に発言してしまうと不利になってしまう言葉

 

離婚で不利になる言葉に関するQ&A

Q1.離婚の話し合いで絶対に避けるべき言葉や発言は何ですか?

A:離婚の話し合いでは、相手を侮辱したり脅迫したりするような言葉、自分自身の有責性を示す発言、不確かな憶測に基づく発言などは避けましょう。

Q2.相手を傷つけるような発言をしてしまった場合、どのような影響がありますか?

A:相手を傷つけるような発言をしてしまうと、精神的ショックを受けるだけでなく、強い反感を招くことにもなり、交渉が難航する原因となってしまいます。また、調停や裁判に進んだ際には、その発言がモラハラとして評価される可能性もあり、慰謝料請求されるリスクも生じるなど、法的にも不利な立場になってしまいます。

Q3.冷静に話し合うためには、どのように言葉を選ぶべきでしょうか?

A:冷静に話し合うためには、感情的な表現や相手を非難するような言葉を避け、具体的かつ客観的な表現を選ぶことが大切です。自身の感情を抑え、話す内容を事前に整理しておくことで、建設的な交渉が期待できます。また、相手を尊重し、丁寧な言葉遣いを心がけると、無用な対立を避けることができるでしょう。

まとめ

この記事では、離婚の話し合いの際に言うと不利になる言葉について、弁護士が解説させていただきました。

離婚協議はどうしても感情的な対立が生じやすいため、不用意な発言一つがその後の交渉や裁判において影響し、不利な立場に置かれてしまうこともあります。

不利になる言葉を使わず、冷静に話し合いを進めるためには、弁護士の活用もご検討ください。

弁護士法人あおい法律事務所では、初回相談料無料にて弁護士による法律相談を行っております。誰かに相談することで考えがまとまる場合もあるかと思いますので、まだ弁護士に依頼するような段階ではないから、と思われている方もお気軽にお問合せいただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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